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官能小説 【小説版】シンデレラになる方法 番外編 〜誓子の場合〜 第9話
橘との楽しい時間
「大橋さんは嫌いなものって何かある?」
目の前に座った橘が、メニューを開きながら誓子に聞いた。
「あ、シイタケが苦手です。あとは大丈夫」
「シイタケか。俺もキノコはあんまり得意じゃないんだ。よかった」
橘は嬉しそうに笑い、パラパラとメニューをめくった。そして店員を呼ぶと、いくつかの料理を注文し、いい?と言うようにメガネの奥から誓子に軽く目くばせをした。誓子がうなずくのを確認すると店員に、お願いします、と一声かけてメニューを返した。
橘の一連のスマートな対応に、誓子は緊張がみるみる解けていくのを感じていた。
20分ほど前、橘に指定されたイタリアンレストランの前で彼が来るのを待っていたとき、誓子は受験や入社試験より心が張り詰めているのではと思うほど、緊張していた。
橘と会ったらまず何を話そうか、着ている服は問題ないか、髪型は乱れていないか、メイクは崩れていないか…気にすればするほど、逃げ出したい気持ちが募ってくるのだった。
しかし誓子の不安は杞憂に終わった。橘が現れた瞬間、誓子はなぜかホッとした気持ちになっていたのだった。
自然と会話が始まり、まるで古くからの友人のような安心感があった。以前は苦手だったはずなのに、なぜだろう。誓子は、やはり妄想フィルターのせいかもしれない、と改めて自身の心の変化に戸惑うのだった。
「この間はありがとう。おかげで無事に書類を通せたよ」
橘は礼を言うとともに、運ばれてきた飲み物を誓子の前に掲げた。
「今日はそのお礼に。乾杯!」
「こちらこそ、ありがとう。乾杯」
チン、とグラスの合わさる音が心地よく響き、2人は笑顔を交わした。ゴールドに輝くスパークリングワインを口へと流し込むと、爽やかな酸味と炭酸が喉を心地よく通り抜けていく。スーッと心も軽くなるようだった。誓子は「美味しい!」と素直に感想を口にした。
「だろ?この店、俺の一番のお気に入りなんだ」
橘は誓子の反応に満足したように言うと、自身もスパークリングワインを一口飲んだ。そしてグラスを置くと、運ばれてきた料理を誓子の取り皿にとりわけ始めた。
「あ、すみません」
「いいんだよ。今日は俺のお礼だから。大橋さんはお姫様でいて」
『お姫様』という言葉に、誓子はドキッとした。慣れないお酒のせいか、橘の言葉のせいか、みるみる顔が赤らむのがわかった。
「あ、ありがとう」
誓子は言葉に甘えて大人しくグラスを傾けつつ、手際よく料理を小皿に盛っている橘の器用そうな手を見ていた。
その瞬間、ふと妄想フィルターでの熱い愛撫を思い出す。胸や足、そして今まで誰にも触れられたことのない場所まで攻められ、誓子は生まれて初めて橘に身も心も乱されたのだった。――どうしよう、なんかドキドキしてきた…。
熱を帯びてきた体に戸惑い、誓子は水を一口飲んだ。やはり少し酔っているようだ。
「飲み物、何か頼む?もしお酒苦手だったらジュースにしようか?」
誓子の火照った顔に気づき、橘はメニューを開いた。
「あ、ありがとう。あんまりお酒って慣れてなくて。じゃあオレンジジュースにしようかな」
「うん、無理しないで。むしろ気づかなくてゴメン」
橘は申し訳なさそうに誓子に謝ると、店員を呼びオレンジジュースを注文した。
「一番美味しいやつでお願い」と、彼がきっちりと髪を分けた真面目そうな男性店員へ冗談めかして言うと、「はい、かしこまりました。とっておきのオレンジジュースをお持ちします」と彼も笑顔で注文を受けた。
橘は嬉しそうに頷く。誓子は、かなりの常連なのかなと思ったが、これが橘のキャラクターなのだと感じた。人懐こく、誰にでも隔てなく楽しい会話ができる。
これは彼の天性なのだろう。誓子にはできないことなので、心底感心した。
それから数時間、誓子は橘と楽しく会話をしながら食事を楽しんだ。そもそも質の高い料理なのはもちろんだが、一緒にいる人によってこんなに食事の味が美味しく感じられるのだということを、誓子は心から実感したのだった。
突然の告白
会計を済ませ、2人は最寄り駅まで歩いた。誓子はすっかりリラックスしていて、とても気分がよかった。
「今日はありがとう。とっても楽しかったわ。笑いすぎてほっぺが痛いくらい」
「俺もだよ。大橋さんってすごく楽しい人なんだね」
「そう?きっと話し上手な橘くんと話していたからよ」
誓子は橘の横顔を見た。少し酔っているのか、いつもより頬に赤みが差している。鼻が高く美しいが、その表情は自然に緩んでいるようで、会社で見るよりもずっとカジュアルな印象を覚えた。橘の見たことのない一面を見て、誓子はちょっぴり嬉しくなるのだった。
駅に着くと、橘は誓子の乗る電車のホームまで見送りについてきた。そしてたわいもない話をしていると、アナウンスが響き電車が滑り込んで来た。誓子は改めて橘に礼を言った。
「本当に今日はありがとう。じゃあ、また明日ね」
手を振って電車の方を向こうとした、その時。橘は突然、誓子の手首をグッとつかんだ。誓子はよろりとよろけたが、瞬間的に頭の中に人魚の妄想がよみがえった。誰もいない海で泡になる寸前、闇から救い上げてくれた、あの力強い手…。
誓子が驚いて橘を見ると、メガネの奥の目が少し潤み、誓子を見つめていた。後ろで電車が止まるキーッという金属音が響く。
「もしよかったら…俺と付き合ってくれませんか?」
誓子の手首を握りしめながら、橘は静かに、しかしはっきりと言った。あまりに突然の告白に、誓子はただ橘の目を見つめているしかなかった。何を言っても場違いな言葉になりそうで、何も言えなかったのだ。
固まってしまった誓子に気づき、橘は慌てて手首から手を放して「すみません!」と頭を下げた。解放された腕は、橘に触れられていたところだけまだじんじんと熱い。
「書類を持ってきてくれたあのときから…大橋さんが気になってしょうがなくて。突然すぎて信じてくれないかもしれないけど…本気なんです」
橘は顔を上げて、誓子をまっすぐ見つめた。周りでは、ドアの開いた電車に人々が乗り降りを始め、電車に乗らない2人をちらちらと一瞥していく。
「返事は、大橋さんが落ち着いたときに教えてください」
そう言うと橘は一礼し、身をひるがえすとホームの階段を駆け上っていった。残された誓子は、ただ茫然とその様子を見つめるしかなかった。
プルルルル…と発車音が鳴り響き、誓子の後ろでドアが閉まった音がした。電車がゆっくりと動きだすと、誓子は急に力が抜け、その場にぺたりと座り込んだ。足にひんやりと感じるコンクリートの冷たさから、誓子はこれが現実であることを認識するのだった。
本当の自分の気持ち
橘に告白された次の日、誓子は大急ぎで真樹夫の屋敷を訪ねた。今の状況を相談できるのは彼しかいなかったのだ。
「ほら、私が言った通りだったでしょう!!」
真樹夫は大喜びでいつもより多めに回転して舞った。執事とメイドも拍手喝さいだ。
「でも私…ついこのあいだまで草山さんが好きだったのに…いきなり告白されたからってすぐ別の彼にときめくなんて、虫がよすぎませんか…?」
もう自分の気持ちがわからなくて、と誓子はため息をついた。
すると、真樹夫はハート型のブラシを誓子の目の前にビシッと突き出し、「人の気持ちにはルールや常識なんてないの」と諭すように言った。
そしてブラシで誓子の鼻をファサファサと撫でながら「だって、現に彼とすでに妄想の中でアバンチュールしちゃったんでしょ?それが何よりの証拠じゃない…♪」とウインクしながら言い、「キャッ?」と両手をグーにして、ぶりっ子ポーズで飛び跳ねた。周りの執事たちも真樹夫にやんややんやと拍手をする。
誓子は妄想内容を見透かされ、みるみる顔が真っ赤になった。しかし、確かに草山との妄想ではキスもしなかったのに、橘とはいきなり激しいキスから始まっていた。
むしろもうセックスに近い段階までしている。やはり真樹夫の言う通り、誓子の中で潜在的に橘の存在が大きくなっていたということなのだろうか。
「そうですね…橘くんとはエッチしても全然違和感がなかったです…」
「うふふ♪…相性って大事よ?」
真樹夫が意味ありげな表情で、そっと誓子に耳打ちした。とたんに誓子は顔から火が出たようにボンッと赤面し、この人にはかなわない…と改めて思う。
しかし真樹夫は急に真顔になると、「まずは自分の気持ちに素直になるの。今のあなたの気持ちに正直になさい」と誓子の肩をポンポンと優しく叩いた。それには、何があっても自分を支えてくれるという信頼と温かさを感じた。誓子は心底心強く思い、はい、と力強く答えるのだった。
その日の夜。お風呂から上がると、もう一度橘からの告白を思い出していた。初めて人から好意を打ち明けられたが、感動よりも驚きが増して、いまだ実感が得られないでいた。
「自分に素直に…」
誓子は真樹夫に言われた言葉をもう一度繰り返し、自分の心に問うた。橘に対しての感情…その答えはもう出ていた。
誓子は真樹夫からもらったバイブ型のラブグッズを取り出した。先日の妄想で橘が挿入しようとした張型を思い出す。それだけで橘の腕が恋しくなり、胸がキュッと締め付けられるようだった。
――私、橘くんに恋してる…。
時代劇風の妄想をもう一度頭に浮かばせると、体の奥にじんじんと熱いものがこみ上げてきた。あの妄想をそのまま続けたら…どうなっていたのだろう。体がムズムズして、自然と手が感じるところへと動いていく。下着の中に手を入れると、そこは十分に熱く潤っていた。
自分がこんなに感じやすかったとは、と誓子は少し驚きながらも、この感情に慣れ始めている自分にも気づいていた。体が熱くなったらどうすればいいのか、わかるようになっているようだ。
早く気持ちよくなりたい、そう思いながら誓子はベッドに横になり、バイブを挿入した。少し圧迫感があるが、十分に潤っていたので思ったよりもするりと入った。不思議な感覚だったが、気持ちが高揚してどんどんそこが潤ってくるのがわかる。
「あっ…すごい…!」
試しに少し動かしてみると、電流が流れるような快感を得られるポイントを見つけた。誓子はバイブのスイッチを入れてみた。
「あぁっ!気持ちいい…」
中で動くバイブがポイントを攻め、大波に飲まれるような大きな快感が誓子を包み込んだ。自然と腰が動いてしまう。
「あ、あ、何、もう、ダメ…!」
そして、快感が頂点まで高まった瞬間、誓子は頭が真っ白になって飛ぶような感覚を味わった。何が何だかわからなかったが、誓子はあまりの気持ちよさに気を失いそうになっていた。
少し時間が経ち、はぁ、はぁ、と荒い息を整えながら、誓子は天井を見上げていた。
「橘くん…」
なぜか誓子の目には涙が溢れた。
――今すぐ橘くんに会いたい。
誓子は下着を身に着けると、電話へと手を伸ばした。
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あらすじ
橘に突然食事に誘われた誓子。
誓子は苦手だったはずの橘にときめきを感じ、自身の変化に戸惑う。
橘の安心感のある対応に、会話も弾んで二人は楽しい時間を過ごす。
帰り道、二人は最寄り駅まで歩いた。
駅について、誓子の妄想の彼と別れる橘の姿が重なる…
別れ際、橘は誓子に大事な言葉を告げた…。