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昔、貞淑な人妻が生まれて初めて手の甲にキスを受けたら途端に夫への愛が冷めて不倫の恋に堕ちてしまう、という小説を読んだことがある。 女にはそういうことがたまにあると思う。
また、キスは本来そういう魔法のような力を持つとも思う。白雪姫や眠り姫を目醒めさせたのも王子様のくちづけだ。
私自身の経験では、17歳のとき、初恋の男性とはじめてキスをした瞬間に、彼とセックスをしている情景がビデオか何かを観せられたようにありありと頭に浮かんだということがあった。その刹那は、もちろんそのままヤッちゃいたいと思った(そうはならなかったけれども……)。
その頃は、誰かにキスの魔法をかけられたいと夢見てばかりいた。
今はそうでもない。大人になった私は、いつしか自分が魔法をかける側に回りたいと思いはじめた。 恋人に魔法をかけて、虜にしてしまうようなキスがしたい。 そのための方法をあれこれ考える。
まず、キスは唇にするものだという思い込みを捨ててみる。
男性はキスをしている女の表情をセクシーに感じるそうだ。男は視覚で感じる生き物なのだ。
だから恋人にしっかりと見せつけるように、たとえばそれこそ彼の手にキスを――ただ上品に唇をつけるだけでは無論なくて、指をしゃぶってフェラチオの真似事をしてみせたり、わざと唾液の音をさせてみたり。
鏡にはりついて、鏡に映った自分とキスをしてみせるのも面白い。ランジェリーだけ、あるいは裸で、ゆっくりと体をくねらせながら。彼に後ろから抱かれながら。
もしくは、恋人にキスマークをつけさせてもらう約束をする。どこにつけて欲しいか、彼に質問する。彼は「○○○に」と答える。私は彼の唇から出発して、○○○までの道のりを小さなキスで埋めてゆくだろう。その旅は、二人してだんだん高まる愉しい旅だ。終着点に赤いキスマークをつける前に彼が「終わり」になりそうな点が玉にキズ?
逆に命じてみてもいいかもしれない。その場合は、私だったら情事の後にしてもらう。終わってから、あそこと乳首と唇にキスしてもらう。感動的な体験になるかもしれない。終わってからキスしてくれる恋人は素敵だ。思わず私もお返しにキスをしてしまうにちがいない。
そうしてキスをやりとりしているうちに、ゆっくり醸し出される魔法はないだろうか?もしもあったら、それは蜂蜜色をした温かな魔法だという気がする。
魔法のキスは工夫次第。次のキスで、どうか貴方に魔法がかかりますように!
【川奈まり子】
コラムニスト。元AV熟女女優。1967年11月9日生まれ。A型。
2004年にAV界引退後、エッセイ、官能小説などの執筆で活躍中。
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