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白い花といえば、まず想うのは、 キリスト教のイコンなどで見かける白ユリ。
西洋では白い花は純潔と貞節のシンボルだというけれど、 キリスト教的なイメージから由来したのだろうか。 清らかな白花には聖母と天使がつきもののようだ。
ところがだ。花弁を放射状にひらく白い花には、 どれも、リナロールとインドールという2つの香り成分を、 含んでいるのだという。 リナロールは麻酔性の、 インドールはエロジェニック(性の官能を刺激する)の香り成分である。 そう、その清楚なイメージにもかかわらず、 白い花は、肉感的な香気を発していることになる。
見るからに高貴な白い花々が、もしも官能的な香りを、 持ちあわせていなければ、人々にこれほど愛されはしなかったろう。 冷たくて近よりがたいだけの存在だっただろう。
ユリ、ジャスミン、ライラック、そして月下美人。 ほかにもあるけれど、これらはすべて古今東西の人々に好まれてきた、 そういう白い花の代表選手だ。 個人的な好みを言うと、このうちで最も心惹かれるのは、 最後にあげた月下美人。
いちどだけ、家で月下美人を育てていたことがある。 その頃、つらい恋をしていた。 愛されなくてつらいのではない。愛しすぎてしまってつらいのだった。 月下美人は、そんな折に恋人から贈られた。 うちへ来たその日から、昼は寝室の隅でひっそりとたたずみ、 夜になると日中の静かな姿からは、想像のつかないような大胆さで、 花弁をひらくようになった。
――あれから月日は過ぎ、 あのときの恋はとうに終わってしまったけれど、 今も時折、私の月下美人は花を開く。
宵闇を満たしたあの甘く切ない香りもそのままに。 花びらから中心にかけて、大粒の真珠のような潤いのもとを。 それを指先で伸ばしながら、愛するあの人と2人で味わう悦びを想お う。やがて、奥からじんわりと潤い、官能の花がひらく。
そこへ、ついに彼が……嗚呼、もうこれ以上書けない!
こんな贅沢なラブコスメを独り占めしてもはじまらない。 女の純潔と官能は矛盾しない。まるで白い花々のように。 今宵は、貴女も芳純なエロスを咲かせてみては?
【川奈まり子】
コラムニスト。元AV熟女女優。1967年11月9日生まれ。A型。
2004年にAV界引退後、エッセイ、官能小説などの執筆で活躍中。
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