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むかしから人は恋をすると“ふつう”じゃなくなる。
そういうことになっている。それが恋わずらい。みんなかかる。 あなたも、それに、あなたの彼氏だって例外じゃない。 そんなわけで二人は、どこか奇妙。
……たとえば、最近あなたは彼氏に触りたくてしょうがない。 ちょっと抱きしめるとか、腕や肩につかまるとか、 そんな程度ではなく、 そう、全身くまなく隅から隅まで撫でまわしてみたくてしょうがない。
寝ても覚めても、仕事中でも、 恋人のおヘソの中を指先でさぐっているところとか、 脚の間の精妙な構造をたんねんに確認しているところとか、 空想してばかりいる。
この欲求が満たされないうちは 何を食べても美味しくない、と思う。
一方、彼も近ごろ変だ。ベッドでどこか上の空。
私に飽きたのかと訊くと違うという答え。
じゃあ、もっとヘンタイっぽいことがしたいとか?
……まあね。でも、ちょっと違う感じ、と彼はいう。
ヘンタイじゃないんだけど、と。
――恋が深まると、パートナーの心も身体も すでに手に入れたはずなのに、もっと欲しくなる。 もっともっと……と願ってしまう。 女ならば、「されている」だけが物足りなくなってくる。 自分も「してあげたい」と思う。それはごく自然なこと。
まずは自らの欲求を肯定してあげよう。 それから、清潔な片手の掌に透明なローションをたっぷりと。 焦らずゆっくりと、 あなたの恋心を染みこませるつもりで人肌に温めて。 それを彼の身体の末端から中央へ向けて、 やさしく伸ばして。
はじめに、甘いくちづけに乗せて、「ご褒美はおあずけ」と 耳もとで囁いてあげるといいかもしれない。 欲望の核心には最後まで触れずに、 男の皮膚のすみずみまで探検しよう。
最後にあそこを、はじめはそうっと、
次第に情熱をこめて……。
「どうしてほしい?」
とあなたは質問するかもしれない。
それとも沈黙のうちに眼で尋ねる?
どちらも素敵。
肝心なのは、彼を好きで大切に想う、 素直な気持ちなのだから。 すべてが終わったとき、 以前よりもお互いに愛しさが増していることは確実。
だけど、肝心の恋わずらいが治っているかというと、 それは微妙……。 一度だけじゃ完治しないかも。 でも、癖になってもいいんじゃない?
【川奈まり子】
コラムニスト。元AV熟女女優。1967年11月9日生まれ。A型。
2004年にAV界引退後、エッセイ、官能小説などの執筆で活躍中。
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