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官能小説 【となりのS王子小説版】恋におちたら 第1話
トキメキの瞬間
今日、私、柴田香奈は結婚する。
でも、不思議だなぁ……。
こんな風に結婚が決まるなんて――。
出会いは突然に
人もまばらだったフロアが次第に騒がしくなってくる。
フレックスタイム制だけれど、企画会議がある今日は始業開始時間に全員が揃う唯一の日だ。
それに今日は――。
「今日から働いてもらう田中瑛太くんです!」
中途採用で入ってくる人がいるとは聞いてたけど、まさかこんなイケメンが入ってくるなんて思ってもみなかったなぁ……。
編集長が紹介した中途採用の男性は、瞳も大きく、鼻筋も通っていて、背も高い。爽やかな王子様って言葉が良く似合う人だった。
彼女とかいるのかな?
この間、彼氏と別れちゃったし、次のターゲットは田中さんにしちゃおうかなぁ……。
そんなことを考えるだけで、少し仕事が楽しくなりそうだった。
朝礼が終わるとるんるん気分で席に戻る。けれど、パソコンを前にすると、一気に現実に引き戻された。
編集部の仕事は華やかそうに見えるけど、実はそこまで華やかではない。
どちらかと言うと、地味だし、体力勝負の仕事だ。
でも、好きなことを仕事に出来るってそれだけで楽しい。
大変だけど、私はこの仕事をずっと続けたいなって思ってる。
まぁ、結婚したら辞めちゃうかもしれないけど。
仕事の合間に
田中さんがうちの部署に配属されてから数日が経った。
私の上司の千夏さんは、田中さんの教育係も兼ねているから今まで以上に忙しい。
折角、千夏さんと私の企画に田中さんも入ることになったのに、田中さんとはあまり喋れずにいる。その上、千夏さんが田中さんに仕事を教えている分、どうしたって仕事のしわ寄せが私にきていた。
「あーあ、今日もこんな時間かぁ」
気が付けばフロアには私しかいない。
みんな、取材や打ち合わせに行ってノーリターンか……。
私は行き先を示すホワイトボードを見ながら溜め息をつく。
取り敢えず、キリの良いところまで進めちゃおう!千夏さんの負担はなるべく減らしておきたいし。
私はパソコンに向かい、アンケートの集計結果をデータにまとめていく。
「あれ?香奈ちゃん、残業してたの?」
突然、声が聞こえて、私は「きゃあっ!」と小さく声を上げてしまった。
「ごめん。驚かせちゃったかな」
振り向くと、そこには編集長が立っていた。
「エレベーターの到着音にも足音にも気付かないなんて、よっぽど、集中してたみたいだね」
「はい。アンケートの集計してたんで……」
「でも、今日はノー残業デーだよ?」
「そうなんですけど……。千夏さん、田中さんに仕事教えてて忙しそうなんで、出来るところまでやっちゃおうと思って」
「ああ、そういうことか。少しの間、香奈ちゃんにもしわ寄せいっちゃうと思うけど、よろしく頼むね」
「はい!」
私はにっこりと微笑んで返事をする。編集長は私の微笑みに微笑みで返すと、自分の席に行った。
編集長は仕事も出来るし、穏やかで誰にでも平等に優しい。
もっと編集部の役に立てるように頑張らなくちゃ……。
私はそう思いながら、再びパソコンに向き直った。
「あのさ、香奈ちゃん」
「はい?」
編集長は自分の席から少し大きな声で私に話しかける。
「ご飯ってまだだよね?」
「はい」
「良かったら、今から夕飯食べに行かない?お腹空いちゃってさ」
「いいんですかー?」
一瞬、もう少し仕事がしたいなって思ったけれど、私もお腹が空いている。
それに今日の夕飯はコンビニ弁当かなぁ、なんて思ってたから、温かいご飯が食べられるのはすごく嬉しい。
「香奈ちゃん、何系が好き?イタリアンとか和食とか」
「イタリアン大好きです!」
「了解。ちょっと待ってね」
編集長はそう言うと、スマホを取り出し、どこかに電話をかけ始めた。
「的場ですけど、今から二名って大丈夫ですか?」
もしかして、お店の予約をしてくれてる……?
突然、ご飯に行く時って、希望のお店に行ってみたら満席で、別のお店に行くことになってしまうことは結構ある。編集長はそうならないように、わざわざ電話で確認してくれたのだ。
さすが、編集長。スマートだなぁ……。
きゅんとしたのは……
編集長がつれてきてくれたのは、東京タワーがさりげなく見えるレストランバーだった。
店内は薄暗く、キャンドルが静かに光をたたえている。席がバランス良く配置されているから、隣の席が気になることもない。ソファは半円になっていて、自然と編集長の隣に座ることになった。男性のこんなに近くに座るのは久々だ。
編集長が選んでくれたワインは美味しいし、出てくるイタリア料理もどれも美味しい。
そう言えば、編集長と二人きりで食事に来たの初めてだなぁ……。
編集長の話は面白い。
話題には事欠かないし、何より経験豊富って感じで何をするのもスマートだ。同世代の男の子と食事に行くのとはまるで違う。
久々に楽しい時間かも……。
ワイングラスを手に取ろうとした私の手と、料理の皿を手前に引き寄せようとした編集長の手が不意に触れた。
「ごめんなさい」
「俺こそ、ごめん」
編集長ははにかむ。
こんな編集長の顔って見たことなかったな……。
一瞬、胸の奥がきゅんとした気がした。
触れた手も熱いような気がする。
私ってば、編集長のこと、男性として意識してる……?
まさかね。編集長って、私より一回りも年上だし、そんなことあるわけないか。
今日は飲み過ぎちゃったかなぁ……。
ワイン、結構飲んだもんなぁ。明日、仕事だけど大丈夫かな……?フレックスで午後から出社すればいっか……。
ぼんやりする頭で私はそんなことを考えていた。
食事を終えた後、自分は違う路線だというのに、編集長は私の使う路線まで送ってくれた。
正直、まだ終電もあるし、さほど遅い時間でもない。なのに、駅まで送ってくれたのには驚いた。男性って話が盛り上がると、すぐに二軒目に誘ってきたり、ホテルに誘ってきたりするけど、編集長って紳士だなぁ……。
まぁ、それもそうか。普通は部下に手を出さないよね。そもそも、年もかなり離れてるし、私のことなんて眼中になさそう。
ていうか、編集長って千夏さん狙いっぽいし。
私は笑顔で編集長と別れると、改札を抜けた。
一歩リード?
結局、仕事のことを考えて、私は朝から出社していた。
飲み過ぎたからって、さすがに次の日フレックスにするわけにはいかない。だけど、二日酔いなのか、いつもより頭はぼんやりしている。
私は紅茶を淹れる為に給湯室にやって来ていた。
給湯室にはポットとコーヒーのセルフサービスマシンが置かれている。
紅茶でも飲めば目が覚めるかな。
ぼーっとしたまま、マグカップにお気に入りの紅茶のティーバッグを入れ、ポットの熱湯を注いだ。
「お疲れ様です」
この声は……!
私は心をときめかせながら振り向いた。
そこにはやっぱり田中さんがいた。
「お疲れ様です!」
「あれ?コーヒーじゃなくて、紅茶ですか?」
「ええ。コーヒーって苦くて飲めなくて。紅茶って種類も多いし、その日の気分で味が選べていいんですよ」
「へぇ、紅茶もいいですね」
「じゃあ、今度、田中さんにオススメの紅茶をプレゼントしますね」
「えっ、悪いですよ」
「気にしないでください。紅茶の良さを知ってもらいたいだけですから」
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかな」
「はい。それじゃあ、私はこれで」
私はマグカップを持って、給湯室を後にした。ふふっ、ラッキー!これで次に話しかけるきっかけも出来たし、ちょっとリード出来たかな?ライバル多そうだから、しっかり頑張らなきゃね。午後からの取材も頑張ろうっと!
ライバルは身近なところに……?
だけど、現実は甘くない。取材から帰って来て、視界に飛び込んできたのは、千夏さんが田中さんの肩を揉んでいるところだった。私の席からは二人が何を話しているのかまでは聞こえてこない。でも、二人ともとても楽しそうにしている。
もしかして、二人って付き合ってるの……?
でも、付き合ってたら、あんなにあからさまに仲良くしないかな……?
私は二人の様子を見ながら、ああでもないこうでもないと考えを巡らす。まさか、千夏さんも……?私はモヤモヤした気持ちのまま、二人の姿が視界に入らないようにパソコンに向き合った。
⇒【NEXT】
千夏と瑛太の関係が気になって仕方がない千夏は…(恋におちたら 〜となりのS王子スピンオフ〜 第2話)
あらすじ
「となりのS王子」のスピンオフストーリー誕生!
今回の主人公は千夏の後輩の香奈♪
香奈は大好きな編集の仕事をがんばりつつ、遊びも恋もしたい!といういたって普通の女の子。
ある日、香奈の所属する編集部に中途採用された瑛太が入ってきた!
「爽やか王子」という言葉が良く似合う瑛太にキュンとしていた香奈だったけど、残業時に編集長から声をかけられて…!?
仕事と恋に一生懸命な香奈の揺れる恋心は…。