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官能小説 ハッピーフレグランス
心を乱されるのは私だけ
「資料のコピー終わりました」
パソコンに向かっている先輩の机の横に立ち、私はドキドキしながら彼の返答を待った。今日の私はメイクも髪も服もばっちりきめているから、きっと何か反応を示してくれる――そう思ったのに……。
「ああ、ありがとう」
そう言って義務的に資料を受け取っただけで、ちらりとこちらを一瞥してはくれたけれど、先輩はすぐにディスプレイに目を戻してしまう。少しだけ手が触れ合ったことにも気づいていないように思えた。
思わずしゅんと顔をうつむけたが、すぐに平静を装って自分の席に戻る。
なぜなら私――田村あかねと、彼――市村智明は現在、秘密の社内恋愛中だからだ。
仕事に支障が出てはいけないからと、仕事中はあくまで先輩と後輩の付き合い程度にすることで、周囲に隠し通している。ほかの人たちに悟られるわけにいかないのはわかるけれど、毎日彼のためにオシャレに気を遣っているぶん、少しも興味を抱かれないのはやはり寂しい。
私は26歳の至って普通のOLだけど、彼は同じ部署の中でもキャリア組にあたる先輩だ。
年も3個上の29歳で、私よりずっと大人で冷静沈着。仕事もできて、周りからも頼りにされている先輩は自慢の彼氏だ。
私はそんな先輩が大好きで、どんな些細なことにもドキドキしっぱなしなのに、先輩のほうはいつも落ち着いていて悔しい。
付き合って3ヶ月、まだまだ盛り上がっていてもおかしくない時期なのに、いつだって心を乱されるのは私ばかりなのだ。デートのときだって、凝ったメイクをしてみたり、流行の髪型にしてみたり、セクシーな服を着てみたりと、これまで色々工夫をしてきたけれど、先輩は平然としている。そんな彼に私は少なくない不満を覚えていた。
彼の視線
今夜も私は、自宅でネットサーフィンに興じていた。先輩は仕事を優先して残業だから、デートの期待も虚しく、ひとりぼっちで帰宅していたのだ。
先輩がいつ来てもいいように部屋もきれいにしているのにと、なんだか虚しくなってくる。どうにかしていつもクールな彼が私にドキドキする姿が見たいと思い、インターネットで情報を集めていた。
すると、ある広告が目に留まった。
「リビドー……ロゼ?」
見た目は普通の香水だけど、ベッド専用と書かれていることに興味をそそられた。
「甘くセクシャルなこの香りに包まれると、性衝動のスイッチが入る……か」
これまで見た目ばかりに気を取られ、香りに気を遣うことはなかったから、目から鱗が落ちたような思いだった。
「本当に彼から?たまらなく、したい……?なんて、言ってもらえるのかな」
半信半疑だったけれど、『淡泊な彼が積極的になる』というキャッチコピーが最後の一押しとなり、わらにもすがる思いで気づけば私は購入ボタンを押していた。
リビドーロゼが届いた翌日、私はさっそく会社にそれを付けていくことにした。信じていないわけではなかったけれど、先輩とベッドに入ることが久しくなかったので、香りを嗅いでもらう機会がオフィスでしかないと思ったからだ。
ふんわりと香るリビドーロゼは普通にいい匂いで、特に変わったところのない香水のように感じられた。
定番の首筋と手首になじませたが、ネット広告にあったように、太ももの内側にもこっそり付けてみる。どんなにオシャレしても鈍感な先輩だから、香りぐらいで変わるはずがないと、このときはやはり信じきれていなかった。
「田村さん、今日はなんだかいい匂いだね」
オフォスに足を踏み入れてから、会う人会う人にそう言われ、私はさっそくリビドーロゼに驚かされていた。付けている自分には実感がなかったけれど、まるでフェロモンを発しているように男性が声をかけてくる。
私は相変わらず生真面目にパソコンに向かっている先輩をそっと見やった。先輩ももしかしたら、この香りに気づいてくれるかもしれない。
私は緊張しながら、わざわざ遠回りをしてまで彼の机の横を通り過ぎ、自分の席に戻った。すると資料を渡すときでさえ一瞬しか反応しなかった先輩が、なんとこちらを振り返ったのだ。私をじっと見つめている。
私が笑顔で応えると、先輩は慌てて前に向き直った。私は心の中でガッツポーズをしていた。ここまで先輩に反応してもらえるなんて思わなかったからだ。
それからも先輩は、ことあるごとに私にちらちらと視線を送るようになった。どうやら彼は完全にリビドーロゼの香りに気づいたようで、私が近くにいるときはドキドキしているのか珍しく仕事のミスをしたり、ほかの男性に声をかけられているときはハラハラと心配そうにしたりしていた。
こうして目まぐるしい一日が終わろうとしていた頃、先輩が私の机を通り過ぎざまにメモを置いていった。『今夜、食事に行こう』と走り書きされた紙片を握り締め、私は意気揚々と会社を出たのであった。
性衝動のスイッチ
「あっ……」
先輩に首筋を舐められ、私は長らくお預けにされていた快感に身を震わせた。いま私たちは、私の部屋のベッドの上で抱き合っている。
てっきり言葉通り食事に行くのかと思いきや、彼は一言、「君が食べたい」と言ってきたのだ。
私は赤面したけれど、すぐに私のアパートに誘っていた。香水の香りががいつまで続くかわからなかったから、付け直したいと思っていたのだ。
会社の人に見られるかもしれないのに、彼は終始私の手をぎゅっと握り続け、電車でも私を守るように身体を離さず、アパートまでの道は急くような早足で歩いた。
そして玄関の扉を閉めた途端、先輩は私を壁に押し付けて、情熱的なキスをしてきたのだ。そのまま私を横抱きに抱えると、有無を言わさずベッドに下ろし、覆い被さってきた。
「これ、この香りだよ」
「香り……?」
しらばっくれる私の両手を敷布に縫い止め、先輩は子犬のようにくんくんと匂いを嗅いだ。
「うん。今日は一日中、あかねを抱きたくて仕方なかった」
「先輩……」
「ふたりのときは名前で呼んでくれ」
「智明さん?」
そんな許しをもらえたのも初めてだったから、私はリビドーロゼに改めて驚かされる。
「その香り、会社の中では付けたらダメだよ」
「なぜ?」
こんなにも彼が反応してくれるのだから、毎日でも付けようと思っていたところだった。
「ほかの男にあかねの匂いを嗅がせたくない」
「智明さん……でも、これは普通の香水だよ?」
本当は性衝動のスイッチを入れる香水だけど……という事実は心の中に閉まっておく。
「香水の匂いって、同じものを付けていても違う香りになるのは知っているだろう?」
「そうなの?」
きょとんとする私の服を脱がしながら、先輩は言葉を続けた。
「そう。あかねの体臭と混じり合って、独特の香りを生み出すのさ」
でも……と言いかけるが、先輩のキスで口を塞がれてしまう。
「この身体も心も香りも全て――俺だけのものだ、あかね」
「智明さん」
まなじりには自然と涙が浮かぶ。
口の中で言葉が溶け合い、互いを貪るように深く舌を絡ませた。
「ん、んぅ」
さらされた素肌を先輩の手が滑り、胸のいただきから淡い茂みを探っていく。片足を持ち上げられ、彼は獣のように香水を付けた内ももに甘噛みしてきた。
「ひぅっ、あ……!」
「どこもおいしそうだよ。君を全て食べてしまいたい」
彼の剛直が熟れた私の中に入ったときには、信じられないような快楽に襲われた。終わったあとも何度も何度も求められてしまい、こんなに興奮した彼の姿を見るのは初めてだった。リビドーロゼは幸せを呼び込む香水――ハッピーフレグランスだったらしい。
END
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あらすじ
26歳の至って普通のOLのあかねは、同じ会社の先輩である彼と付き合っている。
年上の彼は冷静沈着で、周りからも頼りにされる自慢の彼氏だが、いつも自分ばかりがドキドキしてどこか悔しい思いをしていた。
ある日ネットサーフィンをしていると「ベッド専用の香水」という広告に目がとまった。
「淡白な彼が積極的に」というキャッチコピーを見て、わらにもすがる気持ちで購入ボタンを押した…。