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官能小説 【前編】私のデイ・ストーカー【LCスタイル】


作品について

この作品は、小説サイト 「ムーンライトノベルズ」と合同で開催した、 「妄想小説コンテスト」の優秀賞作品です。

不審者に注意

――21時ジャスト。会社からの帰り道、いつものように電車から降り立ち、通勤30分圏内の薄暗い路地を歩いていく。

チカチカと灯りが消えかかった街頭と、私の他には誰も歩いていない閑静なコンクリートの地面が続き、ヒールのカツカツという音だけが響く。それが建物に反響していくのがまた、不気味さを醸し出していると思う。

それにしても、今日も余計に残業してしまったなぁだとか、あの仕事、絶対に私がやらなくてもいいやつじゃないかだなんて、ひと通り心の中でブチブチ言いながら帰路に着くのが、入社してから二年間、私の一つ目の日常だったりする。

しばらく歩いていくと、自宅の安アパート到着まで後5分、というところにある、塀に取り付けられている見慣れた看板が目に入る。

『不審者に注意!!』

少し錆びの浮いた古くて大きな看板で、警戒色である黄色を背景に、シンプルかつ大きな文字でデカデカと書いてある。この辺も物騒なもんだ、だなんて考えながら、どこか自分とは関係のない事のように思いながら、背後に感じる強い視線にそっと意識を向ける。

私との一定の距離を保ちながらついてくるその人の存在を確認する。こちらからは見えないように潜んでいるけれど、姿が見えなくても分かる。おそらく今日も暗色のマウンテンパーカーを羽織り、フードを目深にかぶっている筈だ。決して私を見失わないよう物陰に隠れながら、なにをするでも無くじっとこちらを見つめているその人は、一年程前から後をつけてくる私のストーカーだ。

――彼の存在。それこそが、私の二つ目の日常である。

このストーカー……もとい、菅宮圭介との出会いは、遡る事一年前。

当時の私は、営業として採用が決まり、入社の為に上京してから怒濤の連続で、おまけに慣れない仕事で毎日ヘトヘトだったと思う。まあ、二年目である現在だって、まだまだ仕事が完璧とは言い難いけれど。

きっかけは、先輩について回りながら取引先へと挨拶に赴いた時だった。先方との打ち合わせが終わり談笑に突入した所で個人的な話があるからと、先に私だけが席を外させてもらった時だ。

双方とも個人的に仲が良いらしく、これは長くなるなあ、だなんて思いながら、目についた休憩室にお邪魔させてもらうと既に先客がおり、隅の方にポツン、と一人で座っていた。

彼――菅宮はこの会社のシステム部門所属らしい。服装は清潔感があって身綺麗にしているのに、クセのある髪をそのままにしているのかどうにも垢抜けない印象だった。すっかり伸びきってしまっている前髪のせいで目元が隠れてしまっていて、表情が読み取れない。

彼は極度の人見知り……というよりも、対人恐怖症の気があるらしく、本人いわく、人と目を合わすのが怖いらしい。この前髪も意図的に伸ばして他人の目を直視しないようにしているのだそうだ。

そんな彼だが、話してみると案外ウマが合った。辿々しく、つっかえながら言葉を紡いでいく彼の話題は、もっぱら昔のテレビゲームだったり当時熱狂していたアニメの話だったりして、そのどれもが私の趣味にドンピシャだったものだから仲良くなるのはあっという間だった。

彼の年齢も突っ込んで聞いてみたところ、なんと私と年が近いらしい。正直年齢不詳なところがあったからこれには少し吃驚したのを覚えている。

ただ仲良くなり過ぎたせいで、初対面のくせに家の場所まで教えたのがいけなかったかと少々反省しているところではある。まさかその翌日から毎朝毎晩、通勤ルートを歩く度にストーキングされるとは思わなかった。

これは予想の範囲外……と、いうよりも、流石に誰も想像出来なかったんじゃないかと思う。通報した方がいいのかとも考えたけれど、いや相手は取引先の人間だ。揉め事を起こすのもなぁ、だなんて考えてしまって、結局彼を警察に突き出すような真似はしていない。いや本当にやりづらいったらない。

最初のうちはどうして私の後をつけるのか訳が分からなくって、得体の知れなさに動揺もした。

前髪のせいで表情が窺い知れない分、なにを考えているのかわからないのもあって、怖くて怖くて仕方なかったけれど、ストーキング期間が半年を経過した頃にはこちらも流石に慣れてきた。

……いや慣れちゃダメなんだけども。ただ、菅宮圭介は私になにかをしてくる訳ではなく、本当にただ後ろをついてくるだけだった。それに、常に自分の側に誰かが居る、という状況のお陰で、夜分に他の不審者を気にせず歩けるのを思えば……まあ、ありかな?だなんて思ってからは、随分と気が楽になったと思う。

更に1ヶ月後にどうして私なんぞにくっ付いてくるのか逆に興味を惹かれて自分から話しかけにいった。――今考えても思う。どうかしている。

「あのう、菅宮さん。お疲れ様です……?」

「――っ!!!」

まさかストーキングしている対象にバレているとは思っていなかったらしい。しかもその本人から話しかけられるという訳のわからない状況に菅宮圭介の方が逆に驚いて、慌てたように走って逃げてしまった。

「あっ……!」

私の方も逃げられるとは思っていなかったのでついつい変な声がでてしまった。駆けていく背中はあっと言う間に小さくなっていき、遂には見えなくなる。もう少し、アプローチ方法を考えるべきだったかもしれない。……とりあえず。

「お疲れ様はないな」

自分に自分でツッコミをしつつ、今日も例の『不審者に注意!!』の看板が掛かった塀を曲がり自宅へとたどり着く。さあ、明日も仕事だ。さっさとお風呂に入って布団に潜り込み、身体を休めてしまおう。

「――あっ」

しばらく経った日の朝、カーテンの隙間から外を覗くと、電信柱の影に隠れてこちらを見上げている菅宮圭介の姿が見えた。話しかけたせいで来なくなってしまったんじゃないかと思っていたから、彼の姿が見えてほっとしてしまう。良かった。……いや何を言ってるんだ。良くは、無い。

折角だし、だなんて考えてから、施錠していた窓を開けて身を乗り出し、彼に向かって思いっきり挨拶をしてみる。

「おーいっ!菅宮さーん!おはようございますーっ」

「――っ!!!」

大声で自分の名前を呼ばれたからかぎょっとしたような反応をする菅宮圭介は、仰け反ったせいで滑り落ちそうになるフードを目深に被り直し、またもや慌てたように逃げてしまった。

……ちょっと面白くなってきた。

そういえば、不審者に対して自分から挨拶すれば、相手が逆に警戒するから被害に遭いにくいのだ、という事を小学校で習ったなぁ、だなんて思い出しながらはたと気づく。

「そういえば私すっぴんだった……」

せめて化粧してから話しかければよかった。

それからも、私は自分から菅宮圭介に話しかけにいった。今は彼の勤める会社に出向く用はない為、彼との繋がりは、毎朝毎晩に行われる彼のストーキング行為のみだからだ。

「菅宮さーん!折角ですからそんな離れた場所に居ないで一緒に行きましょうよ?」

「…………あ、ど、どうし、て」

「はい?なにがです?」

「どう、して、話しかけるんですか。僕が怖く、ないん、ですか……?」

それを自分で聞くとは。顔にかかる分厚い前髪のせいで、あいかわらず彼の表情は窺えない。けれど、声には少しの怯えが滲んでおり、私になにを言われるかが怖くて仕方がないようにも見えた。

――どうして。確かにどうして話しかけているのか自分でもわからない。相手はただのストーカーだ。しかも知人でもあるという、とてつもない厄介なタイプの。

ただ、彼がいるお陰で、ある意味身の危険を感じなくて済む。それに、仕事が立て込んで夜中に一人ぼっちで帰るのはいつも少し寂しかった。帰宅しても一人で暮らしているから、もちろん部屋には誰もいないし、恋人だっている訳ではないから、多分……人恋しかったのかもしれない。

「そうですね……私、誰かとこうして話したかったんだと思います。菅宮さんの方こそ、どうして私の後をついてくるんですか?」

「…………ご、めん、なさい」

「え?」

「ご、めん、なさい……!」

「え、あ!ちょっと!」

小さく小さく消え入るように声を絞り出したかと思うと、菅宮圭介は走って逃げてしまった。

「菅宮さん……?」

この関係を壊すような事をしたからいけなかったんだろうか。私達の関係は危ういものだったから、その日以降、菅宮圭介は私と言葉を交わす事もなくただ黙って後ろをついてくるのみとなってしまった。話しかけようとしても、怯えたように身体を震わせて、走って逃げてしまうの繰り返しだ。

これでよかったのかも知れない。ただなんとなく、私が彼に感じていた親しみのようなものまで消えてしまったような気がして、少し寂しくなった。

助けられて

その日は、会社の締日で忙しく、いつも以上に帰るタイミングを逃してしまった日だった。

こんな日に限って後ろには菅宮圭介の姿は無い。この時期は、彼の会社も私が勤める会社と同様に忙しいらしく、多分だけど、システム関係でのトラブルなんかがあったんじゃないかと思う。きっとまだ会社に居るんだろう。

「……この道、こんなに怖かったっけ?」

夜道の恐怖を和らげる為、ポツリ、と独り言を言ってみる。シン、と静まり返った住宅街は、いつも見慣れている筈なのに、なんだか知らない町のようによそよそしくて、怖い。

――菅宮圭介がいない。ただ、それだけの事なのに景色が全く違うモノに見える。そんな風に錯覚してしまうだなんて、今の今まで思わなかった。こんな時に限って良くない事を想像してしまう。家の近くに設置された看板の事を思い出してしまった。

『不審者に注意!!』

まさか、ね。いくらなんでもこんな場所に出るはず無い。だって、ここで暮らしてから二年間、今まで事件だなんて起こらなかったんだから。……いやだなぁ。早く、抜けてしまおう。

――コツコツコツ

急いで足を踏み出して歩くスピードを速める。

スーツで早歩きをする女性の画像

――ジャリ

………今、背後から物音が、した。

良かった。菅宮圭介が来てくれたんだ!彼の事をこんなにも待ち望んだのは初めてだ。ほっとして後ろを振り向いた瞬間――

振り上げられた金属バットと、知らない男の姿が視界に映った。

菅宮圭介じゃ、ない。

驚き過ぎて身体が竦み、足が地面に縫い付けられたように動かなかった。振り下ろされた金属の軌跡をどこか人ごとのように眺めながら、ああこれは不味いかもなあ、だなんて思う。

意識を失う前に私が覚えていたものは――

ガンッ!という鈍い音と頭部への衝撃。……それに、暗色のマウンテンパーカーを翻しながら、こちらに向かって駆けてくる菅宮圭介の姿だった。

「――さんっ!マヒロさん!」

……誰かの声が、聞こえる。

私の名前を呼ぶ、誰かの声が。

目蓋が重い。でも、起きなくちゃいけない。頬には生温かい水滴が当たって、一瞬雨でも降っているのかと錯覚してしまう。

意識がぼんやりとしたまま、ゆっくりと目蓋を開ける。すると、目の前にはフードを目深に被り、目元を前髪で隠した男性の姿があった。

「……ここは……?」

「――さんっ!マヒロさん!」

……誰かの声が、聞こえる。

私の名前を呼ぶ、誰かの声が。

目蓋が重い。でも、起きなくちゃいけない。頬には生温かい水滴が当たって、一瞬雨でも降っているのかと錯覚してしまう。

意識がぼんやりとしたまま、ゆっくりと目蓋を開ける。すると、目の前にはフードを目深に被り、目元を前髪で隠した男性の姿があった。

「……ここは……?」

「――っ!マヒロさん!良かった、目が覚めたんですね!?貴女は通り魔に襲われて倒れていたんです。ぼ、僕がもっと早く駆けつけて、いれば、こんな事にはならなかった、のに……」

最後の方は消え入りそうな程にか細い声で、彼は悔やむように言葉を吐き出していた。頬には涙の跡が見える。先ほど感じていた水滴は彼の涙だったようだ。

「ええ、と……その、貴方が助けてくれたんですよね……?ありがとうございます。……ところで、とても言いづらい事なのですが……」

「な、なんでしょうか?」

こんなにも親身になってくれているのをありがたいと思いながらも、胸の中にわだかまるこの気持ちを伝えても良いものかと考えあぐねてモゴモゴと口籠もってしまう。

「貴女の知りたい事なら、なんだって、お答えします、どうぞ、お気になさらず、聞いてみて下さい」

私が言いづらそうにしているのを見かねて彼の方から助け船を出してくれた。彼は……きっと、私の命の恩人だ。こんな宙ぶらりんな気持ちのままでは失礼を重ねてしまうだろう。

「あのう、気を悪くされたらごめんなさい。……貴方は、どこのどなたですか?」

「え……」

ほおけたように、言葉を失う彼の姿が目に入った。

「ごめんなさい。なにかで殴られたのは覚えているんだけど、貴方の事を覚えていないの。でも、私の事を名前で呼んでくれたから、きっととても親しい間柄ですよね……?あ!もしかして、私の恋人だとか?」

「………………」

彼は俯いたまま黙ってしまう。何かを考えているようだ。返事がない。どうしたのだろう。やっぱり間違っていたのだろうか。

「あのう……?」

「………………はい。僕は、貴女の婚約者、です。結婚を前提に、お付き合いさせて、頂いてるんですよ……」

「わあ!やっぱり!そうじゃないかな、って思ってたんです!だって、私の側にずっといてくれたんでしょう?良かった。間違ってなくて」

「ええ。貴女は、間違えていません。僕たちは、ずっと前から、愛し合っていたんです。……そうだ、僕の名前は――」

そう話す彼の雰囲気は澱のようにどろりと濁っていき、口元にはとても嬉しい事を我慢しているかのような、けれど、どこか歪さを含む笑みを浮かべていた。

「――菅宮圭介、と言います」

食べたい

「マヒロさん、ただいま」

「あ、お帰りなさい、圭介さん!今日はお仕事終わるの早いんですね?お夕飯、もう少し待っていて下さい。後ちょっとで出来ますからっ」

「うん。……でも、僕はマヒロさんの方が、食べたい」

「も、もうっ!まだ駄目です。夕食が終わるまでは。……ね?」

「ん。待ってる」

背後からぎゅう、と抱きしめられて、首筋に顔をうずめてくる圭介さんを宥めながら、鍋の中身をお玉でかき混ぜていく。今日は野菜たっぷりのシチューだ。人参とか、ブロッコリーだとかを多めに入れて煮込んでいるから、不健康気味な彼にちょうど良いだろう。

私が病院に運び込まれたあの後、すぐに圭介さんは私の職場へ連絡を入れてくれ、入院費用まで工面してくれた。今は身体を休める為、仕事はしばらくの間、休職扱いにしてもらえるらしい。

詳しい経緯を聞くに、どうやら元々の私が住んでいた地区は、近所では治安が悪いので有名なところだったらしく、痴漢やひったくりが多発しているようなところだったらしい。たぶん、当時の私は都心にしてはあり得ないぐらい安かった家賃につられて住んでいたに違いない。

今まで私が被害に遭わなかったのは、圭介さんがいつも家まで送ってくれていたからだそうで、私を襲った通り魔も民家にとりつけられていた防犯カメラに映っていた為に逮捕されたのだそうだ。多分、彼が来てくれなければ、私はもう……

とにかく!あの辺りは危ないからという事で、隣町にある圭介さんのアパートに泊めてもらっていたけれど、彼の部屋には漫画やレトロゲームなどが揃っていて、なんだかんだで居心地が良く、気がついた頃にはなし崩し的に同棲している状態になっている。

もちろん前のアパートは引き払った。荷物は全てこちらに持ってきているけれど、私の荷物が多すぎで整理するのが大変だったぐらいだ。

圭介さんは背後から抱きしめたまま手を伸ばして、私の左手をするりと撫でる。彼の少し節ばった指先で、そこにあるモノの存在を私がちゃんとつけているのか毎日確かめられるのだ。やがて私の手は彼の指に絡めとられ、ゆっくりと持ち上げられる。薬指に嵌るプラチナの指輪が照明の光を反射してキラリ、と光った。

こちらも圭介さんが言うには、元々私がしていた指輪は襲われた時に外れてしまったのだそうだ。サイズにゆとりがあったせいだから、今度はどんなことがあっても決して抜けない様にと、新しい指輪を私の為にあつらえてくれた。小さなダイヤの嵌め込まれたシンプルなデザインの婚約指輪だ。

「マヒロさん……愛してる」

ぎゅう、と抱きしめられたままの腕の抱擁を強めて、圭介さんは愛を囁いてくれる。けれど、その声には微かに怯えが滲んでいるような気がしてしまう。まるで、私が居なくなってしまうんじゃないかとでも言うかのように。

彼の側から離れるような事をする筈ないのに。どうして彼は、そんなに寂しそうに言うのだろう。

「私もです……早く、貴方の事を思い出せればいいのに」

「マヒロ、さん……」

圭介さんは、私の名前を小さく囁く。なんとなく、その言葉の端々に苦しんでいるかのような気配を感じてしまう。彼の為にも早く思い出したいのに。できない自分がもどかしい。

お医者様が言うには、彼の事をどうしても思い出せなかったのは頭をバットで殴打された際、運悪く記憶に関わる箇所に当たったせいで、部分的な記憶障害が起こっているのではないか、との事だった。

仕事や家族の事は鮮明に覚えているのに、肝心のパートナーの事を忘れてしまうだなんて……

なんども圭介さんに謝るけれど、その度に彼は気にしなくてもいいと優しく笑ってくれるのが、申し訳なくて胸を締め付ける。

記憶とは繊細なものであり、私が失ってしまった彼との思い出も、ある時ふと、思い出せるかも知れないらしい。

ただ脳はデリケートなものなので、思い出そうと躍起になり変に刺激を与えると却って負担が掛かってしまう為、良くないのだそうだ。

私としては同じ刺激を与えれば思い出すんじゃないかって軽く考えていた時期もあり、圭介さんに冗談めかして「もう一度バットで殴ってみようかな?」だなんて軽い気持ちで言ってみたのだけれど、酷く慌てた様子の彼に「お願いだからやめて下さい!」と泣きそうになりながら止められてしまった。

無理して思い出さなくてもいい。貴女が側にいてくれるだけで嬉しいと言ってくれる圭介さんに、ああ、この人を選んで良かったなあ、と私はふとした瞬間に思うのだ。

二人で夕食を食べ終わった後、圭介さんに寝室へと連れていかれる。彼に両手で頬を包み込まれ、まるで存在を確かめるかのようにフニフニと揉まれた後、顔を近づけてキスをする。小鳥が啄むような軽いキスをなんども繰り返した後、圭介さんは私の服の裾へと手を滑り込ませ、慎重な手つきで脱がせていく。

「ん……」

露わになった素肌に彼の大きな手のひらが触れ、胸を柔らかく揉まれていく。下から掬い上げるように包みこまれ、親指で胸の先端を優しく擦られていくうちに、甘い痺れが腰から背中へ流れていく。

圭介さんは、私の裸に触れるのにまだ躊躇いがあるようで、神聖なものを触るかのようにぎこちなく手を伸ばす。

数えきれないくらい身体を重ね合わせているのに。早く慣れてくれた方が私も嬉しい。

「圭介さん」

「な、あに、マヒロさん?」

「さっきから思ってたんです。圭介さんだけ服を着てるのずるいです。さ!脱いで下さい」

「で、でも……」

「もぅっ!いい加減慣れて下さい!私、服越しじゃなくって、圭介さんの体温を直に感じたいんです」

「あ、う……マヒロ、さん。ちょっと待ってて下さい、今、気持ちの整理をつけますから」

「駄目です。待ちません。……えいっ!」

「あ、やめ……!」

無理やり脱がせたせいでバランスを崩し、二人してベットの上に縺れて転がってしまう。仰向けで倒れる彼の上に私が乗っかり襲いかかっているような体勢になってしまった。

「わあ!いい眺めです」

「……マヒロさん、それ、僕が言うセリフ、です」

「ふふ!ごめんなさい。でもこれでくっつけますね。じゃあ、失礼します……」

「あ……」

胸板に手を添えてピタリと身体を重ね合わせ、耳をくっつけてみる。ドクンドクンと脈打つ彼の鼓動を確かめながら、そっと目を閉じる。少し動悸が早い。緊張しているらしい。もっと刺激を加えたらどうなるんだろうか。

目を開けて、すぐ側にある胸の先端を唇で優しく咥えながら、赤ちゃんのように吸い付いてみる。「うう」と気持ち良さそうに呻く圭介さんに気を良くして、ちゅうちゅうと吸い付く力を強めながら、舌先でチロチロと丹念に舐め続けていると、私の足の付け根に膨らみを帯びた硬いものが当たる。これに何度もお腹の奥へ侵入された事を思い出して、期待で秘所が濡れるのを感じてしまう。

「圭介さん?」

「ご、ごめん。でも、今のはマヒロさんのせいです。……だから」

「きゃん!」

「……悪い事をするこには、身体に覚えさせなくっちゃ、いけません」

くるりと身体を反転させられ、今度は私が彼の下になる。そのまま圭介さんに覆いかぶされて先程自分がしたのと同じように胸の先端を舌先でねっとりと舐められて、唇に含まれてからちゅうちゅうと吸われる。

「あ、んん……」

気持ちいい……圭介さんの頭を抱き寄せて優しく撫でながら、胸に与えられる刺激にうっとりとしてしまう。

反対側の胸も大きな手のひらに包まれてやわやわと揉まれる。手は徐々に下へ向かって移動していき、圭介さんの指先は下腹を撫でさすり、足の付け根まで辿り着くと、割れ目をかき分けて突起を擽るように優しく弄る。

「あ……圭介、さん……」

「ん。……マヒロ、さん、もう濡れてる……」

「や、やだっ!言わないで下さい!……あ、う……」

つぷり、と蜜口の中へ指先を入れられて、奥へ向かって進んでは浅瀬に戻るのを何度も繰り返される。彼の長い指が内側を激しく擦り続けて、気持ちのよい場所を刺激される度にもっと、もっと、と無意識に締め付けてしまう。早く、大きくて固い圭介さんのモノで内側をグリグリと擦ってほしい。激しく突き上げてお腹の中いっぱいに征服されたい。けれど、圭介さんは小さく笑いながら、その先をしてくれない。

「圭介、さん。……ん、私、もう……」

「うん、マヒロさん……待っていて、ね?今、すぐに……っ」

そう言いながら指を引き抜かれた後、硬いモノが蜜口に添えられる。入り口を確かめるようにちゅぶちゅぶと浅く突かれて、快楽でグズグズに溶けた感触を堪能された後、グプグプと太いモノが入り込んでくる感覚がした。体重をかけながらゆっくりと、子宮の奥を目指して進んでくる。

「……あっ……」

ズン、と最奥まで収まった後、一気に浅瀬まで引き抜かれ、再び奥をズン、と突かれる。彼の大きな質量で胎内は隙間なくみっちりと圧迫されていて、そうやって内側から征服されるのが堪らなく気持ちいい。

「圭介、さん、愛してます……」

「マヒロ、さん、僕も、貴女を、永遠に……」

彼の言葉を聞いて、心の奥から幸福で満たされる。淡く微笑んでいたかも知れない。

何度も何度も打ち付けられている内に、耐え難い官能の波が一気に押し寄せてくる。無意識に中のモノを締め付けてしまい、私と同時に圭介さんも果てて、結合部からはどろりとした白濁が勢いよく最奥へ向かって注がれていく。

お腹の奥の温かさにうっとりと目を細めながら彼を眺め、目元にかかる分厚い前髪を片手で撫であげる。すると、それまで隠れていた、私を愛おしそうに見下ろす瞳が現れて、じっと見つめ合う。

茶色にモスグリーンがかった、どこか異国の血が入っているかのような色の瞳だ。

「圭介さん、おいで……?」

「ん」と言いながら圭介さんは私に顔を近づける。彼の頬を両手で包み込んでから、目蓋にそっと口付けを落とすと、圭介さんは擽ったそうに小さく笑う。

「貴方の目……こんなにも綺麗なのに。隠してしまうだなんてなんだか勿体無いです」

「…………そんな事、言ってくれるの、マヒロさん、だけです。僕は、マヒロさん以外に、見せるのが、怖い……だから、このままで、いいです」

「うん……そっか。そうだね。貴方が怖いのなら、そのままでも良いね。でも……」

「マヒロ、さん……?」

「私だけには見せてくださいね?これでも私、貴方に関するものなら全てが好きなんですからっ!」

「――っ!」

「圭介さん……?あっ……」

ナカに入れられたままのモノが硬さを取り戻し、背中に圭介さんの腕が回されて力強く抱かながら、奥を激しく突かれる。

「圭介、さ、ん……あっ、ん……」

「マヒロ、さん……貴女は、ずっと、僕のものだ……」

「うん……そうだね。圭介、さん」

「マヒロ、さん、マヒロさん……!」

何度も抽送を繰り返されながら耳元で名前を呼ばれ続け、私も彼を深く受け入れるように、彼の腰に両脚を絡めて密着させる。最奥を突かれる度に腰が揺れてもっと、もっととはしたなく強請ってしまうのがやめられそうにない。

もう一度、私の中で彼が欲望を吐き出す頃には、どっぷりと夜が更けており、柔らかな月の光がカーテンの隙間から差しこんでいた。ゆらゆらと揺さぶられ続けているうちに耐え難いほどの眠気が訪れてくる。

微睡の中、圭介さんの私を愛おしそうに見つめる瞳を視界に捉えながら、私の意識はゆっくりと、眠りの世界へ誘われていった。

⇒【NEXT】言い難い喜びが心の中を駆け巡っていく。ああ。これで…(【後編】私のデイ・ストーカー)

あらすじ

会社からの帰り道、私は背後に感じる強い視線を感じる。一定の距離を保ちながらついてくるその人の存在は…。

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