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官能小説 心も体もつながる夜は 5話(最終話)【LCスタイル】

溶けた誤解

「ごめんなさいっ。これからはもう絶対に早とちりなんてしません……!」
別れる別れないの大騒動のあと、お風呂を借りてからベッドに正座して、美冬はもう何度目かの謝罪を繰り返していた。
同僚の噂だけを鵜呑みにして、大騒ぎして、知宏に愛想を尽かされなかっただけでも奇跡である。
また頭を下げようとして、少し困った様子の彼に止められる。
「もういいよ。別に怒ってないから」
「でもっ、でも……本当に本当にごめんなさいっ」
「分かったから。もう謝るの禁止な? ていうか俺、どさくさに紛れて美冬が熱い告白してくれたの超嬉しかったし」
「……!!」
ぽん! と音が出そうな勢いで赤くなれば、ニヤリと笑った知宏がにじり寄って来た。その腕にぎゅーっと閉じ込められて、彼のまだ水気の残る髪がわずかに触れる。優しく背中を撫でられると、トゲトゲしていた心が落ち着いていった。

「美冬、なんかいい匂いするんだけど」
「あ……、新しいヘアオイルを使ってみたの」
くん、と鼻を鳴らした彼が気がついたのは、ナデテ フレッシュマスカットの香り。妹がつけていたのと同じものを、さっきお風呂上がりに髪につけてみたのだ。
気に入った? と聞く前に唇が重なって、少しだけ乾いた唇で啄ばまれる。
「……んっ」
「上品で甘い匂いだな。……美冬にすごく似合ってるから、ずっと嗅いでいたくなる」
ちろりと表面を舐められ、誘われるように口を開いた。
肉厚の舌がぬるりと侵入して、甘く優しく絡め取られる。触れ合った先から切ない想いが流れ込んでくるようだ。

「ぁ……ん……」
ざらりとした舌が気持ちよく、思わず鼻にかかった吐息が漏れる。
本当は今日、彼のために消えていなくなろうと決めていた。だから、こんなに甘いキスをまた与えてもらえるのが信じられなくて。

 ――――大切な人は、ずっと美冬だけ。
彼がくれた、永遠の誓いにも似た言葉を思い出し、逞しい背中に回した手に力が込もった。
自分にとっても、大切な人はずっと知宏だけだ。
過去のつまらない恋愛経験で傷ついた臆病な心を、ゆっくりと丁寧に解きほぐしてくれた優しい人。彼がいなければ、こうして異性と触れ合う温かさを知る日は来なかった。
身も心も彼のものになりたいという想いが心の底から湧き上がってくる。

「美冬……好きだよ」
「……うん。私も……大好き」
それはうっとりとするような時間だった。
何度も何度も角度を変えて唇を合わせる合間、2人で競い合うように愛の言葉を交わす。穏やかな睦言。
やがて彼の手にぐっと力が入って、細い体は簡単に柔らかいベッドへと押し倒された。大きな体にのしかかられ、いよいよだ……と美冬は心を奮い立たせた、のだが。

溶け合う二人

誤解したままキスする男女

「もう遅いから寝ようか」
「…………へ?」
ちゅ、と小さな水音を立てて唇を離すと、落ち着いた笑顔の知宏はそう言った。
美冬が目を丸くして驚いている間に掛け布団をめくり、美冬に腕枕をして抱きしめ、完全に寝るモードに入ってしまう。
あんなにいい雰囲気だったのに?

「え、……えっと、でも。あの……」
「大丈夫だよ、俺はいつまででも待てるって言っただろ。美冬が怖いことは何もしない」
「…………」
だめだ、この人本気で何十年でも待つつもりだ。
待つのは得意だからと言ったのは伊達じゃない。
それは当然美冬が怖がりすぎたからで、彼は全然悪くない。分かってはいるけれど、彼と結ばれたければ、自分から抱いてくださいとお願いするしかないわけで……。
「…………っっ」
「どうした? 本当に無理やりやったりしないから大丈夫だよ」
恥ずかしさでどうしようもなくなった美冬を見て、知宏は何か勘違いしたようだった。
襲われる心配をしているのではない、襲って欲しくて困っているのに。なにしろ自分の太もものあたりに当たっている彼の雄の象徴はすでに硬く勃起していて、それを意識すると余計に体が熱くなるのだ。

「あっ、そうだ……」
なんと言っていいか分からずに困り果てていると、ふとバッグに入れたままのリュイールホットのことを思い出した。
すっかり眠る気になっている知宏だが、あれを見ればこの気持ちに気がついてくれるに違いない。良いことを思いついた美冬はベッドから抜け出して、化粧ポーチの中にしまっていたリュイールホットを取り出した。

「これ……使って欲しいのっ!」
ベッドで体を起こした知宏に、美冬は勇気を出して差し出した。彼は不思議そうな顔で受け取り、小さな容器を見て首をかしげた。
「なに? 化粧品?」
何も知らない彼に、まずはリュイールホットの説明から始めなければならない。
恥ずかしいけれど、なんとか言葉を紡ぐ。
「……うん、ラブコスメっていうんだけど……潤いが少ない時や、挿れると痛い時に使うといいんだって。説明には、敏感な場所に塗ってマッサージしたら自然に潤いが増えるって、書いてて……」
口頭で説明しているのがどんどん恥ずかしくなっていって、最後の方はとても小さな声になってしまった。
ウェブページを開いて見せてばよかったのではないかと今更気が付いたが、それを実行しようとする腕を掴まれる。
知宏の方に向き直らされ、確固たる意志を持った手に、顎をクイと持ち上げられた。

「…………本当に、いいのか?」
それは真摯で、一途で、だが欲望に濡れた瞳だった。
生々しい男の部分にゾクリとするが、もう迷わない。
彼は誰より優しくて、我慢強くて、もし失敗しても決して責めたりしない人だ。受け入れたい。それにリュイールホットがあれば、彼を受け入れる助けになってくれるはず。
「……うん」
肯定するや否や、美冬は優しくベッドに押し倒された。
上から覆いかぶさる彼が、ちゅ、ちゅ、とキスの嵐を降らせる。

「絶対、優しくするから」
「……ん」
小さく首肯すると、大きな手がそっと胸を包み込んだ。
ふんわりとした感触を楽しむように揉まれて、口からは思わずかすかな吐息が漏れる。そんな息ひとつも逃さないと言うかのように唇を塞がれ、たらりと唾液を流し込まれた。甘く感じるのは錯覚だろうか。
そして髪を梳かれ、耳たぶを甘噛みされ、危ういところにチリリと痕をつけられて。
蕩けるような愛撫で、なんだか雲の上にいるみたいにふわふわした気分だった。

優しい彼に抱かれて

「美冬、腰浮かせて」
着ていたパジャマは、まるで女王様にかしずくかのように丁寧に剥ぎ取られた。
勝負下着のつもりでつけていた新品のブラジャーも外され、最後の1枚であるショーツに手がかかる。そっと足から抜かれると、それがしっとりと濡れているのが自分でもよく分かった。
「美冬、もうすごく濡れてる。これなら痛くならないね。だから安心して」
「ぅ……、うん」
耳元で密やかに囁かれ、頬に熱が集まるのを感じる。
安心させようと思って言ってくれているのだろうが、そんな恥ずかしい部位の状態を実況中継されるなんて羞恥プレイ以外の何物でもない。できればやめてもらいたかった。
だがそんな余計な願望は、赤く色づく胸の先端を舐められたことで霧散する。
頭の中が何かに塗り替えられたように気持ちいい。
艶かしい声を上げて身をよじる美冬に気をよくしたのか、知宏は執拗にそこを攻めてきた。

「あのね……、そろそろ、使って?」
お互い一糸纏わない姿になって、全身に蕩けるような愛撫をほどこされたあと。
美冬は力の入らない腕を伸ばし、ベッドサイドにある小瓶に手をかけた。
優しい彼は、自分に受け入れる準備ができるまでずっと待つつもりのはずだから。もういいんだよ、という控えめな意思表示だ。
ハッとしてこちらを見た知宏は、ちゃんと意図を汲んでくれたようだった。

「分かった。最初だけ冷たいかもしれないけど、ごめんな」
「ううん……だいじょうぶ」
とろんとした液体を指にのせ、花弁をかき分け、小さな入り口に太い指を添える。
すでに彼の愛撫によって潤んでいたそこは、なんの抵抗もなくつぷんと指を飲み込んだ。自分の中にいる彼を意識してしまい、きゅうっと指を締め付けてしまう。
「ん……っ」
「どう? なにか変わった?」
「ん……入れたばっかりだし……まだ分かんない、かも……」
秘められた部分に指を入れられたまま、どこか冷静に会話をしているのが気恥ずかしい。いたたまれなくて目をそらすと、お腹の中にある指がくいと折り曲げられる。

「……ぁっ」
「そろそろ動かすな?」
「……ぅん……っ」
くちゅんと音を立てた彼の指が動き始めて、変化は次第にやってきた。
じわじわとお腹の中が熱くなっていき、どっと愛液があふれだす感覚がする。リュイールホットを塗り込んだところから、なにか切ない気持ちが湧き上がってきた。
「……あ、ぁ、……ぁあっ」
熱くて、じんじんとして、ドロドロになって。
いつしか秘所をかき回す水音は信じられないくらい大きくなっていて、もっと強い刺激を求めるむずむず感が抑えきれなくなる。
指で擦られているのに物足りないのだ。お願い、助けてと口走りそうになる。

「は……っ、ぁ……あああ……んッ」
「すごい。美冬、この音聞こえるか? ここまで熱くてトロトロになったの初めてだよな」
「うん……っ。私……こんな感覚知らない……っ」
彼の言う通り、こんな風に熱くなるのは初めてだった。
多分これは、大きな愛で包み込んでくれた知宏とリュイールホット、両方のおかげ。早く彼と繋がりたくて、美冬は太い首に腕を回す。
「ね……知宏、私、もう……っ」
潤んだ瞳で切なさを訴えると、彼は目に見えてうろたえた。
「……ッ、その顔は反則だろ! なぁ、ゆっくりやるから、怖かったら言えよ?」
「大丈夫。私、あなたとひとつになりたい……っ」
「……っ、本当に自制できる自信がないから。怖かったら、本気で殴ってでも止めてくれ」

 濡れた花弁に、丸い切っ先があてがわれる。
少し物騒な頼みごととは裏腹に、狭い隘路を押し入ってきた彼はとても優しかった。
指とは違う質量に一瞬息を止めかけたけれど、気を紛らわせるように胸の先端を舐められて緊張が緩む。柔らかくなった隙にずずっと進まれ、密着した部分からは初めて知る快感が溢れ出した。
気持ちいいのに、苦しい。呼吸が浅い。
ゆっくりと進むごとに声が抑えきれなくなり、いつしかぴたりと体が重なった。

「ふぁっ、ぁ……は……っ」
やっとひとつになれた、と感動で目が潤む。
達成感にも似た幸福感でいっぱいだ。だが熱を持った蜜壺はもっと大きな快楽を求めていて、細い腰が勝手に動いてしまう。
「……なぁ、痛くないか?」
「ううん、すごく、気持ちいいの……っ。だから、もっと……っ」
心配そうな彼に対し、うわ言のような返事をした。
そして均整のとれた筋肉をまとう体にすがりつく。じんじんと熱を持つ秘所も、震える脚も、汗ばむ上半身も、これ以上ないくらいにぴったり密着していた。
お腹の奥で溶け合って、本当にひとつになってしまいそうだと思う。

 そして知宏が腰を動かし始めた時も、美冬が感じたのは痛みではなく、途方もない快感だけだった。
悩んでいたのが嘘みたいに膣壁は柔らかく彼を包み込む。
あふれた愛液は太ももまで濡らしていて、初めてナカで絶頂を迎える愉悦を知った。その甘美な痺れは長く美冬を苛んで、同時に知宏をも果てさせることになる。
短く呻いて欲望を吐き出した彼は、少しだけ悔しそうだったけれど。

明日も明後日もずっと

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「……美冬、愛してる。俺の大切な人は、一生美冬だけだよ」

 そんな言葉が聞こえてきたのは、もうすぐで重いまぶたがくっつきそうな時だった。
額に優しいキスが落とされて、そっと髪を撫でられる。
私もよ。
愛してる。
ずっと一緒にいたいの。
言いたいことはたくさんあったけれど、眠さには抗えずまぶたを閉じた。

 でも大丈夫。
明日も、明後日も、その先も、ずっと一緒にいられるはずだから。
明日の朝、今日の分も含めて好きだと言おう。
そう決めて幸せな眠りについた美冬を、ふわりと甘いマスカットの香りが包み込んでいた。

END

あらすじ

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