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小説サイト投稿作品66 「ただ、そばにいて 後編」
「ただ、そばにいて 後編」
〜LC編集部のおすすめポイント〜
いつまでも、ただのいとこ同士ではいられない――
実のいとこのナツを好きな朝海は、久し振りに彼と再会。
昔の彼の描写がみずみずしく、また、朝海の痛いほどに彼を想う気持ちがうまく描かれている作品です。
いくつもの出来事の中で彼を想う気持ちとなんとか折り合いをつけようとするも、うまくいかない朝海のもとへ来たのは…二人の恋の行方が気になります!
恋愛対象外の関係
「アサ姉」
階段の方から呼ばれたのではっとして顔を向けると、ナツが怪訝そうに私を見上げている。
ダメだ、普通にしていないと。
「うん?どうかした?」
「今の人、彼氏?」
何事もなかったように笑顔を取り繕ってみせるものの、私の真意を探るような目で鋭い視線を向けるナツにたじろいでしまう。
「違うよ。あの人はただの…」
“友達”と言おうとしたのに、言葉が喉に詰まって出てこない。
私たちは、決してそんな綺麗な関係じゃないから。こういうときに嘘をつけない自分も嫌になる。
「…ただの、何?」
口をつぐむ私に近付き追い詰めるナツに、胸がざわめき始めた、そのとき。
「こんにちは〜!」
勢い良く開いた玄関の扉から、ドアベルの音とともに元気な声が響き渡った。
階段の下を見下ろすと、ノースリーブのブラウスにミニスカート姿の、若い女の子がキョロキョロしている。
そして私たちが挨拶するより早くこちらに気付いた彼女は、にっこりと向日葵のような笑顔を咲かせた。
「あっ、ナツいた!」
「…エリカ?」
名前で呼び合う2人に、胸が鈍く痛み出す。
驚いたような顔をしたナツは、階段を下りてエリカというらしい女の子のもとへ急ぐ。
私はそれを、ただ見ているしかなかった。
「どうしたんだよ?」
「ナツが帰ってきたって聞いたら、いてもたってもいられなくて!またサーフィン見せてよ」
「いいけどダメ。今日はバイトだから」
「なーんだ、残念」
…その子は友達?それとも彼女?親しげに話す2人に、さっきのナツと同じ質問を心の中で投げ掛ける。
でも聞くまでもないわよね。ナツは昔からモテるもの、彼女だっていて当然なんだから。
痛む胸をひた隠しにしながら私も階段を下り、目が合ったエリカさんに会釈すると、彼女も愛嬌のある笑顔でペこりと頭を下げた。
「綺麗な人〜。ナツの彼女?」
「いや…いとこだよ」
「そうなんだぁ!」
当然だけど、仕方ないけれど…ナツが私を“いとこ”と言ったことと、それを聞いて安心したようなエリカさんの声は、私をひどく落ち込ませる。
普通に考えれば、親戚なんて最初から恋愛対象外なのだ。しかも──。
“最低な男と寝てたんだから、お前も似たようなもんだろ”
私は、好きでもない男と淫らな関係を続けてきたような女。
そんな私に、ナツを振り向かせるほどの魅力なんてあるとは到底思えない。
考えれば考えるほど、暗い海の底に引きずり込まれていくようで。
楽しげに会話する、眩しい太陽のような2人を羨みながら、1人逃げるようにキッチンへと向かった。
塩辛い雨
翌日は、私の心を表したかのようなどんよりとした曇り空で、バーベキュー日和とはとても言い難い天候になってしまった。
専用の器材やテーブルが揃ったバーベキュー場を借りていて、屋根もある所だから雨が降ってもそんなに困らないのだけれど。
「晴れた日に比べたらそこまで日焼けも心配しないでいいもんねー」
「雨降ったら水着になればいいんだし」
なんて言いながら、皆天気の悪さなんて気にせず気楽にバーベキューを楽しんでいた。
「雨が降らなきゃ見れねぇのか」
肉を頬張りながら、相変わらずのスケベ発言をする翔吾。
このあいだと同じく、Tシャツの下に隠した水着を透視でもするかのように、目を細めて私を見てくる。
そんな目線から顔を背ける私だけれど、こんなヤツだからこそ昨日の気まずさも感じない。
それよりも、私はやっぱりナツのことしか考えられない。
今日は彼もバイトではないし、天気も悪いから家にいるのだろうか。それとも、友達と遊んでる?
昨日の会話を聞いている限り、エリカさんはきっと彼女ではないんだろう。
思えば、ナツと恋愛の話なんてしたことなかったかも。それなのにナツの彼女になりたいとか、急に高いハードルに挑み過ぎかなぁ私。
心ここに在らずな私を誰も気に留めることはなく、食材もお酒もどんどん消費していった。
いつもはどこか物足りないと思う、それほど親しいわけではない友人達との当たり障りのない会話も、今はちょうどいいかもしれない。
ぽつぽつと雨が降り出し、そろそろ終わりにしようという流れになった頃。
片付けもほぼ終わったところで、私はバーベキュー場に設置されたトイレへ向かう。
そのあいだの数分で雨は強さを増し、トイレを出る時には完全な雨降りとなっていた。
もう、なんで急に…!
元の場所まで走るか、と足を踏み出そうとしたとき。
「待ってよ、翔吾くん…」
雨音に混じって甘ったるい声が聞こえ、その名前に反応して身体が固まった。
「もうこれで解散になるんだからいいだろ」
「そうだけど…」
「何か問題ある?」
あの男…やっぱり他の子にも手を出してたのね。
トイレと売店の間の狭い空間を覗き見ると、翔吾と今日の集まりに来ていた女子が、今にもキスしそうなくらいぴったりとくっついている。
本当にメスなら誰でもいいのかしら…と呆れながら、見なかったことにしようと顔を背けた。…けれど。
「だって翔吾くん、朝海ちゃんと付き合ってるんじゃないの?」
「生憎、あいつには逃げられたよ。好きなヤツがいるって」
突然私の名前が出されて、再び神経は2人へ向いてしまう。
「そうだったの?」
「あぁ。その好きな相手がいとこっつーのにはちょっと驚いたけど」
「うそぉ!?それってまさか、近親相姦…?」
──やめて…!!
思わず叫んでしまいそうになる口を手で覆う。
近親相姦だなんて、そんな禁忌を犯しているわけじゃないし、私がただ想っているだけだ。
でも、他人から見たらそう思われてしまうようなことなの…?
「いとこ同士じゃそうは言わないだろ。実の姉弟ならともかく」
抑揚のない翔吾の声に、縮こまった私も少しだけ冷静になったものの、それはつかの間だった。
「別にいいじゃん、誰のことを好きになっても」
「えー、でも親戚だよ?なんか気持ち悪いっていうか…あたしは無理」
「そう。じゃあ俺にしとけ」
唇が塞がれたらしく、会話はそこまでで、彼らは再び2人の世界に入ってしまった。
哀しさと空虚感に襲われて、私は雨の中を歩き出す。皆がいる場所とは逆方向へ。
翔吾らしい言葉には救われるけれど、やっぱり彼女のように言う人の方が多いのだろう。
ナツも…その1人なんじゃないだろうか。
もしも私が恋愛感情を抱いていることを知ったら、今の彼女みたいに“気持ち悪い”と思われるかもしれない。
この想いは、抱くことすら許されないのかもしれない──。
味なんかしないはずの雨が塩辛い。人々が走って屋内へ向かう中、私の足はとぼとぼと海岸へ向かっていた。
ビーチブレイク
夏なのにほとんど人がいなくなった海岸に、静かに降り注ぐ雨。
いつもは青い水平線がどこまでも広がっているのに、今は一面灰色の世界だ。
1人しゃがみ込んだ私は、ぼんやりとその世界を眺めていた。
この恋心はもう閉じ込めてしまわないといけないのかな…
でも、そんなことができるならとっくにそうしている。私は彼がどうしても好き。ナツじゃなきゃダメなの。
ナツに愛されたい──…
「アサ姉!?」
──え?ついに幻聴まで聞こえるようになっちゃった?
「おい、アサ姉!!」
違う、幻聴なんかじゃない。顔を上げると、海岸を走ってこちらに駆け寄る、ウェットスーツ姿のナツがいた。
「ナツ!?どうし──」
驚いて立ち上がった直後。私はナツにしっかりと抱きしめられていた。
「ナ、ツ?」
「何してんだよ、傘もささないで…!」
身体だけじゃなく胸の奥までギュッと、きつく、きつく抱きしめられて声が出ない。
ナツの存在を身体全部で感じていると、耳元で余裕のなさそうな声が響く。
「ずっと抑えてたのに…そんな格好でいられたら我慢できねーよ」
「え?」
「濡れてるし、透けてるし…エロすぎ」
えぇぇ!?少し身体を離し、自分の姿を確認してギョッとした。
白いTシャツが雨に濡れたせいでぴったり身体に張り付き、水着がうっすら透けている…。
「え、エッチ!」
「それだけじゃないよ。…なんか、泣いてるように見えたから」
いろいろなことに驚いて涙も引っ込んでしまったけれど、ついさっきのことを思い出して再び影を落とす。
「今日は友達といるんじゃなかったの?」
「いたんだけど、ね…。ていうか、ナツは天気悪いのにサーフィンしてたの?」
「天気悪い日ほど人がいなくていいんだよ。今シャワーで砂流してて、帰ろうとしたらアサ姉がいたから」
「そっか…」
まさかいるとは思わなかった…。こんな姿を見られるなんて本当に恥ずかしい。
でも、いつの間にか私の身長を追い越していたナツの腕の中は、とても居心地がよくて。
できることならずっとこうしていてほしいと、ただただ願った。
「ねぇ、俺のことどう想ってる?」
「え…?」
突然問い掛けられて顔を上げると、真剣な眼差しを私に向けるナツがいる。
「俺はアサ姉のいとこなんて関係、今すぐやめたい」
ドキリ、胸が波打った瞬間。波の音も、雨の音もすべて聞こえなくなって、ナツの声だけが脳を支配した。
「好きなんだよ、1人の女として。──朝海のことが」
夢…そう、これは夢だ。こんな都合のいいことがあるわけない。
ナツに“朝海”と呼ばれて、好きだと言われるなんて──。
「…からかってる?」
「からかってなんかない」
「彼女、いないの?エリカさんは?」
「エリカはただの友達。適当に彼女作ったときもあったけど、朝海じゃなきゃダメだって思わされるだけだったよ」
苦笑するナツだけれど、私を愛おしそうに見つめるから、また涙が溢れてくる。
「私たち…いとこだよ?他人には気持ち悪いって思われるかもしれないんだよ?」
「そんなのどうだっていい。悪いことしてるわけじゃないんだから。それより…朝海がどう想ってるのか聞かせてよ」
私の濡れる髪を掻き上げ、冷たい頬を包み込む彼の手に、自分の手をそっと重ねる。
「私も…もう限界」
少し高くなってきた波が砂浜で壊れる音は何度も繰り返して、気持ちをせき止めていた壁をも崩していく。
「ずっと、もっと近付きたいって思ってた。こうやって触れて、抱きしめてほしいって。…私も、ずっと好きだったよ」
言い終わった瞬間、待ちきれないとばかりに強く抱き寄せられ、躊躇うことなく唇を重ねた。
初めて味わうお互いの唇は、濡れていても熱くて、たしかな愛がここにあると感じられる。
雨のシャワーも、遠くで聞こえる雷鳴さえも、私たちを祝福してくれているように思えるほど──今、最高に幸せだ。
ただ、そばにいて
『夜まで誰もいないから、家においで』
そう言われ頷いた私は、海から歩いて5分もかからない場所にあるナツの家に向かった。
久々に入るけれど、昔とあまり変わったところはなく、懐かしさがじわりと胸に広がる。
変わったのは、私たちの関係だけだ。
ひとまず身体を温めるためすぐに二人でバスルームに向かうと、ナツは躊躇いなく引き締まった身体を露わにする。
海へ行っても、いつもウェットスーツに身を包んでいるナツだから、目のやり場に困る…。
私も、今着ているのは下着ではなく水着なんだから!と言い聞かせ、思い切って服を脱ぎ捨てると。
「ひゃっ!」
後ろから抱きすくめられて心臓が飛び跳ねた。触れ合う素肌が温かくて、すごくドキドキするけど心地いい。
「ナツ…!」
「ごめん、つい」
“ごめん”と言いながらまったく悪びれた様子もなく、ナツの手は水着の中へと差し込まれる。
柔らかな唇にうなじを吸われ、思わず身震いした。
「や…っ」
「目の前に好きな女がいたら、抱きしめたくなって当然でしょ。しかもこんな裸に近い状態なら尚更」
巧みに動かされる手から、快感が身体中を駆け巡る。背中に感じるナツの鼓動も速くて、私と同じなんだと思うと少し嬉しくなる。
「いつの間にか、朝海が全然知らない人みたいになっていくのが寂しかったし、嫌だった。知らない男と一緒にいるのも…」
甘い吐息を漏らす私の耳元で、初めてナツが心の声を聞かせてくれた。
…知らなかったよ、ずっと同じ気持ちだったなんて。身体を反転させられ見つめ合うと、とても色っぽい表情でナツが言う。
「俺が知らない朝海の全部を見せてよ」
──それを拒否する気なんて毛頭ない。
水着の紐に手を掛け、隠しているものをすべて取り払うと、また熱く抱き合いながらキスを交わす。
そして、お互いの身体を弄びながらシャワーを浴び終えると、何も身につけないままナツの部屋のベッドへなだれ込んだ。
指を絡ませ、身体中に優しいキスを落としていく彼の下、私はまるでバージンであるかのように心臓が張り裂けそうだった。
年上の余裕なんて欠片もない。ただナツがくれる愛撫に酔わされるだけ。
「や、あ……っ」
「いきそう?」
「んっ、もう──」
「いいよ。朝海のこと、たくさん気持ちよくしてあげたいから」
健気なことを言うナツが、何よりも愛しくて堪らなくて。
私から溢れ続ける蜜を舌で舐め取られ、そこに差し込まれた指で刺激を繰り返されると、私は簡単に達してしまった。
「朝海、可愛い」
くたりと力が抜ける私の脚を開き、そのあいだからナツが妖艶な笑みを覗かせる。
そして、余韻がさめないうちに私を貫いた。
「ナ、ツ──」
やっと一つになれたことに、ありえないくらいの快感と幸せを得て、自然と涙がこぼれた。
今までのセックスは何だったんだろうと思ってしまうほど、ナツとの行為は“感じる”。
同じ景色を
「ヤバい…朝海の中、気持ちよすぎ」
何度も私を突き上げるナツのくぐもった声と表情が、限界が近いことを知らせている。
離れたくない私は、彼の柔らかな髪に手を差し込んで、ギュッと胸に抱きしめた。
「まだ、イヤ」
一瞬驚いた顔をしたナツは、すぐに目を細めて苦笑を浮かべる。
「そういうこと言われると余計無理」
「ぁ…っ!」
動きを早めた彼に、私もついていくのが精一杯。
何も入る隙間がないくらいにしっかりと抱きしめ合って、私たちは一つに溶け合った。
いつの間にか雨は止んでいて、雲の切れ間から赤い夕陽が差し込んでいる。
ナツの腕の中でどっぷりと幸福感に浸りながら、窓の向こうの雨上がりの空を眺めていると、私の髪を撫でながら彼が言う。
「明日、早起きできる?」
「うん。何で?」
「一緒に見たいものがあるから」
不思議そうにする私に、ナツは優しく微笑んで額にキスをした。
水平線から、目が眩むほどの光を溢れさせて顔を覗かせる白い太陽は、朝の静かな海を銀色に輝かせていく。
いつだったか、同じ景色を見ていた私の目には、波と戯れるナツの姿が眩しく映っていたけれど、今その姿は海にはない。
私の隣で、肩を抱き寄せてくれているから。
昨日ナツが見たいと言っていたのは、この綺麗な景色のことだったらしい。
「俺、ずっと朝の海が好きだった。見てるとそれに飛び込みたくなって。…朝海も同じ」
淡い黄色に染まるナツの瞳が私を捉え、吸い込まれそうな感覚に陥る。
「他のことなんてどうでもよくなって、抱きしめたい衝動に駆られるときがある。一度それに負けたら、もう抑えるのは無理だ」
「ナツ…」
「誰に何を言われても、俺は朝海がいてくれたらそれでいい」
「…私も」
ナツさえそばにいてくれたら、抱きしめ合えるお互いの身体があれば、それでいいよ。
おでことおでこをくっつけて笑う私たちは、砂浜に打ち寄せる波のように、引き寄せ合って唇を重ねた。
「──愛してる」
手が届かなかった彼は、こんなに近くにいる。これからは2人で、一緒に同じ景色を見ていこう。
肩を寄せ合いながら、私たちはゆっくり昇っていく太陽をいつまでも眺めていた。