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小説サイト投稿作品6 「貴方と重ねるキスの色」(ペンネーム:真崎奈南さん)


「貴方と重ねるキスの色」(ペンネーム:真崎奈南さん)

〜LC編集部のおすすめポイント〜

主人公とその彼、智隆が重ねてきた結ばれるまでの、いくつものキスのひとつひとつが印象的に描写されています。

学生時代の幼くも初々しいキスやせつないお別れのキス、再会して思わず涙のキス…
そして今交わす深くて幸せなキス。

二人の間に羨ましいほどの幸福感がにじみでている作品です!
読んでいて、思わず頬が緩んでしまいました。

聞き慣れた寝息

隣に眠る彼が寝返りをうったのに気がついて、私はゆっくりと瞳を開けた。

夜の闇に包まれた彼の部屋の中で、聞き慣れた寝息が小さく響いている。
私は自分に向けられている大きな背中へと身を寄せ、互いの素肌を覆い隠すように掛け布団を引き上げた。

隣で眠る男は、私の彼氏。智隆(ともたか)。
付き合ってもうすぐ一年が経つ。
でも彼と私の始まりは、もっとずっとずっとずーっと前。
物心がつくよりも前の話だ。

智隆は一才年上ではあるけれど、私の母と彼の母が友人だったため、幼い頃から彼は私の良き遊び相手だった。

でも、小学校に入れば、私と智隆が直接顔を合わせることも次第に少なくなっていく。
ちょっぴり寂しかったけれど、親同士が仲良い限り、またいつかどこかで会えるだろう。
そのうち会えたら良いな……と、私にとって彼はその程度の存在だった。

しかし、中学になり通い始めた塾でばったり再会し、そこから私はすっかり男となってしまった彼を意識しはじめることになる。

キスを数えて

中学生の時、キスをした。
私からキスをした。
初めてのキスは、どうしても智隆が良かったんだ。

不意を突くように、彼の唇を奪った。
でも……ぶつかるように交わしたそのキスは、智隆に事故として扱われてしまった。悔しかった。

高校生の時、キスをされた。今度は智隆から私へのキスだった。
不慣れな口づけは、ほんの一瞬、触れただけのものだった。
けれど、打ちのめされるほどの切なさや寂しさを、私に植え付けた。

大学生へと進学する彼が、上京する日、その別れ際に「元気でな」という言葉と共にくれたキスだったのだ。

五年後、私も社会人となり上京することになった。
どうしても智隆が住む街に越して来たくて、街の不動産屋を巡っていたときに……偶然、私は彼と再会する。
街中であったのにも関わらず、引き寄せられ、抱き締め合い、涙の混じったキスをした。

熱に浮かされたように、夢中で…

そして今、私たちはこうして一緒にいる。
切望。悲しみ。喜びに、泣き笑い。
彼と交わしたキスの一つ一つが様々な感情で色づき、私の記憶の中でどれも特別な輝きを放っている。
これからも、きっとそう。私にとって智隆とのキスは、その一つ一つが大切なもの。

愛しさが込み上げてきて、彼の背にそっと頬を寄せた。何も身に纏っていないそこから、彼の体温が直接伝わってくる。
笑みを浮かべれば、また彼が寝返りを打った。
そして薄く開けたその瞳で私を確認し、彼も唇に笑みを乗せた。逞しい腕が私を包みこむ。温かい。

「……眠れない?」

発せられた掠れ声に、私はゆるく首を振った。

「ちょっと目が覚めちゃっただけ」

ゆっくりと額に唇が押しつけられた。
彼に顔を向ければ、今度は唇に柔らかな温もりが落ちてくる。 智隆の優しいキスは、私に安心感を与える。 私の居るべき場所はここなんだと再認識させられる。

「おやすみ」

彼の低い声がそう唱えたから、私の中で沈んでいた眠気が浮き上がってきた。

「智隆」

か細い声で名を呼べば、彼の瞳が私を見た。

「どうした?」

言葉にしようか躊躇っていると、その視線が口元に降りてきた。

「……大好きだよ」

囁きかけるように気持ちを告げれば、まどろんでいた意識が明瞭になったかのように、彼が微かに目を見開いた。
照れを隠すべく彼の腕に絡みつくと、智隆が私の頬にキスをした。そのキスは雨となって、私に降り注ぎはじめる。
くすぐったくて身をよじれば、布団の中にある互いの熱が逃げ出していく。

「智、隆っ」
「俺も目が覚めちゃったみたい」

私に覆い被さってきた彼が、不敵な笑みを浮かべた。
そして彼の唇が首筋をなぞり、悪戯に私を刺激しはじめる。

「私、眠れるから――……んっ」

塞がれた唇は、優しさだけではなくなっていく。荒々しさを増していく彼の唇の熱が、私を覚醒させる。
深くなっていく口づけが、彼を欲しいと、もっと欲しいと望む私を、あおり立てる。

欲望を素直に告げていた彼のキスが、また姿を変える。
段々と、壊れ物を扱うかのように優しく柔らかな口づけに戻っていく。
智隆が私から顔を離し、ニヤリと笑った。

「どう? 眠れそう?」

甘く低く、そして艶っぽい声音に、ぞくりと体が震えた。
翻弄されている。
そう分かっているのに、私は我慢出来なくなっていく。

もっと私を求めて欲しい。
焦がれるように智隆の背へ両手を回せば、すぐに彼の体が互いの距離を縮めていく。
重なり合う唇。舌先の絡み合う音。折り重なる吐息。 彼のキスが、また新しい色をまとう。
甘やかで、気持ちのいいキス。止められない。
熱に浮かされたように、私は彼のキスに夢中になっていく。

真崎奈南さん/著

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