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小説サイト投稿作品13 「誘う、誘ってる」(ペンネーム:岡田吏生さん)
「誘う、誘ってる」(ペンネーム:岡田吏生さん)
〜LC編集部のおすすめポイント〜
笑顔が素敵なモテモテの彼に恋した主人公。
見るなり不機嫌そうな顔をされたり、女として見られてないような気がしたり…
そんな、半ば諦めていたところで急展開が!
男性って女性からすると本当に何を考えているのかわからないですよね。
突然のロマンチックなシチュエーション、憧れちゃいます♪一度は言われてみたいセリフも必見です!
不機嫌な彼
鹿島さんは席を立つと鞄を持った。そして早足に私の後ろを通る。ポンと頭を叩かれた。
「行ってきます! ほら、君も一緒に行くよ」
「あ、はいっ。すみません」
「下で待ってる」
慌ててパソコンの電源を落とし、私は出掛ける支度をした。急いで追い掛ける。
階下のロビー。鹿島さんは大きな手を首もとにやり、ネクタイの結び目を直していた。営業部2課のエース。
最近、別の支社から異動になってきたのだけれど、背も高く清潔感もあってハキハキしていて。
何よりも笑顔が素敵な人。そんな好青年に営業部内外を問わず、注目度は高い。
鹿島さんの生年月日は?鹿島さんの好きな食べ物は?住まいはどこ?タイプの女優は?
つまりは社内の女子は鹿島さんを狙ってるワケで。
「お待たせしました」
「ああ…」
「…?」
私に気付いて笑顔で返事をしてくれてたのも束の間、鹿島さんは少し怪訝そうな顔をした。
社用車に乗り、2人で固定先を回る。
最初は私が案内していたけれど、鹿島さんがうちの課に来て1か月、場所を覚えた彼が運転をする。
私はそんな彼の横顔を助手席から見ていた。相変わらず不機嫌そう。
「あの」
「何?」
“私、何かしたでしょうか…?”
そう尋ねようとしてやめてしまった。
「いえ。何でもないです、ごめんなさい」
「変な子だね」
「よく言われます…」
ほんの少しの独り占め
3軒ほど回って、空はオレンジ色になる。社用車に乗り込んで私は腕時計を見やった。短針は5を指している。
「まだ仕事、残ってる?」
運転席の鹿島さんがこちらを見ていた。私の瞳の奥をのぞき込むように。
「はい」
「俺も」
デートのお誘い…なワケないか、と心の中で自嘲した。
「じゃあ腹ごしらえしてから戻らないか?近くに美味い店があるんだけど」
「はい!」
元気よく返事をして鹿島さんに少し笑われた。でもいい。ほんの少し、鹿島さんを独り占めできる。
僅かなプライベートな瞬間。
連れて行かれたお店は定食屋さん。小さなお店、ふくよかな女将さん。
手作りのお惣菜はとても美味しかったけれど、辺りを見回せば年配サラリーマンが数組。
とてもデート向きのお店じゃない。つまりは、私はオンナとして見てもらえてない、ということ。
最後に出された焙じ茶をすする。口紅が落ちていることに気付いて、私は席を立った。
「お手洗いに」
「ああ」
化粧室に入り、軽くファンデーションをはたく。そして口紅を塗り、上からグロスを重ねた。
化粧室を出ると鹿島さんはレジで会計を済ませているところだった。慌てて駆け寄りお財布を出す。
「あの、すみませんお会計」
「いいよ。俺が誘ったんだし。こういうときは素直にご馳走さまって言って」
「ありがとうございます」
鹿島さんを見上げる。少し不機嫌…というよりは、どこか苦しそうな。
お店を出て駐車場の社用車に向かう。鹿島さんの背中を追う。
もう空は暗く、敷き詰められた砂利を踏み鳴らす音が耳に障る。やっぱり気になる。
私が狙っても、撃ち落とせる筈もない。
「俺のためなら、遠慮なく」
「あの」
「何?」
振り返る鹿島さんは駐車場のライトにてらされて、逆光。
「私、何かしたでしょうか…?」
「ああ、してる」
照明が眩しくて、鹿島さんの顔が暗くて、何も見えない。ただ、鹿島さんの言葉を受け入れるしかなくて。
「ごめんなさい。足手まといでしょうか、私」
「足手まとい…まあ、ある意味」
カサリ。足元の砂利が音を立てる。私の足が踏みならしたんじゃない、鹿島さんが動いた。
徐々に鹿島さんが私に近付く。彼の頭がライトに重なり、私の視界から光が消えた。
目が暗さに慣れて、見えてきたのは鹿島さんの顔。
「その唇、誘ってる?」
「え…」
「誰かを誘ってるの?」
切なそうな表情。
「いえ、あの…」
「だから、好きな人とか、社内にいるのか?」
「…」
それは鹿島さんです、と言える筈もなく、私は黙り込んだ。
「誰?」
「あの」
「俺?」
「はい。えっ、あの、そのっ!」
鹿島さんは、ふうっと息を吐くと、ほんのり笑った。
「ホントに?」
もう観念しよう。
「…本当です。私、鹿島さんのことが」
「気が気でないんだけど、その唇。みんな、君の唇を見てるから」
「そ、そうですか?」
「でも俺のためなら、遠慮なく」
「遠慮?あ…」
鹿島さんの腕が上がる。顎に彼の指が当たる。
ふんわりと包むように当てられた鹿島さんのキスは甘い。溶けるようなキス。
その唇は今度は耳元に向かう。そして、これからは会社でその唇は禁止だよ?、と囁いた。