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投稿官能小説「幸せの形」(海蓮さん)
『幸せの形』
街を歩く日本人に、クリスマスに関する重要人物は誰かと尋ねれば、おそらく九十%以上が、 本来の主役であるはずのイエス・キリストではなく、 プレゼントをくれるサンタクロースだと答えるだろう。
その証拠にというのだろうか、サンタクロースを題材にした楽曲はそれこそ数え切れないほどあるというのに、 キリストに関する歌など、わざわざ教会に出向きでもしない限り、日常生活で聞くことなどまずない。
あらゆる企業が、消費活動を促すためだけに盛り上げるイベントに作り変えてしまった、今の日本のクリスマスを、キリスト本人が見たらなんと言うだろう。
倉畑美鈴が誰にともなく内心でそんな悪態をついているのは、 思った以上に帰宅が遅くなり、苛立っているせいだ。
別に、イベントを楽しむこと自体を否定する気はないし、意味は分かっていなくても、
特別な日だと信じ込んでいるクリスマスイブにデートをしたいと考えるのも分かる。
だからといって、今日中に処理しなければならない仕事を途中で放り出してまで、 定時に会社からいなくなるというのは、 一応にでも組織の一端を担う責任を負った、社会人の行動としてはどうかと思う。
四月に新卒入社した後輩が残していった仕事を、ほとんど押し付けられるような形で上司から任され、 自分の仕事もこなしながらようやく片付け終えた時には、もう午後九時をしっかり過ぎてしまっていた。
余計なことがなければ、七時には帰路についていたはずだったのに。
五年前の自分はあそこまで身勝手ではなかったはずだけど、と、大きく溜め息を吐いて会社を出る。
サンタクロースの存在を無邪気に信じて、胸を躍らせていたのは何歳までだっただろう、 と苦笑しながら道を歩けば、 腕を組んで寄り添うカップルや、アルコールで気分を高ぶらせて 賑わっている若者のグループがいくつもすれ違っていく。
時々彼らが、 酔っぱらったまま「メリークリスマス!」などと挨拶し合っているのが聞こえたが、その本当の意味をどれだけ分かっているものか。
会社の最寄駅から地下鉄で三駅、そこから十分ほど歩いてアパートに到着した。
部屋の明かりがついていることを確認すると、強張っていた心と体からようやく力が抜け始めた。
ドアを開けた途端、全身がスパイシーなフライドチキンの香りに包まれた。
それからホワイトシチューとミートパイ、 シーフードサラダとチョコレートベースのクリスマスケーキがテーブルに並んでいる。
どれも美鈴の好きなものばかりだ。
そんなメニューを前にテーブルに座っていた川山良司が、美鈴がドアを入るのと同時にぱっと立ち上がって駆け寄ってきた。
「お帰り美鈴。仕事お疲れさま」
ふわりと優しい笑顔を向けられ、尖っていた心がやんわりと癒されていく。
「うん。 ただいま、良司」
正確に言えば、この部屋を借りているのは美鈴で、良司が暮らすアパートはまた別にあるのだが、
二人の間にそんなつまらないこだわりは存在しない。
美鈴もふっと口元を綻ばせて頷き、差し出された腕に身を委ねた。
いたわるような抱擁に安堵の息を吐くと、そっと良司の胸を押して離れた。
「遅くなってごめんね。 急に、後輩の仕事もやらなくちゃいけなくなって」
メールでも知らせてはおいたが、やはりきちんと顔を見て謝りたかった。
せっかく準備してくれてたのにと肩を落とすと、ぽんぽんと優しく背中を叩かれた。
「そんなこと気にしなくていいよ。どれも温め直せばいいだけだったし、 そうやって責任感が強くて途中で放り出さないところも、 美鈴のいいところだって分かってるからさ」
温かな気遣いの言葉に、じーんと胸が熱くなる。
美鈴は良司と恋人関係になれたことにだけは、神に感謝してもいいと思っていた。
出会えた幸せ
もともと二人は十二年前、同じ高校のクラスメートとして出会った。
とはいえその頃美鈴は特に良司を意識することはなく、 当たり障りのない挨拶や会話を交わす程度の交流しか持っていなかった。
特に二年生から理系クラスと文系クラスに分かれてからはさらに疎遠になり、 特別な思い出もないまま卒業した。
それが三年前、連日の激務で体調を崩した美鈴が病院の処方箋を持って訪れた薬局で、薬剤師として働いていた良司と再会したのである。
そして数日後食事に誘われ、当時良司が美鈴のことを好きだったこと、 その後何人の女性と付き合ったものの結局うまくいかず別れてしまったこと、再会して改めて好きになったことを告白された。
実はその時、美鈴は別の男性と付き合っていたが、どうやら彼が浮気をしているらしいと気付いて精神的に不安定になっていた。
そのため一度は断ったものの、悪いと思いながらも何度か相談に乗ってもらったりした。
そして結局、その男性とは間もなく別れることになり、三か月ほどの様子見の期間を経て、正式に付き合うことになったのだった。
とはいえ、出版社の編集として働く美鈴の仕事は不規則で、良司のようにコンスタントに休日を取れるとは限らない。
おかげでデートや食事の約束をキャンセルする事態が何度もあったのだが、良司は残念がりながらも、文句一つ言わずに受け入れてくれた。
さらに美鈴の帰りが遅くなる時はそっと部屋を訪れ、食事の用意だけして自分は帰るなどのフォローまでしてくれたりするのだ。
こんな理解のある恋人など、そうそう捕まえられるものではないだろう。
自分には出来過ぎた相手だと美鈴自身も理解しながら、良司と出会えた幸せをかみしめていた。
クリスマスプレゼント
良司が冷やしておいてくれていたスパークリングワインで乾杯し、料理を口に運んでいく。
基本的にまめな性格の良司は、料理の腕もかなりのもので、特に彼が作るクリームシチューは美鈴のお気に入りだった。
美鈴が彼と同じ手順で同じルウを使ってシチューを作っても、なぜか同じ味にならないのだから不思議だ。
良司はそれを、「愛情の形は人それぞれ違うからじゃないかな」などと言っている。
一時間もすると、胃袋も心も十分に満たされた美鈴はすっかり上機嫌になり、 つい数時間前に自分が胸中に渦巻かせていた理不尽な悪態など、すっかり記憶の箱から弾き飛ばしていた。
最後のケーキは、良司が二か月前から予約してくれていたという、人気洋菓子店の数量限定商品で、 濃厚なチョコレートの風味と、甘酸っぱいクランベリーソースの組み合わせが最高の逸品だった。
存分にケーキを堪能しながらも、美鈴は拭いきれない軽い罪悪感にぽつりと呟いた。
「いつもごめんね。 私がもっと見通し立てやすい仕事してれば、外のレストランで食事したり街をぶらぶらできたりするのに」
良司はこらこら、と苦笑して美鈴の額を軽く叩いた。
「そんなの俺は気にしてないって、いつも言ってるだろ。 外ではしゃぎ回るためだけに一緒にいるわけじゃないし、 こうやって、部屋でのんびり二人の時間を過ごすのも、俺たちらしいクリスマスってことでいいじゃないか」
良司のこの懐の深さに、どれだけ救われてきたか分からない。
彼の支えがなかったら、きっと美鈴はとっくに心身共に潰れてしまっていただろう。
美鈴がケーキを食べ終えたちょうどのタイミングで、良司がテーブルの下から綺麗にラッピングされた包みを取り出して差し出してきた。
「これ、今年のクリスマスプレゼント。って言っても、あんまり高価なものじゃなくて悪いんだけどさ」
「そんな、わざわざ用意してくれただけで十分嬉しいわよ。 私のも、そんなに凝ったものじゃないし」
美鈴も、万が一にも渡す前に見られないようにと、三日前からバッグに忍ばせていたプレゼントを取り出して良司に渡した。
クリスマス限定デザインの品という文句につられて買ってしまった、ブランド物の財布である。
良司は中身を見た途端、まさに満面の笑みになった。
「うわ、これ前に雑誌で見て、格好いいなって思ってたやつだ。 ありがとう、すごい嬉しいよ」
良司からのプレゼントは、表面に蔓バラとアゲハ蝶の優美なレリーフが施された、両手に乗るぐらいの大きさの箱だった。
「それ、オルゴール付きの小物入れなんだってさ。なんか美鈴のイメージにぴったりだったから、見つけてすぐ買っちゃったよ」
「え、あ…。うん、ありがとう」
自分のどこにこんな可憐な要素があるのだろうと思いつつも、良司の好意には素直に感謝した。オルゴール付きというなら、ふたを開けると音楽が流れるという仕組みなのだろう。
美鈴は何の気負いもなく、ごく自然な流れでオルゴールの蓋を開いた。
『Marry me?』
愛らしいオルゴール音が奏でる定番ラブソングが耳に届くのと同時に、箱に入っていたメッセージカードに書かれた文字と、 中に仕込まれていた、ビロードの台に収められた銀色の光が目に飛び込んできた。
「え……」
美鈴は唖然としたまま固まってしまい、今見ている情景を理解するのに数秒かかった。
そして脳に意味が浸透した瞬間、ぐわっと目頭が熱くなって視界が滲んだ。
「り、良司……。これ……!」
「うん」
声を震わせながら顔を上げると、穏やかに、しかし真剣な瞳で微笑む良司と視線がぶつかった。
「いきなりでびっくりさせたかもしれないけど、俺は本気だよ。……俺と、結婚してほしい」
「……!」
ふわりと箱ごと手を包み込まれ、いつも自分を安心させてくれる温もりに、一気に喉が詰まって涙腺の箍が外れた。
ぼろぼろと流れ落ちる涙が頬を濡らし、嗚咽のせいで声がうまく出てこない。
それでも辛抱強く様子を見ていた良司が、美鈴の呼吸がわずかに落ち着いた一瞬をついて再び口を開いた。
「結婚、してくれる?」
美鈴は必死に頷きながら息を吸い、ひきつる喉から声を絞り出した。
「する……します。させて、ください!」
どうにか言い切った瞬間、美鈴はぐいっと体を引かれ、テーブル越しにしっかりと良司に抱き締められていた。
安堵感に包まれて…
美鈴の嗚咽が落ち着いた後、テーブルを片付けた二人は交互にシャワーを浴びてベッドに倒れ込んだ。
軽く羽織っていただけのバスローブは一瞬でベッドの下に落とされ、互いに生まれたままの姿で四肢を絡め合った。
仕事であまり動かない分、定期的な運動を心がけているという良司の体は、ほどよく引き締まっており、 抱き締められると、これ以上ないほどの安堵感に包まれる。
たくましい背中に腕を回し、泣きやんだ後に良司がはめてくれた指輪が光る左手で、そっと良司の髪に触れた。
わずかに水気が残る黒髪が指の間を滑り、その心地よさに小さく吐息が零れた。
「良司……好き……」
「ああ、俺も……愛してるよ」
熱い口付けが何度も落とされ、唇の角度を変えるたびに鳴るリップ音にも煽られてしまう。
良司の大きな手のひらがするりと胸の上に滑り降り、絶妙な加減で膨らみを揉みしだいてきた。
たちまち固くなった先端を軽く指で弾かれると、それだけで体が勝手に跳ねてしまう。
「やっぱり、触るごとに感度が良くなってるよな」
耳元で含み笑いと共に囁かれ、せめてもの抗議として背中に爪を立ててやった。
「誰の、せいだと……!」
「うん、俺かな」
全く悪びれていない笑顔で応えられ、美鈴はぷいと視線をそらしてしまった。
するとすぐに、宥めるような愛撫が再開された。
「嬉しいんだよ。 こんな綺麗で可愛い美鈴を、俺が独り占めできるのが」
「んっ、ばかぁ……! っはあん!」
不意に下半身からぞくりとした快感が突き上げ、くちゅ、という水音が耳に届いた。
すでに愛液を零しながら疼いていた秘唇に良司の指が押し込まれ、ゆるゆると浅いところを抜き差しされ始める。
「あ、はあ……っ。や、もっと……!」
穏やかな愛撫も心地いいが、いつもより気分が高ぶっている美鈴は、珍しく自分から良司を求めて腰をくねらせた。
良司は一瞬目を見開いたものの、すぐに嬉しそうに頷いて指をさらに奥に進めた。
「ふあんっ!」
良司の指がポイントを突き、びくんと体がのけぞった。
美鈴の性感帯に関しては、すでに美鈴本人より良司の方がより詳しく正確に把握してしまっているだろう。
「こっちも、好きだよね」
「っひゃ、ああ、ソコだめえ……!」
縦唇の上で熱を持っていた陰核をくにゅ、と柔らかく捏ねられ、釣られた魚のように腰が跳ねてしまった。
なぜか良司に触れられると、自分で触れる時より格段に快感が強いのだ。
美鈴の反応と、内側の感触を楽しむように蠢く指に翻弄され、頭の中に霧がかかったように思考がぼやけていく。
ふっと一瞬体が軽くなったような気がして意識を引き戻すと、媚肉から指を引き抜き、
美鈴の足の間に体を割り込ませた良司が、そそり立つ肉棒に避妊具を装着しているところだった。
「まだ、美鈴を不安にさせたくないからさ」
ふっと目を細めた良司が体を倒し、熱に浮かされたようになっている美鈴に口付けてきた。
それと同時に美鈴の足を軽く持ち上げ、瞳の中に獰猛な光をきらめかせた。
「でも、俺のことは、ちゃんと受け止めてくれよな」
「え、あ……っはあああん!」
言い終わるかどうかというタイミングで、良司の陰茎が秘裂を割って突き入ってきた。
十分に柔らかくなっていた入口は滑らかに良司を受け入れ、内部を擦られる刺激で細かく震えた。
すぐに責め立てるような抽挿が始まり、美鈴の体はがくがくと揺さぶられた。
「あ、んあっ……や、はぁうっ!」
「っふ、美鈴……可愛い……!」
腰を動かしながら恍惚とした表情で呟く良司自身も、男の色気が全開になっている。
その姿に美鈴もまた煽られ、体の芯がさらに熱くなっていった。
全身がぐいぐいと押し上げられていくようで、肌に触れる良司の体温と呼吸の音以外、すべてが消え去ったような気がした。
「ああ、も、もう……っ! んあああっ!」
強烈な電流が全身を突き抜け、美鈴は背中をしならせながら絶頂を迎えた。
それとほぼ同時に、良司がぐっと歯を食いしばるような表情を浮かべ、美鈴の腰を押さえて一瞬ぐっと息をのんだ。
精を吐き出してふっと脱力した良司が、美鈴の中から自身を引き抜き、薄い膜をはぎ取って処分した。
そして、心地よい疲労感に包まれた美鈴の横に並んで寝転がった。
「美鈴」
「ん……?」
名前を呼ばれて引き寄せられ、お互い裸のままで抱き締められた。
それ以上の言葉はなかったが、美鈴は良司の心の声が聞こえたような気がした。
だから美鈴もそっと心の中で言葉を返し、ゆったりとした意識の波に身を委ね、静かに目を閉じた。
“これからも、ずっと一緒にいよう”
“うん、どうぞよろしく”