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官能小説 Vな彼女と彼氏 3話

オカン→彼女

可愛い幼馴染が、長身の爽やかイケメンになっていました。

どこかの小説のタイトルにありそうな出来事を、結華は受け入れることができなかった。

加代からすれば「急成長したからね〜」で笑って済ますことのできる話だ。だが、泣き虫で小ぢんまりしていた頃しか知らない結華からすれば、いまの成長結果は超常現象に近い。

「拓馬くんは、いまでもサッカーしているの?」

「うん、まぁ。たまに社会人サークルでするくらいだけどね」

「そうなんだぁ!」

拓馬のまわりには常に人だかりがあり、近寄ることもままならない。傍から見ていると、さながら街を歩いていたアイドルを取り囲むファンのようである。これでは思い出話に花を咲かすこともできないし、結華が抱えている疑問を解消することもできない。

――どうしよう……。

結華は最後に見た拓馬のことを思い出した。引っ越しをするということを、結華は拓馬になかなか言い出せなかった。そして、引っ越しの前日になって、ようやく告げた。拓馬は驚きのあまり言葉を失い、その丸い瞳からぼろぼろと涙を零した。

『結華の嘘つき……嘘つき……』

しゃくりあげながら、拓馬は何度もそう言った。幼子のようにめそめそ泣く姿を見ていると結華は、ただ胸が詰まった。結華は泣く拓馬を慰めようとしたが、拓馬はその手を振り払って走って行った。

そして再会したのが今日の同窓会である。

――でも……何を話せばいいのか分からない。

それとなく「元気だった? 久し振りだね!」とでも言えばよいのかもしれない。けれども、いまの結華にはそのような勇気がない。泣く拓馬が頭から離れないのである。それに、拓馬のまわりにいる女子がやけに眩しく思えた。拓馬も、まんざらでもない表情で対応している。

――なんだか、つらい。ここにいるのが。

結華の胸がチクリとする。

「私、ちょっと向こうで友達と話してきます〜。結華もごゆっくり〜」

すっかりできあがった加代は、ふらふらとした足取りだった。危なっかしい姿に、結華が「大丈夫?」と尋ねるものの、加代は手をひらひらとさせて「だいじょ〜ぶ〜」と言った。

ひとりになった結華は隅にある椅子に腰かけた。いたたまれなくなり、デザートのチョコレートケーキを食べるが味が分からない。もぐもぐと機械的に口を動かすばかりである。

幼馴染との再会でチョコレートケーキを食べる

見ると、加代は女子と男子の混合グループで楽しそうにしていた。

――加代、もしかして気を遣って私といてくれたのかな? 悪いことしちゃったなぁ……。

結華は皿を膝の上に置き、ぼんやりと部屋を見た。人が、みんな楽しそうにしている。思えば思うほどに、自分だけ違う世界にいるような気分になる。落ち込む思いと相まって、視界がぐるぐるしてきた。酔いがいまになって、まわってきたようである。

「隣、いい?」

酔いで虚ろになった視線を向けると、優しい笑みが目に入った。途端、目が醒めた。結華は拓馬を見つめたまま、ぎこちなくうなずき、さり気なく姿勢を整えた。

「酔ってる?」と拓馬に尋ねられ、結華は大きく首を横に振った。

「う、ううん。大丈夫!」

結華は目を伏せてアルコールをひと口飲んだ。

「結華さ……中学の頃と雰囲気がまったく違ったから驚いたよ」

「た、拓馬こそ……私、すごく驚いた」

「まぁ、俺は……背が伸びただけだよ。中身は、たぶん変わってないな」

相槌を打っていると、結華は視線を感じた。チラリと横目で見ると、笑みを浮かべる拓馬がいた。途端、結華は顔から火が出たような気がした。とにかく、体全体が熱かった。

――これはきっとお酒のせい! お酒がそうさせているだけ!

結華はグラスから口を離すと、ゆっくりと顔を動かして拓馬を見た。見つめ合ったような気がしたのは一瞬のことで、すぐに拓馬は顔を前に向けた。

「あのさ、ここだと何だし……この後、ふたりで飲み直さない?」

「え!?」

思わぬ言葉に、結華の声が裏返る。ドキドキと音を奏でる心臓が、考えようとする頭を邪魔する。頭が回らないのは自分が酔っているせいだろう。

「おーい、本多!」

「拓馬くーん!」

遠くから拓馬を呼ぶ複数の声がし、拓馬は申し訳なさそうな視線を結華に送った。

――あぁ、行っちゃう!

結華の脳裏に、あの日の泣きながら走り去る拓馬が浮かぶ。

「うん、行く!」

思わず、結華は立ち上がると大きな声で言った。

「じゃあ、後で迎えに行くから」

拓馬は目を細めて笑うと、人混みに戻った。途中、小さく振り返って子どものような笑顔を結華に向けた。小さい頃の面影が見えた。だから、拓馬は昔のように自分と話したいだけではないだろうか。

自分と話すことを喜んでくれる拓馬。昔と変わらない。

――でも……こんなドキドキ、昔はなかった。

先ほどからずっと激しく鳴る心臓。

拓馬がこちらを向いていない今でも、依然と音を鳴らしている。

――どうしてだろう。目が離せない。

そう感じながら、結華はグラスを片手に談笑している拓馬を見つめた。

「ただいま〜」

「お、おかえり!」

声をかけられて、結華は手にしていたグラスを落としかけた。

加代は結華を見て、言った。

「あれ、顔真っ赤だよ? 飲み過ぎたんじゃない?」

「の、飲み過ぎたかも。……あのさぁ、拓馬って彼女いた? 加代って確か、高校も拓馬と同じだったよね」

「彼女〜? 聞いたことはないけど、やっぱりイケメンだし〜? で、なんで? あ、もしかしてオカン心が発動しちゃった? 結華って、昔から拓馬くんのオカンだったし!」

陽気に笑う加代に、結華は「そうなの〜!」とぎこちなく笑うしかなかった。

可愛い幼馴染

同窓会が終わり、結華は拓馬とふたりきりで駅前から少し外れたところを歩いていた。ふたりの間に会話はあったが、どこかぎこちないように結華には思われた。

結華は同窓会が終わるなり、ジャケットを脱いで荷物と一緒に持った。拓馬はというと、涼しげな表情で変わらずジャケットを着ている。そんな拓馬はスマートフォンを時おり見て、道を確認している。行先は拓馬しか知らず、結華は彼についていくだけである。週末の夜だからか、すれ違うのは年齢を問わずカップルが多かった。

――なんか、落ち着かないや。夜の街って。

カップルたちは腕を絡ませ合い、ベンチに座って仲睦まじくしている。どのカップルも、自分たちの世界に

浸り込んでいた。それに比べると、距離のある結華と拓馬は浮いていた。

結華は、面倒見がよいからと『拓馬のオカン』と呼ばれた学生時代を思い出した。

だが、どうしてだろうか。十年経ったいま、その言葉が結華に重くのしかかる。

「もしかして、気分でも悪い? ちょっと座る?」

拓馬の足が止まり、彼は空いていたベンチを指した。いつの間にか、公園に来ていた。おそらく、沈むような表情をしていたのだろう。結華を見る拓馬は心配そうな表情であった。

「心配してくれて、ありがとう」

ベンチに腰かけた結華は、隣に座った拓馬に言った。

「なんだか不思議な気分……。こうして大人になったいまも、昔と変わらずに話しているなんて」

「俺も、またこうして結華に会えて嬉しいよ。でも、ロビーでぶつかったとき、一瞬誰か分からなかった」

「ほんとう? そんなに変わったかな?」

「いや、ほんとうに。結華こそ、なんか大人になった。香水でもつけているのかな。優しい香りがする」

自分の髪に鼻を近づける拓馬に、結華の胸が音を立てた。

「ちっ、近いよ。拓馬」

「あっ! ごめん! この香りが、ぶつかったときから気になっていて。それでつい……」

目と鼻の先くらいの距離に耐え切れず、結華はさりげなく体を離した。

気まずくなってしまい、ふたりの間に沈黙が流れた。

「……あのね、私。拓馬に謝らなきゃいけないことがあって……」

ひと呼吸置くと、結華は手を膝の上に置いて姿勢を正した。

視線の先は拓馬ではなく自分の手だった。

「……引っ越しのこと、なかなか言えなかった……ごめん……」

拓馬はうつむく結華を見たまま、何も言わなかった。

あまりにも遅い、十年越しの謝罪だ。拓馬は怒るだろうし、もしかすると結華に決別するかもしれない。そ

れならばそれで、よかった。あのとき、拓馬が感じたショックを思うと、これは「ごめん」で済む話ではないからだ。

ショックな拓馬

「そうだね。あのとき、本当にショックだった」

拓馬の声は重いものであった。予想していたといえども、結華は背筋がひやりとした。これまでに拓馬とは、喧嘩らしい喧嘩をしたことは一度もない。拓馬はいつも笑顔で怒らない人間であった。だから、なおさら結華は拓馬の顔を見るのが怖かった。

「だって、結華。ずっと俺にガトーショコラをくれるって、約束してくれたから」

顔を上げ、結華は拓馬を見た。言葉の意味が、すぐに理解できなかった。

「俺、ずっと結華と一緒に居られると思っていた。小さい頃の約束なんて、覚えていないだろうけどさ。でも、俺にとっては大切な約束だ」

遠くを見つめるように、拓馬は目を細めた。そして自身の小指を撫でる。

指切り。約束。ガトーショコラ。

結華の中ですべてが繋がった。

「ずっと……覚えていたの?」

結華は拓馬の顔を覗きこんだ。

「もちろんだよ。だって……」

「……だって?」

視線を合わそうとすると、拓馬は顔を背けた。恥ずかしげな拓馬を見ていると、結華は胸にほのかに温かみを感じ、幼い頃の拓馬を思い出した。

泣き虫だが、よく笑い、見る人の心を温かくさせる不思議な子。

結華は、そんな拓馬が好きだった。

幸せに溢れていたあの頃のように、こうしてまた再会できるとは思ってもいなかった。

「私ね、拓馬の笑顔が好き。不思議な気持ちになる」

思わず結華は微笑んだ。拓馬との再会が心から嬉しかった。

ふたりは見つめ合った。

「ずっと結華のことを好きだった。もしよかったら……いや、俺と付き合って欲しい」

風が吹き、木々が柔らかな音を立てて揺れた。結華の体に、拓馬の声が駆け抜けた。

……私でいいの? オカンとしての結華でなくて……?」

だが、我ながら自虐的だと思いながら、自信のない声で結華は言っていた。

拓馬は何も言わず、眉をひそめる。

その反応は当然だろうと結華は思い、後悔の念に襲われて胸が苦しくなる。

「オカンじゃない。結華がいい」

拓馬は言葉が終わるより先に、結華を抱きしめた。同窓会の会場でぶつかったときよりも、強い抱きしめられ方。あまりにも突然のことに、結華は言葉が出てこない。拓馬は何も言わず、結華を抱きしめ続けた。時間がとても長く感じられた。次第に結華の顔が赤くなる。胸に、また苦しみを感じる。けれども、それは先ほどとは明らかに違うものだ。

「俺の初恋の佐久間結華じゃないとダメなんだ」

拓馬は力強く言った。その声が結華の耳に心地よく入る。

じんわりと結華の目が潤み、視界がぼやけて街灯が煌めいた。

――これは夢? それとも現実なの?

十年ぶりに会った拓馬が、自分のことをずっと好きだった。

嘘のような話だが、結華は拓馬と再会したときからずっと動揺していた。それは拓馬が、想像を超えるような成長をしていたからではない。

ゆっくりと結華は顔を上げ、拓馬を見上げた。

「私も、好き。拓馬のことが」

十年前から結華が持っていた恋心が、ついに抑えきれなくなる。

暗がりのなかで光と呼べるのは街灯くらいであった。しかし、あまりにも真っ直ぐな拓馬の瞳がこちらを見つめるものだから、結華の意識も心も奪われた。

結華は拓馬に身を預けた。自分の心音と、拓馬の香りや体の大きさを感じた。ふと拓馬の手が結華の頭を撫でた。さらさらとした髪の触り心地を味わうかのような動きだった。頭にあった手が、頬を伝って結華の顎に下ろされる。潤んだ唇を探るように動く。結華は拓馬の目を見つめた、目を閉じた。顎が軽く上げられた。不思議と拒む気持ちはなかった。

唇が触れ、そのまま軽く押し当てられた。

それは結華にとって、初めてのキスだった。

柔らかい感触に、結華は「まるでグミみたい」と頭の片隅で思った。けれども、グミよりも拓馬の唇は温かかった。自身の心臓の高鳴りと、木々がざわめく音が聞こえる。初めてのことへの戸惑いは、もちろんある。けれども、拓馬の優しい姿勢と人肌の温度によって、不思議と落ち着いていた。それが大好きな相手となれば、なおさらだ。生まれた安心の気持ちに、結華は身をゆだねた。

――初めてのキスが拓馬でよかった。

嬉しさが込み上げ、心が温かくなる。幸せゆえだろうか、頭がくらくらしてきた。拓馬の手に力が入る。かく言う結華も、膝の上で握られた手に力が入って固くなっていた。

――『ディープキス』はどのタイミングでするのだろう?

未知の領域によって結華の頭のなかはいっぱいになった。だが、ここは拓馬に任せるしかない。それでも、次の展開はなかなか訪れない。唇同士が触れるだけのキスが続く。結華が「まだかな?」と思い始めたときのことだった。

「んっ、ふぁ……」

控えめに鼻呼吸をしていたせいか、結華の口から思わず声がもれた。それは自分でも、もらした瞬間に恥ずかしく思う声だ。途端に拓馬の感触は消えた。

結華はうっすらと目を開ける。拓馬は体ごと引いて距離を取っていた。結華からすると、拓馬の行動の意味は分からなかった。

「あのさ……俺……」

言いにくそうにする拓馬を見て、先に謝ったのは結華だった。

「ごめん! 私、初めて! だからその……よく分かっていなくて……。キスも……、もちろん……そういうことも……」

言葉は後ろにいくにつれて、もごもごとしたものになった。こんな年で未経験だなんて重いだろうなと結華は思った。コンプレックスのつもりではなかったが、いざ男性と対峙すると未経験ゆえの初心さが自分でも嫌になる。そんな初心さを、この大切な時に出してしまうとは。自分も嫌になるし、拓馬はもっと嫌になっただろう。悲しさと恥ずかしさで、結華はうなだれる。

「行こうか」

拓馬は立ち上がると、結華に背を向けた。

――そ、そんなぁ。

結華は呆然とするしかなかった。

⇒【NEXT】「拓馬と一緒にいたい」腕を掴んだまま、結華は上目で見た(Vな彼女と彼氏 4話)

あらすじ

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