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官能小説 Vな彼女と彼氏 4話【LCスタイル】

ホテルに行こう

『定休日』

拓馬が行こうとしていた店のドアにはそう掲げられていた。

「ここのバー。オススメって、ネットに書かれていたんだけどね」

ばつが悪そうにする拓馬は、腕時計で時間を見た。

「拓馬。そういえば、時間は大丈夫?」

「俺は今日はどこかに泊まるから。気にしないで」

「どういうこと?」

拓馬の言葉が引っかかり、結華は尋ねた。拓馬は「今日はたまたまこっちに帰って来ていて、いま住んでいるのは……」と、いま結華たちがいるところからいくつも離れた県の名前をあげた。それはここから容易く行き来するには難しい距離であった。

「だから、次にこっちに来るのは来月になるかも。ところで、結華の住んでいるところはどこだっけ。終電、大丈夫?」

「ちょっと、待って。いま調べる」

スマートフォンを取り出して、結華は終電の時刻を調べた。表示された時刻は、いまいる場所から小走りで駅まで行けば間に合う。だが、結華は内心それどころではなかった。「どうだった?」と尋ねる拓馬の声がすると、慌てて結華はスマートフォンをカバンに入れた。

「うーん? もう間に合わない……かなぁ」

困ったような顔を精一杯作って、結華は言った。

「えっ! ごめん、遅くまで引き留めてしまって。タクシーで送るよ」

大通りを探そうとする拓馬の腕を、結華は掴んだ。

「私は帰りたくない」

次に拓馬に会えるのは来月だ。それはあまりにも長く遠い。

しかも、来月に必ず会えるとも限らない。次のチャンスはいつ来るか分からない。

「拓馬と一緒にいたい」

腕を掴んだまま、結華は上目で見た。拓馬は結華をしばらく見つめた後、視線を宙に泳がせた。そして、遠くにあるいくつもの『HOTEL』と書かれたネオンの看板を見つけた。結華もそれを見ると、拓馬をじっと見た。こくりと、頬を赤くして結華は小さくうなずく。

「『初めては拓馬と』って決めたから。行こう」

拓馬は結華の手を取ると、ゆっくり歩き始めた。

薄型テレビが…

コンビニ袋を持った手で、拓馬は部屋の入口で電気を点けた。狭くて短い廊下を少し進む間に、ドアがふたつ見えた。反対側の壁には小さな絵がいくつか飾られていた。

大きな空間に辿り着くと、暖色系の照明に照らされたキングサイズのベッドが目に入った。結華も拓馬もギョッとしたが「ここはそういうことをする場所である」ということを思い出すと、ふたりは赤くした顔を見合わせるしかなかった。

初めてのラブホテルでローションやローターに驚く男女

部屋の隅に小さなガラステーブルとソファが見えたので、

カバンを持ったまま結華はいそいそと座った。拓馬はコンビニ袋をガラステーブルに置くと、 近くにあるクローゼットに、カバンとジャケットを入れた。

「結華のも貸して」

手を伸ばした拓馬に、慌てて結華もジャケットとカバンを渡した。

拓馬は部屋を見回すと「先に、俺……行ってくるから」と歯切れ悪く言った。 来るときに通ったドアのところに行き、閉まる音がすると結華はソファにもたれ込んだ。 おそらくあれはトイレと浴室だろう。しばらくするとシャワーの音が聞こえた。 ふと、拓馬のシャワー姿が結華の頭に浮かんだ。

筋肉質でたくましく、無駄のない体。上から降り注ぐシャワーの水滴が、濡れた茶色がかった髪を通って、滑らかな肌を伝い落ちていく。そして、やがて水滴は下半身へと落ち、その下半身は――……。

「うわわわ!」

ぶんぶんと結華は頭を横に振った。どうしても、想像がやけに膨らんでしまう。

心を落ち着かせるために、壁を見ていると大きな薄型テレビがあった。

――私の実家のものより大きいなぁ。ここで映画を見ると楽しそう。

思っていたよりも普通の部屋構えに結華は感心した。

――ラブホテルって、もっと派手なものだと思っていたし。

壁紙が真っ赤やピンク。プールや怪しい設備。浴室やトイレが丸見え。

どこから得た知識か分からないが、結華が想像するラブホテルはそのようなものであった。けれども、ここには落ち着きがある。そこらのビジネスホテルよりも、高級感があるのではないだろうかとすら思えた。

「拓馬、まだかなぁ……。まだ、だよね。やっぱり」

シャワーの音はまだ聞こえていた。居ても立ってもいられず、結華は部屋を探索した。テレビの下に小さな冷蔵庫が見えた。狭い冷蔵庫であったが、ふたり分の飲み物は入るように思われた。結華はしゃがみ込むと袋から出して入れた。途中でコンビニに寄ったのだが、当然ながら結華は上の空であった。緊張を鎮めようとして、思わずアルコールに手を伸ばしかけたほどである。

「ん?」

立ち上がりかけたとき、冷蔵庫の奥にもうひとつ冷蔵庫があることに気づいた。

「……げっ!」

しゃがみ込んで近づいて、結華は尻もちをついた。それはローターやバイブといったアダルトグッズの自販機だった。他にもローションやコンドーム、さらには精力増強の怪しいサプリメント、そして穴の開いた下着まで売られている。

――こんなのまであるの!?

結華はベッドに腰かけ、動揺を鎮めるためにテレビをつけた。チャンネルを切り替えていくが、深夜の番組は見慣れていないせいか、どれも面白そうに感じられた。どれにしようかと選びながら、結華は軽快にリモコンのボタンを押していく。

『あっ、あんっ! あ〜んッ!』

大きな喘ぎ声と一緒に、ぼやけた肌色が画面いっぱいに映った。

『そこ、だめっ! いやっ、あぁんっ! おかしくなっちゃう〜!』

目を皿のようにし、結華はリモコンを手にしたまま固まった。均整のとれた艶めかしいボディが四つん這いになっており、大きな胸が激しく左右に揺れていた。女性が男性に後ろから激しく突かれている。はちきれんばかりの、豊満だが柔らかそうな胸がアップで映る。

「ゆ……結華……?」

「拓馬ぁ!?」

声がした方を見ると、拓馬がいた。拓馬はバスローブを身にまとっていた。筋肉がほどよくついている体格に目を奪われる。バスローブの隙間から鎖骨と胸板が見えた。

「これは、違うの! 偶然、チャンネルが!」

『イェスッ! アハ〜ン! カモォン!』

驚いた結華の指が他のボタンを押す。先ほどよりも豊満なボディを持つ金髪女性が映った。それが男性の上で野性的に動くものだから、上下の胸の揺れがとにかく激しかった。ふたりとも思わず、金髪美女の咆哮のような喘ぎ声と動きに釘づけになった。

溢れる浴室

湯気が浴室に溢れていた。熱いシャワーを浴びながら、結華の頭の中はアダルトチャンネルのことでいっぱいだ。

――ひょっとして、私もあんなことするの?

金髪美女のそれはさておき、問題は四つん這いになっていた女性である。初めての機会でいきなりバックは怖い。かといって、どういったものが良いかとなると、それはそれで分からない。結華にとっては、すべてが未知のことなのである。

「はぁ……どうしよう」

蛇口を締めながら溜息が出た。いまになって怖くなってきた。

洗面所の大きな鏡に映った自分の姿は、柄になく弱気なものだ。結華はその姿をしばらく見つめ、頬をパシッと強く叩いた。そして、強い眼差しで鏡の中の自分を見た。

――弱気になってどうする!

気合を入れ直した結華は、備え付けのバスタオルで丁寧に体を拭き始めた。タオルで肌を撫でると、さっと水玉は綺麗に消えた。ぷるぷるとした肌触りがあり、毛穴も黒ズミも目立たない。化粧を落とした素肌にも透明感がある。

ポーチを開けると、結華はウェットティッシュを取り出した。『ジャムウ・デリケートウェット』である。自宅ではこの固形石鹸である『ジャムウ・ハーバルソープ』を使っているのだが、出先でデリケートゾーンの臭いが気になったときのために持ち歩いていた。

――持ち歩いていてよかった。夏だから蒸れるし……。

念入りにシャワーを浴びたといえども、臭いが消えたかは疑問である。普段からワキやデリケートゾーンの臭い対策として『ジャムウ・ハーバルソープ』でパックをしているが、念には念を入れるべく、結華は『ジャムウ・デリケートウェット』で気になる箇所を拭いた。

拭き終ってポーチを見ると、薄ピンク色の袋を見つけた。

『シャイニング ラブエステ』

それはボディローションのサンプルのようであった。ポーチに知らぬ間に入っていた。いつもは風呂上りに『プエラリア・ハーバルジェル』で保湿をしていたが、今日は手持ちがなかった。商品名が気になったこともあって、折角の機会なのでこのサンプルを使ってみようと思った。

「いい香り!」

思わず、結華は声に出した。袋を開けてまず感じたのは、ベリーの甘い香りだ。とても美味しそうな香りであった。手のひらに取り出すと、とろっとした乳白色の液体が出てきた。指で触っていると糸を引く。ボディローションにしては、粘度が高いように思われた。

――どうか、素敵な夜になりますように。

そう思いを込めて、結華は肌に塗った。初めに感じたとろみとは裏腹に、肌にすっと馴染み、まるで魔法をかけてくれたかのように『シャイニング ラブエステ』は素肌を映えさせた。照明の下にある体は、自分のものながらも輝いて見えた。

バスローブを着ると、髪を乾かした。結華は鏡に向かって、自分に気合を入れる意味でにっこりと微笑んだ。恋をしている自分が楽しく、これから拓馬に会うのがとても待ち遠しかった。

部屋に向かうと、拓馬はベッドの上でテレビを見ていた。結華が近づくと、拓馬はこちらを見た。そして、目を瞬かせた。

隣に座る間も、拓馬は結華の顔をじっと見つめていた。化粧を落としたから、何か言われるのではないだろうか。先ほど自信を持っていたといえども、あまり見つめられるのが怖く感じられた結華は、無意識にバスローブの袖を掴んだ。

拓馬はテレビを消し、ベッド脇にあるパネルに触れた。部屋中のライトが薄暗いものになり、結華はそっと後ろから抱きしめられた。これから始まるのかと思うと、結華は呼吸を忘れてしまうほどだった。

「……いい?」

「いいよ」

問い掛けに結華は優しくうなずく。拓馬は結華を寝そべらせ、彼女の腰元にある結びをほどいた。エアコンによる冷たい空気が結華の胸を撫でる。ショーツだけになった肌を見て、拓馬の動きが止まった。ごくりと息を飲み込む拓馬の手は宙をさまよう。まるで、結華の素肌に恐れを抱いているかのようであった。

「……ごめん……俺も……」

控えめな声に「えっ?」と結華は顔を上げた。拓馬は正座をして言った。

「男がこんな年で初めてなんて、ね……その……」

言葉が続くにつれて、表情どころか声も次第に曇ったものになった。結華は首を微かに傾げた。ここは相手を思って察するべきであったのかもしれないが、素で意味が分からなかった。「初めてって何が? ホテルでエッチするのが?」などということを真面目に思った。

「いままで……一度も女性と付き合ったことがないんだ」

「えぇ!?」

結華はバスローブが脱げたこともお構いなしに、勢いよく起き上がった。

「ということは、つまりはそういうことも……?」

結華が尋ねると、拓馬は手で顔を覆って小さく何度もうなずいた。結華は大きな衝撃を感じた。拓馬のような素敵な男性ならば、女性と付き合ったことも性経験もあるとすっかり思い込んでいた。けれども、実際は女性と付き合った経験すらないと言う。

「ここに来ようと思ったのは、どうして?」

「結華と一緒にいたかったから」

拓馬から心なしか、ぐすりと泣き声が聞こえた。

――私がホテルに行こうと言ったのもあるだろうし。それに……。

『据え膳喰わぬは男の恥』という言葉が結華の頭に浮かんだ。もしかすれば、これもあるだろう。

「一緒にいるだけなら、ホテルは断ってくれてもよかったのに」

そんな結華の言葉に、拓馬は困った表情を見せた。

「『初めては結華と』って、俺も決めていたから。だから、あのとき結華が言ってくれて……嬉しかった」

軽く笑みを浮かべた拓馬を見て、結華は正座をした。

「ふつつかものですが、宜しくお願いします」

結華が一礼して言うと、拓馬も驚きながらも「こちらこそ」と一礼した

⇒【NEXT】拓馬は結華を抱きしめ、まるで独り占めするかのように…(Vな彼女と彼氏 5話)

あらすじ

ついにホテルへ入る2人…愛に溢れる拓馬は…

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