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官能小説 まだ見ぬ君へ 前編
ネットの先の彼
朋子はインテリアデザイナーになるのが夢で、 有名なイタリアのインテリア会社に就職し、 今年で5年目になる。
自分で家具を選び、 店舗内の一角にコーディネートし、 お客様に「空間」の提案をする。
扱う品は決して安いものではないが、 笑顔でお買い上げ頂けたときは 心から幸せを感じた。
深々と頭を下げてお客様のお見送りをし、 姿が見えなくなってきびすを返すと、 同僚の信吾が接客をしている姿が見えた。
話の内容からして、 あちらも商談のラストスパート といったところか。
信吾とはライバルとも呼べる関係だが 「よき戦友」ではない。
いつも決定的に意見が合わず、 何かにつけてもめてしまう。
朋子は融通のきかない 信吾が嫌いだった。
朋子はさっさと頭を切り替えて、 次の仕事に取り掛かった。
ある日、瑞希のブログの右下に 「お気に入り」というリンクがあることに気付いた。
瑞希のお気に入りって どんな感じかな? と思ってみてみると、 その中のひとつに、朋子の心をつかんで 離さないブログがあった。
アクセス数はあまりなさそうだが、 落ち着いたダークトーンの色味。
記事の読みやすさ、探しやすさも考えられた ブログデザインのセンスの良さと、 記事の内容――どうやら同業者らしい、 デザイン関係や接客についての 様々なことについての考え方に惹かれ、 同時に親近感も湧いていた。
《 ――その方がお召しの服のデザインや色、 話し方の癖や、いままで生きてきた半生をも 雑談をしながら感じ取り、アイテムを絞り、 お客様に最適な物をご提案するのが僕の仕事だ。しかし実際にやるとなるととても難しい。 僕にはまだまだ経験が必要だ。 》
(僕、ってことは……管理人さんは男の人なんだ)
毎日アクセスしているうちに、 勝手にその人のイメージを想像している自分に気付いた。
(こんな人が彼氏だったらいいのにな)
つい一人で苦笑いしてしまった。
もっと素直に
「現在当社で推している、 最新の斬新なデザインで行くべきです。 店頭での評判も上々ですし、 モデルルームでトータルコーディネートして 提案できれば、今後のPRにもなり、 更なる展開が見込めます」
熱のこもった朋子の提案に対し、 信吾が別の提案を出した。
「いや、お客様がこの家を見て、 何を求めるか…それが重要です。
私は、やはりレトロな、 懐かしさを感じつつも決して古くはない、 落ち着ける雰囲気のほうが、 この家のこじんまりとしたイメージに 合うと思います」
またか、と思いつつ、 朋子は反論を出した。
「水木さん、レトロ系は普遍的すぎるのでは?
独自性を打ち出すためにも、
トレンドを取り入れる方がよいのではないかと」
「それは分かっています、ただ…
やはりこの家に最新スタイルでは、
少しちぐはぐな印象を与えかねない」
「ちぐはぐって…どういう意味ですか!?」
「…いや、ですから、
家の広さや間取りと内装との………」
会議は、朋子と信吾の 言い争いに近い状態になってしまった。
また始まったよ、という 半ばげんなりとしたひそひそ声が あちこちから聞こえる。
会議のテーブルが、 ピリピリとした雰囲気に包まれていく。
「んー、 でもどちらの意見も、いいですよね」
そんな張り詰めた空気をものともせず、 のんびりとした口調で、瑞希は言った。
「そうだよね、どちらの言い分も分かる」
「うんうん。
今すぐに決めるのは、正直難しいな…」
瑞希の雰囲気に助けられたのか、 他のスタッフも次々に意見を述べ始めた。
結局、次の会議までに どちらか選ぶということで 今回は終了した。
はぁっ…。
短く大きなため息をついて、 朋子はオフィスの休憩スペースにやってきた。
ブラックのコーヒーを買い、 深呼吸をしながらパキッと缶を開けた。
(カフェインでも摂っておかないと、 やってられないわ)
そこに、ふらっと信吾が入ってきた。
朋子に気付き、 一瞬気まずそうに立ち止まったが、 そのままズンズン進み出て、 自動販売機で缶コーヒーを買っていた。
朋子がチラチラと 信吾を観察していると 信吾はカフェオレを買っていた。
朋子は絶対にブラックしか買わないので、 そんな違いにもイラッとした気持ちになり、 朋子は信吾から視線を外した。
信吾は2才年上だが、 中途で入ってきているので 朋子のほうが社歴は上だった。
そのため、あまり上下関係を 意識する仲ではない。
そういう意味でも、 やはり同じラインで競争している 「ライバル」のような感覚なのだ。
「おつかれ」
信吾はそれだけ言って去って行った。 休憩スペースががらんとした雰囲気になった。
(まったく、かわいくないやつ)
朋子はコーヒーを一口飲んだ。
(でも、自分も、 同じように思われているんだろうな…)
信吾の出て行った出口を見ながら、 朋子は少し自己嫌悪に陥った。
家に着いたらすぐ、 気分転換にあのブログを見に行った。
アクセスする度に 心のわくわくが抑えられなかった。
すでにそのブログは更新されていた。 タイトルは『妥協と…』だった。
《 今日は仕事でプレゼンがあった。 同僚と意見が真っ向から対立し、妥協をすべきか 悩む状況になった。 悩みに悩み、最終的には 自分の思う信念に従って意見を貫き通したが、 相手の意見も決して間違っておらず、 よく練られていて素晴らしい。 しかしなぜそれをうまく伝えられないのか…。 いつもよく言い争いになってしまい、 相手には本当に申し訳ないと思う。 そう思っているのに、 なぜそれが言えないのか…。 僕に必要なのは、妥協と、 ちょっとした勇気なのかもしれない。》
(うん、そうだ、私も、足りない…)
朋子は軽く息を吸い、 ブログのコメント欄に文字を打ち始めた。
《 はじめまして。いつも拝見しております。 私も今日同じような気持ちになりました。 すごくわかります。
相手の思いを受け取って、 自分の意見をうまく伝えられなかった 自分に腹が立って一日気持ちが 重かったです。
もっと素直にならなきゃ、ですよね》
書きあがって、あまりにも 自然に文章をつづっていたことに気付き、 一瞬戸惑って消そうかとも思った。
しかし、寝る時間もいつの間にか過ぎていたので、 そのままにして眠りについた。
あらすじ
ネットの先の彼…。であったのは、そう、あの時…。
朋子はインテリアデザイナーになるのが夢で、有名なイタリアのインテリア会社に就職し、今年で5年目になる。
ある日の仕事の仕事終わり、同僚の瑞希に誘われネットカフェへ…