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大学での出会い

明奈は、パサつきぎみの髪をゴムで束ねつつ 書類の山を見てため息をついた。 勤めて2年目の銀行では今、寿退社ラッシュで 毎日遅くまで引き継ぎに追われていた。

同期入社の恋人とも別れたばかり。 上司の愚痴ばかりで、セックスは一方的、 明奈の反応がよくないと不感症まで疑うようなひどい人だった。 要するに彼は幼かったのだ。

自ら別れを告げた今、そんなことはどうでも良い…と ため息交じりに仕事を終え、電車に乗り込む明奈。 暗い街並を窓越しに眺めていると、大学らしき建物が目に入る。

明奈の大学時代は、真っ白なキャンバスと同じだった。 どんなラインも描けそうで、どんな色にも染められそうだった。 刺激的で、輝く未来があることを疑いもしなかった時代。 今とは大違い。 ふとした瞬間、明奈は、無性に母校へ行きたくなった。

翌日、休みだった明奈は、ふらりと母校へ出向いた。 ドイツ文学を専攻していたあの頃。 廊下を歩いていると、昔通った研究室から 懐かしいドイツ語の硬質な響きが聞こえてくる。 その教室の前で立ち止まる明奈。

明奈は目をつむり、聞こえてくるドイツ語に耳を傾ける。 まだ自分が、ドイツ語を憶えているかどうか試したかった。 だがなかなか聞きとれない。

すると突然、背後から声をかけられる。

「何かご用ですか?」

驚いて明奈が振り返ると、細身の男性が立っている。 これが西山との出会いだった。

明奈が大学の卒業生だと打ち明けると、西山は顔を和らげた。

「斉藤教授の教え子なの?」

明奈は、少し戸惑いながら頷く。

「実は僕も斉藤教授の教え子。今は代理で授業を担当してる」

そして、西山は明奈を研究室に招き入れてくれた。

明奈と年齢の近そうなTAの女性が、コーヒーを淹れてくれたのだが なんとも訝しげな顔で明奈を見つめている。 直感で、彼女が西山に好意を抱いていることを悟った。

「元木さん、午後から授業でしょ。もう行っていいよ」

西山は、彼女に研究室を出るように促した。 少しムッとした表情で、彼女は研究室から出て行った。

彼女が出て行った扉を気にしながらも、 明奈は西山が気になって仕方がなかった。

知的な大人の男性。 少し影があって憂欝そうにも見えるけれど、 フッと笑った時に口角がちょっとだけ上がるところは、 満面の笑みより魅力的に思えた。

穏やかに話は進み、淡々と時間は過ぎる。 終業のチャイムが鳴り、2人の他愛ない時間も終わりのようだ。 授業の準備を手短に済ますと、西山が明奈の肩の上に手を置いた。

「また、いつでもおいで」

肩越しに去っていく西山。 西山の飲みかけのコーヒーをじっと眺める明奈。 触れられた肩がじんわり熱い。 明奈の体の中で、何かが大きくうねり始めた。

先生への片思い

一瞬の触れ合いが、明奈の世界の色合いをがらりと変えた。 舞い降りた出会いは、空虚な日々を一瞬で覆したのである。 大学から帰った明奈は、高鳴る鼓動を抱えていた。

西山に触れられた肩には、まだ温もりを感じる。 肩に触れた西山の手を思い出し その上に自分の手を重ねる想像をしながら、ベッドに倒れ込んだ。

西山の手は、骨ばっていてひんやりしている。 想像の中で、彼の指に自分の指を絡ませる。 その手はすーっと静かに胸元へとのびる 男らしい、骨ばった彼の手…。< 優しく皮膚をすべり指先が乳首へと到達すると、 明奈は敏感に反応した。

「あっ……」

彼の手を思い、胸全体を揉んでみる。 柔らかく瑞々しい胸の隆起。 西山に触れられていると想像するだけで下腹部が熱くなる。 もう片方の手をショーツまで伸ばす。 秘部が濡れていることが、布越しにも伝わる。

ひとりエッチなんて、明奈は一生しないと思っていた。 そもそも、どうすれば良いかわからない。> 元彼に不感症呼ばわりをされたほどだ。

セックスの気持ち良さだって、よくわかっていなかったのだから。 それなのに、今日は自然と手が動いているし素直に興奮もしている。

さらに、想像はどんどん膨らんでいく。 ぬるっとした感触とともに、 意識が遠くへ連れ去られるような歯がゆい快感が込み上げる。

西山の憂いに満ちた瞳が、明奈の頭の中でチラつく。 愛撫に悶えつつ、湧き出る愛液を指先にたっぷり掬いとった。 蜜をたくわえた指先を西山の舌に見立て、 膨らんで熱くなった突起にくるくる塗り込む。

同時に泉に侵入していた中指が、ゆっくりピストンを始める。 西山の顔が現れては消え、消えては現れる。 意識はさらに高みへと昇る。

一瞬頭が真っ白になった瞬間、明奈は 「あぁっ……」と、長い歓喜の叫びをあげて果てた。

気を失いかけた明奈は、朦朧とした中ではっきりと、 彼をもっと知りたいという思いを抱いていた。

明奈は、毎週土曜に研究室を訪れた。 3時限目終了のチャイムが鳴るまでが、西山との時間。 コーヒーを飲み、ドイツ文学やその他の他愛ない話をするだけの逢瀬。

 

学生でもない明奈に、嫌がりもせず接してくれる西山。 明奈の気持ちにも、うっすら気づいているはずなのに、 そこへは全く触れてこない。 しかし明奈は、そんな西山の態度に苛立ちは感じなかった。

西山を思うたびに、ただ純粋に幸福にひたる明奈。 明奈の退屈だった日々は、西山一色に染められていく…。

先生とのセックス

ある土曜日、明奈はいつものように西山を訪れた。研究室のドアを開けると、机の上の書籍類が一切無くなっている。

「先生、大学辞めましたよ」

西山に好意を抱いていたであろう、元木という女性は そう冷たく言い放ち研究室を出て行った。

明奈は、早足で大学の屋上に向かった。 学生時代、よく授業をサボって暇をつぶした屋上だ。 泣ける場所へ行きたかった。

屋上に出た瞬間に強い風が吹き、瞳にたまった涙が頬にこぼれ落ちた。 視界がクリアになると、屋上のベンチに誰かが座っているのが見えた。 あれは…

「西山先生?」

見つめ合ったまま時間が止まる。

「どうし……」

西山が問いかけようとした瞬間、明奈は西山に抱きついた。 泣きじゃくる明奈の背中に、西山はそっと手をまわす。

「斉藤先生が戻るから代理期間終了。他の大学に赴任するだけ。」
「……遠く?」

明奈は少し不安そうに尋ねた。

「近くだよ。いつでも会える……」

西山はそう言って明奈を抱き寄せ、おでこに軽くキスをした。

2人は西山のマンションに居た。 いつも無表情の西山が、照れたように微笑みながら 明奈の頬に手を添えてキスをする。 自然と服を脱がせ合い、肌と肌をすり合わせる。 愛しい人の肌の感触が、明奈を隠微な世界へと誘う。

西山の胸に唇を這わせると、漏れるような吐息が聞こえた。 自分の愛撫で興奮している西山を見て、 今まで味わったことのない興奮が込み上げる。 明奈の健気な様子に愛おしさを抑えられなくなった西山は、 体を起こし明奈を強く抱きしめた。

「先生……」

仰向けにされた明奈は、引き締まった西山の胸に手の平をあてた。 これが男の色香……。 明奈の愛液は、恥ずかしいほどあふれ出て太ももをつたった。 流れ出た蜜を丁寧に舌で掬いあげる西山。

「……恥ずかしい」

股を閉じようとする明奈を優しく制止し、 西山は秘部への愛撫をやめなかった。 明奈も硬くなった西山の部分を、手の平で転がし続けた。 明奈は、男性のその部分をこれほど愛おしいと感じたことはなかった。

「……欲しい」と自然に声が漏れて、自分の言葉に驚いた。 西山が静かに明奈の泉に分け入る。 奥まで西山を受け入れた瞬間、明奈はこれまでにない快感を得た。 ものすごい勢いで迫り来る快感の波に、歓喜の声をあげ続ける明奈。

「私もうダメ……」

眩い光を感じて同時に果てた2人。 鼓動がおさまるまで、明奈は西山の胸に顔をうずめていた。 今日が私の本当の初体験……。 明奈はこの幸せな日に心から感謝して、西山の隣で眠りに落ちた。

<キャンパス 〜おわり〜>

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あらすじ

仕事や恋愛に疲れた明奈。ふと立ち寄った母校の大学で出会ったのは!?

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