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官能小説 私も知らないわたし 1話


新しい扉を開くピンクの鍵

「あ、あ・・・んーっ」

ぞくぞくぞくっと、身体の中から震える。まるで、触れて貰うためだけに、そこは存在しているんじゃないかと思うくらいに、全ての神経が触れられたところに集中する。
目は見えない。布を巻かれて外せなくなっている。
手は動かない。頭の上で紐で縛られている。

「ん、ひゃあっ」
「由紀、感じすぎ。そんなに、いいの?」

彼氏の宗一が、由紀の胸の突起に小刻みな振動をあてがい、思いがけず大きな声を出してしまう。

まさか、こんなことになるなんてーーーーー

*******

由紀と宗一は、付き合って約半年になる。自分で言うのも変な感じだが、所謂「ほのぼのカップル」に属する、と思っている――思っていた。
由紀は身長152cmと小柄でやせ型、胸は小さく童顔で、社会人になって3年経つというのに今でも学生に見られてしまうのが悩みだ。そして、由紀の一つ後輩である宗一も、由紀との身長差は10cm以上はあるものの、背も高い方ではなく、よく知らない人に道を尋ねられるような、人の好さそうな顔をしている。

二人ともほっこり系とでもいうのだろうか−カジュアルな服装を好み、デートといえば公園にお弁当を持ってピクニックに行ったり、映画を観たりして過ごしていた。二人を知る人達からは、「かわいらしいカップル」と言われてきたし、由紀自身も、学生時代の延長のような雰囲気を感じていた。
由紀も宗一もそれぞれ一人暮らしであるし、勿論セックスもしている。ただ、本当に普通のことしか、していない。キスをして、いい雰囲気になって、宗一が優しく愛撫してくれて・・・それで由紀は十分に満足していたし、疑問に思っていることなど特になかった。

******

ある日、由紀は大学時代の友人の結婚式の二次会パーティーに参加していた。

「彩美、ウェディングドレス綺麗だねぇ〜。いいなぁ結婚…ね、千香」
「そだねー。私はまだいいかなぁって思うけど、由紀はもう結婚したいとかあるの?」

私たちも25歳。付き合ってる相手がいれば、そろそろ結婚を意識し出す年頃だ。一方、まだまだ冒険できる年齢でもある。

「う、うん・・・宗一とはまだ半年だけど、このまま穏やかに付き合い続けていけたら、幸せかなーって・・・へへへ」
「のろけか!まぁ宗一くん優しそうだもんねぇ〜。でも、あんまり平和ボケしてると、ギャップがあった時の衝撃デカいんじゃない?」
「宗一は見た目通り優しいよ。ギャップも特にないし、本当に平和で幸せなんだって」
「はいはい、ご馳走さま」

千香が呆れたように切り返す。もう、平和ボケだなんて・・・これが日常で、これからも続いていくんだっていいじゃない、と由紀が頬を膨らませた時、司会の声が響いた。

「次は、35番!・・・ビンゴの人いますかー?」

あ。

「揃った!はーい、ビンゴですー!」

由紀は今穴を開けたカードを持って、前方へ進んだ。新郎新婦から、景品を手渡される。

「由紀おめでとう!はい、どうぞ。これで女磨いて、彼氏ともっとラブラブに過ごしてね?」

箱には無地の白いもので、中身がわからないようになっていた。これは、何だろう。尋ねようとすると、彩美が小声で「お・た・の・し・み?」と囁いた。

さっきの景品

二次会が終わった後で、由紀と千香は酔い醒ましに夜遅くもやっているカフェに入った。

「由紀、さっきの景品なんだったのー?」
「わかんない・・・彩美は『女を磨いて』って言ってたし、美容グッズとかかなぁ?だったら嬉しいな」
「ね、ね、嫌じゃなかったら、開けてみてよ」

千香に促され、由紀も気になっていた箱を開封してみることにした。開けてみると、中には複数の小物が見えた。

(何だろう、美顔器?と、こっちは化粧水、かな・・・?)

由紀が手に取ろうとすると、一緒に覗き込んでいた千香が慌てて由紀の手を押さえた。

「ちょ、ちょ、待って!」

由紀はぽかん、として手を押さえられたまま、千香を見つめ返す。
千香が小声で囁く。

「ここじゃ、まずいって・・・!これ、ローターとローションだよ」
「え?美顔器と化粧水じゃ・・・」
「・・・ほんと、ほのぼの平和ボケちゃん、なんだから」

ローター、ローション。所謂「大人のオモチャ」というものか。由紀だって、実際に見たことはないけど、そういうものがあるということ位は知っている。まさか、自分の手元に来る日が来るなんて、思ってもみなかったけど。
意識すると、途端に顔が熱を帯びてくるのがわかった。

「あ、彩美ったらなんてものを・・・!」

焦る由紀に対し、千香が少し思案してから口を開く。

「・・・でもさ、せっかくだし、使ってみたら?」
「えっ、いや、使い方とかわかんないし・・・」
「そんなの、説明書が入ってるよ」
「それに、部屋に置いておけないよ・・・宗一に見つかったら絶対ドン引きされちゃう」

由紀が半泣きになりながら訴えるも、千香は続ける。

「いや、わかんないよー?意外と、新しい扉開いちゃったりして。いいじゃん、たまには『ほのぼの』から外れてみても」
「む、無理だよ〜、千香にあげるよ!」
「こら、あんたが貰った景品でしょうが。それに、私、もう持ってるもん」
「えっ」

意外だった。

というか、仲が良くてもそんな話は今までしたことがなかった。そんなにさらっと言えることなのか、と由紀は面食らった。

「彼氏と使ったりしてるよー。マンネリ解消にもなるし、楽しみ方も増えるし、大丈夫だって」
「う、うぅ・・・」
「わかんないこととかあったら聞いてよ。ここじゃあんまり話せないけどさ」

そこまで言われて、押し付けるわけにもいかず、由紀は自宅に持ち帰った。

******

「はぁー、ヒール疲れたぁ」

お風呂上がりに、いつもより念入りにふくらはぎをマッサージをしていると、メッセージの着信があった。
宗一からだ。

『彩美さんの二次会おつかれさま!楽しかったかなー?なんか景品当たった?w』

景品。ドキッとして、ふと部屋の隅に置かれた紙袋を見る。入浴で温まった身体が、さらに火照る。

(・・・い、言えない)

『うん、楽しかったよー!彩美とっても綺麗だった。残念ながらビンゴは外れちゃった(泣)』

当たり障りのない返事を返すのが精いっぱいだ。

『そっか、良かったね〜。ところで明日は、11時に○〇公園で待ち合わせて、そのあとは由紀のうちでゆっくりご飯つくる、でいいんだよね?』
『うん、最近寒くなってきたし、あったまるもの作ろー。おやすみ』

ほら、私たちはこういうカップルだもの。
宗一にそんな淫乱な子だと思われたくないし、と思いながらも、由紀はどうしても気になってしまい、紙袋から箱を取り出した。

「ど、どんなものかって確認するだけ・・・」

と小さく呟きながら、その手は電池を入れ、ボタンを押してしまう。
ジジジジジっと小さな卵型のものが震え、思わず落としそうになる。

(説明書には、まずは下着の上から当てるって書いてあったし・・・)

そのように試してみるが、ちょっとくすぐったさを覚えるだけだった。

(うーん?よくわからないなぁ。やっぱり私にはまだ使えないってことかな。いいや、それより明日のお肌のために寝よ寝よ!)

由紀はそ・れ・をとりあえずクッションの下に置き、遅くまで出掛けていた疲れもあってか、すぐに眠りに落ちた。

10時過ぎ…

翌日――窓から差し込む光で目を覚ました。

(うっ頭痛い…飲みすぎたかなぁ)

こめかみに手を当てながら時計を見ると、10時を過ぎていた。

(わ、寝すぎた・・・急いで支度しなくちゃ)

慌てて着替えを済ませ、待ち合わせの公園へ向かった。
待ち合わせ時間の10分前に着いたつもりだったが、宗一はもうそこに来ていた。

「おはよう?こんにちは?どっちだろ。・・・早いね、待たせちゃったかな?」
「確かに、どっちがいいのかねー。俺も今来たとこだよ、大丈夫」

少し涼しくなってきた日差しに照らされて、宗一が優しく微笑む。
落ち葉が綺麗だから、と少し公園を歩くことにした。自然と手をつないで歩いていると、ほわほわと心が温まってくる。老夫婦みたいだね、と笑い合った。
昼ご飯を作ろう、ということで二人でスーパーでシチューの材料を買い、由紀の家で二人で作った。

(やっぱり、宗一といると心が和むなぁ…これからもこんな感じなんだろうな。結婚とか、まだ具体的な話は出てないけど、こういう家庭なら素敵だな)

ご飯を食べて、まったり映画の録画を観て、そして、唇を重ねる。宗一のキスは、いつも優しい。大事なものに触れるように、丁寧に丁重に扱ってくれる。ゆっくりと倒され由紀の背中が床についた時、ちょうど、頭のところにクッションが当たった。宗一の目線が、由紀の少し奥の方に動いた。

「由紀・・・これは?」

―――今の今まで、すっかり忘れていた。昨夜、クッションの下にとりあえず隠しておいた例のモノが、はみ出してしまったのだろう。

宗一が、ピンク色のそ・れ・を手に取った。

「そっそれは・・・違うの!わ、私が買ったんじゃなくて」
「ふーん…開封済だけど、使ったの?」

(なんか、宗一が怖い。怒ってる・・・?)

「き、昨日!の!二次会の景品で…」
「それ、外れたって言ってなかったっけ?」

(やっぱり怒ってる…幻滅したよね・・・)

「だって、そ、そんなの当たったなんて、言えなくて」
「でも、使ったんだ?」

宗一がスイッチを軽く押し、振動音が部屋に響く。

「それは・・・」
「使ったんでしょ?」

宗一が自身の左手で由紀の右手を床に縫い留めた。そして、上から覆いかぶさるように深く、口づける。荒々しく舌の奥や歯の裏まで侵入され、お互いの速度を増す呼吸が混じり合った時、先ほどの振動の元を由紀の胸の突起に押し当てた。

ラブグッズを使い服の上から感じあう男女

「あぁんっ!」

由紀は、今まで出したことのないような声に、自分でも驚いた。

(やだ・・・恥ずかしい・・・でも・・・)

「へぇ、服の上からでも、そんな感じるんだ」

宗一が不敵な笑みを浮かべる。

「じゃあ、もっと気持ち良くしてあげる」

そう言って、由紀のカーディガンをはぎ取り、器用にブラジャーを外し、上はキャミソール一枚にしてしまった。下もいつのまにかショーツ一枚にされ、宗一も下着のみになり、二人でベッドの上へ移動した。

NEXT:優しいはずの宗一が豹変して…?!(私も知らないわたし 2話)

あらすじ

ほのぼのカップルの宗一と由紀。二人は穏やかな関係のカップル――のはずだった。由紀が結婚式の二次会の景品でもらってきたラブグッズがきっかけで宗一が豹変して…!?

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