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偶然の再会

空気が澄んでいると真夕は思った。 真夕は25歳になったのを機にIT企業に転職し、 同時に引っ越しも遂げた。

緑の多い遊歩道を歩きつつ、新たな地の環境の良さを実感する。 メイン通りにはオシャレな雑貨屋や家具屋などが立ち並んでおり、 そのどれもが独自のこだわりを感じさせる個性的な店ばかり。

ふと優しい甘い香りが鼻先をかすめた。 香りの先には一件のカフェが建っている。 近づくと、さらに濃厚な香りが真夕を包み込んだ。 甘さだけでなく上品な香ばしさ。

真夕は、何気なくカフェの中をのぞく。 えっ……? 真夕は息を止める。

ガラス扉越しに見えたのは、なんと若い男女のキスシーン。 真夕が硬直していると、男性が気づいて一瞬こちらを見る。 驚いてガラス扉から離れ、真夕はその場から走り去った。

真夕は、家に着いてからも動悸がおさまらなかった。 思い出すまいとするほど、あのラブシーンがありありと浮かぶ。 女性は背の高い男性の肩に手を乗せ優雅にキスを求める。 男性は女の唇をふさぎながら腰に手をまわし……。

首を激しく振る真夕。 しかし、その夜真夕は眠れなかった。

私が最後にキスしたのは……? 元彼と最後にしたのが、もう1年半前。 真夕は別れた恋人を思い出していた。 右手は、いつの間にかショーツに伸びていく。

ショーツ越しに自分を愛撫する真夕。 すでに湿っている…。 自然と指は中へ侵入し、漏れ出す蜜を掬っていた。

とろとろの蜜を蕾全体にくるくる塗ると、 とてつもない快感が押し寄せる。 ゆっくり右の指を挿入し、左の指は口の中へ入れる。

キスされながら硬いものがゆっくり入っていくのを想像をすると、 大きな波が押し寄せた。

「あ……」

指の動きを早くすると、激しく求められる感覚がぐいぐい迫る。 ……あっ……と声を上げ、真夕は果てた。

絶頂寸前に頭に浮かんだのは、元彼ではなかった。 妄想の中で真夕を抱いたのは、 なんと一瞬目が合っただけの、あのカフェの男性だったのだ。

翌日、真夕は仕事を終え自宅までの道を歩いていた。 家に帰るにはあのカフェの前を必ず通らなければならないが、 真夕はその前を通りたくなかった。

昨夜の妄想を思い出し顔が赤らむ。 顔を伏せた瞬間、真夕は軽く肩をたたかれた。

えっ……? 振り向くと、昨夜の淫らな妄想の中に入ってきた あのカフェの男が立っていたのである。

乱れる心

真夕は彼の登場に動揺した。

「ども。カフェ『モン・テ』の原田英明です。知ってるよね?」

あらためて彼の顔を見る。 彫りが深く少したれ目でハーフのような美しい顔立ち。

「コレ」

一枚の紙を差し出す英明。 「お菓子教室?あのお店で?」

「昨日は妙なとこ見られたな。僕モテるから」

悪びれない様子にあきれ、真夕がチラシを返そうとすると英明が言う。

「俺のお菓子は魔法がかかってるから。 好きな人に食べさせれば、その彼は恋に落ちる」

「へえ……」

「まあ、気が向いたら来てよ」

結局真夕は、教室に通い始めた。 彼の創作菓子には紅茶の茶葉が使用されていて品のある味がした。 『モン・テ』は「私の紅茶」という意味。 お菓子を作る時の彼の手さばきは繊細で、 全身からお菓子への愛情が溢れている。

真夕は教室があった日の夜、いつも英明と淫らな行為をする夢を見る。 お菓子を含むように優しく乳房に吸いつく英明。 背後から、紅茶の香り漂う英明にすっぽり包まれる真夕。 大きく股を広げさせられ秘部をあらわにさせられる。 後ろから手を回し、長い指で真夕の濡れた部分を丁寧に愛撫する英明。

囁かれる甘い言葉。 静かに絶頂が迫って… そのシーンで目覚めると、切なさで胸が張り裂けそうになった。

ある日店に着いた真夕は、ドアを開けた瞬間硬直した。 英明とキスしていた女がいたのだ。

「ねぇ、リキュール足りてる?」

猫撫で声で言い、指につけたソースを英明に舐めさせようとする女。 英明はそのソースを自分の指につけて口にする。 女は面白くなさそうな顔をする。

女がふと真夕を見た。

「誰?」

「真夕ちゃん。こちらは梓さん」

英明が紹介する。

「お菓子作りより、キャリアウーマンが似合ってる」

真夕は会社帰りで地味なグレーのスーツを着ていた。 一方の梓は、胸を強調したワンピース。

梓が耳元で囁く。

「あなたは彼の好みじゃないわ」

思わず真夕は、店を飛び出した。

真夕は、公園のベンチに座っていた。

「どうした?」

英明が立っている。

「梓さんに何か言われた?」

「好きなの?」

「梓さんを?冗談。キスはフランスじゃ挨拶だよ」

「フレンチキスじゃなかった」

「焼いてるの?」

言葉に詰まる真夕。

と、ふいに唇が塞がれた。 真夕の唇を濡らしつつ巧みに舌をすべり込ませる英明。 夢以上に濃厚でエロティックなキス……。 ハッと我にかえり、体を離す真夕。

「あの女と一緒にしないで!」

喜びと屈辱感が入り乱れる心を抱え、真夕はその場を走り去った。

高まる密着度に…

3日後、再びお菓子教室の日が来た。 真夕は気重だったが、 休むと梓に負けるようで悔しいと思い、行くことにした。

でも結局、無愛想な顔しか出来ない真夕。 課題のダージリン・シフォンを作り終えると、 真夕は試食もせずお菓子を包んでさっさと店を出た。

真夕は、帰り道にある公園のベンチで一休みした。 英明の登場を期待していないと言えば嘘になる。 しかし、30分も経つと 夜風も冷たくなってきたので、真夕は立ちあがった。 すると暗がりから誰かがやって来る。英明だった。

「間に合った…。怒ってるんだろ?」

「…別に」

真夕が去ろうとすると、英明が腕をつかんだ。

「俺、けっこう本気だけど、君の気持ちは?」

真夕は、しばらく黙っていた。

真夕は再びベンチに座り、 教室で作ったダージリン・シフォンを出す。 一口サイズにちぎって、それを英明の口もとに差し出した。

「惚れ薬なんでしょ…?もっと好きになって…」

そして、ようやく真夕は笑顔になった。

「後悔してない?」

真夕は英明の部屋にいた。 首を横に振る真夕。 2人はベッドの上に座り静かにキスをした。

「惚れ薬が効いてきた……」

英明は真夕の服を脱がす。 裸の真夕をじっと見つめる英明。 真夕は全身が熱くなった。

「キレイだ……」

英明は丁寧に胸をもみながら、真夕の首筋や鎖骨に唇を這わせた。 お菓子を慈しむ時と同じ表情で愛撫する英明。 真夕は英明のきめ細やかな肌に頬を寄せる。 一瞬、紅茶リキュールの香りが漂った。

愛撫は徐々に熱を帯びる。 英明は真夕の脚を押し広げ、深い園へと節の目立つ細い指で分け入った。 溢れ出る液で英明の手はびしょ濡れだ。

「限界……!」

英明は真夕を優しく押し倒し、泉に侵入してきた。 真夕の泉源は英明でいっぱいになり、密着度がみるみる高まる。 いつも余裕ある表情の英明が、 全身を大きくスイングさせ声を荒げて興奮している。

真夕が触れた英明の背中は、筋肉が硬く締まり熱を帯びていた。 腰に英明の指がグッと食い込む。 英明の欲情が伝わり、真夕も興奮が高まった。 英明の体が大きく波打ち、真夕は思わず大声をあげた。

「ああーっ……」

真夕は自分の入り口が急速に締まるのを感じ、 もどかしいほどに高まった快感はもう爆発寸前。 英明も、声を抑えずあえぎ始めた。

「あ、あーっ……!!」

2人は同時に解放され、一気に眠りに落ちた。 微かにバニラエッセンスの香りが立ち昇っていた。

<甘い恋愛 〜おわり〜>

あらすじ

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