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官能小説 おんなの、秘めごと 1話


イタリアンでデート〜けだるい朝

足音に気づき、私はゆっくりと瞼を開けた。
ブラインドが半分開けられていて、窓から差し込んだ光で足元が温まっている。

支度を済ませた高志がベッドに腰かけ、顔を近づけてきた。
高志の唇が右の頬に触れた。

「先に出るから」

ベッドルームから出て行く高志の背中を薄目で見ながら、小さく、うん、と呟いた。
しばらくして、玄関の方でドアの閉まる音がした。

寝汗をかいてしまったのか、首元が湿っぽい。
微かに頭痛がして、私は欠伸をしながら右側に体の向きを変えた。
枕の横に、黒いブラジャーとくしゃくしゃになったTシャツが脱ぎ捨てられている。

私は掛け布団を肩まで引き上げ、枕に顔を埋めた。
すると、右足の辺りにも、何かがある。昨日履いていたジーンズだった。
私は、ようやくショーツも履かずに横になっていることに気がついた。

―そのまま、寝ちゃったのか…。
胸の突起が張り詰め、秘部も火照っている。
突起はじんとして、少し痛い。
昨夜の快感はまだ身体のあちこちに残っていた。
その余韻が、とても愛しかった。

久々の逢瀬

昨日は少し飲み過ぎてしまったと思う。
大学を卒業してすぐに大手出版社の編集者になった高志は、去年からある売れっ子作家の担当をしていて多忙を極めている。
昨日は書き下ろしの新刊本の作業がようやく一段落したらしく、約2週間振りのディナーだった。
徹夜が続く日もあったようで、久々に見た高志の顔はだいぶ疲れて見えた。

家の近くにある老舗のイタリア料理屋に、20時から予約を入れた。
この店には美味しいワインが何種類も手頃な値段で揃えられている。
私はここで出しているイベリコ豚の生ハムが好きで、高志と付き合い始めの頃に一緒に来店して以来、よくディナーの場所に指定するのだ。もう3年前のことだ。
テーブルの上では小さなグラスキャンドルが赤く灯っている。

「お疲れ様」

注文したグラスビールで乾杯したあと、バゲットと無塩バターが運ばれてきて私たちの前に置かれた。
ビールはすぐに空き、次は赤ワインをボトルで頼んだ。
グラスを軽く持ち上げる仕草をすると、高志もそれに応じ、ワイングラスにそっと口をつけた。

高志との会話はもっぱら小説のことだ。
自分の好きな分野について話す時、普段は大人しい高志が明らかに興奮した様子を見せる。
私も学生の頃から小説をたくさん読んでいて、輸入食品会社で事務をしている今も毎日の読書は欠かさない。
高志と付き合うようになってから読書量はさらに増え、話題になった作品や日本の小説家ついてもある程度の意見を述べることができるようになった。

食事の後…

激務から解放された安堵感からか、高志はいつもより饒舌だった。
最近は担当している作家の影響で古典の現代語訳を読んでいると言い、取り分けたトマトソースのペンネを美味しそうに食べた。

料理が片付いてワインが残り少なくなってくると、あとはマンションに帰ってからゆっくり飲み直そうかと高志は静かに言った。
珍しく酔って顔を赤くさせているので、その勢いで大通りの方にある馴染みのバーに寄り、マスターと小説談義を再開させるのかと思っていたが、やはり疲れが残っているらしい。

私は高志の言葉に頷いた。
家には食後のコーヒーの用意もあるし、ハーフサイズの赤ワインもストックしてある。
確か、コンドームも切れていなかったはずだが…。
私はベッドの脇にある引き出しの中に思いを巡らせた。


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あらすじ

久々の逢瀬。
大学を卒業してすぐに大手出版社の編集者に行った高志は多忙を極めていた。

そんな彼と2週間ぶりにイタリアンレストランでデートをすることに。
レストランでのディナーが終る頃、彼が「マンションに帰ってからゆっくり飲み直そうか」と…

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