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官能小説 彼女の生きる道 前編
惰性
今年で31歳になる三澄貴子は、 今日もくたくたで、重い体を引きずりながら 最寄駅から家まで歩いていた。
29歳のときにプロジェクトで 大きなミスをしてから 大事なプロジェクトには入れなくなっていた。
営業の下っぱ事務処理というような仕事を 繰り返している日々。 やりがいはないが仕事自体は忙しく、 毎日終電となっていた。
あと1カ月で31歳の誕生日というのに、 こんな毎日を繰り返すのかと思うと うんざりだった。
貴子が家に帰ると、 持田順平がゲームに夢中になっていた。
また今回の携帯会社の窓口の仕事も 嫌になって辞めたらしい。
順平はゲームの傍らにある ポテトチップをつまみながら 「おかえり。 メシ我慢できなくて食っちゃった」 と振り返りもせずに言う。
貴子はこの姿にもうんざりしながら キッチンへと向かった。
そして冷蔵庫から 2Lのミネラルウォーターを取り出し、 ペットボトルのまま一口飲むと ロボットのように料理を始めるのだった。
順平とは気付けば2年ほどになる。 きっかけは、 工事現場でアルバイトをしていた彼が、 通勤で通りかかる貴子に 一目ぼれしたこと。
話しかけられているうちに 仲良くなって、気づけば いつの間にか家に転がり込んでいた。
一応、彼も自分の家はあるのだが 週の半分は食費と光熱費の節約 ということで、貴子の家に来ていた。
とはいえ、 彼は定職に就けたことがなく、 これまで数々のバイトを 繰り返してきている。 もはや彼は貴子にとって 息子化していた。
しかし最近、 彼の携帯は頻繁に鳴り、どうやら ほかの女性の影がちらつき始めていた。
そろそろ終わりにしなくては… と思いつつ、なんとなく ずるずると関係を続けていた。
深夜の夜ごはんを済ませ、 眠さをこらえながら洗い物をしていると、 ふいにウエストへ腕が絡まる。
順平が後ろから抱きしめてきた。 貴子はとたんに目が冴える。
彼を世に言う『ダメ男』だという認識は 貴子にはもちろんあった。 でも彼と別れられないのは ここにあるのだった。
彼の手がスカートを上げ、 下着に入ってくる。
流しには水が出しっぱなしになり、 食器に跳ね返ったしぶきが 貴子の腕に当たっている。
「貴子、もう濡れてる」
順平の声が右耳に心地よく響く。
貴子の敏感なところを探り当て、 彼の長くしなやかな指が そこをゆっくりとなぞる。
それだけで 彼女は膝から崩れ落ちそうだった。
順平の右手中指が どんどん深く進んでいき、 貴子の愛液に溢れた蜜壺を ゆっくりかき混ぜる。
貴子は流しのふちを 必死でつかみ、声を押し殺す。
「なんで我慢するの?声、出してよ」
そう囁くと順平は強引に 貴子の唇へ自分の唇を押しつけ、 舌をからませてきた。
貴子はその強引さに酔いながら 朦朧とした頭の中で、 この快楽に身を任せよう、と思う。
たとえこの快楽の後に押し寄せる 切なさと後悔があったとしても、 どうでもいい。
そのまま貴子は向き直り、 順平の首に腕をからませた。
激しいキスで唾液が 顎を伝っていくのを感じながら、 自ら片足を上げ、順平を受け入れる。
十分に潤っているそこに 順平が押し入ってきた。 その瞬間、貴子は真っ白になる。 順平の少しくせのある髪に 貴子の指が絡まる。
「もっと欲しい」
そう思うとすべて深くまで つながりたくなり、 夢中で唇を合わせた。
この麻薬に似た快楽に 身をゆだねている間だけ すべてを忘れられる…。
背後で洗い途中の食器が、 ガシャッと音を立てて崩れたが、 貴子にはもう聞こえなかった。
日常
30歳で2児の母である美紀。 テレビから流れる、 朝から何度も聞かされた 有名人の熱愛報道…
観るでもなく眺めながら、 昨日の残りもののコロッケを 食パンにはさんで口へ運んだ。
パサパサなじゃがいもが口の水分を奪い、 まったくおいしさを感じない。 が、そんなことはどうでもよかった。
今日も夫と2人の子供を送り出し、 洗濯、掃除を終わらせて植木に水をやり、 ようやくの昼食タイムである。
毎日毎日同じ生活…。 違うのは昼に食べる残り物くらいだ。
冷蔵庫から麦茶を取りだし、 コップに注ぎながら、 新聞にはさまれていた スーパーの広告に目を通した。
「今日は鶏肉が安いのか…。 今夜は、唐揚げだな」
独り言を言いながら麦茶を飲み干す。
パンとコロッケに奪われた水分が 口内に補われ、麦の香りが鼻に抜けた。
結婚して10年。 それなりに幸せな日々ではあった。
美紀が短大を卒業する年に出会った 浩之と付き合って3カ月で妊娠。 社会に出でて働くこともなく 21歳で長男を産んだ。 そしてそれからすぐに第二子を 身ごもり、年子で次男が誕生した。
そのため、30歳とはいえ 小学校3年と2年の息子がいるのだった。
慣れない子育てにバタバタしながらも、 優しい夫に支えられ、 根が明るく素直な美紀は、 ここまで特に何の疑問もなく 過ごしてきた。
しかし…
子供が小学校に通い始めてから、 家で空いた時間ができていた。
今までがむしゃらに突っ走ってきた美紀が、 改めて自分の生活を見直すことは ごく自然なことであった。
いつから 自分のために生きなくなったのだろう。
あと数時間で 子供たちが帰ってくるが、 その間に買い物をし、おやつを用意し、 夕飯の支度をしなければならない。
それから風呂を沸かして入浴させ、 帰りの遅い夫の食事を用意し、 子供を寝かしつける。
それで今日も終わり、また次の朝が来る。
私は何を思って生きればよいのか…。 考えてはいけないと 思ってきたような気もする。
でも一度考えてしまった美紀の心には、 疑問と不安が日々渦巻いていた。
それでも美紀は毎日同じ時間に 同じ行動をし続ける。
美紀は今夜のおかずの鶏肉を買いに、 自転車にまたがった。
乾く心
美紀は、唐揚げの下準備をするため、 キッチンで支度を始めた。 ふと、油が切れていたことに気づいた。 食べざかりの子供たちと夫では、 この量では足りないだろう… 仕方なく、 近所のコンビニへ財布を持って出かける。
12月ということもあり、 すっかり日が短くなっていて 4時なのに、うす暗い。 街灯の明かりが、 さみしく道を照らしていた。
もうすぐクラブ活動を終えて 子供たちが帰ってくる。 早くしなくちゃ、と 足早にコンビニへ向かった。
普段コンビニで買い物をしない美紀は、 油がどこにあるのかわからず 店内をぐるぐる回っていた。
「美紀?!」
ふいに、背後で女性の声が聞こえた。
この近所のママ友は、 下の名前で呼ぶ人はいないけれど…
驚いて振り向くと、 懐かしい顔が、目をまん丸くして 見つめていた。
「えっ?!貴子じゃない!!」
貴子とは、中学生の時の 仲良しグループの一員だった。 卒業してからも仲良くしていたが、 結婚して疎遠になり、気づけば 連絡先もわからなくなっていた。
あまりの突然の再会に、 2人とも興奮し、年甲斐もなく はしゃいでいた。
しかし… 貴子の丈の短いスーツのスカートや ハイヒール、隅々まで行き届いた メイクと巻かれた髪を見て、 美紀は、自分の格好にうんざりした。
すっぴんでひっつめ髪、ジーパンに 油にまみれたエプロンをして、 毛玉の浮いたニットカーディガンを羽織り、 靴ははきつぶしたサンダル…。
「この近所に住んでいるの?」
貴子はマスカラがきれいに塗られた 大きな目を見開きながら聞いた。
「ええ、去年念願のマイホームを買ったの。 小さな家だけど、とっても気に入ってるわ! 子供も小学生になったから、 ガーデニングとか始めてる。 しがない主婦なのよ」
自分でも言わなくてもいいことを 言っていることは、気づいていた。
でも、貴子から感じる キャリアウーマンの輝きがまぶしく、 言わずにはいられなかった。
「いいわね〜 幸せがにじみ出てるわよ」
貴子は笑いながら続けた。
「私は毎日終電でくたくたよ。 大きなプロジェクトに参加してて、 取引会社のところに寄ってきたとこなの。 今も一人だから 住んでるのは小さなアパートだけど、 彼氏がいてくれるから なんとか自分をごまかしてるわ。」
「へぇ、そうなんだ。忙しいのね」 と言いながら、美紀の心は チリチリと焼けるような痛みを 感じていた。
仕事が充実してるのに、彼氏までいるんだ…。
こちらは夫がいるが、 ここ3年くらいセックスレスだった。
美紀は結婚ってなんなんだろ、と 冷めた気持ちで、乾いた笑いを浮かべた。
「あ、そろそろ会社に戻らなきゃ! ね、せっかくだから連絡先を交換しない?」
貴子が、きれいにネイルアートされた手で 携帯を取り出した。 スマートフォン… 美紀には、使い方さえわからない。
正直、気乗りしない。 が、久々の再会という、 普段はない新鮮な出来事に 少し興奮しているところもあった。
その場で連絡先を交換し、 2人は別れた。
家への帰り道、 美紀は、やたらと重いサラダ油を抱え 頬にピリピリと冷たい風が当たるたびに 心が乾いていくのを感じていた…。
あらすじ
三澄貴子は、プロジェクトでミスをしてから営業の下っぱ事務処理のような仕事ばかり。
無職の恋人・順平は、もはや貴子にとって息子化していた。
他の女の影がちらつき始めつつもずるずると関係を続け、別れない理由は…