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官能小説 彼女の生きる道 後編
人生の違い
貴子はうす暗い倉庫で、 目当ての書類をかき集め、 段ボールを2個台車に乗せた。
一昨日したばかりのネイルアートが ホコリで黒ずんでいた。 それを見つめながら、 はぁ…と息を吐き、 そのまま台車を押して倉庫をでた。
それにしても昨日はかなりの偶然だった。 中学の同級生である美紀と 約10年ぶりの再会。 短大を卒業してすぐ結婚した美紀は、 同級生の中でもかなりうらやましがられ、 憧れの存在であった。
卒業後、何度か飲み会があったが、 子育てが忙しい美紀は参加できず、 気づけばすっかり疎遠になっていた。
30歳にもなると、 こうも人生が違ってくるのかと 貴子は改めて焦りを感じた。
昨日会った美紀は、 すっかり主婦らしくなっていた。 着ているものはキレイではなかったが、 体から母の持つ温かさや幸せがにじみ出ていた。
まだ自分には体験することのできない幸せ。 それを感じた瞬間、 知らず知らずのうちに嘘をついていた。
大きなプロジェクト? そんなもの、 もう何年も参加していない。 あの時は、営業の小間使いで クレーム処理に行った帰りだった。
むしゃくしゃした気持ちを 落ち着かせようと 缶コーヒーを買ったところだったのだ。 貴子を待っている彼氏はどうしようもない。
それに比べ、
マイホームを建てられる旦那を持つ美紀に、
嫉妬に限りなく近い気持ちが溢れていた。
そんな自分にも嫌気がさしていた。
この生活、 もうそろそろ限界だな…。
台車を押して エレベーターを待っていたが、 なかなか下りてこない。
今日は社内が慌ただしかった。 なんでも、新しく立ち上がる部署に 優秀な事業部長が引き抜かれてくるという。
どんな男か知らないが、 かなりのやり手らしいことは 同僚の噂で聞いている。 しかし、貴子には直接関係のない話だった。
今でこそこんな立場だが、 貴子にもやりたいことは たくさんあるのである。 簡単に新しい部署を立ち上げ、 やりたいことができる連中に どうしようもないやり切れなさを感じていた。
私にもチャンスがあれば… いつもそう思いながら 苦い肝を舐め続けてきたのだ。
イライラしながら 地下2階で壁にもたれて エレベーターの到着を待っていると、 ようやくドアが開いた。
当然、誰もいないと思い、 台車を進めると、 中から一人の男が出てこようとしているところだった。
貴子はとっさに 「すみません!!」 と台車を止め、後ろに下がった。
その男は、 40代くらいの長身で前髪が長く、 なんでも見抜いてしまうような 力のある目をしていた。
その眼力に圧倒され、 台車を持ったまま貴子は固まっていた。
男は貴子を見て 「ここって地下倉庫?」 と聞いてきた。
「はい、そうです」
答えるのがやっとであったが、 なんとも魅力的な目に吸い込まれそうだった。
「そっか、君以外誰もいないよね? もうあちこち挨拶に行かされて 疲れちゃってさー、 誰もいないところに 行きたかったんだよ。 ここってタバコ吸える?」
その男は、立て続けに一人でしゃべると、 開延長ボタンを押して自分が降り、 どうぞ、と言って貴子を通した。
「あ、ありがとうございます…」
貴子はそう礼を言い、 台車を進めてエレベーターに乗った。
閉めるボタンを押そうとした時、 男は手で扉を抑え、 「君、どこの部署の人?」 と、いたずらっ子のような表情で聞いてきた。
「え、営業2部ですが…」
ためらいながら貴子が答えると、 満足そうにニッと笑い、 「ありがと、お疲れ」 と言いながら扉から手を離した。そして、 「ここに俺がいること、誰にも言わないでね」 と言った。
貴子はドアが閉まる間に「はい」と答えたが、 「誰だかわかんないのに言えないし」と 苦笑いで独り心の中でつぶやいた。
そしてそれから2日後、貴子は 上司から新部署への異動を告げられるのだった。
美紀の憂鬱
貴子と再会して2日が経った。
貴子のきらきらしたメイクや爪を思うたび、 自分のささくれた手にうんざりする。
いつからメイクをしなくなったのだろう。 いつから自分の買い物よりも 食費を優先するようになったのだろう。
最後に浩之からほめられたのは いつだろう…。
そんなことが頭の中を 毎日ぐるぐると渦巻いていた。 そして5時の鐘の音が聞こえてきた頃、 長男が泥だらけで帰ってきた。
普段からわりと おとなしいタイプの子だったので、 美紀は驚いた。 顔も髪もどろどろで 膝には軽くけがをしていた。
「どうしたの?!」
美紀が尋ねても何も言わず、 そのまま洗面所に行ってしまった。
男の子だし、 こんなこともあるかなと 思いながらため息をつくと、 ふいに電話が鳴った。
嫌な予感がする…。 出てみると、長男の学校の担任教師からだった。
どうやら友達と小さなことで 口論になり、派手にけんかをしたらしく、 相手の顔にけがを負わせてしまったらしい。
今までそんなことをしたことがなかったのに… とにかく謝りに行かなくてはならない。
長男の手足を洗わせ、謝りに行って 仲直りをしなくてはならないことを説得させた。
重い足取りで共に学校へ行き、 相手の母親と子供に深く頭を下げて謝り、 そして、先生にも迷惑をかけたことを詫びた。 幸い、相手の親も理解のある人だったので、 大した大事になることもなく、 子供たちも仲直りをすることができた。
緊張の糸が切れ、ほっとしながら 家に帰ると、すでに8時を回っていた。
くたくたになりつつも、 ほったらかしにしていた次男の相手をし、 2人を風呂に入れ、いつも通りに 10時には寝かしつけた。
ソファーに座り、ぐったりしていると、 浩之が帰ってきた。
いつもは話すこともないので 先に寝るのだが、今日のことは話さなくては、と 食事の用意をしながら長男の一件を話した。 浩之はどことなく 疲れているようだった。
でも、普段の顔付きのようにも思えたので、 美紀はそのまま話し続けた。
「でね、あの子なかなか謝らなくて…」
浩之は何も言わず、 ただテレビを眺めながら、 口に食事を運んでいた。 と、途端にふいに手を止め、 眉をきゅっと寄せた顔で、 美紀に向き直った。
「お前は気楽でいいよ。 そのくらいのこと、母親なんだから当然だろ。 俺は疲れてるんだよ。」
そう言い放つと箸を置き、 寝室へ向かっていった。
美紀はあまりのことに茫然とし、 いつからこんなに会話がしにくくなったのだろう、 とぼんやりと思った。
自分の人生
いつものワイドショー番組を観ながら、 ぼんやりと考えていた。
「気楽でいい」
浩之からそんな言葉を言われるとは 思わなかった。 いつも温厚な夫なので、 悪い言われ方は今まで一度も されたことはなかった。
許せない!という憤りもあったが、 それ以上に、自分のしてきたことが 認めてもらえていなかったことに 悲しみを感じた。
気楽?私は「気楽」だったのだろうか?なぜそんな風に思われたのか? どうしたら浩之にそう思われないのか? そんなことをぐるぐると考えながら、 広告を見ようと新聞を手にした。
すると、スーパーの広告と共に 小さな紙切れがひらり、と床に落ちた。 無意識に拾って見てみると、雑貨屋のアルバイトのチラシだった。
【週3日間、12時〜15時。 時給700円の販売のお仕事です。 空いている時間に少しでも お手伝いをしてくださる方を 募集しています。主婦の方大歓迎!】
アルバイト…仕事…。
結婚と妊娠で諦めてしまったが、 今でもできるかもしれない…。 そう思うと美紀は電話を手にし、 書かれていた番号のボタンを押していた。
もう気楽だなんて言わせない。 私も始めるんだ、私の人生を。
そして、それから1週間後、 美紀は雑貨屋でアルバイトを始めた。 毎日いろいろな人と知り合い、会話をする。 自分が勧めた商品が売れると、 やりがいを感じた。
こんなに仕事って楽しかったんだ、 と毎日が輝いて見えた。 もちろんいいことだけでもなく、 接客業の難しさを痛感することもあった。
でもそれで働くことの辛さも理解でき、 浩之に対する気持ちも、一歩引いた見方が できるようになってきていた。
先日の一件で少しギスギスしていた 浩之との関係も、日々修復できていた。
素直に「お疲れ様」と言えたり、 体調を気遣う気持ちも芽生えた。 そんな美紀の日々の輝きに、 子供たちも「ママ楽しそうだね」と 言ってくれるようになった。
ある夜、家事を終え、 浩之が先に眠るベッドへ 起こさないようそっと入ると、 ふいに胸元へ手が伸びてきた。
もうずっと経験しなかった感覚が ぞくぞくっと背中を這う。
「どうしたの?」
浩之へ囁くように聞くと 「なんか最近キレイだから…ダメ?」 布団の中からくぐもった浩之の声が聞こえた。
くすぐったい気持ちを抑えつつ、 「いいよ」と答えた。
すると浩之はおずおずと腕を伸ばし、 美紀を抱きしめてぐっと引きよせた。 久々に感じる浩之の腕の感触。 自然と体が熱くなるのを自覚した。
美紀は浩之の方を向き、 頬に手を添えてそっと唇を合わせた。
その瞬間、浩之は布団をがばっと剥ぐと、 美紀に覆いかぶさった。 その勢いに驚きつつ、 美紀はどんどん体が熱くなる。
唇を離すと、浩之の唇は どんどん下へ這っていく。 それだけで今まで出したことのない せつない声がもれる。
そして浩之は美紀の下着を剥ぎ取り、 足を開かせると間に顔をうずめた。 温かい吐息と舌の感触を感じた瞬間、 ピクリと体が反応する。
とろとろに溶けたそこは、 浩之を受け入れるのに十分潤っていた。
「入れていい…?もう我慢できない」
浩之が口元をぬぐいながら 美紀の耳元でささやく。
「うん…私も。ちょうだい…」
その美紀の声を聞いて満足そうにうなずくと、 浩之が押し入ってくる。 久々の快感に、 腰ごと溶けてしまいそうな気さえする。
それから二人は夢中で求めあった。 今までで一番熱い夜だ、と 何度目かの絶頂の中、 朦朧とする意識で美紀は思った。
終わってから、浩之の腕枕で眠り、 幸せは自分から見つけに行くものなのだ、 と改めて感じていた。
動こうとしなかっただけで、 貴子をうらやましく感じたり、 周りに不満を感じていた自分を反省した。
自分の人生は自分で作っていくもの。 浩之の存在があるからこそでもある。
彼をもっと大切にしていきたい。
そう思うと熱い気持ちがこみ上げ、 すやすやと眠っている浩之にそっとキスをした。
新しい道
まさかのサプライズ人事に 社内も騒然としていた。
窓際にあったデスクの整理をしている間も、 周りでコソコソと今回の異動について 非難する声が聞こえた。
でも貴子にはそんなものは関係なかった。 やっと自分の持っているものが認められた、 自分の力が発揮できる!と思うと、 どんな辛い言葉も聞き流すことができた。
先日、地下倉庫で出会った男こそが、 例の引き抜かれた新部署の事業部長、金子だった。 貴子の内に秘めた燃えるような目に 可能性を感じ、試したいということで 直々に上司へ話をしにきてくれたらしい。
貴子の人生に一縷の光が 見えてきたのを感じていた。
1週間後、 新プロジェクトのキックオフと共に、 雑用しかしていなかった生活が、 会議や打ち合わせのための外出、 PRのための雑誌社周りなどで慌ただしくなった。
毎日感じるやりがいに、 貴子は生き生きとしていた。 多少の行き詰まりもむしろ楽しく感じ、 仕事のスピード感に爽快感を覚えていた。
そんな貴子の姿に社内の態度も変わり、 称賛の声も挙がり始めた。
「どうだ、最近。楽しそうだな」
ある金曜の夜、上司の金子が 声をかけてきた。
金曜ということもあり、 残業をしているのは貴子と金子だけだった。 貴子はそれすら気がつかず、 必死で仕事をしていた。
「はい、楽しいです!この間の企画書、 あと少しで完成しますので!」
ニコニコとほほ笑みながら 答える貴子に、金子はふっと笑う。
「やっぱり俺が見込んだだけあるな。
根性あるよ。」
「え…?」
「エレベーターが開いて三澄を初めて見たとき、
目の中に、臥薪嘗胆(がしんしょうたん)って
書いてあった。
炎がくすぶるような、ものすごい目をしてたの、
自分で気づいてた?」
思ってもみない言葉に、驚いた。 が、あの時、確かにそんな気持ちを 抱いていたことを思い出す。
「そうですね…そうかもしれません。 でも金子さんのおかげでこんなに 今やりがいを感じています!ありがとうございます!」
満面の笑みで返す貴子を見て、 金子はまたふっと笑うと、 「しかし腹減ったな。メシまだだろ? 金曜なんだし、そろそろ止めにして一杯飲もうや」 と言った。
金子は頼りがいのある、男らしい上司だが、 垣根を感じにくい人懐こさも兼ね備えていた。 そんな性格のよく表れた 彼の言い方にホッとしたものを感じる。
その夜、貴子は金子と食事をし、 仕事のことやプライベートのことについて たくさん話したのだった。
そして彼の熱い野望やこの会社に 入ったいきさつなどを聞き、 上司としてだけではなく、 男性としての魅力も感じ始めていた。
金子と飲んだ帰り道。 貴子は携帯を取り出し、 順平の連絡先を表示させた。 もうずるずるした関係はやめよう。 私は順平がいなくてもやっていける。
美紀のような生活をうらやんで、 嫉妬という醜い感情を抱いた自分を恥じた。 私のしたかった生活はこれだったんだ。 そして私は順平のことが好きだったのではない。 順平とのセックスで辛いことを 忘れたいだけだったのだ。 もうあの日々と縁を切ろう。
貴子は「発信」をタップした。
雪の降りそうな、きりっとした風が 吹いていたが、貴子は爽快感を感じていた。
<彼女の生きる道 〜おわり〜>
社内恋愛でもっとドキドキしたいあなたにオススメ!
あらすじ
下っぱのような仕事ばかりの貴子と、中学の同級生・美紀と約10年ぶりに再会。
何度か飲み会があったが、早くに結婚し、子育てが忙しい美紀は参加できず、疎遠になっていた。
すっかり主婦らしくなっていた美紀を見て、貴子は焦りを感じた。
イライラしながらエレベーターを待っていると、エレベーターに謎の男性が…彼との出会いで貴子の人生が変わり始める…