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官能小説 うずきがとける 前編


愛おしいのに…

「もう分かったよ、リサ」

電話の向こうでため息をつく恋人、圭介に、 「全然分かってないじゃない!」と、声を荒げてしまう。 お互いに30代目前。 高校生でもあるまいし、彼の「あっそ」の言い方ひとつで 喧嘩になるなんて…。

ふたりで気まずいまま電話を切り、 ひとりで気まずいままにベッドに入った。

“昨日、ごめんな” 翌日。 仕事が終わって帰宅する途中の電車の中で、 圭介からのメールを受け取った。 ちょうど、私からも彼に謝ろうと、 携帯を手に持っていたところだった。 でも、言葉が見つからず…。

(これで、いいのに。これだけで…)

私は、自分の小ささを思い知らされたようで、 “こちらこそ。私が悪かったよ。ごめんね” と返した。

「お疲れさま」

私がアパートに戻るタイミングで、 圭介が電話をかけてくれた。 彼は今日、残業。 休憩するからと、電話口でコーヒーを飲んでいる。

「圭介、あんなこと言って、ごめんね」

「こっちこそ。ちょっと疲れ過ぎかも。言い方、悪かったな」

今日の仕事の疲れも、喧嘩のモヤモヤも、 蒸発していくようだった。 「大丈夫?」と訊く私に、 「大丈夫だよ」と戻ってきて、電話を切った。

電話をテーブルに置き、ソファに身を預けても、 彼の「大丈夫だよ」という声が耳に残っている。

「大丈夫だよ…大丈夫だよ…」

私は、口の中だけで言葉にした。 その口の中に、彼とのセックスの記憶がよみがえる。

ちゅるちゅる…ジュルジュル… 私の唾液は、圭介の中心を覆い尽くしていく。 口の中いっぱいに彼の中心を含んで、舌でなぞる。 縦に…、横に…、まあるく…。 それと同時に、太ももの内側やお尻を撫でられるのが、 圭介は好きだ。 私は、5本の指先と指の腹、そして手の平を駆使して、 彼の肌をなめらかになぞる。

愛おしい。 彼の中心も、脚もお尻も。 もちろん、他のすべての部分も、心も。 全部、愛おしい…。

でも、でも…。

「ぅぅううっっ…ぐぅ」

私は、思わず彼の中心を半分ほど口から出してしまう。 彼の先走りがやって来ると、どうしても続けられない…。 この味が…。彼の一部だと分かっているのに…。 もっと、きもちよくなってほしいのに…。

咳き込んでから数秒間、浅く口に含んだ後、 私は、また深く沈めようとした。 しかし、 「大丈夫だよ」と頬を撫でる圭介。 肩に手を伸ばし、脇を抱えて抱き寄せてくれる。

…彼とのセックス。 オーラルが、先走りの味で ストップしてしまうことが少なくない。

彼はよく「大丈夫だよ」と言ってくれる。 本当は、もっとしてほしいんじゃないか…。 本当は、まだまだ満足していないんじゃないか…。 …それは、私が原因…? 私が、咳き込まなければ、彼は止めないのに…。 次に会えたときには、 もっと、頑張ってみよう…。 それで、もっとゆっくりオーラルをして 気持ちよくなってもらおう…。

私は、電話での「大丈夫だよ」と セックスでの「大丈夫だよ」の両方を思い出しながら、 できるのかできないのか分からないことを、 決心していた。

ないまぜの荒いキス

「これ、使ってみなよ」

友達の律子が“LOVE SYRUP”と書かれた 小さなボトルを手渡してくれた。

セックスの最中、オーラルをしていても、 彼の先走りの味で続けられなくなってしまう私。 でも、彼は優しい。責めない。 でも…。だからこそ、 もっとゆっくりオーラルができれば…。

そんな私の悩みを、 最初から真剣に聞いてくれた律子。 “ラブシロップ”を手渡してくれるときには、 「たーーっぷりつけて、舐めてあげなよ〜」と いたずらっぽい顔になっていた。

夕飯の食器をシンクに置いて、冷蔵庫を覗くと、 圭介の大好物、手作りのプリンが、 冷たいような優しいような顔をして、2つ並んでいる。

4日前の電話でのケンカ。 翌日の仲直り。 そして今日、私のアパートでデート。

夕飯を済ませて、これからデザート。 ラップのかかったプリンを2つと、 カラメルを冷蔵庫から取り出す。 そして…。 もう1つ小さなボトルも…。

「できる…かな…」

“ラブシロップ”の文字を見つめながら ボトルを握りしめて、 私は、口の中だけで小さくつぶやいた。

「美味しい〜。相変わらず、リサのプリンは絶品〜」

カラメルをかけたプリンを手渡すと、 圭介は心底ご機嫌な顔を見せた。 テーブルの上には、 カラメルの瓶の隣に、“ラブシロップ”を置いてある。

律子からもらったこの小さなボトルを、 どんなふうに出せばいいのか分からずに、 「使おう」なんて、とても言い出せず…。 結局、不自然だと思いつつも、 プリンと一緒にリビングに持ち出し、 カラメルの隣に並べた。

…けど、圭介は今のところ、気づいていない。 「味、足りてる?」なんて確かめてしまうのは、 きっと食べることに集中できないから…。 圭介は、笑って頷くと 「もうちょっと、カラメルかける?」と テーブルに手を伸ばす。

(あ…ダメ…) テーブルに視線を走らせて、 私は、心の声が口から出そうになる。

「ん?何、これ?」

圭介が“ラブシロップ”を手に取る。 「っあ…」という私の声に、 「ラブ…シロップ??」と彼の声が重なる。

「見ちゃ、ダメ!」

思わず、彼の手からボトルを奪うようにして、 テーブルに戻す。 そして勢いで、彼を、 座っていたソファーの背もたれに押し倒し 唇を重ねた。

荒っぽい…。それは自分でも分かっていた。 でも “ラブシロップ”を用意している照れくささと、 上手に使えるかという緊張と、 シラけられてしまったら…という不安と…。 そのないまぜを、荒っぽさで振り切っていた。

「どうしちゃったの?…リサ」

半分は不思議顔で、 半分はどこかいたずらな顔で、圭介が目を合わせる。 私は、「もうっっ」と軽く彼の肩を叩くと、 再び、唇を塞いだ。

ゆっくりと唇のしわをなぞることもなく、 舌をいきなり彼の口に這いこませ、かき回した。 そして、彼の唾液を、 ジュルジュルと音を立てて吸い上げる。

(この唾液と、同じ。 この甘くて柔らかい唾液と、あの先走りは、同じ。 同じように、圭介の一部なんだから…)

私は、左手をソファーで支えながら、 右手で彼のシャツのボタンを、1つずつ外していった。

吸い込むように…

ソファにもたれる圭介の服を、 口づけながら脱がせていく。 ベルトを緩めて、デニムも下ろした。

(どうして、あの先走りが、無理なの…)

自己嫌悪と申し訳なさが、改めてこみあげて、 思い切り彼のウエストに抱きついた。 ボクサーパンツも引き下ろすと、 目の前に、彼自身が迫って来る。 すっかり充血して、内側から満ち満ちている。

視界の隅に“ラブシロップ”がチラリと入る。 いつ手を伸ばそうか…。 今じゃない…気がする…。 でも、それじゃ、いつ…? …そんな思いを振り切るように、 ジュルッと音を立てて、彼自身を口に含む。

あぁぁ、やっぱり愛おしい。

ジュルジュルと全体を口の中で感じて…、 横から吸い付いてチュルチュルと音を立てて…、 やっぱり圭介のすべてが愛おしいのだと、再確認した。 そう思うと、 自然と…、ラブシロップに手が伸びた。

「リサ…それ、何…?」

不安と期待が混ざった声に、 「律子にもらったの」と目を合わせてキャップを開ける。 そして、左の手の平にラブシロップを落とす。 そのシロップをこぼさないように、 そっと、彼自身を包み込んで上下させる。

テラテラ…。キラキラ…。 飴細工のような光が、彼自身から放たれている。

(これで…、いい、の…?)

チュルッチュルッ。 自分の手元から響いてくる音が、やけに耳に響く。

「あぁぁ、リサ、なんか、すっごくいい…」

圭介の声が、柔らかく甘くなっている。 同時に、彼自身にはどんどん力がみなぎっていく。

(たっぷりつけて、舐めてあげなよ)

律子の声が、脳裏を走った。 私は再び、ラブシロップのボトルを手にした。 そして、彼自身の先端に、トロリとたらしてみる。

(これで、舐めるの…?)

戸惑う私の目の前で、こぼれ落ちそうなシロップ。 私は思わず、ジュッと吸い込むように、 彼自身の先端を口にする。
「うぅ…」とこらえる声が、ほぼ同時に聞こえた。

(甘い…飴みたい…)

転がって…絡まって…、勝手に舌が動いてしまう。 私は、口から彼を出して 視線を彼の顔に向ける。 彼はトロンとした目で 「やめちゃうの?」と返した。 そんな言葉も表情も、初めて…。

「もっと…」という更にとろけた声に、 今度は、根本まで彼を沈みこませた。

「あぉぅ…。リサ…。すごい…いい」

ハァハァという吐息の波間に漂う彼の声。 その息と声にスイッチを押されたかのように、 私の体の芯が、熱くなった。 唇を、彼の根本までニュルリと届かせて、 先端を舌でつつくほどに口を引き上げて、 ジュルリと吸って。 また根本へと戻る…。

(あ、先走り…)

口の中が、反射的に敏感になった。 でも、今までのように苦しくなってしまうことは、ない。

(彼の何もかもが、…先走りも。 全て、愛おしく甘い。逃したくない…!)

さらに先走りが来ても、私の口も手も、止まらない。 それどころか、勢いを増していく…。

「あぁぁ、だめ…リサ…、力…抜けちゃうよ…」

腕を、だらりと髪からソファに落とす彼の声は、 ジュルッ…チュルッと頬張る音に、かき消されてゆく。

胸、とろり…

彼は、火照った息で「交代…」と吐いて、 ほとんど勢いでワンピースを脱がせる。

「すごい。ホントにカラメルみたいだね」

ラブシロップを指先に乗せ、トロリと光る指で、 私の鎖骨をなぞり、胸に下ろす。 滑らかなとろみを含んだ指先が、 胸のふくらみに辿り着く前に、 「…っはぁっ」と吸う息が声になる。

「リサも、きもちい?」

と、ラブシロップを、今度はたっぷりと左手に垂らす。 そして、両手に馴染ませて、 手で絵具を混ぜるように、 私の胸の両方のやわみを、包み込んだ。

「ぁああぁぁっっん」

目の前の風景に脳がしびれて、 自分の声も遠くに聞こえる。 胸の先端の小さな突起が、ツンと硬い。 コリコリと、欲望の音がしそう…。

私の視線に気づいたのか、 圭介が、その先端に舌を近づける。 私は、思わず胸をせり出す。 「…ぅんんっっ」とねだるように声が粘った。

彼は、ひと言「だめ」と言うと、 舌で胸を揺らしながらシロップを舐め取る。 それから、目を合わせると、 左右の親指の腹で、コリコリとした先端に触れた。

「んんっっはぁぁ」 一瞬にして、 柔からな繊毛を備えた電流が、全身を駆け巡った。

「いつもより、ずっと硬いよ…」

彼のその言葉が、少し不自然に感じるほど、 ラブシロップが馴染んだ彼の指は、 いつもの何倍も柔らかく感じた…。

彼は、左腕を私の背中に回すと、抱きかかえる。 そして、ワンタッチでベッドになるソファを、 器用に平らにした。 胸を溶かすように手で包み、撫でながら、 みぞおちからおへそへと、舌を往復させる。

彼の舌が、ふと、おへそよりも下へと伸びていく。 右脚の付け根の内側を、そっと這う…。 私は再び走った電流に、 思わず、脚を閉じるような力が入る。

「すごい、リサ。もうプックリしてる」

そう言って、私の大きな両の花びらに、 スーッと指を走らせる。 そして今度は、 私に見せながらシロップを手に落とすと、

「欲しがってる、リサ。中から、いっぱい出てきてるよ…」

と、私の蜜壺の入り口に、トンと一瞬触れた。

「ひゃん…」と小さく跳ねながら、 私はかぶりを振る。 彼は、大きな花びらを押し分け、 小さな花びらをなぞる。

「こっちも、すっかり大きくなってるよ…」

彼はそう言うと、私のめしべの先に、 シロップのたっぷりついた指先を乗せた。 そして、小さく丁寧に円を描くように、めしべをなぶる。

「ぁぁあああ…もう…ダメ…」

濃い愛液をどっぷりと塗られたときよりも、 さらに何倍も深いとろみが、めしべを包み込む。

「もうちょっとだけ、我慢してごらん…」

彼はそう言うと、 指先についたシロップを軽く舐め取って、 そのまま、めしべを口に収めた。

「んんんはははぁぁぁ…」

アリ地獄にはまり始めたアリのように、 私は、無駄な抵抗と本能的に分かりながら、 全身に力をこめ、 同時に、その力が抜けてゆくのを感じていた。 彼が、柔らかく吸い付く。

「ダメ…ダメェ…。もう…。んんんんっっっ」

私は、最後の抵抗も虚しく 中心に引きずり込まれるアリとなった。

⇒【NEXT】「ダメ…、リサ、なんか今日、全然ガマンできない…」(うずきがとける 後編)

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あらすじ

オーラルセックスの悩みを抱えるリサは、些細なことでの痴話喧嘩をきっかけに圭介とのセックスを思い出す。
彼のすべてが愛おしいはずなのに、フェラチオの味が苦手で…

はづき
はづき
肌の細胞すべてに、体の動きすべてに、心が宿る。 心が…
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