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官能小説 遠距離恋愛 2話 (遠距離恋愛の小説は切なくて…)
遠距離恋愛は切なくて…
唯が怒っている。理由はわからないが、怒りのオーラは伝わってくる。
「久しぶり…」
沈黙を破ったのは唯だった。
「久しぶり」
そう言ってから僕は、冷めたベトナムコーヒーをあおった。
東京に住んでいる頃、唯とよく通ったベトナム料理屋に2年ぶりに訪れてみた。
内装もメニューもほぼ変化はないが、有名な女性雑誌に掲載されてから人気が出たらしく、2年前より明らかに客入りがいい。
「昔より人が多くて落ち着かないな」
「私は気にならないけど」
唯の言葉に険がある。
「私たち、3カ月ぶりよ」
「そんなに経つか」
「しかも、3週間ぶり」
「えっ?何が?」
「誠二としゃべるの」
忙しくてしばらく電話しなかったことは認めるが、そんなにあいだが空いていたとは気づかなかった。
「でも、唯も電話しなかっただろ」
「…」
「ケンカはやめよう。今日は日帰りだから、一緒に居られる時間があまりないんだ。ね、機嫌なおして」
「もう帰れば」
「なんだよ、その言い方。取り引き先の用はもう済ませたから、夜の新幹線まで時間はあるよ。唯との時間作るために、新幹線の時間を遅くしたのに」
うつむいたままの唯の肩が震えている。泣いているらしい。一体どうしたんだろう?
慌てて会計を済ませ、彼女の手を引き外へ出た。
まったくの誤解
とりあえず2人きりになれる場所をと思い、僕らはカラオケボックスに入った。
「気晴らしに歌うか?」
おどけた調子でマイクを差し出してみたが、唯は何も言わない。
「僕に言いたいことがあるなら、全部言ってみて。なんでも聞くから」
なるべく優しい口調を心がけながら、唯に尋ねる。しばらく沈黙が続き、唐突に唯が言った。
「浮気してるの?」
「まっ、まさか!」
僕は、心当たりがないのに動揺したような声を出してしまった。
「最近、エッチ盛り上がらないから…」
「それで怒ってるの?」
唯が頷く。
まったくの誤解だ。このところ仕事がハードで、特に出張のときは疲れ切っていることが多いだけだ。
「誤解だよ。僕が唯一好きなのは唯だけ!」
唯がクスリと笑った。
「唯一好きなのは唯だけ」というシャレは、僕の口グセなのだ。
「機嫌なおった?」
「うん。でもね…もっと誠二とエッチしたい。体がつながっていないと心まで離れちゃいそうで不安」
彼女の素直で切実な訴えに心が揺さぶられ、唯が猛烈に愛おしくなった。
「そうか…言いにくいこと言わせて、ごめん。今夜は帰らなきゃいけないから、今度会ったときにはいっぱいしよう」
僕は唯の肩を引き寄せおでこにキスをした。
耳元でささやいた
「なあ唯、僕からも1つ提案していい?」
「何?」
「僕は唯のいろいろな顔が見たい。だから、唯がもっと気持ちよくなれるようなアイテムを使ってみよう」
「アイテム?」
「たとえば、ローターとか」
「恥ずかしいよ…」
「今はね、カワイイのとかオシャレなのがあるんだよ。すごく香りのいいローションも」
「…誠二が使いたいなら、いいよ」
唯が顔を赤くしながら、恥ずかしそうに同意した。そんな彼女を見ているだけで、思わず興奮してしまう。
「手錠とかも…いい?」
「そんな…」
「どうしても、唯の恥ずかしがるところが見たいんだ」
僕は、わざと唯の耳元でささやいた。「はぁ…」と僕に寄りかかりながら、艶っぽいため息をつく彼女。
胸のあたりに彼女の丸みとぬくもりを感じ、込み上げる興奮を抑えるのが苦しい。
今度会う日が楽しみでたまらない。その日まで唯のあらゆるエロティックな姿を想像し、僕は眠れない夜を過ごすだろう。