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官能小説 LOVERS〜恋がざわめく〜


年下の彼氏

「ねぇ、琴音さん。俺、終電逃しちゃったから、琴音さんの家に泊めてよ」

会社からの帰り道、部下であり、恋人の花澤健人が、私の腰に腕を回しながら言った。

「やめてよ。会社の近くでは、くっつかないでって言ったでしょ?」
「琴音さんが可愛いから、つい」

健人は悪びれる様子もなく、にこっと微笑んだ。一瞬、その笑顔に「うん」と言ってしまいそうになる。健人は8歳年下の24歳。見た目だって、カッコイイし、なんで私のことを好きなのかいまいちわからない。

「明日も会社なのよ。健人が泊まりに来ると、寝不足になるし…」

週の半ばで寝不足になるのは正直辛い。

「終電過ぎまで仕事だったし、経費で出るんだから、タクシーで帰ったら?」
「あー、また、そうやって、上司面するー!会社出たら、恋人同士でしょー?」
「でも…」
「でもじゃありませーん!今日は琴音さんちに泊まるから!!」

健人は立ち止まり、私の目をじっと見つめた。

「わかったわよ。でも、エッチはしないからね」
「えーっ!」

「だって、絶対寝不足になるし」
「そんなこと言わずにしようよー」
「イ・ヤ。駄々こねるなら、帰りなさい」

私は健人に構わず歩き出した。

「わかったよ。今日は我慢する!」

私に遅れないように健人も歩きながら言う。

「イイコね〜」
「バカにしてるでしょ?」
「してないわよ。褒めてるの」
「なんか年下扱いされてる気がするなー」
「だって、すごく年下じゃない。私が社会人1年目のとき、健人は中学生でしょ」
「そうだけどさ」

健人は隣で口を尖らせている。

正直、私がこんな年下と付き合うなんて思ってもみなかった。しかも、部下に手を出すなんて。でも、健人の隣は居心地がよかった。

私たちは家の近くにあるコンビニでお弁当を買って、私の部屋で遅い夕食をとっていた。

「これ、健人、好きだったよね?」

私はお弁当に入っている唐揚げを指差す。

「うん、大好き♪ あーん」

健人は嬉しそうに言うと、口を開けて私を見る。私が唐揚げを健人の口に運ぶと、彼は満面の笑みを浮かべて、唐揚げを頬張った。

「美味しい?」
「うん! でも、琴音さんの方が美味しそう♪」

そう言って、健人は私を抱き寄せた。

意地悪な愛情

「ねぇ、今日はお風呂一緒に入ろうよ」
「えっ、でも…」
「時間短縮にはなると思うなー。だから、ね?一緒に入ろう」
「わかったから、ご飯食べていい?」

私の言葉に満足そうに微笑むと、健人はパッと手を放した。

食事が終わると、私と健人はお風呂に入るためにバスルームの前にいた。

「ちょっと! お風呂に入るんじゃないの?」
「うん、入るよ。でも、その前に…」

言いながら、健人は私の首筋に舌をゆっくりと這わせていく。

「ん…」

次第に健人の舌は首筋を下り、彼の右手は私の胸へと伸ばされる。

「ダメ…!」
「なんで?」

首にキスをしながら、健人は言う。

「なんでって、お風呂に入れないじゃない」
「でも、琴音さんの身体はイヤそうじゃないけど?」
「…」
「ほら、やっぱり」
「健人の意地悪…」

私は健人の愛撫に流されるまま、脱衣スペースの壁に押し付けられた。

健人は慣れた手つきで私のストッキングと下着を下ろすと、ためらいなく、秘部に触れる。

「健人…!」
「なーに?」
「そこはダメ」
「どうして?」
「どうしてって…」
「したくなるから?」
「…」
「琴音さんったら、エッチだなー」
「そういうことじゃなくって…! お風呂は!?」
「入るよ」

完全に健人のペースだ。年下なのに、いつもこうだった。健人は自分のペースに持っていくのが上手い。

「やんっ…!」

健人がヴァギナに指を差し入れる。片方の手で私の脚を持ち上げた。それと同時に健人の指が更に奥深く沈んでいく。

「もうこんなに濡れてんじゃん」
「…言わないでよ」

私は恥ずかしくて、健人から顔を反らした。

「挿れていい?」
「ダメって言っても、挿れるでしょ?」
「正解♪」

健人はコンドームを手に取ると、手早く装着する。

「挿れるよ」
「うん」

私が頷くと、健人は私の片脚を持ち上げて、ゆっくりと挿入していく。

「あ、んっ…」
「痛い?」
「ううん」 「じゃあ、気持ちいいんだ?」
「恥ずかしいから、訊かないで」
「いいじゃん。教えてよ」

ズフズブと奥まで挿れ終えた健人が言う。私が黙っていると、健人は静かに腰を動かし始めた。

ワガママな彼と刺激的な情事

「やっ…、あんっ。そんなに激しくしないで」

私が言っても、健人が動きを緩める気配はない。

「琴音さんが正直に言わないから、いけないんだよ?」
「だって…」
「琴音さんってば、いっつも“だって”って言うよね」

そう言って、健人はくすっと笑った。その笑顔を可愛いと思った瞬間、健人は更に激しさを増す。

「やっ、あっ、ダメ…! やぁっ、んんっ…」

健人に貫かれながら、私は甘い声をあげ続ける。耳元で聞こえる健人の息遣いも次第に荒くなっていた。

「やっ、もうダメ…!」

私の言葉に健人は私の耳に唇をくっつけ、「一緒にイこう」と囁き、更にピストンを速めた。

「ああっ…!!」

私の声に反応するように、私の身体の中にある健人の一部が波打つのがわかる。肩で荒い息をつきながら、健人は私の身体からそれを抜き取ると私をぎゅっと抱きしめた。

「ありがと、琴音さん」

そう言って、健人は私の頬にキスをする。こんな可愛い男の人を私は知らない。だから、つい、ワガママも聞いてしまうのかな…。

私は健人に微笑み返すと、同じように彼の頬にキスをした。

お風呂から上がり、ベッドに寝そべりながら、健人が私を抱き寄せた。健人に寄り添うと、温かくてなんだかホッとする。

「ねぇ、琴音さん。もう1回しようよ」
「えっ?さっきしたじゃない」
「もっとしたい〜!」
「ワガママ言わないの。寝不足のまま、会社に行くのは無理!」
「…最近、琴音さんが冷たい」
「そんなこと…」
「もしかして、俺に飽きちゃった?」
「飽きてたら、無理にでもタクシーで帰らせてるわよ」
「ホントかなぁ…。俺のこと、子ども扱いするし、部下扱いするし…」
「だって、年下だし、部下でしょ?」
「そうなんだけど」

健人は口を尖らせ、むすっとすると、私に背を向けた。

「健人?」

私は起き上がり、健人の顔を覗き込む。

「エッチする気になった?」
「…わかったわよ。でも、一回だけだからね」
「うん♪」

健人は嬉しそうに返事をすると、私を押し倒した。健人の唇が私の唇を塞ぐ。そして、私のパジャマのボタンを1つずつ丁寧に外していった。

部下との恋に迷う瞬間、ざわめく気持ち

結局、昨日の夜、健人とエッチをして、私は寝不足のまま、出社することになった。隣を歩いている健人は朝からしっかり朝ご飯を食べ、元気そうだ。

「琴音さん、大丈夫?」
「大丈夫じゃないわよ。今日、会議で居眠りしたら、健人のせいだからね」
「えーっ!?」
「じゃあ、私、コンビニに寄ってくから」
「はーい。じゃあ、また会社でね!」

健人は笑顔で手を振って行ってしまった。

会社の人には私たちが付き合っていることを公言していない。だから、いつも健人がうちに泊まると、私たちはここのコンビニで別れることにしていた。<付き合っていることがわかって、健人が異動させられるのは、健人のためにもならないし、私としても困る。子どもっぽくて、駄々っ子みたいなところもあるけれど、健人は仕事がよくできるのだ。

「海野さん、お先に失礼します」

最近、中途採用で入社してきた水川さんが遠慮がちに声をかけてきた。

「お疲れ様。気を付けて帰ってね」

水川さんが出て行くと、私は大きな伸びをした。

「ふぁぁぁ…」

伸びと同時に思わず、あくびが出る。

時刻はすでに22時半。この時間になると、残業している社員はいなくなる。健人もさっき帰ったばかりだ。

やっぱり、平日は健人を泊めるのは今度からよそう…。

私がそんなことを考えていると、突然足音が聞こえた。ドキっとして振り向くと、そこには――。

「琴音さん、お疲れ様」

そこにはさっき帰ったはずの健人が立っていた。

「どうしたの?ていうか、ここに来るとき、水川さんに会わなかった?」
「会ったけど、大丈夫!琴音さんに会いに来たなんて思われないように、忘れ物しましたって水川さんには言ったから」
「それなら、いいんだけど…」
「そんなことより、琴音さん、お腹空いてない?」
「空いてる」
「そう思って、コンビニで琴音さんの好きなプリン買ってきたんだ」

健人は私の机の上に栄養ドリンクとプリンを置いた。

「ありがとう」
「頑張ってね」

健人はそう言うと、私の頭をポンポンとしてあっさりと帰ってしまった。

ああいう可愛いところが好きなんだよね…。だけど…。いつまでこんな生活続けるんだろう?

やっぱり、部下との恋愛って――。

彼との擦れ違い

今日は健人と久々のデートだった。

健人と一緒にいると楽しい。だけど、このままじゃ、きっとダメ…。本当はこんなこと言いたくないけど…。

夜景を見ながら、私はここ最近ずっと思っていたことを口にすることにした。

「あのね、言いづらいんだけど、もう私たち終わりにしない?」
「えっ?」
「やっぱり、上司と部下って、付き合っててもいいことないと思うの。会社にバレても、気まずいだけだし…」
「…」

健人は黙ったまま、眼前に広がる夜景を見ていた。冷たい風が吹いて、私たちを静かに撫でていく。

「あのさ、俺ってその程度?」
「えっ…」
「てゆーか、そんなに仕事が大切?俺のことは適当にあしらえばいいとでも思ってるわけ?」
「そんなこと、一言も言ってない」
「言ってるよ。いつだって、仕事が一番で全然俺のことなんて、考えてない」
「…」

仕事が一番だと言われて、私は返す言葉が見つからなかった。確かに仕事が大切だ。けれど、だからって、健人とどちらが大切かなんて、天秤にかけるようなことはしてこなかった。

だいたい、私が別れを切り出した理由だって…。

でも、仕事が好きで、いつだって、仕事を優先してきたのは事実だ。今の私の発言だって、健人にしてみれば、仕事のために別れると言っているように聞こえただろうし、大切にされてない、と思われたって、きっと仕方ない。

「よく考えてみて」

それだけを言い残して、健人は行ってしまった。私には彼を引き留めることも、追いかけることもできなかった。

ちゃんと謝らなきゃダメだよね…。

結局、私はあの後、電車を乗り継ぎ、健人の部屋の前で、終電の時間まで待っていた。けれど、結局、健人は帰ってはこなかった。

私は仕方なく、自分の家へと帰って来て、自分の目を疑った。

「健人…?」

帰ってくると、玄関の前に健人が座っていた。私の声に気が付き、健人は顔を上げ、立ち上がった。

「いや、言い過ぎちゃったなって思ってさ。謝りたくて」

健人の言葉に私はどこか安堵していた。

「私こそ、ごめんなさい」

健人は俯く私を抱き締めると、くすっと笑って「プリン買って来たんだ。一緒に食べよう」といつものように優しく微笑んだ。

喧嘩の後…感じる夜

部屋に入ってすぐ、別れ話をしたのなんて嘘のように、私たちはお互いの唇を奪い合う。
一頻り、愛情を確かめ合った後、私たちは見つめ合った。
私は意を決して、口を開く。

「私があんなこと言ったのは、健人のことを考えたからなの」
「わかってるよ」
「えっ…」
「俺が告白したとき、琴音さんが言ってたことを思い出したんだ。“上司の私と付き合って、それがバレれば、きっとあなたは異動させられる。あなたのやりたいことはこの部署でしかできないでしょう。あなたの将来を私が潰すことはできないのよ”って」
「覚えてたんだ…」
「まぁね。真剣に部下としての俺のことを考えてくれてるんだって、尚更好きになったもん」

少し照れくさそうに健人は言った。

「でも、結局、健人と付き合っちゃったけどね」
「琴音さん、“でも”とか“だって”が多すぎ!お互いが好きなら、いいじゃん。難しいことは抜きにして、一緒にいようよ」

健人の言葉が素直に嬉しかった。私は嬉しさを噛み締めるように静かに頷いた。

「てゆーかさ、琴音さんって呼び方は、距離が縮まらなくて、よくないんじゃないかなって思うんだ。
だから、今日から、琴ちゃんって呼ぶね」
「やめてよ、恥ずかしい」
「いいじゃん、琴ちゃん♪」
「ダメ!」
「あ、それから、“ダメ”も禁止ね。すぐ言うから」
「…」
「というわけで、しよっか。琴ちゃん」
「ダっ…」

ダメと言いかけて、私は口をつぐんだ。

健人はにっこり微笑むと、突然、私の下着の中に手を入れてきた。優しく彼の指が私の一番敏感な部分を刺激する。

「やぁ…」
「琴ちゃん可愛い♪」

健人は甘い声をあげる私を見下ろしながら、私の下着を引きずり下ろす。私の脚をゆっくりと開かせると、秘部に舌を這わせ始めた。

「健人…!」
「気持ちいいんでしょ? もっとしてあげる」

健人は艶めかしく、舌を動かし続けた。

しばらく、彼の愛撫に身悶えた後、健人に「挿れていい?」と言われ、私は静かにうなずいた。彼の大きくなったペニスを私の身体はすんなりと受け入れた。なんとも言えない熱さと快感が身体中を駆け巡る。

「今日は寝かせないからね」

健人は甘く囁きながら、ピストンを開始した。

彼の愛を心と身体で受け止めながら、ずっとこの人と一緒にいたい――私は強くそう思った。

<LOVERS〜恋がざわめく〜 〜おわり〜>


⇒作家:野々原いちご 「Hayami's FaKe SToRy」


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あらすじ

琴音は、部下であり8歳年下の彼氏・健人と密かに社内恋愛をしている。
仕事で終電を逃したから泊めてほしいという健人をタクシーで帰そうとするが、恋人の甘え上手さに…

野々原いちご
野々原いちご
小説家。 1984.3.12生まれ。 法政大学文学部…
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