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官能小説 恋猫、飼い始めました。 1話
不安がインクの染みのように…
星野マリエはメイクポーチをまさぐるときのカチャカチャという音が好きだ。美しくなる前触れのような期待感と、幾ばくかのエロティックな予感。マリエにとって、大人の女性の象徴だった。
「で、最近彼とどうなの?」
唐突に親友で同僚の涼子がグロスを塗りながら、トイレの鏡越しにマリエを見て言った。
「え?どうって…何も」
とマリエは返答に困り、シャカシャカとマスカラのブラシを強めにしごく。
「何もってことはないでしょ。だってもう3年は付き合ってるんだから、そろそろ結婚話もでてくる頃なんじゃないの?」
「本当に何もないのよ。うまくいってないわけでもないし、次の段階に、っていう話も出てないし」
ふーん、と言いながら、涼子はグロスを塗った唇を合わせ
「それは俗にいう“マンネリ”というやつだね。てことはエッチもちょっと刺激が少なくなってきてる感じ?」
とさらりと聞いた。
一瞬、トイレの中に誰かいないか目の端で確認しつつ、マリエはまあね…と小さくつぶやいた。
「相性は悪くないと思うんだけど…たしかにワンパターンになってる感じはあるかも。そもそも最近会ってないからしてもいないんだけど」
「そうなんだ。マリエはそれでいいわけ?」
涼子の鋭い指摘に、マリエはドキッとした。それでいいか、ということを真面目に考えたことがなかったからだ。
「もう私ら今年で30歳だよ?マリエだって結婚したいんでしょ?合わないわけじゃないなら、この縁を大切にしないと!」
と涼子はグロスを指揮棒のように持って、とくとくと説いた。
が、すぐだらりと腕を下ろし「まぁ、失恋したばかりの私が言うなって話だけど」と鏡にもたれながら自虐的に笑った。
ふふっと笑いながら、マリエはマスカラを塗った。たしかに、彼氏の三木谷剛(みきたにつよし)との関係に悩んでいないわけではなかった。ただ、仕事に忙殺されている間に、見て見ぬふりをしていたのだ。
そんな自分に改めて気づかされ、不安がインクの染みのようにじんわりと心に広がっていくのを感じていた。
先輩の色気の秘密
「あ、紀里谷さんお疲れ様です!」
急に涼子は鏡から身を離し、笑顔で挨拶をした。
鏡越しに5年先輩の紀里谷愛(きりや めぐみ)が来たのが見えた。マリエもマスカラをしまい、お疲れ様です、と会釈をした。
「お疲れ様。二人ももう帰り?」
と紀里谷はツヤのある声で微笑んだ。あたりにふんわりと花のような甘い香りがただよう。香水なのか、紀里谷本人から放たれるフェロモンの香りなのか。いつも紀里谷の周りはいい匂いがした。
そこはかとない大人の色気を放つ紀里谷は、マリエたちにとってあこがれの女性だった。
「ええ、私たちはもう上がります。紀里谷さん、今夜はデートですか?」
と涼子がストレートな質問を投げた。
「ええ、そうなの。ようやくプロジェクトも一段落したし、久しぶりなのよ」
紀里谷は嬉しそうに答えると、ゆるやかに巻かれた長い髪を肩の後ろに回し、メイクポーチを開いてファンデーションを取り出した。マリエの好きな音が響く。
「紀里谷さんはいつも素敵ですよね…仕事もできるし色っぽいし。どうしたらそんなに麗(うるわ)しくなれるんですか?!ほらマリエ、教えてもらおうよ!」
涼子自身の悩み相談かと思いきや、唐突にマリエへ振ってきた。
「えっ!?う、うん、そうだよね…」
驚いてあいまいな返事を返すと、紀里谷がファンデーションのパフを持ちながら振り返った。
「あら、星野さん、何かあったの?」
「いや、何かってわけでもないんですけど…彼氏とマンネリ気味で」
「マリエはボブスタイルの毛先に指をからめながら、苦笑いをした。
紀里谷はうなずき、色気の磨き方ねぇ…とつぶやきながら宙を見つめた。
「やっぱりひとりエッチのせいかしら」
マリエと涼子は、想像をはるかに超えたワードに、返す言葉が見つからず一瞬絶句した。
が、涼子はすぐに「あぁ、そういえば、ひとりエッチすると内側から色気が磨かれるって雑誌とかで見たことあります!やっぱりそうなんだぁ…」と納得した。
たしかに、涼子と先日そんな話をしたような気がする。思い出しつつ、紀里谷のひとりエッチの姿をふと想像し、女性の自分でも鼻血が出そう…と一人赤面した。
「あ、あとね」
と紀里谷は何か思い出したように両手を打った。
「最近、私の友達が猫を飼い始めたら、なんだか艶っぽくなったのよ」
「え、猫ですか?」
マリエは驚いて思わずオウム返しをした。
「そう、猫。あのしなやかな動きを見ていると、自然と色っぽいしぐさが学べるらしいの。たしか、最近人気の女優さんも、色気を出すには猫を飼う事!ってインタビューで言っていたわ。」
と言うと、紀里谷はポーチからルージュを取り出して唇にラフに塗った。
「猫か〜。好きだけど一人暮らしでペット飼うと彼氏できないって聞くからなぁ。色気を取るか男を取るか…」
涼子は本気でも戯言でもないような口調で頭の後ろに手を組み、はぁとため息をついた。
紀里谷はそんな様子を見てクスクスと笑いながら、ルージュをポーチに収めた。
(猫とひとりエッチ…全然つながりないけど、なんか信ぴょう性ありそう)
ポーチをまさぐる紀里谷の指先を見つめながら、マリエはぼんやり考えた。
ポーチが奏でる、カチャリ、という音が遠くに響いていた。
偶然出会った“特別な猫”
その日の夜。マリエはベッドに入って、スマホを開いた。
剛へ「おやすみ」とメッセージを送ってからすでに1時間。まだ既読にならないのを見て、ポイと枕元にスマホを投げた。
剛との関係にまたときめきを取り戻すにはどうしたらいいのか…。紀里谷との話を思い出し、また心にモヤが広がり始めた。
マリエは今までの恋愛経験で、相手に変わることを強要するのは得策ではないことを知っていた。とすれば、やはり自分が変わるしかない。
(でも、剛が気づくほどの色気なんて、すぐに身に着けられるのかな…。紀里谷さんと私では元から違う気もするし…)
29年間生きてきて、当然ひとりエッチの経験はある。しかも、指だけでは満足できずに道具を使ったこともあった。が、結局一定の刺激しか得られないので飽きてしまい、いつの間にか使わなくなっていた。
(とはいえ、ペット禁止物件だから猫は飼えないなぁ)
猫を飼うには、まず引っ越しから検討するとなると、現実的ではなさそうだ。
「はぁ…じゃあどうすればいいわけ?」
ベッドの中でひとりごちて、またスマホを手に取った。やはり剛からの返信はない。
すっかり目がさえてしまった。マリエはうつぶせになり、なにげなくSNSを開き『色気 美容』と検索をしてみた。すると、たくさんの写真の中で、ピンク色の可愛い猫の置物の写真が目に留まった。
その投稿には『この猫を飼い始めたら、色っぽくなったって言われたよ♪気づいたら周りの友達も猫ブーム(笑)。やっぱり自分磨きは大事だよね!』と書かれている。
(猫?色っぽく?自分磨き!?どういうこと?)
気になるキーワードに目が離せなくなったマリエは、その投稿者のほかの写真もチェックしてみた。

『自分磨きには欠かせない猫ちゃん? 女性が綺麗になるために、ひとりエッチをするのはもう当たり前だよね』
「ひとりエッチ!?この猫をひとりエッチに使うんだ!?」
マリエはあまりの衝撃に、思わず起き上がって叫んだ。
気になったので今度は『ひとりエッチ 猫』で検索すると、たくさんの女性が投稿していた。どうやら、その猫はスマホで操作するようだ。しかも予想不可能な動きを楽しめるとか。そしてなにより、投稿している女性はみな色っぽく、イキイキとした表情をしていた。
(私もこんな色気が出せるようになるかな…)
半信半疑ながらも、まずは1つずつ方法を試してみたいという気持ちが勝ってしまい、販売サイトを見つけるとすぐに購入ボタンを押した。
猫の繊細な刺激が今までにない快感を呼び…
数日が経ち、ついに例の“猫”が届いた。小包を開けると2匹の猫が入っていて、それぞれに名前がついていた。

「DOKIDOKI(ドキドキ)とKOIKOI(コイコイ)?…面白い名前!」
手に取ると、優しくフィットするような手触りで、ピンクの色も愛らしい。DOKIDOKIをテーブルの上に置いてみると、まるでちょこんと座っている猫のようだ。
(これをひとりエッチでって…どういうことなんだろう?)
まずは使ってみないことには、とマリエはスマホにアプリをダウンロードし、さっそく起動した。DOKIDOKIのスイッチを入れ、ペアリングしてみる。
「よし、準備完了っと…」
アプリが指定の猫を認識したのを確認し、マリエは試しにあちこちの画面をタッチしてみた。
「す、すごい…!こんなにたくさんの種類の振動があるんだ!」
ただの強弱以外に、振動パターンが12種類もあることに驚きを覚えた。さらに、スマホの振り方に合わせて動いたり、画面をなぞった線で震えが多様に変化したり。今までにない斬新な動きをする“猫”に、マリエは衝撃を覚えた。
(この刺激を自分に与えたら、どうなるんだろう…)
マリエは高まる期待を抑えられず、ついに下着の上から当ててみた。
「あっ…すごぉ…いっ!」
うねるような振動が複雑な刺激を与え、まるで指で愛撫されているような気持ちよさ。マリエは思わず甘い声をあげた。どんどん自分が潤ってくるのがわかるほど、全身で反応していた。
もっと刺激がほしくなり、下着を脱いで直接当てた。そしてまた違う振動で試してみる。
「あん、これイイ…!焦らされてるみたい…っ」
絶妙な刺激の強弱がイキたいのにイケない状態にさせ、イジワルな愛撫を受けているようだ。剛がこんな愛撫をしてくれたら…そんな想像をしているうちに、自身が卑猥な音を立て始めた。またその音に体が熱くなり、マリエは絶頂の予感を感じた。
「はぁ、あっもう…イっちゃう…イク…!ああんっ!!」
背中が反り、下半身まで一気に緊張したと思うと、大きな快感の波がマリエの全身を駆けめぐった。
余波が去ってからも、腰がピクピクと痙攣し、マリエは興奮冷めやらぬ荒い息の中で、こんな感覚久しぶりかも、とつぶやいた。
(ひとりエッチでこんなに気持ちよくなれるなんて…この猫、本当にすごい…!)
ベッドで余韻に身をゆだねながら、マリエはもう1つの猫を手に取った。
「この子はどんな感じなんだろう…」
しっとり吸い付くようななめらかな“猫”の感触が心地よく、火照った体を抱きしめながらマリエは深い眠りへと落ちていった。
あらすじ
彼氏とマンネリを感じているマリエ。
色気を磨きたいなと考えていると、猫を飼うと色っぽくなるという噂を聞いて…