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官能小説 本当の幸せ〜私の誤算〜 2話(元彼と同じ会社で…)


元彼と同じ会社で…【第2話】「本当の幸せ ―私の誤算―」

哲也の結婚式から一週間が過ぎた。
哲也は結婚後昇進を果たし部署は異動したものの、同じ会社であることに変わりはない。
毎日顔を合わせるリスクは、いつまでもついてまわる。

気重なまま、半ば流れ作業的に仕事をこなしていると、千明の机の電話の内線ランプが点滅した。

「もしもし?」

声は潜めていても、誰の声かはすぐ分かった。哲也だ。

「今日の夜あいてる?」

唐突な言葉に、千明は黙ってしまった。
何も言わずに電話を切るのが正解だとわかっていたが、理性とは裏腹に気づけばイエスと千明は答えていた。

哲也の本音

微かに木の香りのするレトロなバーは、かつて哲也とデートでよく訪れた。
久々にカウンターで二人並んでいると、全然違和感が無い。
何のつもりか問い詰めるつもりだったが、結局何も言えないまま哲也の隣りで黙々と梅酒ロックを飲む千明。

「つまんないんだ… あいつカマトトぶってんのかな?処女ってわけでもあるまいし」

ようやく哲也の言葉が聞こえてきたと思った瞬間、耳を疑った。
なんと哲也は、妻とのセックスの不満を千明に述べているのだ。

「俺達って相性良かったな」

千明の背もたれに何気なく手をまわす哲也。

「ねえ、千明。 今日お前ん家、行ってもいい?」

背中から一気に鳥肌が立った。

「バカにしないでっ!」

千明は手に持っていた梅酒ロックを哲也にふりかけ、店の外に走り出た。

救いを求めて

最低だ。
あんな男を好きだった自分が最低だ。
屈辱と悲しみが胸に込み上げ、街の街頭が滲んで見える。

ふいに鞄の中で携帯電話が鳴った。
哲也だろうと思い、乱暴に電話を開くと、内田祐樹という名が表示されている。
千明は、すがるように反射的に通話ボタンを押していた。

「福原?」

祐樹の能天気な声を聞き、千明はくずれるようにその場にしゃがみこんだ。

「もしもし?」

「うん……」

「今どこにいるんだよ?」

「S駅前。会いたいの……今すぐ」

かすれる声で、千明は懇願した。

「わっ、わかった。そこに居ろ!動くなよ!」

ただならぬ気配を察したのか、祐樹は慌てた声を出した。

温かい胸

程無くして、息を切らした祐樹があらわれた。
ホッとしたような笑顔を見せる祐樹。
笑うと目がなくなるところは中学の頃のままだ。

「お前が変な声出すから、何事かと…」

千明は、祐樹に抱きついた。

「おっ、おい…」

周囲に注目されて、祐樹は困り果てながら苦笑いしているだろう。
そう思ったが、そんなことはおかまいなしに祐樹の胸にしがみついて千明は大声で泣いた。

あらすじ

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