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官能小説【1話】エッチな女性はお好みですか?
プロローグ
★作品について
この作品は、小説サイト「ムーンライトノベルズ」と合同で開催した、「ラブグッズで熱く感じる小説コンテスト」の大賞作品です。
正直、人生で一度も女に困ったことはない。ずっとモテてきた。何もしなくてもモテた。だから、恋愛するのも面倒くさくて、わざわざ彼女というものを作りたいとも思わなかった。でも、出会ってしまったんだ――俺の、女神に。

気になる女性
「伊地知さーん、この書類なんですけどぉ」
妙に上ずった甘えた声で言われ、俺は眉間に皺を寄せた。自然な動作で振り返りながら、完璧な作り笑顔を浮かべる。
「はい、どうしました?」
書類を持ってきたゆるふわカールの女性社員は、確か、俺より1つ年下だったっけ。巷ではかわいいとモテるのだろうけど、俺にはメイクの濃い女性という印象しかない。
「あー、ここは、この数字が間違ってるんですよ」「あっ、そっか! ありがとうございます、どこを直せばいいのかわからなくって……本当私ってダメですね」
女性は笑顔でそう言うと、なぜかぺろっと舌を出してから去っていった。席につくなり、隣の女性社員と何やらヒソヒソ話を始める。
(……こっち見て話すなって。気が散るなぁ)
同じ部署の女性社員が、かわるがわる俺のところへやって来る――そう気付いたのは、入社して半月ほど経った頃だった。あの頃俺をちやほやしてくれていた先輩社員たちは転職や寿退社でほぼいなくなったが、いつの間にか後輩女子がその役目を引き継いでいるようだ。
(……そろそろ、面倒くさくなってきたな)
自分がそれほどイケメンではないのは自覚している。でも、決して不細工ではないのも。男性社員は既婚者か彼女持ちが多いので、俺みたいな奴がちょうどよかったんだろう。気が付けば、いろんな女性から熱い視線を受けるようになっていた。
「伊地知、今日もモテるねぇ〜」
その声に隣を見ると、先輩の新田さんがニヤニヤ笑みを浮かべていた。
「やめてくださいよ。もう飽きました、そのイジリ」
「ほんとクールだなぁ。俺だったらすぐに鼻の下伸ばすけど」
「とかいって彼女以外は眼中にないくせに。酒飲むと突然のろけ始めるアレ、今後一切禁止にしますからね」
「やめて! それは言わせて! だってめっちゃかわいいんだもん!」
新田さんは彼女と同棲をしているとかで、いつも幸せオーラ満開なので困る。オーラにあてられる前にとパソコンに視線を戻した瞬間、オフィスの入り口で声がした。
「あ、佐倉さん。お帰りなさい」
ドキ。彼女の名前を聞いただけで、鼓動が高鳴った。目の前の仕事に集中しなくちゃと思うのに、無意識に耳をそばだてている自分がいる。
「ただいまー。手土産ありがとね。クライアントさん、だいぶ喜んでた」
鈴が鳴るような、軽やかな声が耳をくすぐる。顔が熱を帯びていくのがわかり、俺は慌てて、前髪で顔を隠した。
佐倉みなみ。それが、彼女のフルネームだ。俺より8つ年上の33歳で、営業成績はいつもトップ。髪は綺麗にくくり、化粧っ気も少なくて、若い女子社員からはお局なんて言われているけれど、正直メイクばっかりで仕事に精を出さない彼女たちより、先輩のほうがよっぽどいい。綺麗で、クールで、ミステリアスなのに、どこか愛嬌があって――
「伊地知くん?」
「……!」
すぐ傍で声がして、俺は勢いよく立ち上がった。
「はっ、はい! すいません!」
「ううん、こっちこそ仕事中にごめんね。この資料をまとめてほしくて……」
書類片手に、説明をする佐倉さんに見入ってしまう。おくれ毛を耳にかける指先は、ネイルも指輪も施されていないのに、今まで見た誰の指より美しく見えた。
「……ってことで。いいかな?」
「あ、はい! 了解です」
(やべ、途中聞いてなかった)
猛烈に反省しながら、佐倉さんから書類を受け取る。
佐倉さんは、小さく微笑むと、自席に戻っていった。
――ああ、抱きたいなぁ。
男はなんてバカな生き物なのだろうと自分でも思うけれど、男に生まれてしまったのだから仕方ない。新卒で入社してから3年、彼女をそういう目で見ている男性社員が少なからずいることに俺は気づいていた。 けれど、いつも綺麗で性的な魅力にも溢れる彼女に、男の影は全くなくて――どうしてあんなに綺麗なのか、その理由は俺には全く想像がつかなかった。
過ち
「申し訳ありませんでした!」
定時を過ぎたオフィスで、俺は大きく頭を下げた。目の前の佐倉さんは、困ったような顔で俺を見下ろしている。
「ううん、ミスは誰にでもあるし……今から謝りに行くから、大丈夫」
佐倉さんはジャケット羽織りながら、荷物を準備し始める。
(やっちまった……)
俺の作った資料のデータが間違っていて、佐倉さんの担当しているクライアントを怒らせてしまったのだ。佐倉さんに見惚れて、話をちゃんと聞いていなかったせいだ。本当に、新人でもないのに、俺は何をしてるんだか。
「伊地知くんは、もう定時過ぎてるし帰っていいよ。また明日ね」
「あ、あの!」
オフィスを出ていこうとする佐倉さんに声をかけると、彼女は小さく首を傾げる。
「……僕も、一緒に謝りに行ってもいいですか?」
きょとんと目を瞬いた佐倉さんは、一瞬迷ったのちに、頷いた。
お礼に…
(き、緊張したぁ……)
無事謝罪が終わり――俺は佐倉さんと一緒に、駅までの道を歩いていた。最初は怒っていたクライアントも、佐倉さんのメンツは潰したくないからと大目に見てくれた。契約も、継続してもらえるとのことだ。
「今日はありがとね、伊地知くん」
鈴のような佐倉さんの声が聞こえて、俺は首を振る。
「いえ、本当に申し訳ありませんでした。佐倉さんにも迷惑をかけて……」
「ううん、大丈夫。むしろ、自ら謝罪に出向いて来る若者がいるなんてーって、株が上がったから」
俺を励ますように、佐倉さんはぽんと肩を叩いてくれた。
「あーあ、でもちょっと疲れたねぇ。ビールでも飲みたい気分」
「おっ、奢ります!」
「そこまで言ってないのに」
佐倉さんはくすくすと笑うと、俺を見上げた。
くりっとした大きな瞳に、鼓動が跳ねる。「じゃあ……ちょっとだけ付き合ってくれる?」
カノジョの反応
「ぷはぁ……美味しいー!」
佐倉さんとやって来たのは、サラリーマンが多く出入りする大衆居酒屋だった。ビールの大ジョッキ片手に笑う佐倉さんに、つられて笑みが零れる。
「本当に美味しそうに飲みますね」
「あら、意外?」
「んー……もっと洒落たバーとかのほうが、イメージには合います」
「行かないよぉ、バーなんて。おつまみの美味しい居酒屋が最高」
佐倉さんが、テーブルの枝豆に手を伸ばす。そのギャップもまた、俺の心をくすぐった。
「佐倉さんは、飾り気のない方ですよね」
「やだ、悪口?」
「違いますよ。かわいいなって思って」
枝豆を口に放り込んだ体勢のまま、佐倉さんがフリーズする。しまった、と思った時には、既にいつもの佐倉さんに戻っていた。
「男みたいってよく言われるのよ? 伊地知くんは見る目ないなぁ」
くすくすと笑う佐倉さんに、ほっとしたような、悲しいような複雑な気持ちになる。思わず口をついて出てしまった「かわいい」という本音を、彼女はこうも簡単に受け流す。
(照れるか、困るかしてくれたらいいのに)
やっぱりこんな後輩じゃ、男として見てもらえないのだろうか。
「そういえば伊地知くんって、女性社員からモテモテらしいね」
「えっ」
「うち、社内恋愛禁止してないじゃない? いい子いないの?」
いるとすれば、あなたです。そう伝えてしまいたいのを、ぐっと堪える。
「あー……それだけかっこよければ、もう彼女がいるか」
「……いませんよ。今は仕事でいっぱいいっぱいです」
その後は、今やっているテレビドラマの話や、好きな音楽の話で盛り上がった。こういう場で仕事の話をしない佐倉さんに再び好感を覚えたものの、恋愛の話も全く出なくて――俺は終始、そわそわしっぱなしだった。
⇒【NEXT】家に帰ると、シャワーを浴びてベッドに寝転んだ。枕元のサイドテーブルに置いた「ラブデンマ」が…(エッチな女性はお好みですか? 2話)
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あらすじ
それほどイケメンでもなく、不細工でもなく…普通な自分がかわるがわる社内の女性から声を掛けられる…。
周りの男性社員は既婚者か彼女持ち。彼女たちにとっては自分はちょうどいい存在だったのだと悟る。
そんな彼女たちを面倒に思いながらも自分には一人、気になっている女性がいた…。