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官能小説 恋の誘惑は唇から 3話


新しい三島さん

(あれ…?)

と思った時には頭が白んで、必死で胸を叩いていたあたしの手が自分の膝を叩いたことで、三島さんはどうやら我にかえってくれたらしい。

「つばさちゃん?!」

慌てた声と、見たことのない焦った顔は、新しい三島さんの発見だった。

「だってね、可愛い可愛い彼女が、自分と会わない間に色っぽくなってるんだよ?焦るでしょ」

「…色っぽくは」

さすがにそこまでは到達出来てない気がする。
思わず呟けば、

「なったよ。つばさちゃん前はそんな雰囲気なかったから、ほんとに手、出しちゃってもいいのかな、って」

―――怯えられたり、嫌われたら嫌だなぁ、って大人の余裕ぶってた。

苦笑いした三島さんの告白に、あたしもつられて笑った。
恥ずかしくて自信がなくて勇気がなくて、そんな素振りなんか出来なかったあたし。
なんだ。お互いに欲望を隠して、二の足を踏んでたんだ。

「でも、ごめん。疑って」

ペコリ、と。
綺麗に伸びた背中を倒して、頭を下げる三島さん。
7つも年下のあたしに、適当に誤魔化したりなんかせず、真っ直ぐに謝ることを躊躇わない彼を、あたしは尊敬してるし大好きだ。
大好きだから。

ちゅっ。

俯いた三島さんの顔を覗き込んで、あたしはその唇を奪った。

「”ごめん”、受け取りました」

「っ」

驚いて目を見開く三島さんに微笑んで。

「だから、三島さん。―――あたしの誘惑も、受け取って下さい」

そう言って、あたしはもう一度、三島さんの唇に、そっと自分の唇を押し当てた。

「み、三島さ、」

「違うでしょ、つばさ?」

「〜〜〜隼人、さん」

そう。
にこりと微笑んで、三島さんが―――隼人さんがあたしの唇を啄む。
でも、そんなキスを繰り返しながらも、足の間を絶え間なくいじり続ける指に、あたしはときめくどころじゃない。

「は、隼人さん、もう…っ」

何度めかでブルブルッと震えて、あたしの身体はまた、こぽりと蜜を吐き出した。

「初めてなんだから」

優しく優しく

そう言った隼人さんの手は、優しく優しく、あたしのどこもかしこに触れていって。
触れるそばから、ゆっくりとあたしの心と身体をほぐしていった。
愛しむようなキスも無数に落ちてきて。それは、指先、肩、胸、頬、そして唇に戻る。

「癖になりそう」

微笑んで擦り合わせるように押し付けて。
唇を侵す甘い痺れに、あたしの口が勝手に綻ぶ。

エロ小説挿絵:官能的なキスをする男性と女性

「気持ちい、」

「どこ?ここ?」

「全部、ぜんぶ気持ちい…っ、もっと、」

「…あのね、つばさ。そういうことを言うと」

「んっ、あ!やぁ…っ」

「ほら、これ好き?」

「好き、好き…っ」

中も外もぐちゃぐちゃになるほど可愛がられて、あたしはどんどん正直になった。
声でねだって、眼差しでねだって、欲望を全身でさらけ出す。
そうすれば、隼人さんの優しい眼差しの奥で裏腹な熱がちらついて、それにまた煽られる。

「まだ、って言いたいけど、俺ももう限界」

だいぶぼぐれたとは思うけど、痛かったらごめんね。
あたしの言葉にそう言って、またちゅっとキスを落とした隼人さんが、ズボンの前を寛げた。
その仕草に、思わず目線をそらす。

それはまだ、恥ずかしくて直視なんか出来ない。
今は、引き締まった筋肉質の隼人さんの上半身を見るだけでも心臓が大きく鳴るのに。
自分の裸を見られるのだって恥ずかしくて、でもそのくせに、散々隼人さんに触れられた身体は、恥ずかしさに勝る快楽にすっかり蕩けていて。
まだ、なんて、そう言われたら、泣いてしまいそうだ。

隼人さんより、あたしの方がよっぽどもう限界で。
それでも、やっぱりちょっとだけ、そこに押し当てられた熱に怖気づいて、強張ったあたしの身体に気付いたんだろう。

「背中、腕回して。痛かったら報復していいから」

茶化すように隼人さんが言って、思わずふ、と身体が緩んだ瞬間、

「…っ!」

それが、ズッ、と押し込まれて、あたしは腰を反らせた。

「つばさ、ゆっくりするから」

力の入った腕をなだめるように撫でて、隼人さんの優しいキスが落ちてくる。
啄んで、食んで、舐って、その心地よさに夢中になれば、自然とまた身体も緩んでいく。

「は、ぁ、…んんっ」

ゆるゆると押しては引きながら、あたしの奥へ進む熱。

「隼人さ、」

「大丈夫?痛くない」

「ん、ん、」

こめかみから髪をかき上げるように撫でてくれる手に、コクコクと頷いて。
お腹に初めて味わう圧迫感。だけど、覚悟していたような痛みはそれほどない。

「でも、隼人さん、の。いっぱい、熱い…っ、」

押し広げられた隘路に、熱い塊を埋められる感覚。
それは、苦しいのに嫌じゃない。

「…っ、だから…!」

声を荒げた隼人さんが、直後噛み付くようなキスであたしの声を奪って。
ずん、と。同時にあたしの最奥まで、その熱を埋め込んだ。

「………っ!」

ぴたりと、肌が重なり合う。
ぎゅっ、と隼人さんの背中に縋り付いて、その衝撃をやり過ごして。
だけど、それをまだ異物と認識して戸惑う身体は、無意識にそこを締め付けるから、それに隼人さんが苦しげな息を零した。

「っ。…つばさ、ちょっと力、抜いて」

「む、無理、どうすればいいのか」

「ちょ、」

きゅううっ、と。
中にあるものを意識するほど、それを締め付けてしまう。
自分で自分をコントロールできない状態の、そんなあたしに、

「…もう…!」

怒った素振りで呟いて、隼人さんがまた、キスを落とした。

「ごめん、ちょっとだけ我慢して。もう無理」

「え…っ、っ?!」

次の瞬間、みちみちに中を埋めたそれを、隼人さんは勢い良く壁を擦りながら引いて、また奥へと叩き込んだ。

「あぁっ!」

ぱん!と肌がぶつかる音。
荒い呼吸と一緒に、繰り返し擦られるほど熱をもつ中。
あたしはわけもわからないままただ揺さぶられて、初めての感覚にそこは快感なんか感じていないのに、身体の奥からそれが溢れる。

「つばさ、」

苦しげな顔であたしの名前を呼ぶ隼人さん。
その、彼に与えられるすべてに、きゅうっ、と胸に迫るもの。

「…っ、好き…っ」

さらけ出す勇気

たまらず、あたしはそれを吐き出した。

「好き、隼人、さん、好き…!」

しがみつく指先に力を込めれば、いっそう早くなる動きの中、隼人さんの腕がぎゅっ、とあたしの肩を抱き寄せて。
ずんっ、と一つ大きく奥を穿って動きを止めた彼は、

「俺も」

―――好きだ、と。
深く息を吸い込んだ後、そう囁いた唇を、そっとあたしの唇に押し当てた。

「とりあえず、一人でいる時と、俺といる時以外はそのリップ?は禁止」

渋い顔をしてそう言った隼人さんが、ちゅっと唇を啄む。

「つばさとキスするのは俺だけなんだから、他の人間の前でつける必要ないでしょ」

そしてまた、キス。

「ええ〜〜?」

と笑うあたしに、渋い顔をさらに渋くして。

「―――それともつばさは、俺以外の男も誘いたいの?」

そう言った声の響きに不穏な物を感じて、あたしは慌てて首を振った。

「隼人さん、だけ…!」

ぎゅっ、と手を握れば「うん」と微笑む隼人さん。
どうやら、大人の余裕を捨てた彼は、独占欲も隠さないことにしたらしい。
それが嬉しくて、でもちょっと怖い、というのは多分言わない方がいいことだろう、うん。

それに、

「その代わり、隼人さんがいっぱいして下さい」

あたしが触れたいのは結局、隼人さんだけなんだから。

「キスも、…それ以上も」

そう言えば、隼人さんは目を見開いて。
それから困ったように笑った後、

「了解。…覚悟しといて?」

あたしの耳に囁いて、髪をそっと撫でた。
きっと、今の彼の眼差しの奥にあるのは、あの獰猛な程の熱。
それを想像して、あたしの中が、ひくんと震えて潤んだ。

あの日手にしたコスメであたしが手に入れたのは、彼の欲望だけじゃない。
もっと必要だった、自分の欲望をさらけ出す勇気。好きな人に、好きだから触れたいと、そう言える自信と勇気だった。

あたしを柔らかく抱きしめる彼の腕の中、ん、と首を伸ばして、あたしはキスのお返しをする。
そうすれば、やっぱり少し大きく目を開いてみせる隼人さんに微笑んで。
あたしは、ゆるく弧を描いた唇で囁いた。

「隼人さんも、覚悟しといて下さいね?」

END

あらすじ

色っぽくなったつばさに焦る三島。2人の今後の展開は…

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