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官能小説 心も体もつながる夜は 前編
恋と痛み
★作品について
この作品は、小説サイト「ムーンライトノベルズ」と合同で開催した、「女性の為のHなラブコスメ小説コンテスト」のLC賞作品です。ドキドキの小説をお楽しみください。
「――――ぅ、ん、……っ」
薄暗い寝室のベッドの中、下腹部に鈍い痛みが走り、美冬は思わず身を硬くさせた。 体重をかけないように覆いかぶさっている恋人が優しく抱き締めてくれたが、狭い隘路をこじ開ける異物感は増すばかり。 膣壁をこするザリザリとした痛みに涙がにじんだ。
「……ぅ……、ぃ、痛……っ」
とうとう我慢できなくなって、美冬は弱々しく手で突っ張る。ハッとした彼が身を引けば、安堵と共に襲ってきた劣等感で胸が痛くなった。
――――また、私のせいでできなかった。
「大丈夫か?ごめん、ちょっと早まった」
「違うの、私が悪いの。……ごめんなさい」
細い腕でベッドカバーを手繰り寄せて身を起こし、涙目の美冬は小声で謝る。 週末の金曜日、恋人の部屋に誘われて夜に行うことといったら一つしかない。それは美冬も承知していたのに、ふと沸き起こった恐怖心からまた彼を拒否してしまった。
ひどいことをしたのは自分で、泣きたいような気持ちなのは多分彼の方なのに、こうしてこちらが泣くなんて卑怯だと思う。 でも、涙は止まってくれなかった。
「今日は……大丈夫だと思ったんだけど」
そんな後悔と罪悪感で潰れそうな胸の彼女を優しく労ってくれるのは、恋人であり、職場の同僚でもある飯塚知宏だ。
営業部のエースとして女性社員からモテまくっている彼の対応は、こんな時でも完璧だった。
「いや、こっちこそごめん。美冬が可愛いからつい夢中になって止まれなくて……。ごめんな、痛かったよな」
美冬の体を気遣いつつ、さりげなく愛の言葉を囁き抱き寄せる。 よしよしと髪を撫でられて、どうしようもない優しさにつんと鼻の奥が熱くなった。 自分にはもったいないくらいの恋人だ。
「なぁ……、今日はもう何もしないからさ。このまま一緒に寝ていいか?」
そして告げられたのは、素肌を合わせて寝ようという少し恥ずかしいお願い。 途端に顔がかぁぁっと熱くなるが、こちらを覗き込む子犬のような表情に嫌とは言えなかった。
「……ぅ、ん」
「っしゃ!」
美冬が小さく頷けば、彼が小さくガッツポーズをして、ベッドにゴロンと横になる。 ぽんぽんと隣を叩かれ、おずおずとそこに収まった。
「美冬、ゆっくりやればいいからあんま気にすんなよ?俺、待つことだけは得意だし。可愛い抱き枕が手に入っただけでも幸せ」
「……うん」
自分より少し体温の高い知宏の腕に抱かれ、きゅうっと胸を締め付けられる。 どこまでも優しいこの人のために、自分はどうすればいいんだろう。
彼のことは本当に好きなのに、昔の苦い恋愛経験が小さな棘のようになって心に突き刺さり、どうしても最後の一線が越えられないのだ。 このままでいいはずがない、けれど、解決の方法が分からなかった。
彼女――相川美冬が彼と出会ったのは、今から5年前の春だった。 新卒で入社し、一般職として初めて配属された営業部に2歳年上の知宏がいたのだ。
当時、入社3年目ながらメキメキと頭角を表して営業成績上位をキープしていた彼は、短く切った黒髪に清潔感があり、ハキハキとした喋り方がとても眩しかったのを覚えている。
しかし顔立ちが整っていても近寄りがたいということは全くなく、少し垂れた目と、右目の下にある泣き黒子が親しみやすさを感じさせ、周りには自然に人が集まってくるタイプだ。
たまたま彼のアシスタントになった美冬は、同期たちから羨望の眼差しを一身に浴びたものだった。
とはいえ美冬には、彼に必要以上に近付く気は一切なかった。 過去のひどい男性経験から恋愛なんて二度としないと決めていたし、特に知宏のようにキラキラした男性は苦手だったから。
そのひどい経験は、彼女の大学時代にさかのぼる。 中堅どころの女子大に入学した美冬は、友達に誘われて入ったインカレサークルで初めての恋人ができた。大人しい美冬と違って明るく派手なことが好きだったその人は、いつもワイワイと盛り上がっている賑やかなタイプだった。
自分とは全然性格が違う、と思ったものの、熱心に口説き落とされて付き合いが始まった。 初めての恋愛に美冬はどんどんはまっていき、好きで好きでたまらなくなった頃。自分が単なる浮気相手の一人だったと知った。
二股ですらない。本命の彼女は同じ大学にいて、自分は使い捨ての遊び相手だったらしい。
泣いて問い詰めた美冬に対し、悪びれない元カレはヘラヘラと『1回、処女の子とヤッてみたかったんだよね。お前もいい思いできただろ?』などと言い放った。
美冬が処女を捧げたのはその前週のことで、とにかく痛いだけだった行為2も大好きな人のためだと思ったから頑張れたのに。
結局元カレとの付き合いで美冬に残ったのは、男を簡単に信用してはいけないという教訓と、痛みしかなかった性行為の忌まわしい記憶だけだったのだ。
苦い思い出
昔の苦い体験から軽い男性不信に陥っていた美冬は、仕事で接点の多い知宏とも常に一線を画した付き合いをしていた。 会社ではきちんとコミュニケーションを取っても、それ以上は全てシャットアウト。
彼みたいに社交的でモテる男性は懲り懲りだというのもあったし、変に関係を誤解されて他の女子社員から誤解されるのも嫌だった。
だがそうやって必死に距離を取っていたのに、自分にきゃあきゃあ言わない美冬が珍しかったのか、単に興味を引かれたのか、彼はやけにこちらに構ってくるようになった。
食事に誘ったり、髪型を褒めたり、新商品のお菓子を買ってきてくれたり。個人的な連絡先も、会社支給の携帯が繋がらなかった時のために、と言って無理やり押し付けられた。
――――どうせ彼も、地味な自分をからかって遊んでやろうと思ってるだけのくせに。
完全に後ろ向きになっていた美冬は、そう判断して徹底的に避け続けた。
残業の後に夕食をごちそうしてあげると言われた時には早く帰りたいのでと断り、ならばせめて昼食には一緒に行こうと誘われた時には、次の日から弁当を持参して自席で食べる。
もらったお菓子も、『せっかくいただいたのに申し訳ないのですが、今ダイエット中なので』と丁重にお断りした。
うん、ここまでやったらすぐに遊びにも飽きるだろう。 そう思っていたのに、なぜか彼は全然めげなかった。飽きないどころかどんどん距離を詰めてくる。へこたれない。
いい加減からかうのは諦めればいいのに、それが1年経ち、2年経ち、とうとう3年が過ぎ、結局根負けしたのは美冬の方だった。
「飯塚さん。あの、大変申し上げにくいんですが……個人的なお付き合いをするつもりはないので、もうお誘いはやめていただけますか」
今日もまた一緒に夕食をどうかと誘ってきた彼に、美冬はおずおずと返事をする。告げた言葉はマイナスな内容なのに、美冬が喋った途端、彼はぱっと顔を輝かせた。
「おお!相川さんがやっと仕事以外の返事をしてくれた!」
「いえ、あの……、多分初めてではないはずです」
一応食事を断る時には会話が成立していたはずだ。 だがそんなことより、彼のあまりにも嬉しそうな顔にたじろぐ。笑うと垂れ目が余計に垂れて、なんだか子犬のようだと思ってしまった。
「初めてだよ!俺、ずっと前から必死になって好きアピールしてるのに、完全無視だからさ。もう最近はそういうプレイなのかと思って逆に楽しくなってた」
あはは、と笑う彼の後ろを、彼と仲の良い何人かの同僚がニヤニヤしながら通り過ぎていく。 中には彼の背中をドンと叩いて祝福の言葉を述べる者もいた。
好きとは一体どういうことだろう、とポカンとして見つめれば、彼は小さく首をかしげる。
「……え、俺が相川さんを好きだって伝わってたよね?」
「………………いえ、私をからかって遊びたかっただけなんじゃ………」
「はああああ?!」
違うから!なんでそうなるんだ!と叫んだあと、彼が必死になって伝えてきたのは、美冬への恋心。いつもは堂々としているイケメンが取り乱し、延々と美冬の好ましいところを並べ立てるものだから、つい釣られて赤面してしまった。
ちなみに配属後の顔合わせで一目惚れして、それから真面目で素朴な性格に惹かれていったらしい。
一体どう返事しようかと悩んでいると、ふと、課内の全員がこちらに注目していることに気が付いた。もう遅い時間だったから残っている人間は少なかったとはいえ、とんでもない事態だ。
「……!!い、飯塚さんっ、とりあえず場所を変えましょうっ」
そしてその日、美冬は初めて彼と食事に行った。
3年間の実績を元に好きだと言われれば信じざるを得ないが、これまでただ自分をからかっていると思っていた相手なのだ、まさか突然恋愛感情が湧くはずもない。それにやっぱり男性は苦手だ。
だからごめんなさい無理です、と言いかけた美冬に彼が提案したのは、
「ちょっと待った!もうここまで待ったら10年でも20年でも同じだ。いつまでかかってもいい、振り向いてくれるまで頑張るから、チャンスをくれないか」
「……でも」
「今はただの友達でいい、でも俺を知ってから返事をして欲しいんだ。本当に相川さんのことが好きなんだ!」
じっと真剣な目で見つめられて、美冬は仕方なく頷いた。
「…………お友達で、いいのなら」
知宏
それから美冬は、『友達として』知宏と付き合うようになった。
友達だから名前で呼ぶし、友達だからたまに一緒に食事にも行く。友達だからドライブにも誘われた。友達だから毎日おやすみメッセージがきて、友達だからと誕生日プレゼントももらった。
あれ、これってただの友達じゃないのでは……と我に返った頃にはもう2年近くも経っていて、いつの間にか自分も彼に恋をしていることに気付く。
散々悩んだ末、彼に甘えてばかりではだめだと勇気を振り絞って告白すれば、潰されそうなくらい強い力で抱きしめられた。
「美冬、俺たちはゆっくりなペースで進んでいこうな」
「……いいの?」
「言っただろ、俺は10年でも20年でも待つって」
友達として付き合っていた頃に話した過去の件を気遣ってくれたのだろう。 今思えば美冬のトラウマなんて、異性関係のだらしない男に騙されたちょっとバカな女の、どこにでもある陳腐な色恋沙汰かもしれない。そう思えるようになったのも全て知宏のおかげだった。
どこまでも優しい彼に包まれて、美冬はとても幸せだった。
だから付き合って半年して彼の部屋に誘われた時も、彼女は全てを覚悟の上で付いて行った。 知宏のことは本当に好きだ。身も心も結ばれたいと思っているのは自分も同じだし、彼はあの酷かった元カレとは全然違う。
だが美冬の体はそうではなかったようで、蕩けるような甘い愛撫のあと、いざ挿入となった時に硬直して動かなくなった。かつての激痛がフラッシュバックして、涙が溢れる。
「ごめん、俺が急ぎすぎたな」
「違うのっ!ごめんなさい……っ、私、本当に知宏のこと好きなんだよ?!」
「分かってる。でも心と体は別だから。前に言っただろ、ゆっくりでいいって」
「……ごめんなさい……」
それからもう一度チャレンジしても結果は同じだった。 前戯は気持ちいいのに、挿入が怖い。それを意識した途端に恐怖から身を縮めてしまい、余計に入らなくなる。
美冬はどうしようもないループに入り込んでしまったのだ。
あらすじ
挿入時の痛みで恋人とセックスできない悩みをもつ相川美冬。
彼もエッチしようと試してみるも、恐怖と性交痛に耐えられずやっぱり出来ない。
セックスを恐れてしまう美冬には、
過去に恋愛で苦い思いをした経験があった…。