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空をつなぐ 後編
ひと晩の記憶から…
土曜の朝。 秘書検定の勉強で徹夜明け。 野間さんにおやすみメールを送った直後、 携帯が鳴った。
「真奈?」
「どうしたの?和也さん。声、疲れてる?」
うん、と答えた後、彼は「したい」と続けた。
「え?」
「抱きたい。…今から、しようよ」
電話の向こうの声に、息が混じっている。
「ちょ、ちょっと、…」
戸惑う私に、彼は、胸を触ってと言った。 「お願い」と息の声が届く。
「…こう、かな」
照れくささを隠せず、 キャミソールワンピの上から、 胸に手を伸ばす。 思いがけず右手の中指が 左胸の突起に触れた。
「っあ…」
「嬉しい。真奈の感じてる声」
感じてるんじゃないと否定する間も与えず、 「もっと触って」と彼は息をさらに熱くする。 私の右手は、恥ずかしさとは裏腹に、 左の胸を包み込んでいる。
「和也さん、こうしてくれたね。…はぁぁ」
「そうだよ。ほら。こうやって」
ジュルリと唾液の音も聞こえて来た。 胸を包むのが、 自分の手なのか彼の舌なのか、 わからなくなる。
「僕だと思って、指を舐めてよ」
私はもう、躊躇しなかった。 チュルチュルと自分の指に吸い付く音と 「真奈…」という吐息が、 同時に耳に流れ込んでくる。 舌も指も次第に激しく絡みつき、 唇の周りは唾液で濡れている。
「真奈、もう欲しいよ」
「あぁぁ、私も…」
下着を脱いだ私は、 自分の唾液で光る指を、 その何倍も潤っている中心に忍び込ませた。
「真奈の中、すごくあったかいよ」
その声に、溢れ出る甘い液も、 指の動きも、速度を増した。 快感の中で、私たちは、 たったひと晩の記憶を、手繰り寄せていた。 お互いの肌の感触、 髪の流れ、切ない表情…。
「あぁぁぁ。真奈。だめ。一緒に、いい?」
「うん。はぁ、ぁぁはぁぅ。私も…」
声を息を交し合いながら、 一緒に上りつめた。
「会いたいな」
息が落ち着いた和也さんが、静かに言う。
「うん。でも今日は、すぐそばにいる感じ」
私たちは、お互いの耳元に向けて キスをして、おやすみと電話を切った。
初めてのけんか
あと1ヶ月。 来月の今頃、和也さんは帰国する。
ロンドンで偶然出会ってから、 5ヶ月が経つ。 ふたりをつなぐ空を見上げるのは、 癖になった。
仕事への向き合い方。
自分の能力の見つけ方。
…そして、電話で感じ合うセックス。
彼に教えてもらったことは、たくさんある。
あと少しで再会できる…。
否が応でも、胸は高鳴った。
その一方で、 仕事では、少し壁を感じていた。 秘書検定の試験も無事に合格し、 自信も大きくなっている。 でも…。
「ねぇ、和也さん、聞こえてる?」
私は、仕事での悩みを、 電話で相談していた。
「あ、うん。聞こえてるよ。 …それで、そのお客さんに電話したの?」
「したって、さっき言ったじゃない!」
思わず、苛立ちをぶつけてしまった。
「そんな短気になってるから、 うまくいかないんだよ!」
彼も語気が荒くなる。
「ひどい!和也さんだって 気が短くなってる!」
「俺も疲れてるんだよ。 あと1ヶ月で帰国だし、 片付けなきゃならない 仕事ばっかりなんだ」
彼が、自分を「俺」と呼ぶのを、 私は初めて聞いた。
「忙しい、忙しいって…」
私は、会えるのが楽しみじゃないのか と言いたい気持ちを、ぐっとこらえた。 私は、小さく「うん」と 言ったような言わないような返事をして、 電話を切った。
朝の光が、窓から注ぐ。 彼はこれから寝るだろうか。 けんか。
…くだらない事で、感情的になってしまった。 自分の幼さに目を閉じたくなる。
その日、私は休日。 部屋の掃除をして、予定どおり街に出た。 でも、すべてが上の空。 カフェで休憩中、ランチ中、 携帯から、ロンドン行きの飛行機があるか、 調べてしまっている。
(すぐにでも、ロンドンに行きたい)
それも、本心。 半年前の私だったら、 きっと迷わずに恋人の元へ飛んだだろう。
でも、今の私は…。
仕事と、恋愛…。
航空券の値段が並ぶ 携帯の画面を眺めながら、 自分が自分の心を 揺らしているのを感じていた。
二人の約束
仕事を放り出して、 ロンドンへ行きたい気持ちもあるけど、 やはり今の私に、それはできない。
ずいぶん揺れたけど、 私は自分の心にそう確かめた。 その気持ちと謝りたい気持ちの両方を、 メールで伝えた。
そして…。
『僕も悪かった。ただ、帰国まで、 忙しさも疲れも増す一方だと思う。 八つ当たりしたくないから、 仕事に集中するよ』
その返信を読んでから、何もできなかった。 連絡を取り合わないのは、怖い。 でもメールをして返信がないのは、 もっと怖い。
6日後の朝。 メールの受信音で飛び起きた。
『連絡できずごめん。 でも、帰国の予定は変わってないから。 体、気をつけて』
味気ない…。
(そんなに疲れているのかな?)
(私達、どうなっちゃうの…)
心配と不安の入り乱れは、 いっそう激しくなった。 それからは、週に1度、 同じようなメールが届くだけ。 返信をしても、リアクションは、ない。
いよいよ、和也さんの帰国の日。 こんなに不安定な気持ちで この日を迎えるなんて…。
それでも、けんかの前にした約束が 撤回されていない事が、 私にとっては救いだった。 その約束は、和也さんが とびきりのワインを持ち帰ってくれること。
私は、ワインと一緒に楽しむ 食事を用意しておくこと。 私は、自分に「大丈夫」と言い聞かせて、 料理を作った。
空港に着いた私は、 到着ロビーの出口に向かった。 周りには溢れるほどに人がいるのに、 すべてが遠くにあるみたい。 心臓はのど元で鼓動するようで…。
五感は視覚に集中してしまう。
…!
瞬間、心臓がひやりとした。 人ごみの向こうに、 こちらに向かって手を挙げる人…。
和也さんだ。
目が合った瞬間、彼は笑ってくれた。 そして、声に出さずに「ただいま」と言った。 私は「お帰り」と返す。
「ただいま、真奈」
目の前まで来て、優しい目で差し出した バッグの中には、ラッピングされたワイン。 「お帰りなさい」という言葉と涙、 どちらが先に出ただろうか。
私は、彼の胸に額を押し当てて身を預けた。
互いの温もり
空港から私の部屋に戻ると、 2人とも、もう自分を抑えられなかった。 玄関に鍵をかけて振り返るのと同時に、 口の中に広がる温もり。 絡まる舌の隙間から
「会いたかった」
と声が漏れる。
「けんかの後さ」
ベッドで服を脱がせ合いながら 彼がそう口にしたとき、 私は一瞬、手が止まった。
「真奈のこと、すごく誇りに思ったんだ。 一目惚れした瞬間から、 ずっと癒やされてきたんだけど。 でも、真奈と仕事の関係が 変わったっていうか。 それで、癒されるだけじゃない。 真奈は僕の誇りなんだって」
「嫌われちゃうかもって、怖かった」
と言う私から、 彼は最後の1枚をそっと脱がせた。 「ばかだな」と笑いながら。
半年ぶりに触れることができた お互いの温もり。 皮膚の1枚でさえ、邪魔に思える。
「この耳が、僕に1番近かったのかな…」
熱い口にふさがれた耳の中に、 ピチャリと唾液の弾ける音と 吐息が流れ込む。 私は、彼の指を自分の口元に運び、 舌の上に数秒乗せてから、軽く吸い上げた。
「この指で、いっぱいメール 送ってくれたんだね」
私たちは、お互いの耳と指、 それから口を溶かすように愛した。 この半年間、ふたりを、 見上げた空を、つないできたもの。
彼の唇を指でなぞりながら、 私は、自分の中心から甘いとろみが 溢れるのを、感じていた。 和也さんが、そのとろみの中に 沈み込んでくる。
「あぁぁぁ」
私たちは、一緒に息を吐いた。
「実は、次はカナダなんだ。3ヶ月後から」
突然そう告げられて、
視線を外せなくなった。
「そんな…」と返す瞬間前、
彼は「ついてきほしい」と言った。
「家族として」とも。
目を合わせたまま頷く私の目尻から、 涙が一筋流れた。 その涙を舌ですくい取って、 和也さんは、私の奥を強く突き上げた。
深くつながったまま身を起こして座り、 和也さんに抱きつく。 腰のうねりと表情の切なさは、 ひと息ごとに激しくなる。
私たちは、目を見つめ合ったまま 上りつめた。 その瞬間、彼の目の奥に、 青い空が広がった。
<空をつなぐ 〜おわり〜>