注目のワード

官能小説 揺れる明るみ〜癒し〜 6話


もどかしく、見上げる…

「ぁぁぁあああ、雄君…なんか…、ダメ…」

彼をつかまえている泉の壁が、モゾモゾ、ザワザワと波立ってくる。
そのもどかしさから逃れるには、カラダを振り乱すように動かすしかない。

私は、ほとんど「ひぃぃ」という息になっていた。
頭が白くしびれて何も考えられないのに、彼の腰の激しさに、自然に応えている。

「ぅんんんん…。俺も…、ぁぁああ」

下から見上げる雄一の表情が、苦しそう…。
私は、思わず視線を外しそうになった。

最後まで、視線を結んで

「葵、ダメ…。目…そらしちゃ」

彼の声が、私の視線を引き戻した。

「目、最後まで…見ててごらん」

少しだけ優しい微笑みを取り戻した彼の眉間は、すぐにまたシワを刻んだ。
きっと、限界が近づいてきている。彼の目からは、涙なんて出ていない。
それなのに、どうしてこんなに、涙を思わせる顔をしているんだろう。

包み込むような温かみと、キリキリと音がしそうな切なさと、はしゃいで走り出しそうな無邪気さと…。
全部ひっくるめて、“愛おしい”と聞こえてくるようなうるみが、彼の目から注がれてきた。

私のカラダは、自分でも驚くほど激しく、上り詰めようとしている。
全身の細胞が、煮えたぎるように揺れている。
その表情は、彼にはどう見えているんだろう…。
“私も愛おしい”と、伝わっているだろうか。

「ぁぁああんんん。…雄君…、ほんとに、もう…」

彼の腰は、「ぅぅうああっっ」といううめきと共に、さらに激しく私の奥を突き抜ける。
私の肩をグッと強く抑えて、苦しそうな表情も、いっそう切迫している。

「ぁぁぁああははぁぁっっん」

「……っっんんぅぅっっ」

という息を、同時にキャンドルの光の中に響かせて、私たちは汗ばんだ体を重ね合わせた。

癒し…たい。

ぐったりと私に体を預け、荒く息をする雄一。
私も、全身がしびれて溶ける余韻に覆われて、しばらくは動けない。
しかしそれから、私は、いつの間にか自然に、彼の髪を撫で、背中を撫でていた。

(目を合わせて上り詰めると、こんなにも幸せなんだ…)

弱さと強さ、柔らかさと強引さ、もろさと頑丈さ。
対極にあるあらゆる男の精気を、すべて感じるような瞬間だった。
でも、それだけじゃない。雄一の男らしさに、守られていただけじゃない。
見つめ合って燃え上がり、燃え尽きながら、私は願っていた。

(彼が傷つかないように見守りたい。もしも傷ついたら、すべての傷を舐めて癒やして、包み込みたい)

…傷を舐めて、か。

私は、目の前にある彼の首筋から、汗を舐め取った。
彼は、「ん?」と小さく反応して、腕枕へと体勢を変えた。

「やっぱり、ちゃんと葵の顔と体が見えるって、幸せ。それに、本当にキレイ」

と、抱き寄せてくれる。
そして、私の頬を包んで、自分のほうを向かせると、長く長く、長く口づけた。

(私はこれから、この人を癒やせるだろうか…。彼がしてくれたように、私も彼を包み込むことができるだろうか)

柔らかく溶け合う唇を一瞬離すと、私は、彼の唇を包むようなキスを返した。


END

今、人気・注目のタグ<よく検索されるワード集>(別サイト)

あらすじ

葵と雄一は目を合わせたまま、同時にオーガズムを迎える。

葵は、目を合わせてオーガズムを迎えることに、深い幸福感・快感を覚える。
いつものセックスは抱きしめられるだけの後戯が、自分からも抱きしめる後戯に…

はづき
はづき
肌の細胞すべてに、体の動きすべてに、心が宿る。 心が…
カテゴリ一覧

官能小説