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官能小説 「クロス・ラバーズ」…spotA〜美陽編〜・シーズン11
ずっと一緒にいたい。
12月に入った。社内は年末進行でどの部署も――特に編集関係の部署は大わらわだ。年末年始は印刷所が閉まってしまうから、いつもよりもかなり早く入稿作業を終わらせないといけない。休日返上で働く者も多かった。
「conrad」編集部も同様だった。
それでも編集長の渋峰、森尾・西原両副編集長の采配で、編集部員たちは週に一度の休みは確保できた。
土曜の夜遅くまで働き、そのまま隆弘の家に泊まった美陽は、日曜の昼過ぎから隆弘と近くの公園に散歩に出かけた。
隆弘の過去を聞いた翌日、二人で訪れた場所だ。それからも何度か来ていたが、いちばん最初にやってきた日のことを思い出すと、何だかずいぶん昔のことのように思える。
新雑誌創刊、隆弘に抱かれたこと――そんなできごとが立て続けに起こったからだろう。
昼下がりの公園の広場では、子供たちや家族連れがサッカーやキャッチボールに興じていた。
二人でベンチに腰掛けてその様子を眺めていると、まだ2歳か3歳ぐらいの子供が、覚束ない足取りでこちらに近づいてきた。
「これね、パパに買ってもらったのー」
子供は持っていた小さなシャボン玉の容器を持ち上げてみせ、得意げにシャボン玉をつくってみせる。
無数の光の球が美陽たちのまわりを舞った。
「そうか、よかったなー」
隆弘は穏やかな笑みを浮かべて子供の頭を撫でる。
(こんな顔もするんだ)
美陽と一緒のときも優しい顔をしてくれるが、それとは少し違う。
またひとつ、隆弘の好きなところを見つけた。
「あっ、すみません」
子供の父親が駆け寄ってきて、頭を下げながら子供を向こうに連れて行った。父親は隆弘より少し年上ぐらいに見えた。
(隆弘さん、結婚したら意外といいお父さんになりそう)
父親と子供の後ろ姿を見送りながら、美陽はぼんやり考える。
(……でも、まだ先のことかな)
それよりも、今は近々に大事なイベントを控えている。
「クリスマスのプレゼントは何がほしい?」
美陽は切り出した。最初はあえて希望を聞かずにサプライズで渡そうと思っていたが、どうせだったら欲しいと思っているものを贈りたいと考えなおしたのだった。
「そのことなんだけどな」
ふいに隆弘の声が真剣味を帯びた。美陽は反射的に身を引き締める。
何を言い出すつもりだろう。
「一緒に買い物に行かないか? お前に選んでもらいたいものがあるんだ」
「何を?」
「……指輪」
隆弘は照れくさそうに、しかし美陽の目はまっすぐと見つめたまま言った。
「それって……」
「あぁ、もう……改まって言うと照れるな。美陽、俺はお前とずっと一緒にいたい。……結婚しないか」
子供の声が、遠くに聞こえた。
納得いくまで探せよ
翌日からの一週間、美陽は夢うつつのような状態で過ごした。仕事は仕事と割り切っているからミスはなかったが、いったん仕事を離れると隆弘のプロポーズを思い出してぼーっとしてしまう。
まさかあの隆弘からプロポーズされるなんて……憧れていただけの頃には、夢は見ていたけれどあり得ないと思っていた。
午後の仕事がひと段落すると、美陽は一階の休憩スペースに行って缶コーヒーを飲んだ。緊張が緩んだせいか、頭の中がプロポーズのことでいっぱいになる。
「……はる」
だから、後ろから自分を呼ぶ声にはしばらく気がつかなかった。
「美陽!」
「わっ!」
肩を叩かれて、やっと振り返る。
相手は月乃だった。
「どうしたの? ぼーっとしてたみたいだけど」
月乃は首を傾げている。
そういえば、月乃は同棲が決まったときにすぐに報告してくれた。美陽が協力してくれたおかげだと感謝してくれた。ここ数日、プライベートに関することではまともに頭が働かなかったが、自分もきちんと月乃に知らせよう。
「月乃、少し遅くなっちゃうかもしれないんだけど、今日、空いてる? 一杯だけ飲みに行かない?」
「うん、特に用事はないけど……どうしたの?」
「月乃に聞いてほしいことがあるんだ」
話している間にも、顔が熱くなってくる。その様子で月乃は、少なくとも「何かいいこと」が美陽に起こったと察したようだった。
二人は会社から数駅のところにあるバーで待ち合わせることにして別れた。
ほどよく広く、ほどよく賑やかなバーは、二人だけの話をするには逆にうってつけの場所だった。
奥のテーブル席を選び、アルコール度数の高すぎないカクテルをそれぞれ注文する。
ドリンクが運ばれてくると、「じつはね……」と美陽は口を開いた。
「……隆弘さんに、プロポーズされた」
「えぇっ!?」
驚いてドリンクを落としそうになったものの、月乃はすぐに笑顔の花をぱっと咲かせる。
「おめでとう! 美陽もついに結婚ね!」
自分のことのように喜んでくれる月乃に、美陽は話してよかったと心から思った。
週末、美陽と隆弘は指輪を買いに出かけた。
「一生モンだからな。納得いくまで探せよ」
隆弘の言葉に甘えて、都心の百貨店やジュエリーショップを何店も回った。
「あ、これ……」
いいな、と口に出そうとして、しかし美陽はその言葉を飲みこんだ。ダイヤをふんだんに散りばめたその指輪は、見るからに高額そうだ。
「ちょっと来い」
隆弘は美陽の手を引いて、いったん店を出る。
「値段なんて気にするな。俺の嫁さんになる女に貧乏くさいことを言わせるわけにはいかないからな」
お見通しだったことにひやひやしたが、その気持ちはとても嬉しかった。その場で隆弘に抱きつきたくなったほど。
結局美陽が選んだのは、リングのアームラインがゆるやかなウェーブを描いて真ん中のダイヤを抱えこんでいる、柔らかな印象のものだった。
オーダーで、できあがるまでに1ヶ月少しかかるという。
「クリスマスまでには間に合わないけど、ごめんな」
隆弘は謝ったが、時期なんてどうでもいい。美陽は幸せな気持ちを強く噛みしめた。
ここに早く…
クリスマスは、隆弘が予約してくれたフランス料理のレストランで食事をした。
ソムリエのおすすめのワインで乾杯した後、美陽は一足早くプレゼントを渡す。「プレゼントは何でもいい。俺が持っていたら嬉しいと思うものがほしい」とのことだったので迷った末、結局、隆弘が好きなブランドの財布にした。
隆弘は食事が来る前に包みを丁寧に開けると、喜びをあらわにした。
「お前、俺のことわかってるなぁ」
美陽は胸の中で「やった!」とポーズをとってみせる。ここが高級なフランス料理レストランでなかったら本当にやっていたかもしれない。
食事をしながら、年末年始にお互いの実家に挨拶に行くことについて話した。少し前から決めていたことだ。もう日にちも行く時間帯も決めているが、こういう場所で改めて話すとやはり胸が高鳴る。
美陽が両親に、「同じ会社の先輩と結婚を考えているので会ってほしい」と打ち明けたとき、両親は驚きはしたものの喜んでくれた。年齢のこともあるので、むしろ安心したようだ。
家に帰ると、美陽は今日のために用意しておいた特別な入浴剤を取りだした。色や香りがつくだけでなく、お湯自体がローション状になる入浴剤だ。流すときには、別添の薬剤を入れれば、普通のお湯に戻る。
「この入浴剤、やばい……いつもよりエロい気分になる」
後ろから美陽を抱いた隆弘は、とろみのあるお湯で美陽の肩から腕を撫でながら、耳元で囁く。
それは美陽も同じだった。隆弘の手が動いてお湯が掻きまわされるだけで、体を愛撫されているような気分になる。
腕に触れていた隆弘の手が脇の下を滑り、乳房に触れる。
「ひゃぁっ……」
いつもとは少し違う感触に、まだ敏感なところに触れられたわけでもないのに声が出てしまった。
これでもし、もっと感じやすいところを攻められたら……
隆弘も同じことを考えていた。
乳首とクリトリスを同時に摘ままれる。ぬるぬるした感触は、これまで味わったことのないものだ。
「あ……はぁっ……あんっ」
お尻にあたっている隆弘の男のしるしも、すっかり硬くなっているのがわかった。
「隆弘さん、もう……」
「もう、何だ?」
隆弘の息も荒い。隆弘の望んでいることもきっと同じだ。
だが美陽に言わせようとする。
美陽が言葉をなかなか紡げない間にも、隆弘の愛撫は続く。指で襞を掻き分けられ、中をそっとなぞられる。
「隆弘さんがほしくて……仕方がないの……」
美陽が顔を真っ赤にして何とか言い終わると、隆弘は美陽の首筋にキスをする。
二人はお風呂から上がると、ベッドで激しく乱れた。
「ここに早く俺のものだっていう印をつけたいな」
セックスの後、隆弘は美陽の左手の薬指を撫でながら囁いた。
おめでとう
仕事納めの日がやってきた。部署内の大掃除をした後、「conrad」の編集部員たちは忘年会の会場である居酒屋に向かった。
全員に飲み物が行き渡ると、編集長の渋峰がまずジョッキを掲げた。さっそく乾杯の合図かと皆が倣うが、渋峰はコホンと小さく咳払いをして黙りこんだ。
「乾杯の前に、皆に報告しておきたいことがある」
編集部員たちは「何だろう」と言いたげに目くばせしつつも、神妙な面持ちで渋峰のほうを向く。
「森尾と谷崎が、あー……結婚することになった。式などはまだ決まっていないそうだが、来年そう遅くならないうちに挙げたいそうだ」
しん、とその場が静まり返る。一瞬間を置いて、「おぉっ」というどよめきとともに場が拍手で包まれた。
美陽と隆弘は目を合わせ、お互い決まりが悪そうに笑ってから逸らす。どちらかといえばアクが強く、普段から個人プレーをしがちな者の多い「conrad」の編集部員がこんなに素直に、笑って祝ってくれるなんて、いい意味で意外だった。
美陽はちらりと浩太を窺った。浩太は最初は複雑そうな表情をしていたものの、すぐにそれを拭い取って、まわりと同じような笑顔を浮かべた。
「おめでとう」
美陽の視線に気づくと、浩太は笑みを浮かべたまま、祝いの言葉を掛けてくれた。
冬休みが始まった。翌朝、二人は隆弘の運転する車で、静岡の富士宮にある美陽の実家に向かった。
家に着くまでに、美陽の通った小学校や中学校、高校を見て回る。「お前がどんなところで育ったのか、見てみたい」という隆弘の希望だった。
冬休みに入った学校はがらんとしており、校門やフェンスの外から眺めることしかできなかったが、隆弘はそれで満足だったようだ。美陽は何だか妙にこそばゆいような、恥ずかしいような気がしたものの、いやな気分はしなかった。
実家に着くと、両親と実家住まいの妹が迎えてくれた。父はだいぶ緊張していたが、元来ほがらかで誰とでもすぐに打ち解ける、似た者同士の母と妹が先に立って話をした。
「本当に、こんな素敵な人が美陽のお婿さんになるなんて……何かとうっかりすることの多い子ですけど、よろしくお願いしますね」
母は顔をくしゃくしゃにし、言わなくてもいいことを言いつつ喜んでいる。妹はぽーっとした表情で隆弘を見つめながら、
「よろしくお願いします……その、お義兄さん」
などと挨拶をした。
その後、結納や結婚式の希望などを少し話すと、二人は東京に戻り、一緒に年明けを迎えた。
新年の時報とともに二人は向かい合って、
「あけましておめでとうございます」
とお互い頭を下げた。
すぐに隆弘は美陽をぎゅっと抱きしめる。
「今年からは毎年、美陽と一緒に年を重ねていくんだな」
一生俺のものでいろ
初詣を終え、三箇日の最後の三日に、二人は東京都内にある隆弘の実家へ行った。老舗の呉服屋らしく、大きくはないが品のいい店がまえだった。
隆弘の父と兄は普段着だったものの、母も姉も三日になってもきっちり晴れ着を着こんでいる。
「なんで三日にもなって晴れ着を着てるんだよ」
隆弘が尋ねると、「あんたの将来のお嫁さんが来るんなら、お正月以上におめでたい日になるでしょうから」
姉はカラリと答える。隆弘に面影の似た、気の強そうな女性だった。結婚先から里帰りしたらしい。
きれいに着飾った母と姉に気後れしかけた美陽だったが、二人とも見た目よりずっと気さくだった。
「美陽ちゃんも着てみる? 着付けてあげるから」
用意していたのか、隆弘の母が晴れ着を引っ張り出してくる。断るのも逆に失礼な気がしたので、美陽は素直に好意を受け取ることにした。
晴れ着を着た美陽を見ると隆弘は、「馬子にも衣装だな」と悪態をついたものの、少し顔を赤らめていた。
着物姿の美陽と隆弘はもう一度、隆弘の実家の近所にある大きな神社へ初詣でに行った。
しばらくして、婚約指輪ができあがった。
美陽は隆弘に連れられて、あの公園を訪れた。真冬の一日だったが、陽が出ている間はそう寒くない。
「やっぱりこれがないと格好つかないよな」
隆弘は美陽の手を取ると、できたばかりの婚約指輪をそっと左手の薬指にはめた。

「改めて……」
隆弘が美陽を見つめる。
「一生俺のものでいろ」
「隆弘さん……こんなときにまで口が悪いんだから」
美陽は苦笑する。
「まだ続きがあるんだよ」
隆弘は一段と真剣な表情になった。
「美陽がいてくれるから、仕事がきつくても頑張れる。ずっと一緒にいてほしい。……これからもずっとそばでお前を守りたい」
しばらく、何も答えられなかった。涙で喉が詰まってしまったから。
「……はい」
美陽はやっと答える。
「私、隆弘さんのお嫁さんになります」
「結婚式かぁ」
結婚雑誌をパラパラとめくりながら、隆弘が呟く。結納の日取りも決まり、今度は結婚式の計画を立てる番になった。
「どんな結婚式がいいかなぁ、隆弘さん」
雑誌に紹介されているいくつものプラン例に、美陽も迷っていた。
あらすじ
ついに身体を重ね想いを確かめ合ったふたり。
幸せな日々を送っていたが隆弘はそろそろ一歩前に進みたいと考えるようになり…