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官能小説 恋の花の咲かせ方 2話 (欲求不満)
欲求不満
今日も淡々と仕事をこなし、マユの一日は過ぎていった。
そしていつものように、憂欝げな顔の面々を運ぶ夕方の電車に乗って帰途につく。
立ったままぼんやり窓の外を見ていると、一週間前に降りた結婚式場のある駅で電車が止まった。
そこからは、例の花屋が見える。まだ明かりがついていることに気づき、マユの胸は騒いだ。
実はここ一週間、毎日この駅に停車するたび目を向けていたのである。
その花屋の名前は、GREEN。
ブルースターのブーケ
あやかの結婚式の後、たまたま店の前を通りかかって中を覗き込んでいると、店員の拓巳に声をかけられた。
拓巳は、終電に乗るなら急いだ方がいい…と促しておきながら、駆け出したマユの背に向かって「あっ!」という大きな声をあげた。
驚いたマユが振り向くと、
「結婚式ですか? その花、ブルースターですよね!」
と、嬉しそうに彼が言う。
マユが持っていたのは、ブーケトスで受け取ったブーケだった。
「花言葉は、『幸福な愛』。だから、結婚祝いにおすすめするんです」
嬉々として花について語る彼に、マユは興味がわいた。
「お兄さんは、終電乗らないんですか? もうすぐですよね?」
マユは酔っていた勢いもあり、軽くからかうように言ってみた。
すると、
「そうだった!僕も乗ります!!」
と言って、店内に戻り電気を消し、鍵をかけて彼が飛び出してきた。
欲求不満
二人で駅に向かう途中、彼は井上拓巳と名乗った。
駅までの短い時間も、バラやカサブランカ、ユーチャリスという花もブーケに向いているなどと、拓巳はブーケについて語った。
拓巳の熱意には圧倒されるものがある。
マユをホームまで送った彼は、「今度はぜひ、営業時間にいらしてください。お気をつけて」と言って、反対のホームへ去った。
拓巳は年上に見えるが、その屈託ない笑顔はまるで少年のようだ。
その日から拓巳が気になりだしたマユは、三日目の夜、ついに彼と恋人同士になっている夢を見る。
夢の中で、拓巳もマユも素肌をさらした生まれた姿そのままだった。
彼は長い腕をマユの腰にまわし、もう片方の手で胸を愛撫する。
彼のすべらかな唇がマユの唇を覆い、熱い舌の感触を味わう。
二人は大胆すぎるほど大胆に、そしていままで体験したこともないような複雑な体位で絡み合った。
そして果てそうになる瞬間…マユはベッドの上で一人目覚めた。
欲求不満かもしれない……
と苦笑しながらも、マユは拓巳が恋しくて仕方がなくなった。
そしてその週の土曜日、マユはGREENを訪れていた。
少し離れた場所から店内をのぞくと、拓巳が真剣な表情で花を生けているのが見えた。
その瞬間、夢の中の彼と重なり、心臓をギュっと締めつけるような感触をマユは感じたのだった。