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官能小説 恋の花の咲かせ方 1話 (突然の出会い)
突然の出会い
電車の規則的な揺れに身をまかせ、仲田マユはまどろんでいた。
瞼の裏の薄暗闇に、ぼんやり浮かぶ淡く温かい光。
その光の輪の中に一人の青年のシルエットが見える。
するとふいに青年がこちらを向き、視線がマユをとらえた。
そこで、マユははっと目覚めた。
平穏な毎日
電車は相変わらず、けだるく単調なリズムを刻んでいる。
何か心の奥深くのデリケートな部分をくすぐられたような気分になり、顔の筋肉が自然とゆるんだ。
先ほど親友のあやかの結婚式に出席したばかりなので、マユはいつも以上に恋愛モードになっているのかもしれない。
2年前、マユはささいなことでケンカをして恋人と別れた。
それ以来すべてが面倒になってしまい、恋愛とは無縁の生活を送っている。
夢を追うこともなく平凡なOLを続けるうち、気づけばマユも26歳。
日頃のストレスといえば、上司のくだらないギャグにつき合わされることぐらいで、特に深刻な悩みがあるわけではない。
しかし、平穏な毎日を嫌ってはいないが、どうしようもなく物足りなさを感じてしまうことはある。
マユとは対照的に、どんなことがあっても前向きさを忘れない太陽のようなあやか。
彼女が結婚してマユも純粋に嬉しいと思ったが、その一方で「私も早くいい人見つけなきゃ」という焦りを感じたのも事実である。
突然の出会い
二次会を終えたマユは、そんな想いを抱えつつ最終電車に乗るために駅まで歩いていた。
最寄の駅は、いつも会社まで通勤する途中に通りかかるが、実際に下車したのは今日が初めてである。
道すがら、駅のすぐ近くにおしゃれな花屋を発見した。
すでに扉は閉まっており、ドアノブには、『CLOSE』と書かれたプレートがかかっていた。
ガラス張りの店内からは薄っすら明かりがもれている。壁はレンガ造りで、インテリアはすべて木製。
まるで童話にでも出てきそうな可愛らしい内装に、マユは目を奪われてしまった。
マユが店内を熱心にのぞきこんでいると、
「あっ、すいません。今日はもう閉店しているんで……」
という男の声が、背後から聞こえる。
振り向くと、優しそうな青年が立っていた。
「もしかして、終電に乗ります? 急がないと、もうすぐ出ちゃいますよ」
青年にそう言われ、はっと我にかえったマユは、あわてて駅に向かって駆け出した。
それが、井上拓巳との突然の出逢いである。
出逢ったばかりの彼が、ほんの短い電車内でのうたた寝の最中に夢に登場したことは、マユにとっては大きな驚きだった。