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官能小説【最終話】彼の知らない私と、私の知らない彼


いじわるな王子様

★作品について
この作品は、小説サイト「ムーンライトノベルズ」と合同で開催した、「ラブグッズで熱く感じる小説コンテスト」のLC賞作品です。

優くんがお姫様を扱うように、そっとベッドの上に寝かせてくれる。おもむろに優くんがラブグッズの箱の中を漁っているのが見えた。そして、水色の細長いものを手につかむ瞬間も。

「あ、それは……!」

(買ってはみたけれど、今まで怖くて、まだ使ってなかった――)

「祥子ちゃん。これ、わかるよね」
「バ、バイブ……です……」

それは二股に分かれたバイブレーションだ。
長い方は膣の中に、短い方はクリトリスに当てて、それぞれ刺激する。

「どうやって使うか、教えてもらっていいかな」
「ス、スイッチを入れて……振動する先端を……クリ、に当てたり……」
「へえ。これ、そのまま使っていいのかな?」
「……まずコンドームをつけて、ローションで濡らして……」
「そっか。祥子ちゃんの大事な体が傷ついたら、大変だもんね」

言いながら、目の前でコンドームをつけたバイブにローションを垂らしていく。
あふれたローションが、優くんの手まで濡らしていった。

「ちゃんと……トロトロにしてあげないとね」

私の目を見ながら、優くんがそうつぶやく。
スイッチをいれると、振動音と共にバイブが大きく回転した。

「へえ……こんな感じなんだ。ねえ、祥子ちゃん」

私は、ごくりと唾を飲んだ。

「イメージしてみて。こうやって回転しながら、祥子ちゃんの気持ちいところに当てていくんだよ」
「……ぁ……っ」
「何度も、何度も、電池が切れるまでずっと……」
「ゆ、優くん、じらさないでっ……お願いっ」
「ふふ、そんなに慌てないで。今、いじってあげる」

優くんがバイブを片手に、ベッドの上で膝立ちになる。
ベッドがきしむ音だけで、興奮してくる。
彼はゆっくりと私の両足からショーツを引き抜くと、M字に足を開かせる。
ウィンウィンとうなるバイブが、股間へと近づいていった。

淫らなご褒美

「さ、存分に気持ちよくなって」

先端がクリトリスに触れた瞬間、今までのたまった快楽が爆発する。

「あ、ああっ……!」

(すごい……っ!気持ちいい……っ!)

「んんっ、いい!気持ちいいよっ、優くん……!」
「うん。すごくトロトロな顔してるよ、祥子ちゃん。エッチで、可愛い」

その瞬間、するりと先端が私の中に入り込む。
膣の中でバイブが暴れまわり、肉壁を押しのけて、奥までかき分けていった。

「……ひぅっ!?あ、ダメ、中、すごい、う、動いてる……!」
「ねえ、祥子ちゃん。このバイブ、クリトリスがちゃんと挟める形になってるみたいだよ」
「優くん!?待って、いきなりすぎっ」
「スイッチはこれかな?」
「ダメ、ダメ、待って……!」
「快感から逃げないで、祥子ちゃん」

(今、クリまでいじられたら、気持ちよすぎて、変になっちゃう……!)

「どんな祥子ちゃんでも、ちゃんと僕は受け入れるから」

止めるも間に合わず、クリ側のバイブが振動した。

「ひああああっ!」

腰がはねる。
中と外から挟むように同時に責められて、気持ちよさの逃げ場がない。

「優くんっ、優くんっ」
「あぁ……すごく、エッチだよ、祥子ちゃん……っ」
「ダメ、気持ち良すぎて、ダメ……おかしくなる!」
「可愛いっ……大好きだよ」

優くんがバイブを、ピストンする。わざと、グチュグチュとした水音が響くように。
先端が何度もGスポットをかすめるたびに、私は気持ちよさで頭がいっぱいになっていく。

「んんっ、ひぅ……っああんっ!」
「ズボズボされるの、気持ちいいんだ?エッチな汁が、どんどんあふれ出てくるよ。お尻の穴までぐしょぐしょだ」
「あんっ!あ、アアッ……ん、はあぅ……っ!ふ、ぅあ……っ!」
「……そういえば、お尻も気持ちよさそうだったよね」
「……ぅ、あっ……えっ!?」
「こっちも、いじめてあげる」

さっき使っていたローターが入り口に当てられる。
すると愛液がローション代わりになり、つぷっとローターが中に入ってしまった。

「んんんっ!?」
「おっと。入っちゃった」

入り口付近が、ローターのせいで閉まりきらない。
異物感に、嫌でもお尻の中にローターが入っているのだと思い知る。

「ちょっとつつくだけのつもりだったのに……祥子ちゃんのお尻が呑み込んじゃったんだよ」
「や、やだ……っ、言わない、で……っんぁあっ」
「エッチなお尻だね。ローターをくわえて、離そうとしないんだから」
「や……ゆ、うく……」
「これでスイッチまで入れたら、どうなっちゃうんだろうね」
「……いや、怖いっ、優くん待ってっ!」
「――でも少し悔しいな。グッズ相手だと、こんなに気持ちよさそうなんだ。ちょっと妬いちゃうよ」
「ゆ、うくんっ……優くん……っ!」
「……祥子ちゃん、僕とのエッチでこんなに乱れたこと、ないもんね」

ハッとして、私は顔を上げる。
優くんは静かに、そして寂しそうに笑っていた。

「最初から、グッズを使ってあげればよかったのかな……」
「……ち、違う」
「ん?」
「優くんだから……優くんにいじめられたから、気持ちいいの」

確かに、優くんとのエッチの物足りなさを感じていなかったと言えば、嘘になる。
けれどMだからといって、誰にでも責められばいいってわけじゃない。
むしろ逆だ。信頼した相手からじゃなきゃ、怖くて気持ちよくなるどころじゃないのだから。

「一人エッチの時も……ずっと、優くんにされたらって……んっ、妄想、してた……っ」

あなたじゃなきゃ

私はバイブのスイッチを切ると、起き上がる。
茫然とこちらを見つめる優くんの肩をつかんで、正面からちゃんと告げた。

「優くんじゃなきゃダメ。大好きな人からじゃなきゃ、感じない。……私は優くんに意地悪されたいの!」
「……僕じゃなきゃ……ダメ?」
「そうだよ。優くんだから怖くないの、安心して身を任せられるの。だって、優くんは私を愛してくれてるから……っ!」

官能小説挿絵:彼に愛されながら意地悪されるのを望むシーン

目頭が熱くなる。
少し、泣きそうになってしまう。泣いている場合なんかじゃないのに。

「……泣かないで、祥子ちゃん」

優くんの指が、そっと涙をぬぐう。

「ねえ、君が嫌ならこれ以上、僕は何もしない。君を傷つけたいわけじゃないんだ」
「優くん……」
「祥子ちゃん。この後……どうしたい」
「どう……って」
「それとも、もう、僕が怖い……?」

私は大きく首を横に振る。

「……ううん。そんなことない」

胸の奥から思いがこみ上げてくる。
この言葉は、私の本当の気持ちだ。

「私、優くんに抱かれたい。優くんに、めちゃめちゃにされたいよ……!」
「……良かった」
「お願い。……私の中に、優くんの……入れて」
「うん、喜んで」

優くんは私を優しく押し倒す。
バイブを引き抜くと、すでにいきりたっていたそれを、深く挿入した。

「んんっ……!」
「あぁ……あったかくて、気持ちいいよ、祥子ちゃん……」
「……んっ、優くんのも、あったかい……よ」
「大好きだよ、祥子ちゃん」
「私もっ……優くんが大好きっ」
「ちょっと、もうガマンできないかも……っ、動くね」

優くんが私の腰をつかんで、深く貫いていく。
私の気持ちいい場所は、とっくに優くんに知られていた。

「一番奥、好きだよねっ、祥子ちゃん。ここを……ぐりぐりされるの、そんなに気持ちいいんだ……!」
「ああっ!優くん!優くん!そこっ、そこがいいのぉっ……!」
「可愛い……僕ので気持ちよくなってる祥子ちゃん、すごく可愛いよ……っ」

奥まで突かれると同時に、優くんの顔が近づいてくる。
唇が深く重なっていく。
その隙間から、優くんの舌がもぐりこみ、私の咥内をぐちゃぐちゃに侵していく。

「ん、んんっ!あ……っん、む、ちゅ……ふあっ!」
「ふ……んむ……ン!ん……フッ」

まともに息もできないくらい、深い口づけ。
酸欠状態で、クラクラしながらも、やめられない。やめたくないくらい、気持ちいい。

「――っぷは……!」

それは、息継ぎした一瞬だった。
お尻の中に残っていたローターが、いきなり振動し始めたのだ。
そしてそのスイッチを優くんは手にしていた。

「ゆ、優くん!?」
「全部……気持ちよくなろ、祥子ちゃん」

じわじわとローターのスイッチを上げながら、優くんは私の髪をなでる。

「お尻も、口の中も、乳首も、クリトリスも……。祥子ちゃんの気持ちいいとこ全部」

彼は、私の耳元に口を寄せた。

「……ぐっちゃぐちゃに、してあげる」

今まで見たことのない、ほの暗い表情に、ゾクゾクする。

「あ……優、くん」

この人は誰だろう。こんな表情ができる人だっただろうか。
けれど、もう怖いなんて思わない。
彼は、私の奥底に眠っていた被虐心を引きずり出してくれたのだから。

「して……私をめちゃくちゃにして……!」

キスで口の中をなぶられて。
両手で乳首をいじられて。
腰でクリを押さえつけて。
お尻の中のローターを擦るように、中を突かれて。

(もう……溶けちゃう、溶かされちゃう……っ!)

「んああ、優くんっ、優くんっ!イく、イッちゃう……あああっ!!」
「……っ、祥子ちゃん!」

頭の中が真っ白になる。
そして、二人同時に果てた。

演技じゃない

「す、すごかった……」

あの後、失神するように眠ってしまった私は、気づけば服まで着せられて、ベッドの中にいた。
隣には当然優くんがいるが、ピロートークより前に放心状態になったせいで、甘い雰囲気が全然ない。

(今までしてきたエッチって、いったい何だったんだろう……)

「大丈夫?痛いところはない、祥子ちゃん?ごめんね、無理させちゃったよね」

優くんはいつものおだやかで心配性な恋人に戻っている。
本当にさっきと同一人物とは思えない。

「大丈夫。ありがとう、優くん。すっごく良かった」
「でも……意外だったよ。祥子ちゃんにあんなMっ気があったなんて」
「……ごめんね、ずっと言い出せなくて。あと」
「ん?」
「……ありがとうね。優くん、私のためにSっぽく振舞ってくれたんでしょ」
「ああ、うん。それなんだけど……」

優くんの方に顔を向ければ、少し照れた様子で頬をかく彼がいた。

「その……僕も、祥子ちゃんをいじめてる時……すごく興奮しちゃったんだ」
「……え?」
「本当はね。祥子ちゃんが泣いたとき、申し訳ないと思うと同時に、もっといじめたいって思ったんだよ」

(え?優くんが?え、私を……?あれは演技じゃなかったの?)

「自分にこんな一面があるなんて、思わなかった」
「ゆ、優くん……?」
「それにラブグッズも、調べたら色々あるんだね。今度、僕も買ってみようかな」
「じょ、冗談だよね……?」
「ふふ、どうかな」

優くんは口元を上げるが、その目は笑っていない。
エッチ中でもないのに、私の心臓は早鐘のように鼓動していた。

「ねえ、祥子ちゃん」
「な、なに……?」

悪寒のような、それでいて楽しみのような感情が、私の中で同時に渦巻いていく。
もしかしたら私は、彼すら知らない彼の秘密を暴き出してしまったのかもしれない。

「――次はどれでいじめられたい?」

END

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あらすじ

大学生の祥子には、恋人の優に言えない秘密があった。
それは彼にいじめられたくて、エッチな妄想をしているということ。
ところが、そんなある日、ラブグッズを使って妄想しているところを彼に見られてしまい……!?

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