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官能小説【2話】「気持ちいい」を聞かせて
彼女そういう女じゃないんで
★作品について
この作品は、小説サイト「ムーンライトノベルズ」と合同で開催した、「ラブグッズで熱く感じる小説コンテスト」のLC賞作品です。
「あー! 終わんねー!」
自分の机に突っ伏すと、隣の席の伊地知が笑い声を上げた。
ちらっと睨み上げる俺に、おどけて肩をすくめる。
「まじでこの部署終わってますよね。今日日曜だっていうのに」
伊地知は2年後輩にあたるが、この部署の中では俺より先輩だ。
異動してきたばかりの頃は、いろいろ勝手を教えてもらい、世話になった。
「もう全部明日にして、飲みに行く?」
「何言ってんすか、新田さん。彼女待ってるんでしょ? たまには早く帰ったらどうです?」
伊地知のこの、後輩らしからぬ大人びた対応にも、俺はよく救われている。
「……だな。たまには早く帰るか」
「そうそう、それでちゃんと抱いてあげてください」
「おい」
伊地知のこの、後輩らしからぬ下ネタには、よく悩まされている。
そんな俺の心境を知ってか知らずか、伊地知はからからと楽しそうに笑うと、背伸びをした。
「だって新田さん、そういうの疎そうなんですもん。ダメですよ、仕事が忙しくてもちゃんと性欲は温めておかないと。仕事と私どっちが大事? って聞かれちゃいますよ」
「俺の彼女はそういう女じゃないんで」
「あー、出た出た。愛情なんて目に見えないものを過信しちゃって。新田さんは、気付いたら浮気されてるタイプですね」
俺のことならまだしも、美緒のことを悪く言うなんて。
若干イラっとしたものの、伊地知に悪意は全くないのを知っているので、適当に流す。
(にしても、浮気って)
美緒に限って、そんなことはない。
浮気どころか、性に疎い彼女はセックスも俺に付き合ってくれてるという感じで、本当にしたいと思ってるのかすらわからない。
求めるのはいつも俺からで、求められれば絶対に断らない。
気持ちいいかと聞けば頷くけど、美緒からは一度も聞いたことがない。
堪えられずに出てしまった、という感じの、心からの「気持ちいい」を。
そんなことを考えていたらわずかに勃起してきてしまって、自分自身に呆れながらも早々に会社を出た。
……あれ? そういえば。
俺たち、いつからセックスしてないんだ?
彼女の嘘
家に帰ると、俺はふっと全身の筋肉が緩むのがわかる。
美緒の顔を見て、まず頬の筋肉が緩んで、肩の力が抜けて、それから心も穏やかになる。
彼女のおかげで、俺は仕事のプレッシャーで気が張っていたんだとわかるし、彼女のおかげで、それを癒すことができる。
「ただいま」
だからその日も、いつものように彼女が迎えてくれることを疑わずに帰宅した。
けれど、いつもは小走りで駆け寄ってくるはずの美緒がいない。
(……あれ?)
リビングに入っても姿が見えず、首を傾げた。
「あれ? 美緒―?」
(出かけてるのか?)
連絡してみようかとスマホを取り出しかけた瞬間――
ガタガタと寝室のほうで物音がして、美緒が出てきた。
「け、圭ちゃん! お帰り!」
「……あれ? そっちにいたの?」
「ご、ごめんね、寝てた! ちょっと昼寝しようと思ったら、こんな時間に……」
美緒が緩やかにウェーブのかかった髪をいじる。
彼女がこうして髪に触れる時は、何か隠したいことがある時だ。
だけど、そんなことより――
「美緒……泣いてた?」
彼女の少し腫れぼったい瞼に、いつもより潤んだその瞳に、不安を駆り立てられた。
どうしたんだ、一体。何があったんだ。
俺の美緒を傷つけたのはどこのどいつだ。
「な……泣いてなんかないよ! 寝起きだから、かな?」
美緒は慌てたように目をこすって、キッチンに立った。
彼女の背中はどこか緊張していて、それが、彼女の言い分は嘘だと証明していた。
(でもまぁ……この話はもう終わりにしたほうがいいんだろうな)
もやもやとした気持ちは残るも、深追いせずに、俺は部屋着に着替え始めた。
「ごめんね、今すぐご飯用意するからー!」
遠くで聞こえる彼女の声に、俺は「おー」とだけ返した。
今日は、久しぶりにセックスに誘ってみてもいいかもしれない。
失ったタイミングと焦る心境
(……そう、思ったのに……)
ご飯を食べ、風呂を澄まし、並んでベッドに入った。
セックスしよう。しなくちゃ。
そう思えば思うほど、どんなふうに誘っていいかわからなくなる。
俺、いつもどうしてたっけ? 教えてくれよ過去の俺。
「美緒」
とりあえず名前を呼んでみた。
彼女は小さく小首を傾げて、そして、条件反射のように俺に顔を近づけてくる。
(ああ……そうだ。ここでキスをして、そのまま――)
彼女の唇の柔らかさを堪能するように、唇を合わせる。
一度離して、それから今度は深いキスを、と思った次の瞬間、
「おやすみ、圭ちゃん」
優しい声音で言われ、俺は固まった。
行き場のなくなった唇が、何度が開閉して、そして――
「……おやすみ、美緒」
やってしまった。おやすみと、言ってしまった。
本当は美緒の唇を食んで、舌を吸って、それから柔らかい胸に手を――
けれどベッドに潜り込んで目を閉じた美緒を再び起こすのもためらわれ、俺はため息をついた。
(大体、なんで急に焦ってるんだ)
伊地知にからかわれたから? 美緒が泣いていたから?
だけど、セックスのタイミングなんてこれからいくらだってあるだろう。
今までセックスなしで大丈夫だったんだし、もうしばらく間が空いたって……。
なんとなく悶々とした気持ちを持て余して、俺は寝返りを打った。
同棲を始める時、美緒と選んだ木製のダブルベッドがかすかに軋む。
その音で、ここに引っ越してきた初日、届いたばかりのこのベッドで、美緒を抱いたことを思い出した。
荷物の荷解きの時間さえ待てなかった。
何もかもを後回しにして、一刻も早く彼女を抱きたくてしかたなかった。
「待って、圭ちゃん……」
美緒は恥ずかしそうに俺を見上げて、けれど抵抗はしなかった。
キスをしながら服を脱がせて、胸を揉みしだいた。
美緒の身体が気持ちよさそうに震えて、それに気をよくして今度は頂きを責めた。
耐えきれなくなったように甘い声を上げる美緒に、俺の興奮は更に掻き立てられた。
「…………」
そこまで思い返して、俺はベッドから立ち上がった。
美緒との行為を思い返していたせいで、完全に勃起している。
(これは、一発どうにかしないと眠れそうにないな)
トイレに入って、ため息をつく。
男ばっかり、不公平だ。
なぜ性欲というものは、男女平等に作られていないのだろう。
セックスしてないのに…
結局、そのまま数週間が過ぎた。
美緒とはセックスできていないし、そもそもセックスに誘えてもいない。
「やっべ、今日朝からミーティングだった。忘れてた」
美緒が作ってくれた朝食もそこそこに、俺は慌てて準備をする。
「大丈夫? 間に合う?」
「ああ、なんとか。悪いな美緒、朝ごはん残しちゃって」
「ううん、それは平気」
美緒は優しく微笑むと、玄関まで見送りに来てくれた。
ここで行ってきますのキスをするのも日課の一つで、俺は朝一でパワーをもらえるこの行為を案外大事にしていた。けれど――
「じゃ、行ってきま――」
いつものようにキスをしようとして、止めた。
美緒が不思議そうに俺の顔を覗き込んでくる。
「どうしたの?」
「いや……美緒、最近なんかしてる?」
「え?」
「エステとか。……なんか綺麗になった」
ただ純粋に、疑問を口にしただけだった。
けれど、美緒の頬がかぁっと赤く染まっていくのを見て、胸がざわついた。
「なっ……何もしてないよ!」
美緒が目を逸らす。
緩やかにウェーブのかかった髪をいじる。
――彼女がこうして髪に触れる時は、何か隠したいことがある時だ。
「新田さんは、気付いたら浮気されてるタイプですね」
伊地知のにくたらしい声が、妙にクリアに再生される。
あの日、泣きはらした目をしていた美緒を思い出す。
(……もしかして、俺じゃない男の手で綺麗になった?)
バカげた予感を、そんなわけないとすぐに否定する。
けれど、俺の胸はずっとざわついたままで――
他の誰でもない、美緒に打ち消してもらわないといけないと、そう、思った。
⇒【NEXT】「前より濡れやすくなったよな。……ほら、ここも何カ月もしてないのに、すぐにほぐれた」(「気持ちいい」を聞かせて 第3話)
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あらすじ
休日出勤をし、終わらない仕事に弱音を吐いていると、後輩から彼女について話をされる。
話の最中に言われた「気づいたら浮気されている」って言葉を自分の彼女に限って…と適当に流していたが…