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官能小説 「もうひとつ」の誘惑 後編
思い出すと…
「おかえり」
仕事帰りの待ち合わせの駅で、出張から帰った浩之に駆け寄った。
「ただいま、行こうか」
大好きな笑顔を見せてくれる彼に頷くと、スッと手を取ってくれる。 その手を握り返すと、いつもの温もりが流れ込む。 …と同時に、一瞬、血液が逆流するような熱を感じた。
彼が出張に出かけて3日目の夜…、ひとりでディルドを使った。 その時の、鏡に映った自分を思い出すと、目の前の浩之と目を合わせられない。
「どうした?」
優しい目を向けてくれる彼に「なんでもない」と首を振ると、 行きつけのレストランへと向かった。
「お風呂、入ろうか」
出張で疲れているだろうからと言う私を制して、浩之は、 ホテルに入るとお風呂の用意をしてくれた。
「何…これ?」
バスタブに張られたお湯に触れて、私は思わず彼を振り返る。
「入浴剤」
見ればわかることを彼はひと言だけ返した。手にお湯をすくってみると、トロリと柔らかく指の間からこぼれ落ちるお湯。 体を洗うと、私たちはその柔らかなお湯に浸かった。
「何これ〜!」
さっきと同じだけれどさっきとは違う言葉が、笑顔と一緒にこぼれてくる。
「トロットロだな」
同時に「きもちいい」とつぶやいて、目を合わせて、また笑った。
「これ、どうしたの?」
「通販で買って、雅也のとこに…」
親友の家を届け先にして用意してくれたことを話す彼のはにかみ笑いが、 体を包むお湯のようにとろけて、愛おしい。
「ありがとう」
彼の肩にお湯をかけながら、彼の体の向きを変えて肩をマッサージする。 優しい気持ちがもっと優しくなるようなお湯の感触と、お湯の膜でキラキラと光る肩や背中。 (ギュッと抱きつきたいような…。ペロリと舌を這わせたいような…) そんな事を考えながら彼の話を聞いていると、「交代!」と彼が振り向いてキスをしてくれる。
「香澄も、俺が出張中、お疲れさま」
肩にお湯をかけながら、優しく撫でてくれる。
「すごく色っぽい、トロトロしてる背中」
彼はそう言うと、両脇から手を滑り込ませて、胸を包む。 「我慢できない」とグッと私を引き寄せ、自分の脚の間に抱え込んだ。
「会いたかった…」
抱きしめながらも、私の胸が一番感じる触れ方で、彼は指先を器用に動かした。 指の腹で、そっと胸のふくらみをなぞりながら先端に向かう。 そして、てっぺんの突起を弄ぶように転がして、絶妙なタイミングでつまむ。
「あぁぁ…浩之、このお湯…いい…」
「きもちいい?」
「…っうん」
直接触れられているのに、1枚もどかしさをまとっているような…。 その1枚が、柔らかく快感の余韻を残して、気持ちよさが波紋のように広がっていく。
「もうコリコリしてるよ、乳首」
その言葉に返事をせず、私は、ふぅと息をついて彼のふくらはぎを撫でる。 彼の手も、私の脚やウエストにも伸びてきた。 撫で続けたら、触れ合っている部分が溶けあってふたりが一体になってしまいそう…。
狂おしいお湯に、熱い息が何度も落ちた。
「ねぇ、俺がいない間、ひとりでした?」
「…してないっ」
少し彼の腕をつねりながら、きっぱりとした声で答えた。
「嘘…その言い方…したでしょ?」
かぶりを振る私に、「ディルド、使った?」と言いながら、脚の間にトロリと手を忍ばせる彼。
「言って、ほんとのこと」
その言葉と同時に、脚の間に振動が起こった。
「何?」
彼は、私の質問には答えない。視線を落とすと、彼の手に水色のローターが握られている。
トントンッとつつくように、丸く弧を描くように…、敏感な一点を器用に避けながら、その水色がお湯を揺らしていた。
「あぁぁ…」
お湯のとろみとローターの振動とに、全身の肌がいつもの何倍も敏感になる。
「触らせて…」
後ろに伸びてしまう手に触れた彼自身は、私の手を跳ね返すように硬かった。
「おぅ、香澄、いい…」
得体の知れない何かに包まれているようだと、彼は小さくもだえる。
荒さが増す息の中で、彼はグッと姿勢を取り直し、ローターをクリトリスに当てた。
「いぃぃ…」
一気に息苦しくなるような快感が、体の真ん中に凝縮する。
「ねぇ、香澄。ほんとは、ひとりでディルド使ったんでしょ」
同じ質問をくり返す彼に、かぶりを振るとも頷くともつかない悶えで応えていた。
甘い誘導尋問
「ねぇ、香澄。ほんとは、ディルドひとりで使ったんでしょ?」
トロトロの入浴剤の中で後ろからクリトリスにローターを当てる出張帰りの浩之は、声だけでなく息までもが意地悪になっていく。
「どんなふうにしたの?」
浩之は、私の返事を待たずに話を進め、クリトリスにグッとローターを押し付ける。
「ここも、いっぱい気持ちよくした?床に張り付けてまたがったの?」
「違うもん!」
思わず首を振った。誘導尋問の罠にかかったと分かって、 一瞬血の気が引いたけれど、もう遅い。
「じゃ、別のやり方だったんだ」
「ひどい…」
ローターをトントンとタップしながら、浩之は左手でとろみのあるお湯に浮く胸をまさぐった。
乳首をつまむ指が、トロリとしたお湯で絶妙になめらかに滑る。
「どこで使ったの?リビング?」
私は、かぶりをふる。
「じゃ、お風呂?」
また私は、首を横に振った。 乳首とクリトリスの快感が、どんどん私を正直にさせる。
「そか。じゃ、ベッドルームだな」
否定しない私の耳を、彼はペロリと舐めた。
「またがらなかったってことは、ベッドでバイブみたいに使ったの?」
「違う…」
「正直になってきたね。言ってごらん、どうしたの?」
手の平で包むようにローターを支えてクリトリスと蜜壺の入り口の両方を揺さぶり、乳首に指を滑らせながら、耳に舌を忍ばせる浩之の声に、逆らえなくなっていく。
「…チェ…スト」
「チェストって、あの?」
彼は、少し驚いていたかもしれない。
「香澄、あのチェストにディルドを貼り付けたの?」
「あぁん…」
もだえる私に、「それで、貼り付けて、どうしたの?」と尋問を重ねながら、 彼は一段強く私を抱きしめた。
「…立って」
「立って?」
「あぁぁ…後ろから…」
「立ちバックで、いれたの?」
「あぁぁ…浩之…いきそ…う…」
返事をはぐらかす私に、まだいったらダメだと言って、彼はバスタブを出た。
「同じようにして見せてよ」
私もバスタブから出すと、トロトロの入浴剤のヴェールをシャワーで優しく流して、彼はディルドをバスルームの大きな鏡に貼り付けた。
「…無理っ」
だから、ディルドを家から持ってくるように言ったのだとようやく理解しながら、 私は浩之と目を合わせた。
「いれたんだろ?ここに。それで、腰ふってたんだろ?」
彼は、正面から抱き寄せると、蜜壺に指を少しだけ忍ばせた。
「ほら、こうしていれたんだろ?」
浩之は、私の中心を鏡に貼り付けたディルドを近づける。
お尻にふと触れた滑らかな感触に、思わず脚のあいだから手を伸ばす。
「そうやって、いれたんだ」
待っていたかのように、蜜壺はディルドをくわえ込んだ。
お尻が鏡に当たる硬さが、卑猥さを際立たせて、浩之の手を握りながら腰を動かしてしまう。
「見てごらん、こんなにいやらしいことしたんだよ、自分で」
彼は私に後ろを振り向くように促した。 可愛らしいパステルピンクが、充血して赤みを増してる私の中に納まっている。 彼の指示に従って腰を前後に動かすと、 白濁した愛液がパステルピンクにまとわりついて糸を引いていた。
真後ろから見るその姿に、恥ずかしさと興奮が入り混じり、カーッと頭に血が昇る。
奪われる視界
「ほら」
彼の声に正面を向き直ると、目の前に彼自身があった。硬く反っている…。
「くわえて」
言われるのと、実際に口に含むのと、どちらが早かっただろうか。 彼が出張していたこの1週間、ずっと、こうしたかったのだ。
私は、自分の中にディルドが入っているのを忘れて、浩之を愛撫することに夢中になった。
ジュルジュルという唾液の音がバスルームに響くほどに、むさぼってしまう。
「香澄、腰が休んでるよ。動かして」
浩之の声に、ゴクリと唾液を飲み込んで、素直に従う。 激しく腰を前後させて鏡にお尻をぶつけ、 口では浩之に吸い付くように愛撫をする。
蜜壺の中がきもちいいのか、口の中なのか、それとも両方なのか…。 それを確かめるように、私は腰にも口にもさらに力を込めた。
「いやらしい、香澄。立ちバックでディルドオナニーしながら、フェラチオしてるよ」
「んんっぐ…あぁ…」
口からこぼれそうになる唾液を吸い上げながら、 蜜壺の中の快感をむさぼって、 私は頭の隅で、今の自分がどんな姿なのかと、思わず想像していた。
「立ちバックでディルドオナニーしながら、フェラチオまでして。ひとりでも、こうやってディルド使ったんだろ?香澄、お仕置きしなきゃだな」
ホテルのバスルームで、浩之は熱い吐息をひとつついて、私の口から彼自身を抜いた。
彼に促されてディルドも抜かれると、立っているのが精いっぱいだったことに気づいて、彼に体を預ける。
私の体をバスタオルで拭きながら、彼は私に目隠しをした。タオルと似ている感触に、最初は目隠しだと気づかず、抵抗するのが遅れた。
「お仕置きだって言ったろ?」
彼は、私の肩を支えながらベッドまで歩かせ、仰向けに寝かせた。
「気持ちよかったところ、見せて」
浩之は私の両足首を掴むと、大きく広げた。目隠しで視界を塞がれているのに、つい横を向いてしまう。
「さっきまで、大好きなディルドをいれてたからね。今も充血して、ものほしそうにピクピクしてるよ」
そう言うと彼は、私の両脚の間に入り込み、一気に吸い付く。 ジュルジュルと唾液と愛液を混ぜて、蜜壺の中に堅く尖らせた舌を ひねり込む…。 柔らかく舌を広げて波打たせながら、クリトリスを包み込む…。 その周りの花びらにも、ねっとりと舌を絡みつかせて、蜜壺の入り口をもったいつけるようにつつく…。
「あぁ…浩之…、ほしい…」
「ディルド、また入れてほしい?」
大きくかぶりを振る。 目隠しをされながらも、彼の意地悪な表情が浮かぶ。
「じゃ、何がほしいの?」
腰が彼を求めるようにうねっているのが、自分でもよく分かった。
「お願い…。浩之の、いれて…」
彼が生み出す誘惑
「そんなに欲しいんだ、本物」
彼は、私をうつ伏せにすると、両腕を背中の上に寄せた。そして、
「まだまだ、お仕置きしなきゃ」
と私の手首に何かを巻いた。お仕置きという言い方に違和感があるほど、それは柔らかくて優しい。でも、その肌触りとは裏腹に、手首からは容赦なく自由が奪われていった。
「ここに、入れてほしいの?」
彼は、私にお尻を突き上げる姿勢を取らせて、彼自身の先端で蜜壺の入り口をくすぐった。
「早く…いれて…」
目隠しをされて後ろ手に拘束されているからか、ストレートな言葉が出てくる。 浩之は、私のお尻を両手でひと撫ですると腰をしっかりと掴まえて、ググッと奥まで入ってきた。
「はぁ…」
その先端が、頭のてっぺんまで突き抜けるように、快感が一直線に駆け抜けた。
「香澄、これ、ほしかったの?」
「うん…」
ゆっくりと蜜壺の中をかき回されながら、何かを懇願するように答える。
「でも、ディルド、好きなんだろ?」
「イッたんだろ?ディルドで」
強く奥を突き立てながら言葉を続ける彼に
「言わないで…」
と返す言葉には、快感の悲鳴が混じった。 蜜壺の奥にある快楽の源泉をこすりながら
「ほら、俺のでイッて」
という彼の言葉が、理性を繋いでいた最後の糸をプツリと切る。
私は、目隠しをされて手首を拘束された不自由な体をくねらせ、オーガズムの波を受けていた。
「ねぇ、ちゃんと目を見て言ってよ」
目隠しと手錠を外し、対面座位になると、浩之は私の唇を撫でながら言った。
「何を?」
「ディルドよりも、本物の方が気持ちいいって」
彼の目は、有無を言わせないほど強くなっている。恥ずかしさでごまかそうとする私に、
「ちゃんと言って」
とさらに強く目を結んだ。 下か ら突く彼自身が、硬さを増している。顔にかかる熱い息が、私を大胆にさせた。
「ディルドで…あぁ…オナニーするより、は…ぅ…浩之のを…入れてもらったほうが、あんっ…ずっとずっと…いぃ…気持ちいい」
眉間に力が入りながら快感の波を抑えて、私は視線と言葉を返した。 彼は、一瞬嬉しそうな笑顔を見せた後、苦しそうに表情をゆがめて動きを速めた。
「香澄…」
「浩之…きて…」
ギュッと強く、お互いの指が背中に食い込むほどに抱き合いながら、私たちは、一緒に昇りつめた。
ディルドは、ものすごく甘い誘惑。浩之の言う通り、大好きだ。でもその誘惑は、きっと、浩之がいるから甘くなる。
浩之が生み出してくれる誘惑…。
私も、彼に何か、甘い誘惑を生み出せるかしら…。 彼にとっての「もうひとつの誘惑」を…。
浩之が大好きと言ってくれるような誘惑を発見したいと願いながら、優しいキスを受けた。
END
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あらすじ
出張から帰ってきた彼とホテルへ向かった香澄は、ローション風呂に驚いた。
心までトロけてしまいそうなそのお湯に浸かると、体は正直に反応してしまう。
そんな香澄の様子に彼はローターを取り出して…