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官能小説 ウーマン・オブ・プラネット 2話〜微笑みの向こうへ〜


彼をとろけさせた夜

逢った時から私はカズキに笑いかけていたのだそうだ。 8月の土曜日の夕方、 マンション近くで和太鼓の音色に誘われたカズキが、 夕焼け雲が広がる夏祭り会場に入ると、 案内係をしていた私の笑みに、吸い寄せられたのだという。

病院の敷地内で行われていた会場で、 私はボランティアスタッフとして動いていた。 カズキに「何か、お探しですか」と にっこり微笑むと、カズキが頬を赤らめた。

キャビンアテンダント(CA)という仕事柄、 笑顔で人を癒すのは当たり前。 極上の笑顔こそCAの資質。 フライト前には必ず鏡の前で 笑顔をチェックするのが習性となっている私が、 職場を離れて笑顔を振りまくのは、難しいことじゃない。

でもカズキは私の笑顔に心を奪われた。 頬を赤らめてうつむいているカズキを「可愛い」と思った。 180?の長身でがっちりとした筋肉質の、 はにかんだ男の背中にそっと手をあてて 「ここを車いすの患者たちが通りますよ」と、 さりげなく誘導した。 カズキは一瞬、体をびくんと震わせながら、 道の脇にそれてくれた。

戸惑った表情を浮かべたカズキ。 この人は、私を探していたのだと瞬時にわかると、 心の中で深呼吸をして、大きな笑みで彼を包み込んだ。

夏祭りの後片付けを手伝ってくれたカズキも、 打ち上げに参加した。 最寄り駅近くのアットホームな雰囲気の炭火焼の居酒屋で、 ボランティア仲間と和気あいあいと飲みながら、 少しずつお互いのことを話した。

明日からまたフライトのため、早めに店を出ると、 カズキが家まで送りたいと申し出た。 私が住んでいるところを知りたいのね。 カズキの心のうちが手に取るようにわかる。 きっと私の手の平で転がっていたいのだ。

「フライトが終わったら、また会いましょう。」

にっこりと微笑みを投げかけると、 カズキが嬉しそうに深く頷いた。

秋の月が煌々と輝く夜に、 カズキから手料理の招待をもらった。 フライトの合間に、二度食事の時に予感がしたものの、 手料理だなんて!

シンクタンクに勤務するカズキの書斎の本棚には、 本がぎっしりと並んでいた。 白と黒の色調に彩られたデスクにソファ、カーペット。 カズキにとって神聖な場所なのだろう。

ハーブの香りのするボルシチは野菜も牛肉もスープに溶け合い、 素朴な風味がカズキのはにかんだ表情に重なる。 サーモンのパイ包みに黒パンとブルーチーズも美味しく、 冷えた白ワインが料理を引き立ててくれた。

日本では珍しいロシアンミュージックが、BGMで流れている。 彼の居心地のいい空間。私は少し、崩したくなる。 ワインが空いてから、ズブロッカをオンザロックで味わう。 カットライムを絞ると、柑橘系の香りと、 彼が私を求めている欲望の匂いが入り混じる。

私は指で、オンザロックの氷をくるくると回す。 グラスに氷がぶつかって、カラカラっと音を立てる。 それが合図だった。

カズキの腰に手を当てる。カズキが手を重ねる。 片手でグラスを持ちながら、 隣の書斎のソファに二人で腰をかけた。 期待されているのがわかるから、最上級の笑みで彼を誘う。

「脱いでみて」

私はカズキに命じた。

「あなたが脱いだら、私を脱がせてあげる」

素直な男ほど、可愛いものはない。 カズキはTシャツを脱ぎ、ズボンのベルトを外した。 想像以上の締まった筋肉が目の前に広がる。 鍛錬された男の体に、青筋の血管が透けて見える。

私はカズキの筋肉質の体を爪先で撫でつけた。 ぴくぴくと小刻みに震えるカズキ。 私の唇を求めようと腕を伸ばすが、私はするりと逃れる。 首に巻いているマフラーを外し、 カズキを背中からふわりと包み込んで、耳元で囁いた。

「目隠しをするね」

カズキは少し驚いたが、やがて子犬のように頷いた。

オンザロックの氷を手に取って、 目隠しされたカズキの筋肉質に載せる、滴が垂れていく。 カズキが身をよじったので、ズブロッカを口に含めて、 カズキに口移しで飲ませてあげる。 わなわなっと筋肉が動く。

「愛しているわ」

氷の滴が、彼の股間に、流れていく。 口ですくってキスしてあげると、 たまらなくなって声を挙げたのは、カズキだった。

拒絶された心

「やめてくれ」

カズキは私の手を払いのけて、 目隠しを外した。目が怒っている。 私はカズキの心を読み間違えたのだろうか。

カズキはTシャツにズボンに着替えた。 沈黙が流れる。

「ごめんなさい」

謝罪の言葉も虚しくカズキは無言のままリビングに戻り、食べ終わった食器を台所に片付けて背中を向けながら洗い始めた。

全身で私を拒否しているカズキ。

「ご馳走さま。ありがとう」

でも食器を洗う音だけが続く。 カズキは一言も話さなかった。

ドアを閉めると、マンションの向こうの夜空には満月が輝いていた。 明日から欠けていく月は、私とカズキの関係を象徴しているのだろうか。

帰宅すると、カズキから電話があった。

「さっきは悪かった。いつも君があんなことをするのかと‥‥」

困惑している様子が電話の向こうから漂う。

「カズキが寂しそうだったから、つい」

「寂しそうな男には、いつもそうなの」

「違う。そうじゃない」

言葉で説明しようとすればするほど、 もどかしさでいっぱいになって、言葉を失ってしまう。 誤解を解きたくて、必死になればなるほど、 逆にますます誤解が増えていく。

「信じて欲しいのに‥‥」

電話を切ると、涙が溢れてきた。 急いで化粧を落として、冷たい水で何度もすすぎ、 念入りに洗顔をすると、少しすっきりした。 鏡の前で、少し笑ってみる。

明日から2週間の長期のフライト。 自然な形の距離置きによって、カズキとのことが、 違う風景として見えてくるかもしれない。 長期のフライトから帰ると、シフトが連続して入ってきた。 シフトとシフトの間の休みも1日だけで、休養してすぐにまた仕事。 忙しいことは、精神的に楽だった。

カズキから連絡がないので、私からも敢えてしなかった。 微笑みを浮かべてお客様の世話をしているうちに、 カズキとのちょっとしたすれ違いも、気にならなくなった。 でも誤解されたままは、嫌だった。

紅葉の季節に、以前住んでいた町のカフェから、 10周年記念のパーティの案内が届いた。 フライト明けの休みの日に、カフェのパーティに出かけると、 カウンターでバイトしていた俳優志望の男の子が、ウェイターとして迎えてくれた。

5年前にカフェで出会った頃、 俳優志望の彼を応援しようとして誤解され、 それ以来、気まずくなってしまったことを思い出した。 笑みで私を迎えてくれた彼は、かつての男の子の面影がない。 彼ももう28歳。大人になったのだ。 時が経てば人は変わる。

憧れの人を見つめるような彼の視線に、私の心も温かくなった。

クリスマスのフライトが突然の変更になり、 連続2日間の休暇になってしまった。 クリスマスの翌日は私の33歳のバースディ。 毎年クリスマスも誕生日も仕事だったため、初めての2日間の休日に戸惑ってしまった。

ふとカズキのことを考えた。 今頃どうしているのだろう。 師走の街を、コート姿の人たちが足早に通り過ぎていく。 でも私の心の風景には、カズキと別れた秋の満月が煌々としていた。

その日のフライトはニューヨーク行きだった。 ビジネスクラスの機内でドリンクを配っていると、 機内中ごろの窓際に、カズキが座っているのを発見した。 隣の席は空席で、カズキ一人だった。

目が合った瞬間に心が震え、連絡してくれると直感した。

カズキのベッドカバーが、シルクのラベンダー色に変わっていた。 私の好きな色を知っていてくれたのだ。

バースディのプレゼントリングも、まるでオーダーメイドのように、 指にフィットしていた。カズキの優しさに、抱きつきたくなる。

ニューヨーク出張から戻るフライトでも、カズキと一緒だった。 偶然が積み重なると、それは必然だ。本で見つけたフレーズを思い出した。 クリスマスサンタが、きっと私たちを引き合わせてくれたのだろう。

カズキは私に優しくキスをする。 最初に出会った時は、寂しげだったが、 その頃のカズキとは思えぬほど情熱的に私を求めてくる。

何かを吹っ切ってきた男の力強さが、私の体を開いていく。 頭から、足のつめ先まで、念入りにキスしてから、 しっとりと潤ってきた繊細な部分を確かめる。 少しじらし加減にゆっくりと私の中に入ってきた。

ジムで鍛えた精悍な体が動くたびに、 私の奥にある熱いものが、さらにヒートして、 ますます彼を求めさせてしまう。

「なぜ、こんなにも」

燃えさせるの。 言葉にならない情熱に向かって、彼が激しく応える。 そのまま二人で炎となった。

甘い蜜で溶かされて

「目を閉じて」

カズキが微笑んでいる。 上半身裸でブルーのバッファローチェックボクサーパンツ 一枚姿のカズキが、ウッディな床に座りながら、 何かを企むように、私に笑いかける。

カズキの恋人になってから3か月。お互いの体に馴染んできた頃だった。

カズキがお気に入りのピンクと ホワイトのフリル付きフロントベビードールと、 ピンクに黒のフリルのTバックショーツでゆっくりと目を閉じる。

「何をするの」

「いいから、僕に任せて」

カズキが冷蔵庫から何かを取り出して、戻ってきた。 そして「舌を出して」と優しく命じる。 目を閉じていてもカズキが微笑んでいるのがわかる。 ゆっくり舌を出すと、「動かしてみて」と耳元で囁く。

舌を動かすと、舌先にひんやりとした丸いものに触れる。 甘酸っぱい風味が広がった。小粒のブルーベリーだ。 舌で転がして、ゆっくりと味わう。

「カリフォルニア産だよ。美味しいだろう」

それからカズキは、別のフルーツを舌に乗せる。 今度はストロベリーだ。

「下着の色に似ている。食べてみて」

舌を動かしながら、 カズキに命じられるままに甘いストロベリーを 口の中に含みながら、咀嚼する。 目を閉じているスリリングさと、 カズキに食べさせてもらう刺激が、 セクシャルな感覚を募らせていく。

「カズキ‥‥」

私はカズキのボクサーパンツに手を伸ばして、 彼の大事なものを指先でまさぐる。 ぴくんと敏感に震えた柔らかで愛おしいものが、私の手の中で転がる。

「だめだよ、まだおあずけ」

カズキがさっと身をひるがえしてから、

「目を閉じたまま、舌を動かしてごらん」

と、催促する。 再びストロベリーのひんやりとした感触が舌に広がると、 今度は甘い液体が口の中に入る。

「何、何なの」

ストロベリーとの相性抜群の メープルシロップの風味が口いっぱいに広がる。 シロップよりもべたつき感がなく、さらっとしている。

カズキがキスをしながら、 私の口の中のメープルシロップ味わうように、 私の唇を強く吸い込む。

「これ、メープルシロップ?」 

「違う、食べられるラブローションだよ。ラブシロップだよ」

ラブシロップ…エッチなネーミング」

子宮がきゅーんとなって、 思わずカズキのカズキに手を回して、 「お願い‥‥して」とせがむ。

でもカズキはじらしながら、 フロントベビードールをゆっくりとはぎとっていく。 裸にされると感じると、 ますます子宮がきゅーんとなって、ときめいていく。 乳房にキスされるより先に、カズキがラブシロップを乳房に降り注いだ。

「きゃ…」

悲鳴を上げると、 「そのままで」と命じたカズキがまたラブシロップを振りかけた。 シロップが滴っていく。ヘソに流れ、繁みにも侵入していく。 興奮して体をよじると、カズキが乳首にキスをする。 「あ、もうだめ」 喘ぎ声をあげると

「まだ目を閉じて」 とカズキが私の目にキスをする。 まぶたが震えた。 乳房からゆっくりと舌を這わせて、ヘソに向かうカズキ。 吸い上げられる感覚が肌に浸透してくる。 興奮の波がさらに高まった時に、 カズキの舌が繁みの一番感じるところへ侵入した。 舌でちろちろと愛撫されれると、子宮が熱くなった。

「もう、じらさないで」

ラブシロップの液体と、私の愛液が溶け込み、 陶酔に包まれたその時に、カズキの太く熱いモノが突然に突進してきた。

「愛している」

「私も」

甘い蜜の味を味わうより先に、 喘ぎながらカズキと一緒に登りつめていった。

<微笑みの向こうへ 〜おわり〜>

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