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官能小説 ウーマン・オブ・プラネット 4話 〜甘えん坊の彼〜


甘えん坊の彼

「はい、あ〜ん」

タカオがランチデザートのプレートから イチゴのパンナコッタをすくって、私の口の中に入れようとする。

今日こそ首を横に振って、「自分で食べるから」ときっぱり断ろうとしたが、 私の閉じた口の前で手が止まったまま、 じっと見つめるタカオの寂しそうな目に、ついほだされてしまった。 パンナコッタを口に入れたタカオが、今度はにこっと笑って 「僕にもちょうだい」とせがむ。

ここは代官山にあるイタリアレストランのテラス。 隣のテーブルでは形の良い長い脚を組んだモデルが 友人とフォークでサラダを小鳥のようについばんだり、 裕福な年配女性がピアスの青年と優雅にランチセットをシェアしていた。

セレブなイタリアンでデザートを食べさせてあげるなんて、気が引ける。 でもタカオがテーブルの下で私の足に何度も自分の足を擦り合わせてくるので、 さっさとタカオの願望を叶えたほうがいいと思った。

私のデザートプレートには、中央にクリームドブリュレ、 その周囲をレッドとグリーンのソースで彩られていた。

「クリスマスみたい。綺麗なソースね」と呟くと 「可愛い。麻美、好きだよ」とタカオがまたじっと見つめる。

2年前は、胸キュンだった。 でも今は、早くランチを終えて、明日の運動会の準備をしたい。

「早く食べさせてよ」

タカオが口を尖らせてせがんだので、 スプーンで思い切り大きくすくって、タカオの口に放り込んだ。

「最近、何だか僕に雑じゃない?」

クリームドブリュレを味わいつくした顔と、不満そうな表情が、微妙に交錯した。

「明日の保育園の運動会のことで、いっぱいなの」

するとタカオが「僕のことも考えてね」と手を握る。 仕事と僕のどちらが大事なのとこの場で聞いてこなかった。 ほっとした途端に、スマートフォンが出かける時間を表示した。

「ねえ、もっとここを。そうそう」

タカオが私に口でイカせることを要求する。 甘えもいい加減にしてと、歯で軽く咬むと「痛い」とさらに甘えた声で 「もっと優しくして」と訴える。

運動会の準備が終わってから、先輩や同僚とカフェに入るとすぐに、 タカオから電話がかかってきた。

「大事な話があるんだ。すぐに来て」

転職が決まったかもしれない。 私は小一時間ぐらいで切り上げて、タカオのアパートに直行した。 でも私の予想に反して、良い条件で進んでいた案件が、 給料の面で折り合いがつかず、破談になったという。

「がっかりした」

タカオが抱き付いてきた。そのままベッドに連れ込もうとしたので、 「明日が早いから」とやんわりと断った。 でも「一緒にいて」と私のカーディガンの脱がせようとしたので、 「わかったわ」と抱きしめた。 口でイカせることを要求してくると、「もっともっと」とすがりついてくる。

半年前から転職活動をするようになってから、 タカオはだんだん露骨に甘えるようになった。 私だって、甘えたいのに、いつもタカオの気持ちを優先している。

「ああ、感じる。上手だよ、麻美」

今度は私に騎乗位にさせて、私に奉仕するように、ねだってくる。

「僕、麻美に開発されそう。すっごくいい気持ち」

私の臀部を手で漕ぐように動かしながら、恍惚とした表情を浮かべるタカオ。 タカオを悦ばせてあげたい一方で、私も甘えたい。 私にも、感じるところを開発してほしい。 タカオの転職が成功するまで、我慢しなければならないの?

タカオの恍惚とした顔と裏腹に、私の心がどんどん冷えていく。 「別れ」という言葉が、電光石火のように浮かび上がった。

「どうしたの」

やっと気づいたタカオが、私を抱きしめてくれた。

フェードアウトの危機

保育園の運動会で中心的な役割を果たした子が、 終わってから突然の発熱で倒れて緊急搬送された。 父兄と一緒に診断の結果を待っていると、 携帯にタカオからメールが届く。

「今夜、行っていい?」

私はスルーして、携帯の電源を切った。 昨夜のタカオは「もっと、もっと」とせがむので、 とうとう私はギブアップした。

「転職活動から、タカオはマグロ状態。私だって楽しみたいの」

するとタカオが

「今まで楽しくなかったの?」

とすねて、愛玩動物のように体を寄せてくる。 ふと「最初が肝心」とアドバイスしてくれた保育士の先輩のことを思い出した。

「保育士だからといって、甘えてもいいと思い込む男が多い。 でも男女関係って、基本的にフィフティフィフティだから、 甘え合える関係がいいよ」

先輩の彼氏は5歳年上だ。 大人の男は楽だという先輩の気持ちが良く分かる。

タカオは私を抱き寄せて、乳首を吸い上げた。 Eカップの私の乳房を片方の手で愛撫して、 もう片方の手で臀部を持ち上げる。 「あああ」とタカオが息を荒くしたので、興奮が伝わってくる。 乳房をもう少しリズミカルに、乳首を舌でもっと転がしてくれたらいいのに。

気を取り直してタカオに体をフィットさせると、 私も自然に腰が浮いてきて、一緒に動いていく。

「だめ、もう、入れていい」

というタカオ。すぐに堪えきれなくなるのね。私の下半身も熱くなってきた。

「いいわよ」

と動きながら返事をすると、間髪入れず、 私の下半身より熱いタカオの太くたぎったモノが 侵入して、タカオが絶頂の声をあげた。

シャワーを浴びていると、頭が冴えてくる。 部屋に戻り着替えていると、ベッドで横たわっていたタカオがぽつりと呟いた。

「海外で仕事しようかな」

「海外って、どこ?」

「マレーシアか、シンガポール。友達も働いているんだ」

「やりたいことがあれば、海外でもいいんじゃない?」

「本当にいいの。僕が麻美と離れても」

「やりたいことを優先して。私はそんなタカオが好き」

そうだった。 出会った頃は、タカオが医療機器の営業に燃えていた。 ずっと応援していたのに、突然「転職したい」と言い出した。 でも何をしたいのか、全く見えてこない。 どんな仕事をしたいのかより、転職そのものが目標だとわかった。 だから、タカオ自身が苦しいのだと思う。

着替えが終わってから、テーブルにあったカップを手に取って、 タカオが入れてくれたダージリンの残りを飲み干す。 冷たくなった紅茶の香りに包まれた。

ふいに、タカオと距離を置こうと思った。 甘えん坊の彼を嫌いになって別れるよりも、距離を置きながら タカオの良さを再確認してから、会いたくなったら、会えばいい。 でも今は、自分の気持ちをストレートに伝えたくない。

「おやすみ」と軽く唇にキスをして、駅に向かった。 夜空を仰ぐと、「女はみんな女優」という言葉が浮かぶ。 いつだって、今の自分が一番輝いていたい。 でも2年も付き合っていると、どちらかが変わることもある。 私が変わったのか、それともタカオなのか。 タカオの甘えん坊ぶりを最初から受け入れていたつもりなのに。

タカオへの気持ちが、少しずつフェードアウトしていることに気がついた。

再会の夜に…

運動会の競技中にけがをした児童が元気に 登園してきた頃、異動の辞令が降りた。 異動先は閑静な住宅街にある保育園で、富裕層の共働きの親が多い。 教育熱心な親に育てられた児童たちと過ごすのは、まさにチャレンジだった。

異動のお祝いにと先輩からもらった新刊の幼児教育書を抱え、 期待と不安が交錯しながら帰宅すると、マンションの前でタカオが待っていた。

「メールしても返信が遅いから、気になっていたんだ。 ずっと会いたかった」

愛玩動物のように目を潤ませて、じっと私を見つめるタカオ。可愛いと思うけど、今はいちゃつく気になれない。

「用事があったの?」

と冷たい素振りで聞いた。 がっかりする顔を想像したが、

「転職が決まったんだ。ご飯を食べに行こう」

と積極的に誘ってくる。 近くのファミレスのテーブル席で向かい合うと、 タカオが「シンガポールで働く」と口火を切った。

「東南アジアの貧しい人たちの救済NPOと提携して、 医療機器を浸透させたいんだ。 転職ばかり焦っていたけど、やっと目標が定まったよ」

タカオは私の両手をぎゅっと握った。

「麻美が『やりたいことって何?』って、何度も聞いてくれたおかげだよ。 自問自答しながら、やっと決めた」

出会った頃のタカオのように、目を輝かせていた。 握られた手がじんわりと熱くなる。 きのこ入りハンバーグとオニオングラタンスープが、 ふわっと口の中に広がった。いつもよりずっと美味しい。

「僕の転職のことばっかりで。 麻美には淋しい思いをさせて、ごめん」

甘えん坊が頭を下げて謝る。初めての光景だった。 くすくすと笑うと、「なんだよ」と口を尖らせるタカオ。 つもの彼に戻ったと思ったら、 次の瞬間、神妙な顔つきになって、また私の手を握った。

「麻美にずっと避けられているような気がして。 いつも甘えてばかりだから」

いつものように「いいわよ」 とすぐ許すことをやめた。 やっとタカオに気づいてもらったのだから。

「でもこれまで通り、僕は麻美に甘える。 その代わり、僕もちゃんと麻美の話を聞くよ。 麻美も仕事のことで悩んでいたんでしょ?」

タカオの優しさが次第に心に浸透してくるが、 その一方で、タカオのペースに簡単に乗ってたまるかという、 あまのじゃくさも湧き上がってきた。

「デザートを頼む?」

と、タカオの質問をはぐらかすと、 タカオは首を振った。

「デザートは、僕のところで」

久しぶりに訪れたタカオの部屋は、普段と違ってきちんと片付いていた。 バニラの香りのアロマオイルがかすかに漂う。

「今夜は麻美が気持ち良くなってね。マグロでもいいよ」

「マグロって‥‥」

思わず笑い声をあげると、「やっと麻美らしくなったね」と、タカオが手を引いてベッドに連れていってくれた。

ベッドに腰をかけると、一枚一枚、脱がせてくれる。 最初の頃のように、初々しい感情が蘇って、ドキドキしていた。 パンティも全てはぎとられた私は、 タカオにトロトロの液体を乳房と乳首に注がれた。

シロップなの?」

タカオは頷きながら、私のDカップを念入りに舐めて、 乳首を吸い上げる。 味わうようにこってりした舌での愛撫に、 思わず「ああっ」とのけ反ってしまうと、

「気持ちいい?」

とタカオが乳房の下から上目づかいで見つめる。 キュンとなって「うん」と頷くと、

「麻美、可愛い」

とさらに乳首を口に含んで歯を立てる。 体が熱くなってくると、ますます子宮が熱くなる。 ローション を耳たぶ、腋の下、ヘソ、 そして一番感じる部分にふり注いだタカオが

「食べていい?」

と耳たぶを噛みながら囁いた。 なんだかくすぐったい気分。

「デザートって、このこと?」

タカオが頷きながら、指を一番感じるところに侵入させて、 ローションに混じった私のトロトロの液体を頬につけてから、 指を舐める。

「ほら、麻美もこんなになってる」

どうしてそんなにエッチなの? と聞こうとすると、唇を塞いでディープキスをしたタカオが、 シロップでいっぱいの私の体を舐めまわしながら、 一番熱い部分に唇をあてて、舌で絶頂させ、 そのあとでシロップを注ぎ合って、互いの体を舐めまわした。

燃えるような恋を確認するように。

<甘えん坊の彼 〜おわり〜>

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