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官能小説 天使の羽 1話(彼氏がドタキャン)
彼氏がドタキャン〜空振りの日々
「ねぇ健ちゃん、『?』入りのメールもスルーってひどいよね?」
舞は、自分が差し入れしたおにぎりを食べながら言った。
「おい、それ俺のだろ?」
パソコンに向かっていた健志は、顔をあげて舞に聞く。
「たくさんあるから大丈夫だよ〜」
「太るぞ」
「いっそ超デブになって真くんに振られようかな〜…」
「うわ、自暴自棄」
健志は無表情だった顔を少しだけ緩めると、舞の抱えている弁当箱からおにぎりを掴んで食べる。
「うまいうまい。良い嫁さんになるよ」
「それ、真くんも言ってくれたら良いのに…。」
健志はおにぎりを全部口に入れ、無言でパソコンに視線を戻した。舞は申し訳なさそうな顔をする。
「ごめん…愚痴ばっかだね。仕事の邪魔だよね」
妹を扱うように接してくれる健志に、舞はつい甘え過ぎてしまう。すっかり懐いている、といったところだ。
すると健志は、少しだけ笑って、優しい顔で微笑む。
「ちゃんとギャラもらってるだろ」
健志は舞から弁当箱を取り上げる。
「ありがと…健ちゃんが同じマンションで良かった♪」
「愚痴は良いけどさ、普通にアドバイスしていい? そいつ、やめといた方が良いんじゃないの?」
舞は少し切なそうに、むくれて見せた。
「…まぁ、納得いくまで頑張れば?」
「付き合えるように頑張るの!明日デートだもんね!」
「はいはい」
健志は苦笑いしながら舞の頭を撫でた。
一人の誕生日
舞はレストランの二人席に、一人でぽつんと座っていた。
「何か飲み物でも?」と店員が慇懃に尋ねる。
その時、携帯電話の着信ランプが光った。案の定、想いを寄せる真からの「ドタキャン」メール。
何度かデートもしているし、真は舞の気持ちに気付いているはず。自分との約束は、そんなに軽いものなのだろうか…。
少し考えて、「きっとそうなんだね…」と舞は呟く。もう潮時なのかもしれない。
舞は店員に、酒も料理も全部持ってくるよう頼んだ。
目の前に次々と高級フレンチが並ぶ。舞はそれらをガツガツかき込み、シャンパンで流し込む。
「誕生日おめでとう……私。」
舞の目には、うっすらと涙が滲んだ。
重なる唇…
シャンパン一本を飲み干した舞は、マンションの階段をふらふら上っていた。
そこへ健志が通りかかかる。
「舞?」
健志が舞を支えると、舞は突然叫ぶ。
「舞ちゃんお誕生日おめでとー!」
「誕生日ってお前…噂の真くんはどうした?」
「へっ?誰それ?」
舞はそう言って健志にしなだれかかり、寝てしまった。
健志は、舞を抱え部屋まで運ぶ。
ベッドに舞を寝かせて、そっと頭を撫でようとすると、ふいに舞が呟く。
「私、女としてそんなに魅力ないのかな…?」
「舞…」
「私…もう……」
自信ないのと言おうとした途端、舞は健志に唇を塞がれた。
「…誘ってんの?」
「違っ……」
健志は再び唇を重ね、舞の吐息に呼応するように舌を動かした。
健志の唇から、優しさと欲望の入り混じる強い情熱を感じ、舞はぼーっとして抵抗出来なかった。そして、そのまま健志の体に身をゆだねる。
彼の鼓動を頬に感じながら、舞は深い安心感に包まれていった。