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官能小説 秘密の氷が溶ける音 4話

沈黙の…その後

男性に掴まれた女性の手


29歳で処女であることを、混乱の勢いで洋平に告白してしまった自宅の玄関先。張りつめた空気に、目を閉じてしまっていた。

「そうなんだ…」

小さく答えた洋平の声には、戸惑いが織り込まれている。
私の心の奥にある、処女という秘密を覆う氷が、また少し厚くなったかもしれない。

「ごめんね。どうしてそんな話するの?って感じでしょ。…帰らなきゃ、だよね」

玄関のノブにかけた私の手に、洋平の手が重なる。

「嬉しいよ」

さっきと同じだけ小さいけれど、さっきとは明らかに違う強さも含む彼の声。
もしかして洋平は、処女が好きなの?処女信仰が強くて、処女にこそ価値があると思っているの?

「夕子さん」

彼は私の手を握り、正面に立つ。
視線を向けられているのに気づいても、私は、顔を上げられない。

「あのね、これまでの経験がどんなものでも、いいんだ。ただ、話してくれたことが、嬉しいな」

うつむいたままの私から視線を外さない彼。私は、ゆっくりと彼に向いた。

「ありがとう、夕子さん」

声も表情も、果てしなく柔らかくて温かな彼が、そこにいた。
想像もしなかった言葉に、私は、声も涙も出ず、ただ、視線を返していた。

「抱きしめて、いいかな?」

彼は握る手に力をこめた。
その手を握り返しながら、頷いた。少し、震えながら…。

もうひとつの告白

抱き合う男女


「夕子さん、好きだよ。最初に会ったときから、ずっと。付き合ってくれませんか?」

すっぽりと洋平の腕の中に納まると、ついさっきまで、失恋を覚悟していた私の耳に、それとは真逆の言葉が響く。

「…私で、いいの?」

それは、心からの疑問だった。
彼が私に好意を抱いてくれているかもしれないと、なんとなく感じていた。
けれど、処女だと知れば、その好意は消えてしまうと思い込んでいた。
その思い込みは、実際に処女だと知った彼の反応をみても消えないほどに、強かったのかもしれない。

「夕子さんを好きなんだよ。夕子さんと、付き合いたいんだ」

そう言って視線を強く結ぶ彼に、今度は私が「ありがとう」と返した。

「ねぇ、さっき泣いてたし…。このまま、ひとりにして帰りたくないな…」

少し思い切ったような声からも、彼の優しさがにじんでくる。

「うん、もっと一緒にいたい」

前回電車で別れたときも、今夜玄関の前まで送ってもらったときにも言えなかった言葉が、スルリと出てくる。

心の奥で、小さく響く音

一緒に寝る男女


しばらくリビングで過ごしてから、一緒にベッドに入る。

「おいで」

腕枕を促してくれる彼を前に、安堵の幸福感と極度の緊張という両極端な感情が同時に湧きあがる。
ベッドの上で改めて私を抱きしめて、「大丈夫?」と背中をさすりながら、ゆっくりと私を横たえ、彼も横になった。

「嬉しいな、夕子さんと、こんなふうにできて」

ギュッと抱きしめてくれる彼に、私は、体の力が徐々に抜けていった。

「うん。私も…」

「そうなんだ!もっと嬉しい!」

洋平の声が、初めて年下らしく聞こえたかもしれない。

「私ね…処女だって言ったけど…。まだ学生の頃、彼氏がいたの。でも、いざってときに、うまくいかなくて…。それでそのときに彼が、舌打ちしたように聞こえて…。勘違いかもしれないけど…。それから、怖くなっちゃって。それで、仲良くなった人がいても、すぐにぎこちなくなっちゃって…」

親友の、たったひとりにしか打ち明けていないトラウマを、目の前にある洋平の胸に向けて話した。髪や背中を撫でながら、彼はときどき「うん」と頷いて聞いている。

「つらかったね…」

強く私を抱きしめて、洋平は髪に口づけた。

「僕も、夕子さんを苦しめちゃったな…ごめん」

さらに強く抱きしめる彼の腕の中で、私は、思い切り首を横に振る。

「夕子さん」

呼びかける洋平に目を向けると、ゆっくりと、唇が近づいてくる。
重なった唇は、彼の言葉と同じに温かく、柔らかく、そしてさらに深い安堵へと私を連れて行ってくれた。

その後、彼は、「今夜はずっと離れないから」と宣言したとおりに、ずっと腕枕で寝てくれた。
ときどき目が覚めると、これまでに経験のないような幸福感が全身に染み渡る。
これから彼をがっかりさせないだろうかという不安も、正直、胸を刺す。
それでも、心の奥にある秘密の氷が溶ける小さな小さな音も、確かに胸の奥に響いていた。

あらすじ

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