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官能小説【1話】あなたのすべてが性癖なのです。
知らない一面
★作品について
この作品は、小説サイト「ムーンライトノベルズ」と合同で開催した、「ラブグッズで熱く感じる小説コンテスト」のLC賞作品です。
たとえ長年付き合いがある人間だとしても、知らない一面というものは必ずしもあるものだ。
私も誰にも話してない秘密はあるし、逆に秘密がないという人の方が稀有だ。むしろあり得ないと思っている。
相手をすべて知り尽くしていると驕ることなかれ。
私は大学のときから六年間付き合っていた彼氏が、最近会社のふわっふわの綿菓子みたいな可愛らしい女の子に夢中だったなんてことも知らなかったのだから。
それが元でつい三か月前に別れたが、学んだのは人間を見るときは多方面から見るべし、ということ。
だって、ずっと私みたいなタイプが好みだと思っていた。
自分で言うのも何だが、どちらかというと世話好きで、はっきりものをいうタイプ。
甘えるより男性を甘えさせるようなタイプ。
だが、実際は違ったらしい。
彼は『俺、気付いたんだ。甘えるより甘えられたい!』と捨て台詞を残して私の元を去った。
何だそれ。
じゃあ、そう思うなら私を甘えさせろよ。
会えば遠慮など一切なく全力で私に甘えてきていただろうが。
口では私は悪くないと言いつつも何となく私をこき下ろして捨てていくのやめろよ。
喉まで出かかった文句を、彼に投げつけられなかったことだけが心残りだ。
同期に告白された残業の夜
そんな感じでやさぐれた気持ちを抱えたまま晩秋を迎えた11月中旬。
空虚となったプライベートの穴を埋めるように仕事に埋没していた私は、その日も残業していた。
こうなったら時間はいっぱい余っているから顧客に最高のプランをお届けだ!と気合を入れながらパソコンを打っていた夜の八時頃。
営業部には私と、同期の外崎譲(とのさきゆずる)が残っていた。
外崎とは同期で席が隣で気が合って。
顔を合わせれば話題が尽きないほどに仲が良かった。
だから残業中も仕事の相談とか雑談とかしながらやっていたんだけど、ふいに沈黙が流れるときがあって、外崎は仕事に集中し始めたんだなと思って私も負けていられないと手を動かした。

けれども、どうやら外崎は仕事に集中していたわけではなかった。
ただ黙ってどう切り出すのかを考えていたらしい。
ようやく口を開いた彼が言った言葉は、随分と考え込んだ割にはどうかと思うが、それでも私の度肝を抜くには十分だった。
「なぁ……そろそろお前を口説こうと思うんだけど、大丈夫か?まだ前の男を引きずってるとかあるのか?」
「…………はぁ?」
正直、外崎の口から『口説く』という言葉が出てくるとは思いもしていなかった。
外崎という男はいつの間にかしれっと彼女をつくり、いつの間にかしれっと彼女と別れているような男だ。しかも彼女の存在を匂わせもせず、彼女がいるのか聞けばようやく分かるというタイプ。『聞かれなかったから』と自分からも彼女の存在も女性遍歴も言い触らしもしない。
女性関係も仕事もストイックで、不言実行。
仕事に関してはめちゃくちゃ優秀で、成績はトップだ。
欠点はないのかと本人に聞いたところ、難しい顔で考えて『人参が食べられないところ?』と真顔で答えるような、俗にいうイケているメンなのだ。
それが今、私を口説くって言った?
は?本気?
「もう三か月だろ?俺としてはそろそろ大丈夫だと思ったんだけど……見込み違いか?」
「いや……別に、もう歩のことは引きずってはいないけど……」
「ふむ。なら、口説いてもいいか?」
「えーと……ちょっと待ってくれる?」
混乱している。
私が元カレを引きずってないと外崎が私を口説くってどういうこと?
え?外崎って……
「…………私が好きだったりするの?」
まどろっこしいことが嫌いな私はストレートに聞くと、外崎もよどみなく頷いた。
「もう五年の片思いだ」
「五年って……入社時から?出会ってすぐじゃん!」
「そうだな。自分でも相当お前に惚れこんでいると思う」
「…………そ、そう」
何と言っていいのか分からず、私は気の抜けた返事を返した。
今の今まで一番会社で仲のいい同期だと思っていた男が、私を好きだと言い長い間片思いをしていたと言うのだ。唖然とするしかない。
告白されたからには私は返事を返さなければならない。
けれども、もちろんイエスと言うわけにはいかなかった。
「えっとさ……正直な話、私、外崎のことをそういう目で見たことないんだよね」
「知ってる。お前はずっと彼氏しか見てなかったもんな」
「おっしゃる通りです……」
今になって私を捨てたあの元カレに夢中だった話を持ち出されると悶絶するほど恥ずかしいし、奴しか見えていなかった盲目な自分を殴ってあげたい。
そんな羞恥プレイを受けて神妙な顔になった私を見て、外崎は『別に悪いことじゃないだろ』と言ってきた。
こういうところが彼が他の女性にもてる要因なのだ。
さり気ない慰めが悔しいほどに様になるし、選ぶ言葉が的確過ぎる。
「お前が俺を男として見てないのは重々承知している。毎日お前を余すことなく見てきたからな」
「余すことなくって……変な表現しないでよ」
「事実だ」
これが本当に真面目に言っているってのがこの男のタチの悪いところで、恥じらいもなしに褒めたり自分の正直な気持ちを言い表したりするから女性はその気になってしまう。
今までその毒牙にかかったこともなく高みの見物をしていた私は、いざ我が身になれば情けないほどにたじたじ。
本当に罪つくりな男だ。
「えっと……だからさ、…………ごめんなさい?」
「いや待て。その答えはまだ受け取れない」
「え?どういうこと?」
眉一つ動かさず外崎は私の目の前に手のひらを掲げて待ったをかけた。
受け取れないって、それはイエスしか受け付けないってこと?
それはたとえ外崎だとしても傲慢過ぎない?
私は眉を顰めたが、どうやらそういうことではないらしい。
条件付きのお試しデートに誘われて…
「チャンスをくれ。それで俺と付き合えるか判断してほしい」
「お試し、的な?」
「一泊二日の泊まりつきデート。セックス込」
「はぁ?!何それいきなりハードル高くない?」
たとえ付き合い始めたとしても最初のデートで外泊とか経験ないんですけど。
「毎日顔を付き合わせて二人きりで飲みにも食事にも行ってるのに、今さら食事だけしてもしょうがないだろう。チャンスは一回しかないんだ。あえて男女の仲をお前が意識するようなコースで行く」
「はぁ……なるほど」
私は外崎の提案に素直に感心した。
二人で食事にいってそれで終わりってなっても、私の場合はいつもの同期のノリで終わってしまうのが目に見える。
外崎もそんな私の性格を見越しての今回の提案なのだろう。
伊達に長いこと同期をしていない。
「でもさ、……セックスまでする必要ある?」
「身体の相性は重要だろ?それともあれか?もしかしてお前は心が繋がらなければ身体は繋げないという口か?」
「いやぁ、この年になってそれはないけどさ。でも、……あんたと?マジで?」
外崎とセックスとか全然想像できないんだけど!
むしろ彼にセクシャリティを感じたことがほぼない私が、裸になってあーんなことやこーんなことをするとか……想像力の限界を感じてしまう。
「外崎さ、私の裸見たら萎えちゃうんじゃない?」
「お前が昼間机の上で白目剥きながら寝ていても俺は愛おしいと思ったぞ」
「それは私が私にドン引きだわ……」
何その鋼のメンタル、ぶれない愛情。
改めて驚きだし、自分が白目剥いていたことにも驚きだわ。
「実は……身体の相性もそうなんだが、ひとつ確かめたいことがあってな」
「確かめたいこと?」
外崎は椅子ごとこちらを向いて、膝に肘を置いて顎の下で手を組んで難しい顔をした。
彼がここまで思い悩むような顔をするのは珍しい。
「俺はお前と付き合いたいしセックスもしたい。だが、俺はどうやら人とは違う性癖があるようでな」
「性癖?」
外崎の口から『性癖』という言葉が出る破壊力、半端ない。
セックスとかセオリー通りのドノーマルなものしかしませんって顔をしてんのに、変な性癖隠し持ってるの?本当に?
語彙力なくすほどに驚いた。
「前付き合っていた彼女がおかしいおかしいって言っていたから、俺はどこか変なのだと思う。いわゆる変態ってやつか?」
「外崎が変態?!」
さすがにこれには噴き出した。
変態から一番ほど遠そうな顔をして何を言うのか。
「だから、本格的にお前と付き合う前に、お前の許容できるものなのか確かめてほしいというのもある」
「あーそういうこと」
笑いを噛み殺しながら彼を見ると、相も変わらず真剣な顔だ。
大真面目に言ってるんだろうなぁ。絶対に冗談とかじゃなく、本気の本気。嘘偽りのない、外崎の本心。
そのせいかなぁ。
私の心の中でそれでもいいかなぁって思い始めているのは。
たしかに外崎は恋愛対象外だし変な性癖があると言われても半信半疑だ。
でも、一方で外崎ならいいかなって。
話も合うし一緒にいて苦じゃないし真面目で誠実。今まで意識してなかったけど優良物件だし。
一度そのチャンスを使って考えてみるのもいいのかもしれないな。
「分かった。お試ししよう。いつがいい?」
「二十三、二十四日のクリスマスイブ」
「あぁ〜たしかにちょうどいいね」
「もうホテルも予約取ってある」
「準備万端過ぎない?」
「お前を全力で口説くためだ。抜かりはない」
だから!そういう歯の浮くようなセリフを全力で言うな!
私はまんまと赤面させられてしまう。
正直、私だけがしてやられるのは面白くない。
「樫原は?何か俺が留意しておくことはあるか?要望は?」
外崎はあくまでイーブンにこの関係を進めたいのか、私にも聞いてきた。
一方的な押しつけをしないのが外崎という男だけれども、彼女とかにもそういうタイプなのかな?
比べるのも申し訳ないけど、元カレとは違って包容力がある男なのかもしれない。
そうなると今の今まで甘えるということをしてこなかった私は困った。
彼氏には注意とか是正という意味で『してほしいこと』はあったけど、こういう感じでの『してほしいこと』ってなかなか思いつかない。
でもなぁ……このままこっちばかりが動揺させられっぱなしというのも癪なんだよなぁ。
そういうところが可愛くないと分かっていながらも、私は考えた。
「お前も何か性癖があるんだったら言え。俺もそれに応える」
「性癖、ねぇ」
性癖と言うほどでもないけど、ひとつそうだったらいいなって思うことがある。
「筋肉……私、筋肉好きだから、できれば触ったりとかしたいなぁって。シックスパックは欲しいところだわ」
「任せろ。それはもうリサーチ済みだし鍛え済みだ」
そう言って外崎がシャツを捲りあげて見せてくれたお腹。
そこには立派なシックスパックがあって、しっかり腹斜筋までもが鍛えられている。
「なにも文句はありません。大層立派な筋肉です。ありがとうございます。どうぞよろしくお願いします」
「こちらこそよろしく」
何故私が外崎にはもちろん、元カレにも言っていなかった密やかな楽しみを知っているのか謎だし聞くのは怖いけれど、そこは深堀せずに行こうと思う。
でも……外崎を彼氏に、かぁ。
考えたことなかったけど、今日告白されたことで彼を見る目が変わってしまう。
少し嬉しそうに再度仕事を再開する外崎の横顔に、感じたことのないときめきが沸き上がってきた。
これはちょっと……まずい。
私、案外ちょろいのかもしれない。
あらすじ
長年付き合っていたカレにあっけなくフラれ、迎えた11月中旬。
仕事に没頭していた私に、同期のカレが突然の告白。
しかも、特殊な性癖があると暴露してきて…!?