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官能小説【2話】あなたのすべてが性癖なのです。


約束までの期間

★作品について
この作品は、小説サイト「ムーンライトノベルズ」と合同で開催した、「ラブグッズで熱く感じる小説コンテスト」のLC賞作品です。

激動の十一月と十二月だった。
仕事もプライベートも。

這う這うの体で仕事を終わらせた二十一日。
明日から三連休だが、とりあえずは明日寝る。美容と健康のために寝るに限る。
外崎とのデートに備えるために。
何だかんだ言って私、楽しみにしているんだろうな。

「めちゃくちゃ楽しみにしてるからな」

外崎も外崎で帰り際、耳元で囁いてきた。念押しの一言だ。抜かりない。
それにしっかりとときめく私も私だけど。

同期に魅せられたデートの日

二十三日。
外崎は私の家までわざわざ車で迎えに来てくれた。

私の前に現れた彼は、いつも整髪剤で上げている髪の毛を下ろし、カジュアルな格好をしている。チャコールグレーのチェスターコートにキャメルのチノパン。似合うじゃないか。

「いいな。いつもより……綺麗だ」
「ありがと」

ぐわっと照れ臭さが沸き起こってくる。
何となく外崎ならそう言ってくれそうだなって期待しながら私もかなり頑張ったからね。
ボーナス入ったから奮発してお高めのワンピースとコートも買ったし、髪もいつもより念入りに巻いたから、その頑張りを褒められると正直嬉しい。

「俺のためだけにこんなにオシャレしてきてくれたんだな。嬉しいよ」

くっ……!キザ野郎め!
それでも胸にキュンキュンくるから本当に強者だ、外崎は。
どストレートな言葉は胸に響き、さっそく私に外崎を男としての意識を植え付けてきた。
私服や髪型の違いというのもあるのかもしれない。
とりあえず私は気分が盛り上がりすぎて何をどう話していいか分からなくなっているので、下手に口を開けなかった。
車の中でもいろいろと話しかけてくれる外崎に、言葉少ない返事しかできない。

何だろう……これ。
恋とか付き合い始めとかこんなに緊張するものだったっけ?

元カレとは六年間付き合っていたから、こんな初デートのドキドキ感は久しぶりだ。

正直、外崎とのデートは楽しかった。
一緒にクリスマスプレゼント買って疲れたらお茶して、二人で盛り上がって。

官能小説挿絵:初デートにドキドキしながら盛り上がる二人

途中でこれじゃあいつも同期として接していた頃と変わりないかもとも思ったけど、そんなことはなかった。
まず圧倒的に外崎の甘さが違うのだ。
彼は私を徹底的にお姫様扱いをして、際限なく甘やかす。

クリスマスプレゼントを買いに行ったとき、ボーナスで自分の欲しいものはほとんど買ってしまったから特にプレゼントで欲しいものはないと答えたら、じゃあ身につけるものを贈らせてくれと言われた。

『いつでも俺を意識していられるように』。
そう外崎が言うものだから、かなり選ぶのに時間がかかった。
それでも苛つくことなく最後まで私の相談に乗りながら一緒に選んでくれた彼は、ちょっとお高かったのにも関わらずプラチナのネックレスを買ってくれたのだ。
大きなダイヤの周りを星を模るように配置された小さなダイヤ。
毎日でもつけていたいくらいに可愛い。

でも、さすがにお試しでここまで高いものはと遠慮しようかとも思ったが、今日のお礼も兼ねているのだと言う。ここでポイントを稼がせてくれと。
万が一、この後二人の仲が恋人まで進展しなくても、今日というこの日を忘れてほしくないから贈るのだと。もし、それでも忘れたいというときには処分してくれても構わないから、今は受け取ってほしいのだと。

そこまで言われたら私も女だ。
胸をときめかせながら受け取るしかない。

ちなみに私が贈ったプレゼントと言えば、事前に用意していた手袋だ。
だからお互いに贈り合うプレゼントの値段が釣り合わなさ過ぎて、申し訳なかったのだ。

でも、外崎は私がプレゼントを渡したら物凄い笑顔を見せてくれた。
いや、あんたそんな顔で笑えたのって言うくらいの満面の笑み。いつもの生真面目な顔が崩れすぎ。

…………何そんなとんでもない隠し玉持っているのよ。

まだデートが始まって二、三時間足らずだというのに、魅せられてばっかりだ。
私、こんなんで夜、持つんだろうか。

徐々に来る緊張とカレの性癖の秘密

ホテルでのディナーも終えて、だんだんとそのときが近づくにつれて私の緊張は増していった。
私、このまま本当に外崎とセックスするんだ……。
そう思うとどうしても心と身体がガチガチになるのが止まらない。

だって、元カレと付き合っているとき、こんな豪奢な高級ホテル来たことなかった。
ホテルディナーもしたことなければ、『上に部屋をとってある』なんてドラマの中でしか聞いたことのないセリフを自分に言われるなんて思いもしなかった。

ちょっと待って。
今まで同期として側にいて気が付きもしなかったけれど、この人いわゆるスパダリってやつっぽくない?
噂のスパダリがこんな身近に存在していたなんて……。
私、本当に女としてのアンテナがまったく機能していなかったんだな。

「お前がいつもより口数少なくて変な感じだ」

エレベーターに乗っているとき、外崎がフッと笑いながら言う。
自分でも自覚しているが、そうさせている本人に言われると癪で仕方がない。
私は外崎の揶揄うような言葉に反応を見せず、そっぽを向いた。

「その調子でどんどん俺を意識していってくれ」

これ以上意識しろって?!
私の頭をどうにかしたいの?外崎は!
恐ろしい奴!どんどんと私の頭の中を桃色に染め上げようとしていくよ!

そんな戦々恐々とした思いでホテルの部屋に入ると、そこはいわゆるスイートルームってやつで、さらに私の心は焦りに焦る。
外崎、どれだけ気合をいれてどれだけお金をつぎ込んだんだろう。考えるだけで尻込みしてしまう。

「と、外崎……別に私、ラブホとかでもよかったのに」
「俺がよくない。一度のチャンスにしがみつく俺にはここまでする意味がある」
「そ、そっか」

つい口をついて出そうになった。
あんたどれだけ私が好きなんだ!と。

まぁ、そんな自惚れたことは口にできない性分なのでただ黙り込み、しずしずと部屋の奥へと足を進める。外崎の視線が何となく痛かった。

コートを脱ぎクローゼットの中に仕舞い、とりあえずソファーに座った。さすがにベッドに直行する勇気はない。

外崎はというと、同じようにコートを置いた後に座る私の目の前までやってきて見下す。

「先にシャワー浴びてきてもいいか?」
「…………う、うん」

そうね、シャワーは必要よね。私もシャワーを浴びたい。
真冬とはいえ天気がいい中半日歩いたら少し汗も掻いてしまったし。

浴室に消えていく外崎の姿を見送った後、私は大きな溜息を吐いて項垂れた。
とりあえず一緒に入ろうって言われなくてよかったし、部屋に入った瞬間にそういう流れにならなくてよかった。
外崎の紳士的な態度にただただ安堵するばかりだ。

…………と、思っていたのも束の間。
シャワーを終え次は私がと思って立ち上がったときに、外崎からとんでもないものを渡された。
目の前に差し出された赤い袋とゴールドのリボンで可愛くラッピングされたそれを、私は訝し気に見つめる。

「なにこれ?」
「シャワー浴びたら、これに着替えてきてくれ」

衣装指定?!
外崎ってバスローブとかより、エロい下着とかで雰囲気を盛り上げながらシたいタイプ?
先日言っていた外崎が元彼女に罵られた性癖がこれくらいなら、別にそこまで騒ぎ立てることのことじゃない。全然私の許容範囲だ。

実はずっと外崎の性癖が何なのかが気になっていた私は、拍子抜けをして中身を確認せずに『了解〜』と軽い感じでシャワーを浴びに行ってしまった。

渡された袋の中には…

シャワー後、ラッピングされた袋を開けて驚きだ。
中にはエロい下着ではなく、エロいコスチュームが入っていたのだ。

白いシースルーのネグリジェに、白いガーターベルト、ストッキング。
ほうほう、外崎は見た目に寄らず純白清楚系がお好きなように見えると意外な趣味に驚きつつ袋に手を伸ばすと、次に出てきたモノに目を剥いた。

「…………いやいやいやいや…………これはきついって、外崎」

ネグリジェと同じように白いシースルーの生地で作られた下着。
腰の紐で結ぶタイプのものらしいが、おかしなことに不自然に穴が開いているのだ。お尻の部分に。

この穴の意味するところは?!
私の頭の中がパンツの穴に関しての大喜利大会が始まっている。

いや、待って。
もしかして外崎の性癖って、お尻?つまりはアナルなプレイか?

たしかにそこに抵抗を感じる女性からしてみれば変態に思えることもなくはないけれど、そこまでは……と思う。
肝心なのは私が外崎の要求にどこまでこたえられるかだけど、私ってアナルどうなんだろう。今まで使ったことないからなぁ。
外崎のモノをまだ見ていないから何とも言えないけれど、普通に考えて男性のモノをお尻の穴に入れるのは簡単ではないとは知っている。ある程度の開発が必要なんだって。

ん〜……これは要相談だな。

とりあえずは保留にして、私は袋に入っていたものに着替えた。
外崎が私にこれを着てほしいのだと用意したものなのだから、それを無下にはできない。
恥ずかしいけれど。
滅茶苦茶恥ずかしいけれど。
鏡を見て自分でもこれはどうなの?と不安になる。

でもまぁ、このくらいならと腹をくくり、そういえばもうひとつまた違う袋が入っていたなと思い出した私は、それを取り出して中身を確認した。

そして、私は絶句する。

⇒【NEXT】外崎が私を抱き寄せて、私のお腹に顔を埋める。吐息の熱さがバスローブ越しに伝わってきて、この胸がドキドキした。(あなたのすべてが性癖なのです。 3話)

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あらすじ

忙しい日々を過ごし気付けばもうすぐ約束のデートの日。
カレが言っていた性癖とはなんだろう?と考えつつも、なんだかんだカレとのデートを楽しみに待っていた。
そして迎えた当日―…。

ちろりん
ちろりん
TLを中心にじれったくて甘い恋愛小説を書いております。…
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