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官能小説 同居美人 プロジェクトA 〜千織編〜 シーズン10


「卒業が、決まった」

卒業が、決まった。

卒業式は先だし、想子ちゃんはまだ決定していないみたいだから、正直、強い実感はない。

でも、決まったのだ。

私と平野井さんは、篠村さんから外泊を許可された。

それはつまり、私たちの関係を進めてもいいということ。

ビューティ道場の「恋愛禁止」の掟から、解放されるということ。

だけど私は、今はまだ時期尚早だと思っていた。

「一人だけ抜け駆けはしたくないの」

私は平野井さんに自分の考えを話した。

「わからないように気をつけたとしても、想子ちゃんはそういうの気づくと思う。私の気持ちとしても二人で一緒にお祝いしたいし」

平野井さんはいやな顔ひとつせず、私の意見を受け入れてくれた。

「確かにそうだね。とはいっても何もしないのも味気ないし、前祝いのディナーってことで食事だけしようか。帰りにはドライブしたりして」

「……うん!」

ただ受け入れるだけでなく、こうやって発展させてもらえると、尊重され、理解されているんだと思える。

うれしいと感じることをしてもらったら、同じことを返そう。

私も平野井さんに、これからそうしていこうと思った。

―――

どこか行きたいところはある? と尋ねられて、私は少し考えた。

私の卒業を祝うのだから、場所の選定は平野井さんにまかせてほしいとのことだった。

特定の場所というよりも、二人で過ごしていることを満喫できるような、ゆっくり静かに過ごせる場所がいい……

そう答えると、平野井さんはさっそくネットで調べたり、知り合いから情報を集めたりして決めてくれた。

私たちが訪れたのは、ベイエリアのホテルの最上階にあるフレンチレストランだった。大きな窓から海辺の夜景が見える。都心よりも灯りの数は少なくても、ひとつひとつに品があるように感じられた。

私たちは、自分たちでも感心するぐらいよく食べた。二人ともよく体を動かすので、食欲が旺盛なのだ。

お互いが美味しそうに食べる姿を、お互いが微笑みながら見守る。特別な日だけでなく、これからもずっと、こんな日々を過ごせたらいいなと思った。

―――

食事が終わると、夜景を楽しみにドライブに繰り出した。

平日とはいえ、道はどこも空いているとはいえなかった。

それでも平野井さんは、特別な場所を知人から教えてもらったらしい。

「知る人ぞ知る高台の場所らしくてね、平日だったらきっとゆっくり話をすることもできるだろうって」

そこに着いて車を降りると、木々で隠れている部分もあるものの、眼前には美しい夜景が広がっていた。

手すりに近づき、並んで夜景を眺める。

最初に口を開いたのは、平野井さんのほうだった。


「ずっと大切にしていきたい」

「これから先、お互いの仕事や人間関係で、今とは考え方も変わっていくだろう。でもそのたびに二人で話し合って歩み寄れたらいいなって思うんだ。俺は千織ちゃんとの関係をずっと大事にして、何があっても投げ出さないようにしたい。だから……これからもよろしく」

最後の「よろしく」で平野井さんは照れくさそうに笑ったが、それでもいつもの彼らしく、声は大きかった。

「側にいてくれてありがとう。今の状態で『愛してる』なんて言うのはまだ早いのかもしれないけど、これからもよろしく。千織ちゃんのこと、ずっと大切にしていきたい」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

私もまっすぐに平野井さんを見返した。

「私も平野井さんをずっと大切にしていきます。平野井さん本人にも負けないぐらい」

平野井さんのいうとおり、これから先、何が起こるかわからない。結婚観が違ったことなんて、もしかしたら些細なことだったのかもしれない。

愛情だけですべてがうまくいくなんて思っていないし、その愛情だってこれからは今とは違う形で変質していくかもしれない。

それでも、投げ出さない。

それだけは、心に決める。

喧嘩をいっぱいしても、ちゃんと話し合って、そのたびに仲直りしたい。

平野井さんが私の手をそっと握ってくれた。私も握り返す。そこに込める力が、お互い強くなった。

私たちはどちらからともなく唇を近づけ、チュッと音を立ててごく軽いキスをした。

その日は、それで家に帰った。

食事のお礼を平野井さんに改めて伝えると、私たちはそれぞれの部屋に戻って眠った。

―――

数日後。

篠村さんから、想子ちゃんの卒業も発表された。

発表の場には私も居合わせて、私たちは思わず高い声をあげて抱き合ってしまった。自分にこんな甲高い声が出せるなんて思っていなかった。それぐらい嬉しかった。

それから数週間後に開かれた卒業式は、とても思い出深いものになった。でもそれは後できちんとお話しするとして……

その後、私と平野井さんは、一緒に過ごす初めての夜を迎えた。それを先にお話ししようと思う。


「息を継ぐ余裕もない」

その数日前から、私はシャイニングラブソルトで肌を磨いていた。どこを見られても恥ずかしくないように。どこに触れられても気持ちいいと思ってもらえるように。以前、スタイリストの松垣洸太さんからプレゼントでいただいたものだ。肌を出す季節にはおすすめだと、小分けにしたものを想子ちゃんと二人にくれたのだった。

その日はいつもよりセクシーな服装でドレスアップした。体のラインと肌をきちんとアピールできて、それでいて下品にならないものを、松垣さんに協力して選んでもらった。

「千織ちゃん、本当にきれいになったよね」

松垣さんはしみじみとした目をする。松垣さんほどの人に言ってもらえると、さらに自信が湧いてきた。今だったらレッドカーペットの上も胸を張って歩けるような気がする。……というのはちょっといいすぎか。

本祝いということで、平野井さんは前祝いのときと比べても劣らないホテルを、今度はディナーだけでなく宿泊でも予約してくれた。

レストランはそれなりの格があるところで、私たけでなく平野井さんも、前回以上にきりっとスーツを選んだ。普段はジャージが多いので、改めてスーツ姿を目にすると新鮮でキュンとなってしまう。

チェックインだけ済ませると、最上階のレストランに向かった。今度は中華料理だ。見慣れない料理が多く、二人で珍しがりながら次々とお皿を空にしていった。予約のときに平野井さんが「お祝いの日なので」と伝えてくれたらしく、鯛がお頭つきで姿蒸しされて一匹ずつ出てきたのは豪華だった。

お酒の種類は少なかったので、食後はバーに移動し、お気に入りのカクテルを頼んで乾杯した。前回は車を運転する平野井さんに合わせて私も遠慮したが、今夜はその必要はない。そう考えると、アルコールが体に浸透していくのがいつもよりはっきり感じられるような気持ちになった。

あくまでも食後の1杯だからそれだけで切り上げ、部屋に移動する。

「奮発しちゃったよ」

と言った通り、そこはリビングとベッドルームに分かれたスイートルームだった。

部屋に入るなり、後ろから抱きしめられた。その力強さに一瞬で陶然となって、体を預ける。平野井さんの胸板や腕の太さを今ぐらい切なく、いとおしく感じたことはなかった。

「今日はもう、我慢しなくてもいいよね。」

平野井さんが私の顎を優しく持ち上げ、そちらを向かせる。

唇が近づいてきて、私たちはキスを交わした。

「は……っふ」

私の舌を平野井さんの舌が追い、絡みついてくる。強く愛されていることが伝わってくるような、濃厚なキス。息を継ぐ余裕もない。

それでもいったん唇を離すと、平野井さんはこちらをじっと見つめた。

「早くこうしたかった。好きすぎて気が変になりそうだ」

ほとんど同時に体がふわりと浮く。お姫様だっこをされていた。

連れていかれた先は、ベッドではなかった。

部屋の中ほどに大きな姿見があって、その前で降ろされた。

後ろからそっと腕を掴まれ、鏡に手を突かされる。

「……!」

男女の絡み

そのままの姿勢でいると、ドレスのファスナーが降ろされたのがわかった。

ドレスが音もなく床に落ちる。

私はランジェリー姿にハイヒールを履き、アクセサリーをつけただけになった。ランジェリーは、なぎささんを追ったときに買ったものだ。

(やだ……っ)

恥ずかしかったけれど、平野井さんに後ろから手を押さえつけられて、隠せない。

「綺麗になったと思ってたけど、やっぱり世界一綺麗だ。背中も胸も首筋も……」

彼は言いながら、私の首筋や背中にキスをした。


「触れていいのは俺だけだ」

平野井さんは最初は下着の上から私の体を愛撫した。

首筋、肩、背中、胸、腰、お尻……指と唇を駆使して、じっくり私を高めていく。

もっと豪快な愛撫をするのかと思っていたけれど、意外と繊細だった。ただ、心が逸っていることは伝わってくる。

(また、平野井さんの新しい一面を見つけた)

そんなふうに思ったけれど、そんな余裕があったのは最初のほうだけで。

その指や唇が下着の中にまで這ってくると、ただ、感じることしかできなくなった。

まずはブラのカップの中に指を入れられ、乳首をゆっくりとこねまわされる。

「あんっ……」

思わず体をよじらせたが、平野井さんは耳元で叱るように囁いた。

「動かないで」

その言葉で魔法をかけられてしまったように、なぜか体が自分の思うようには動かなくなる。

指の動きがだんだん大胆になる。乳首を少し強く摘ままれると、腰がくねってしまった。

「はぁぁんっ」

すかさず平野井さんは片脚を私の両脚の間に割り込ませる。

脚を閉じられなくなったところで、指は今度は下半身に移動してきた。

お尻を経て、ゆっくりとアソコのあたりを撫でる。パンティの上からではあったけれど、今の私にとっては十分な刺激だ。

「千織、濡れてる……下着の上からでもわかるよ」

その部分をこすりながら、平野井さんが囁いた。

指が、ついにパンティの中に侵入してきた。

おそらくはもう、赤く熟して開いているであろう陰部を割れ目に沿って撫でる。しばらく指を上下させたり、入口のあたりに軽く沈み込ませたりしたが、やがてその上の秘芯をも弄り始めた。興奮してぷっくり膨らんで皮の中から顔を出し、感じやすくなっていたのを、軽く摘まんでしごく。

「あ! やっ……あ! あぁぁ……っん!!」

そこは私のいちばん弱いところだった。途端に腰から力が抜けて、倒れ込みそうになってしまう。だが後ろから支えられた。まだ愛撫は終わらないようだ。

「見て、千織ちゃん」

上気した頬にキスをしながら、平野井さんが指を見せつけてきた。

「こんなに蜜が溢れている」

その指を舌でぺろりと舐めてみせる。

恥ずかしい。……なのに、ぞくぞくする。

「待って……ぇ、せめて、シャワー……を」

「……そうだね」

私が最後の理性で訴えると、平野井さんは苦笑した。

―――

シャワーは別々に浴びた。

一緒に入ったら襲ってしまいそうだ、と平野井さんに言われたから。

体を隅々まで洗っていると、自分で予想していたよりもずっと濡れていることがわかった。

(こんなに……)

自分のことながら、ちょっと、照れてしまう。

シャワーから出ると、全身にシャイニングラブエステを塗った。

ねっとりした質感のローションを肌に伸ばすと、それだけでもエロティックな気分になる。

部屋に戻ると、先にシャワーを浴びた平野井さんがベッドの上で待っていた。

すぐに押し倒され、あっけなくバスローブを剥がされる。さっきはまだ多少余裕があったように見えたけれど、もう、限界が近いようだ。

全身にキスの雨が降ってくる。

「きれいだ……この体に触れていいのは俺だけだ」

そんなふうに囁かれるだけでも、体の奥が燃え上がりそうになる。

キスはどんどん下半身のほうに移動してきて、やがて、脚の間に達した。

平野井さんは私の脚を広げ、アソコをまじまじと見つめる。

ジャムウソープでお手入れはしているけれど、だからといってそんなにまじまじ見られては恥ずかしい。部屋を暗くしているわけでもないし、きっと奥まで見えているはずだ。

脚を閉じたいが、しかし平野井さんはそれを許してくれなかった。強い力で両太ももを押さえつけてしまう。

「蜜が垂れてる。シーツが濡れてるよ」

平野井さんはその部分を舐め始めた。舌を差し入れ、割れ目を広げるようにして動かす。

「んふ、ぁ……っ」

痺れるような快感が走って、体を弓なりに反らす。

でも、これはまだよかったのだ。

「おいしそうな実も食べなきゃね」

さっき攻めたときに、そこがいちばん弱いところだとすぐにわかったのだろう。平野井さんはクリトリスを剥き出しにして、舌で舐めたり、吸い上げたりした。

「ひ、あ……ああぁぁんっ! あ、あんっ……!!」

強すぎる、快感。私が悶えれば悶えるほど、平野井さんの愛撫は楽しげに、そして激しくなる。

「ひらのいさんっ……わたし、わたし、もぉ……っ」

涙目になって、お願いする。アソコがひくひくして、すごく熱い。

「何?」

平野井さんはニヤリと笑った。

「言わなきゃわからないよ」


「抱き合って、一緒に上りつめた」

普段は朗らかで屈託のない人なのに……

平野井さんは意外なぐらい、「エス」だった。

「言わなきゃわからないよ」

もう一度囁く。

「……平野井さんの、挿れて」

私は小さな声でお願いした。

「挿れるよ」

手早くコンドームをつけ、平野井さんが覆いかぶさってくる。

重みが心地いい。

脚の間に硬いものがあたり、それがぐぐっと中に侵入してきた。

「あ……あぁぁぁんっ!」

平野井さんにしがみつく。快感と充実感が、体中を駆け巡っていく。

アソコはすでにたっぷり濡れているから、いちばん奥まで届くのに時間はかからなかった。

陰毛と陰毛が濡れそぼりながら絡んでいるのがわかる。

「やっとひとつになれた」

平野井さんは私を見つめて、唇にそっとキスをした。

私たちはしばらく舌と舌で愛撫し合い、ディープなキスを楽しんでいたが、それも束の間のことだった。

平野井さんが、腰を動かし始める。

「あ、んぁ……は、あぁんっ」

ときには浅く、ときには深く。強弱をつけながら一定のリズムで、平野井さんは腰を突き出す。奥を突かれるときも、中をこすられるときも、出すときにカリが陰唇をひっかけて巻き込むときも、全部気持ちいい。

「あ、あぁ……イ、イキそう……」

視界が白く霞んでいく。

「俺もだ……千織ちゃんの中、締まってて、気持ちよすぎて……」

平野井さんの声からも、完全に理性と余裕が飛んでいる。

「一緒にイこう……一緒に……!」

私たちはきつく抱き合って、一緒に上りつめた。

―――

休んだのも、ほんのわずかな間のことだった。

さすがは平野井さんというべきか、彼はすぐに二度目を求めてきた。

でも、私だって伊達に彼のもとで運動してきたわけじゃない。そのぐらい迎え入れる準備はできている。

「今度は、私が気持ちよくしてあげたいです」

言うが早いか、平野井さんの上に乗ってしまう。

平野井さんはまんざらでもなさそうな顔で受け入れた。

舌を出し、彼の体のいろんなところを舐めていく。首筋も肩も、胸も脇腹も、それからもちろんアソコも。平野井さんの体について、もっと知りたい。

舐めていると、平野井さんが腕をごく軽く甘噛みしてきた。

「やだぁっ」

笑って、私も噛み返す。乳首を軽く噛むと、気持ちよかったらしくて小さな声をあげてくれた。

「見つけた、弱点」

「違うってば」

笑い合いながら、お互いの弱いところを狙おうとする。

そうしているうちに、また高まってきた。

今度は私が上になって挿れる。

「あ、……んんっ」

亀頭が肉を掻き開いていく感触が、さっきよりもはっきりと感じられた。

平野井さんが下から手を伸ばし、乳房を揉みあげる。指に力が入るたび形が変わって、私自身が見ていてもいやらしい気分になってくる。

乳首をきゅっと掴まれると、それが合図になった。私の腰のくねりに合わせて、平野井さんが下からずんずん突き上げてくる。子宮口に当たって、そのたびに鮮烈な快感に包まれた。

そんなふうに攻められて、いつまでも正気でいられるわけがない。

二度目はその体勢で、果てた。

倒れ込んだ私を、平野井さんはしっかり受け止めてくれる。

私は幸せを噛みしめていた。

「これからもずっと、千織を守っていく」

平野井さんは言って、髪を優しく漉いてくれる。

私は体を起こして、もう一度キスをした。

「……っ!?」

まだ中に入ったままだというのに、「平野井さん」がまた大きく、硬くなったのがわかった。

「ごめん、またやりたくなった」

平野井さんはニッと笑って、また私の上に覆いかぶさる。攻守交替。

それから朝までずっと……私たちはスイートルームのいろんな場所で愛し合ったのだった。

―――

さぁ、じゃあそろそろ卒業式のことを話さないとね。


⇒【NEXT】いつも顔を合わせている相手の特別な姿を見ると、あぁ、いよいよお別れなんだとしみじみと思えてくる。(同居美人 プロジェクトA 〜千織編〜 シーズン11)

あらすじ

卒業が決まり、平野井との外泊を許可された千織。
それはつまり、2人の関係を進めてもよいということになり…

松本梓沙
松本梓沙
女性向け官能、フェティシズム、BLなどを題材に小説、シ…
poto
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毎日小説「夜ドラ」の挿絵も担当。書籍、ウェブ、モバイル…
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