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官能小説 カレントループ〜蠍座と蟹座の秘密の共有〜 第四話 仕事に甘さを足したら?
第四話 仕事に甘さを足したら?
「やはり、高級マンション」
「遺産分割で。支払いが終えるまでは少々かかります。今の会社給料でもいいけれど」
言葉を切って、二度目の玄関をくぐった。
「そこのノーパソのリストのチェックを」
……遺産の言葉にすこし、落ち込んだ。
自由に謳歌しているとは思っていたが。
まさか、家族がいないとは……
「遺産のことなら、じいさんです。両親は田舎でぴんぴんしてますよ。それより、きみのほうの彼氏とはどうなんですか」
今度は聖菜が驚いた。
ノートパソコンを開いたが、リストは見当たらない。
「あの、何を手伝えば……」
「僕が前日まで資料作っている能無しとでも? 飲みましょうか」
「……はい」
まるでアリジゴクに引き込まれた獲物の気分になる聖菜の前に、小野里はゆっくりと座った。
夏のスーツを脱ぎ捨てると、シャツだけになった。
お酒が嫌いなわけじゃないんだ。多分、酔った自分を見せたくなかったのだろう。
聖菜にも覚えがある。
愛情を求める自分を二度と見せない。
なのに、あの、ラブシロップがいけない。
「きみは、もっと自分に似合う相手を見極めるべきだよな」
……美味しそうに舐めていた小野里を思い出して、四肢が火照った。
「さきほどの話だが」
綺麗に片付いたリビングで、グラスにワインを注ぐと、小野里は聖菜に勧めた。
「見かけたことあるんだ。あなた、あのレストランで男に振られていた、そんなものを見てしまって、どうしろと言うのか」
「ええっ? ……は、恥ずかしい……いいんです。もう、無理だったから」
「だろうな」
ワイングラスがたちまち空になった。
(だろうなって!)
言い返そうとする頬を、ごつごつした男の手が撫でる。
先日、愛してくれた指が愛おしい。
見ると、小野里は目を潤ませて、聖菜の頬を撫でていた。
「傷は見せないと、治せないんですよ。それをあなたから教わったところだ」
小野里の指先に、雫を落とした。
聖菜は唇を噛み締めて、ゆっくり頷く。
「僕は、あなたに癒された。自覚がある。過去の話はしたね? 甘えるという行為を捨てたのだけど」
泣いている聖菜を抱きすくめて、小野里は甘く囁いた。
「僕は酒を飲むと、とたんにこうなる。付き合うと同じ言葉だ。らしくないと。イメージを押しつけている。完璧な男、営業、そんな完璧なら人間辞めてるでしょう。不完全だから……」
泣いた痕を丁寧になぞられて、聖菜はさかさまに映る小野里の瞳の自分を見つける。
少し開いた唇にワインが流れ込んだ。
聖菜も恐る恐る小野里の首に腕を伸ばした。
「完璧でいてほしいのかも」
「きみは、どっちなんだ」
「でも、わたしだって困ったんです。セックスが初ではないのに、思い出してしまって。請求書の送り間違えなんか、したことないのに」
もう自覚している。
心も体も、小野里が好きだ。
もっと愛してと叫びたい。
わたしだって、誰かにもっと愛されていいのだと。
引っ込んでしまった愛情を大声で求めて呼び戻したい。
私に愛情を返してと、叫びたい気持ちだ。
「甘えられて、嬉しくて。そのうえ、あんなふうに抱かれたら、女性ならどうにかなるよ」
「それならそういえばいいのに。チャンスはあったでしょうが」
「会社で?!」
「そう、言えるものなら」
――言えません。
いよいよ言葉に詰まった聖菜の前で、小野里はグラスを置くと、手を引いて腕に転がり込ませた。
「ほら、言って」
「ほ、欲しいって言えってことですか」
「違う」
「だ、抱いてくださいとか」
「違うな」
「めちゃくちゃにしてとか」
首を振られた。
「あんたが、一番言いたい言葉は、僕が一番甘えて聞きたい言葉だと思うから」
プレゼン前で気が弱っているのだろうか。
聖菜は泣きたいを堪えて、顔を上げた。
さきほどの熱がすうっと引いて行く。
リセットされた感じがした。
叫んだからと、強く届くとは限らない。
ひとつひとつを大切に。
小野里がしてくれたように、味わいながら告げるほうがいい。

「あなたが、好きです」
「まあ、いいだろう」
――いいだろ?!
驚く聖菜に小野里は
「僕のような男はですね」
と前置きをして、目を逸らせて呟いた。
「まっしぐらに、ひたむきになるにも理由が要るんですよ」
どこまでも仕事と甘えが同居する。
もう、恐れない。
今日は、最初から全裸で抱き合った。
肌が擦れるほど、くすぐったさは快感に変わっていく。
小野里は丁寧に舐めてくれて、聖菜は軽く達したり、指だけで激しく達したりを繰り返されて、最後には自分の部分を押さえて挿入に耐えることになった。
「目が欲しがっていますが」
「そういう言い方されると、素直に言いにくいです」
「いや、俺のほう」
ガラスに映っている自分自身を見ていたとは。
そんなものなのかもしれない。
「きみは、もっと自分に似合う相手を見極めるべきだよな」
それと、なんだっけ。
「似合う相手になってもらうんだ」
……だった。
小野里は一つ一つ、聖菜に教え込んでいく。
世界に自分に似合う相手はきっといる、なんて幻想だと。
どこまでも、自分を高める必要があって、自分はそうして来たからと。
肌を通じて、聞こえてくる。
「わたしに、似合う相手になってくれますか」
セックスなんて、そういう語り掛けかもしれない。
自分よがりでは見えなかったもの。
聖菜の大好きなハニーと、小野里の好きなナッツのシロップに手助けされて。
入って来た小野里は悪戯をするように、柔肌をつつき、持ち前の勝気さで突き進んで熱を放出した。
「射精だけで、絶頂させることは可能なのか……試してみたい」
「え?」
「というか、達せ」
時折見せるサディスティックな台詞が私の身体を突き抜ける。
何度目かの波を二人で越えた時には、もう睡魔が忍び寄っていて。
ふたりで溶け合った行為を思い出しながら、目を閉じる。
でも、まだ何か隠している気がする。
元彼女のことを忘れていないのは知っているから、終わると襲い掛かる小野里の悲しみ。
甘えたい気持ちを否定されて、同じような蟹に逃げ込む蠍。
「どういうつもり……ほんっとわからない」
ぽかと抱きしめたままの頭を小突く。
幻滅なんてひどい言葉を言われても、小野里はあの女性を尊敬している口ぶりだった。
あらすじ
仕事を手伝って欲しいという小野寺の言葉の真意を知ってか知らずか、聖菜は彼のマンションへ。
優秀な小野寺が家に持ち帰るような仕事なんてあるはずもなく…。