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官能小説 カレントループ〜蠍座と蟹座の秘密の共有〜 第五話 恋と欲は手を結ぶ


第五話 恋と欲は手を結ぶ

 ――水だと思ったら、残りのワインだった。

 ふと、暗闇に置いて行った母親の幻影をみて、雅哉はどうにもならなくなった。
孤独を抱きしめる夜は珍しくない。
そばにぬくもりを抱きしめると、ふにゃんとした四肢に全部を預ける。

 ――やっと、落ち着けそうだ、うん、決めた。
一度決めれば逃げずに済む。

***


「んも……くすぐったい」

 青い中から目が覚めると、小野里は聖菜を抱きしめたまま眠っている。
互いに何もつけていないので、背中の逸物の感触が、聖菜の腰をこすっているが伝わって来る。

「……ん……それ、だめ……」

 本能からか、小野里の指がまた聖菜をいじりはじめた。
きゅ、きゅ、と先端をやられて、聖菜はその手を腰に導く。

キスし合う聖菜と小野寺

「こんなに性欲、強くないはずなんですけど」
「俺に似合いになろうとしているんですよ、それは。俺は性欲は強いので、そこは疑問に感じません」

「女にそういうこというと、全部空っぽになりますよ?」
「ああ、聞くね。女性は精子を搾り取りたい生き物だと」

思うがまま、体を押しつけると、背中にまた緩やかな熱が走って、知り尽くしたような挿入感が襲って来た。
背中越しに冷たいものを感じる。

え? 泣いている?

「あの……」
「黙って聞いてくれますか。僕を好きになって後悔しないか?」

 それは、甘えに隠された一番聞きたかった言葉だった。

「誰を好きになるかは、私が決めることです」
「違うな、それは生まれた星が決めているんだ。受け入れるかどうか。この世界は受け入れるかいれないかが多すぎる。で、きみは、俺をこうして……」

 甘えているのか、命令したいのか。
段々とマーブルになってきている。

 会話が無理になってきた。
受け入れたままの横の姿勢で、小野里は聖菜を愛撫しながら、腰を押し付ける。
そのたびに、震えあがる胎内を楽しむように、じっくりと。

甘えた顔の、不思議なほどの狡猾な性格からは想像できない優しい行為で。

「きみには、負けますよ」
「どういう……」
「これ以上の答も質問もさせるものか。僕の弱みだと言ったでしょう。顔が見たい」

 ぐるり、と方向を変えると、そこには、甘えに慣れ切ったような目があった。
聖菜は膝に載せられたまま、
「笑顔、好き」
と呟いてみる。

 ずぐ、と含んだ熱が応えてくる。
男性を「こすりたい」とも、「ふくみたい」とも思ったことはない。

突き進んでくる熱が愛おしい。
胸がきゅうんとなると同時に、胎内も精いっぱい小野里を抱きしめる。

「背中に爪……聞いていないか」
その言葉のまま、達した。


 ――世界に似合う相手が現れるのを待っていたら、世界の終りまで巡り合えないけれど、星の導きで、巡り合った相手に「お願い」と願い事をするのは、決して悪くない。

 目を閉じると、聖菜の瞼には一つの流れ星が見える気がした。

 さて、わたしはこれからたくさんの愛情を欲しいと口にして生きよう。


 仕事にも、恋にもラブシロップの甘さをまとわらせて。


⇒【NEXT】――それは、あなたが教え込んだんですよ。(カレントループ 最終話 カレントスコープの蟹座のプレゼン)

あらすじ

小野里と聖菜の心は付かず離れずの状態。
でも、とうとう聖菜は「好きです」と心の内をあらわにして…。

亜麻寺優
亜麻寺優
TLと星占いが大好き。男女双方の視点から書くのが売りで…
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