どきどき

ベッドで横になった美咲は、部屋の照明を落とした。
布団の上に転がり、小窓を見た。ベッド脇のすりガラスの小窓には、レースカーテンがかかっている。柔らかい月の光が差し込む。近くの道路を走るバイクの音がし、隣の部屋から物音が聞こえたような気がした。

(早く会いたいな。まだ1ヶ月しか経っていないのに、とっても会いたい)

単身赴任に出発する日に、和樹と空港で交わしたキス。

『待ってて、すぐに帰ってくるから』

飛行機の発着を告げるアナウンスが聞こえる中で、和樹は美咲にそう言った。そして強く抱きしめた。
和樹の胸に顔をうずめていると、アナウンスや雑踏の音が遠ざかっていくのを感じた。スーツ越しに和樹の部屋の香りがし、美咲の鼻腔をくすぐる。美咲は切なさがわいた。そして、ふたりは見つめ合うと唇を重ねた。互いを忘れないように、心に刻みつけた。

思い出しただけで、美咲は胸が苦しくなるのを感じた。

「和樹くん……」

声は和樹を求める愛おしげなものだ。和樹と肌を重ねた日を思い出すと、美咲はいまの状態では肌寒さを感じたのでエアコンをつけた。温風が部屋に行きわたり少し温かくなった。しかしながら、和樹の体温には程遠い。
美咲は自分の唇に指をそっと重ねる。空港での情熱的なキスを思い出すと、身体は自然と求めた。唇にあった手を下げると、服越しに手のひらを使って胸を愛撫し始めた。和樹のことを思いながら、優しく刺激を与える。
つんとした蕾のような突起が自然とすぐに現れた。美咲は服の下に手を入れて、胸の突起を指先でくりくりといじくる。爪で軽く引っ掻いたり、摘んだりもした。

――あぁ、声がもれちゃう。

カップルが道で楽しげに話している声がしたので、美咲は声を抑える。
しかし、高ぶる気持ちは押さえ込められない。
自然と手が胸から下に伸び、ショーツに手を入れて触れてみる。指先にとろりとした液が絡んだ。少し胸の突起を刺激しただけにもかかわらず、秘花からは愛液が溢れて始めてきた。
それを感じた途端、美咲の身体の奥がじわじわと熱くなった。

和樹と付き合い始めてから、美咲は「ひとりエッチ」をしていなかった。
だからいま、和樹を求めて「ひとりで、秘密の道具でしている」ということに対して、恥ずかしさが隠し切れない。
しかし、そう思えば思うほど美咲の心が疼く。枕元に視線をやった。そこにはバイブとローション、そしてコンドームが置かれていた。

自分ではない色気

美咲はショーツだけになると壁にもたれた。黄緑色に白い縦線が入ったボトルは、一見すると化粧品に見える。
傾けるとトロリとした透明な液体が中で動く。ローションを少し手に取った。ひんやりとしたとろみのある液体が手に広がる。
美咲はまるでボディクリームを塗るかのように胸に塗り広げた。

うっすらとした月明かりが、美咲の滑らかな肌を照らす。
ローションをつけたことで艶を持った肌から、自分ではない色気を感じた。

ローションがついた状態で、先ほどのように指先で胸の突起をいじくってみる。ショーツの下で秘花がキュンと求めるように疼くのを感じた。
美咲はショーツに指を忍ばせる。指先でまさぐり、ぬるぬるとした液を遊んだ。
ふやけてしまいそうな指が、柔らかい秘芽に触れた。秘芽は潤いを持って、ぷるんとしている。出る息も自然と熱っぽいものになり、少しずつ意識がとろけていく。

美咲はバイブを手に取った。

(ぷにぷしていて、まるでアイスキャンディみたい)

硬すぎず柔らかすぎない素材。見た目も可愛らしい水色だ。バイブというと、もっとグロテスクなものを想像していた。けれども、実物を見てこれが自分の中に入ると思うと、怖さや抵抗感はそれほど感じなかった。
男性器をかたどった水色のモノには、枝分かれするようにクリバイブと呼ばれる部分があった。そこには、ざらざらとしたブラシのような突起があった。

美咲はゆっくりと小さくスイッチをいれた。

初めて聞く独特の機械的な音がし、ぶるぶるとした振動が手に伝わる。カニのハサミのようなクリバイブの先端がぷるぷると震えているのが見えた。
試しに手に当ててみると、素材が柔らかいためだろうか、こそばゆく気持ちよかった。

(こっちのスイッチは――……)

もう片方のスイッチを入れると、バイブはぐるぐると先端が円を描くように動き始めた。初めて見る動きに、あわあわとした美咲は急いでそちらのスイッチを止めた。 バイブは先ほどの震えだけになった。

(これを……)

美咲はクリバイブの先端を、ショーツ越しの秘芽におそるおそる当てた。

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