女性のための無料 官能小説・官能漫画サイト
エルシースタイル(LCスタイル)は、登録商標です【商標登録第4993489号】
ラブコスメが提供する情報・画像等を、権利者の許可なく複製、転用、販売などの二次利用をすることを固く禁じます
官能小説 カレントループ〜蠍座と蟹座の秘密の共有〜 第二話 蠍と蟹はベッドリネンの海で戯れる
第二話 蠍と蟹はベッドリネンの海で戯れる
「悪いが、シャワーだけにしてくれるか。僕は仕事をするので南の部屋をどうぞ」
ここでも冷たい口調で言われて、聖菜はおずおずとタオルを受け取って、シャワーを浴びた。
出ると、広めのリビングのソファに寄り掛かって小野里は熟睡。
良く見ると、散らかしたままの書類が散乱している。
伏せた目は、多少のクマと、酒でうなされているようだ。
テーブルには、高級ワインの瓶が並んでいた。封を切っている。
「バランタイン・シャブリ……いいなあ、こんなの飲めちゃうんだ」
悪い癖。 そうやって外面でついていった挙句に、差を感じて反省したのではなかった?
(もう、自分に似合わないレベルの男なんか、やめようと思ったはずなのに)
気づけば、会社の最高のエリートの小野里を見詰めている。
身の程知らずは、やめよう。そう思ったはずなのに。
理由の分からない涙が出て来た。
聖菜はごし、と目元を擦る。
主査が寝入っていてよかった。
また、冷たい目で揶揄われるに決まっている。
「ん……」 かすかな声に、聖菜は慌てて頭を下げた。
しかし、小野里は聖菜の涙に気が付いたわけではなかった様子だ。
涙の証拠を消して、聖菜はワインボトルから自然と身を離す。
気が付いた小野里は額に腕を載せて
「酒、苦手で……」
と呟く。
(なんだ、お酒か)
それにしても、本当に疲れている顔色だ。
思い返すと、域営業の小野里は、出張もダントツに多い。
だから事務の仕事も煩雑になる。スキルの問題だ。
それでも、仕事は山とある。やらせなきゃいけない。
事務に面倒を押し付けているようでいて、小野里はしっかりと説明していて、そうだ、女の子は突然泣き出して飛び出していったのだった。
その後、小野里は書類をまとめてやっていた。
そういう見えない部分も含めて、気になるのなら、今度は巧く行くだろうか。
(主査と? あり得ない)
片や一流の期待の広域営業、片や振られたばかりの営業アシスト事務OL…
「ここはわたしが頑張ってあげなきゃ。おやすみなさい。泊めてくれてありがとう。お酒も美味しかったです」
聞こえているのか、聞こえていないのか、また寝入りそうな小野里の頭をそっと撫でる。
酔っているから、気付かないだろう。
思いのほか触れやすかった髪の柔らかさに、
(もうちょっと)
と離れがたくなったが、さすがに休ませてあげたい。
可愛い悪戯だったと自負してくすっとなったところで、
「くうん」
と犬が鳴いた。
犬を飼っているらしい。聖菜は犬が大好きだ。いるなら、逢いたい。
廊下を探すが、犬らしき気配はなし。
「なんだ、気のせいかな」
しかし、その鳴き声はリビングから再び……。
(まさか)
と聖菜は思い切ってすやすや寝息を立てている小野里に歩み寄って、そろりと頭を撫でてみるが、
「ん。んん……」
「やだ、ちょっと、今の、やっぱり小野里さんですか?」
むくりと起き上がって小野寺は眠そうな目をしばたかせた。
「ああ、寝ちゃってた……シャワー、良かったかな? ごめんね、待っていられなくて、でも嬉しい夜だからとっておきのワインを開けたところだったんだよ」
「あの、主事……っ?!」
「主事……あ、僕のことか。うーん……会社ではそれで逆にいいんだけど、雅哉って呼んでいいよ」
まるで主人を見つけて目を潤ませているゴールデンレトリバーの表情を思い起こさせる。
あきらかに違う。目つきも、声も。
でも、お気に入りらしいグラスを手にした手つきは、先ほど見たレストランの雅哉と同じで、でも、どこかちょっぴりやんちゃな感じを醸し出していた。
なに、この、違い……。
レベルが高いはずの一流営業が、人懐こい犬に……わざとやっている風でもない。
困惑する前で、小野里はあくびを噛み殺して、先ほどのワインを持ち上げた。
「飲んでみる?」
「え?」
「さっきボトル、見てたから。はい、グラス」
ちょっと待って?
脳裏が混乱したまま、バランスを崩した。
ワインがグラスから零れ溢れてしまった。
「もったいないな。高いのに」
首筋に高い鼻を摺り寄せて来て、小野里はぺろりとワインを舌で受け止め始める。
そのたびに緩んだシャツの合間から見える深い水がたまりそうな鎖骨や、大人の男の引き締まった胸がちらりと視界の邪魔をした。
「あの、主事、そういうことはしないって」
「そんな戯言? 忘れちゃったな。可愛いと思っていたんだ。担当されている営業が羨ましかった。僕なら、もっと有意義に利用するのに」
利用の言葉も優しい。
「優しく使うよ?」
次々の甘い声と言葉にぱちぱちと瞬きをしたのを見つけられて、目にキスを落とされた。
次から次へと魅力を振りまいて来る。
多分、酔っているせいだ、そう思っても、聖菜の脳裏は簡単には整理がつかない。
「嬉しいです」
と伝えた途端に熱が引いた。
いつものガードの強いスーツではなく、ネグリジェを借りている。
簡単に捲し上げられ……
「僕、舐め癖あるんだ」
と首から胸から、キスマークと舌舐めの中間の愛撫を受けて、アルコールが回った。
まるでもう、小野里のペース、男女なんて、こんなきっかけで、こうなるのかも知れない。
一日働いた香りと、アルコールで、簡単に溶かされてしまうのかも知れない。
「でも、だめです。そういうことはしないってご自分が」
くい、と顎を抓まれ、唇をぷにっと押されて、いよいよアルコールが回って来た。
「もう遅いよ。男は急には止まれない。それに、ワインの恋の濃度、知ってるんじゃないんですか」
――そうだった。
「そうでなければ高級ワインなど飲ませないから。酔っているような僕は嫌か?」
いや、酔っていますよね。完全に。
そして、キスが巧過ぎる。
聖菜は酔うと、感じやすくなる。
いつまでも、舐めていて欲しい。
でも、そんな願望は言えないよねとそんなことを、忘年会打ち上げで酔っ払って同僚にネタで話した記憶がある。
「舐められるのが好きだと言っていたのは、君だろう」
(まさか、聞いてた?)
ちう、という小さなキスに、時折強い唇の弾力が織り交ざるバードキスと、ディープキスにとろんとなったところで、不敵な笑みにぶつかって
「僕の完璧主義についてはご存じですよね?」
「え? いきなり、主事……」
「きみが面白い事を言うので、酔ったついでに見つけたものがあるんだよ」 「ずいぶん、上機嫌ですね」
小野里はいつもの企みを含めたような目をして、聖菜を見やると、ぼそりと一言。
「きみは、もっと自分に似合う相手を見極めるべきだよな」
年上の小野里の言葉は、すんなりと心には……入らなかった。
聖菜は勝気である。
この勝気さが恋の邪魔になってしまうのに。
自分に似合う相手。
そう言われても、人はたくさんいて、自分で選べない。
指先ひとつで相手が望むようになってくれたらいいのに。
――嫌な想い出が甦った。
初体験の時、聖菜は感じることができなくて。
ただ、痛みと、水音にぼんやりと時間を感じていただけだった。
その後のセックスは、どこか、空しい。
「主事とわたしは似合いませんよね」
「いや、そうでもないかも。……きみを驚かせる日を楽しみにしていたから」
脳裏がぐるぐると回り始める。
「舐められるのが好きだと言っていたのは、君だろう」
これから、どうなるのだろう。
***
ライトを落としたベッドサイドテーブルには、水晶時計が時を刻んでいた。
大きく開けた東京湾を眺む窓の向こうはベランダ。
厚手のダークベージュのカーテンに、穏やかな眠りを誘いそうなマットレス。
ベッドしか置いていない。

「随分、シンプルな部屋ですね……」
「集中できると思うよ?」
集中って……次々に思わぬ言葉を浴びせられて、早くも腰の力が抜け始めた。
ぽすんと座ったところで、小野里は伸し掛かるように、雄の気配を醸し出し、聖菜を優しく押し倒した。
つくんと突き出た胸に、顔を近づける。
「――っ……」
「胸、弱いんだ?」
早々に性感帯を見つけられて、聖菜は腕をだらりと下げた。
小野里の指が蜜な場所に充てられても、その小さな突起を探り当てた瞬間でさえ、嬉しさに腰が震えて熱を帯びて来る。
そのたびに脳裏は天使と悪魔がせめぎ合う。
勝ったのはまず、天使だった。
「いえ、だめですって」
押しのけられた小野里はしょんぼりと俯いた。
「……そうか……残念。勢いでいければと思ったのに」
「あの、主事……いえ、雅哉……さん?」
本当に俯いてしまった。
聖菜はまさか、と思い返す。
さきの台詞、酔っているからと聞き流したけれど、本音なのだろうか。
――でも嬉しい夜だからとっておきのワインを開けたところだった――。
――可愛いと思っていたんだ。担当されている営業が羨ましかった――。
言葉を思い返しても、小野里が聖菜に嘘をついているとは思えない。
そもそも、小野里はやり方はあざといが、嘘はつかない。毒舌なだけで。
だからこそ、会社も小野里を信頼するのだろう。
拗ねてしまった顔をぐいっと向かせた。
「なに」 と驚く顔は、やはりいつもと少し違う。
まさか、酔うと本音、いや、こっちが本性?
「本音ですか、こっちが、本当の」
「……聖菜さん、きみは何を僕に聞きたいんだ?」
聖菜は考え込んで、はたと自分の格好に恥ずかしさを憶えた。
交わろうとしていた熱が急激に冷めた。
しまった、もう失敗した。
「ごめんなさい。色々考えていたら、気が殺がれちゃっ……ああっ、つままないで」
小野里は構わず聖菜の胸を自らの手で形作っていく。
「きみが弱いところは既に知ったから、夢中に還してあげますよ」
先端を抓まれて、甘い言葉を出しているうちに、なんだかハイになって来た。
会社ですれ違う小野里をずっと見ていた。
広域営業として働く小野里は、正直どの営業よりもカッコよく見えたし、狙っている女も多いはずだった。
こんな都会の秘密の水辺のじゃれ合いだって、悪くない。
蟹はもうアワ吹きそうですが。
「頃合いかな」
小野里は呟くと、ベッドサイドの小さな抽斗をそっと開けると小さなボトルを取り出した。
「僕の好みで選んだけれど、はちみつとナッツ、好き?」
アワを飲み込むように、聖菜は驚いて小野里を見上げる。
可愛いボトルを手にしている。
ローションの類だろうか? ローションは苦手だ。
道具に頼らなくても……言いかけた前で、小野里はボトルをキャップを弾くように開ける。
たちまち、甘い似合いが広がって、幸せな心地になった。
「ラブシロップ、ハニー&ナッツ味……仕事の詰めが甘い、貴方に似合いかと?」
「え……?」
「舐められるのが好きだと言っていたのは、君だろう」
まさか?
声の出ない聖菜の前で、小野里はゆっくりと指で掬ったシロップをまずは聖菜の首に塗ると、鼻先を近づけて来た。
「僕は幼少、ナッツのソフトクリームが好きだったんだ、懐かしいな」
すっかり酔いに任せているらしい。
美味しそうに舐めて貰えると、悪い気はしない。
どころか、望んでいた快感が目覚めるような、奇妙な心地になる。
『舐められたい、なんてどうぶつじゃないんだから。』
ある男はそう告げたが、小野里はそれはそれは美味しそうに、聖菜の首から、シロップを追って、ゆっくりと頭を下げて来ている。
「あの……」
「きみの味と、好きな味。なるほど、ラブシロップも悪くない。ここは丹念に行こうか」
たっぷりとした潤いにさらにさらりとしたシロップを塗りこめられて、熱い吐息を吹きかけられるだけで、聖菜産のシロップも負けずに垂れ始めた。
別に、付き合うと決めたわけじゃない、それでも、聖菜と小野里の望みはテレパシーのように一致する。
「……きみは、もっと自分に似合う相手を見極めるべきだよな」
「え……?」
「世の中に、わたしに相応しい相手は必ずいるはず……なんて思っていない?」
時折唇を離し、また顔をうずめられる。
いつ、下着脱いだかな……
聖菜の頭も同じくらいぼんやりとナッツの甘さにやられている様子で。
「違うな。相応しい相手になってもらうんだよ。本当に見つけたなら」
「恋まで、完璧……」
違う。多分、酔っているせいだ。
普段の主事はこんなに甘くない。
でも、あまりにはちみつとナッツが甘すぎるから、だから。
秘密の入り口から、また胸に戻って来た態勢で、少し、震える足を開いた。
羞恥心のある格好だが、こうしないと抱き合えない。
もうちょっと、ロマンのある格好は……ないよね。
「――この夜は内緒に、ちゃんとして、ください」
「気がそがれたり、誘ったり、忙しいね、きみは。もちろんちゃんとゴムつけるよ。失礼させてもらっても?」
「イタイのは、嫌ですけど」
「それは、ないな。お互い酔っているし、周波数は多分一緒」
指が、また触れた。
口元を押さえると今度は
「声を出していい」
との言葉。
普段の小野里は冷徹な仕事ぶりと容姿から軍服に鞭なんか持たせたら絵になりそう。
そんな彼が酔うと甘え始めるなんて卑怯だ。
「感度は良好」
濡れた指にさらに自分の舌を這わせて、入り口を擦られる。
今までになく濡れてしまって、聖菜はゆるく喘ぐと、正面から小野里を受け入れた――。
動くたびに、ナッツの香りがするHは決して悪くない。
ううん、いい。
ふいに触れた小野里の指が甘くて、たまらなくなる。
女の子は美味しいスイーツならいっぱい食べたい。
「ねえ、もっと」
……はちみつとナッツには、誘因成分があるのだろうか。
***
「会社には言うなよ。酔うと甘え癖が出るんだよ」
怒涛の如くのセックスだった。
終わって聖菜は涙目で毛布をかぶっている。
ワイン瓶を手に否定する小野里は少し寂しそうに見えた。
終わると、もう主事の表情。
すこしばかり、痛々しいし、寂しさが残る。
「別に甘えてもいいと思いますけど」
「弱みになるんだ、俺の場合は。会社にも、外にもライバルしかいない。だから、弱みにしないための方法はひとつ。俺の女になったと思うことにすればいい」
二面性に拘る小野里。
それはサソリがしっぽをあげるか、下げるかの葛藤なのだった。
「――って俺の女? 主事、その言葉はちょっぴりセクハラっぽいんですが……って」
聖菜は気が付いて、小野里の上半身をがしっと掴んだ。
「痛いぞ」
「また、Hできるってことですか?」
しまった、本気で聞いてしまった。
小野里はきょとんとしていたが、やがてくくっと笑いを漏らし。
「仕事でミスがなければね」
と元の口調で嫋やかに告げるのだった。
あらすじ
小野里とのディナーを楽しんだ後、終電を逃してしまった聖菜。
帰宅しかけていた小野里をどうにかつかまえ彼の家に泊めてもらうことになり…。