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官能小説 揺れる明るみ〜包容〜 6話


絡む視線、突き抜ける欲

激しいカラダのぶつかり合いと、湿度の高い息と、眉間の苦しみと…。
すべてが、違うリズムを持っていて、しかし同時に、欲情の爆発という光に向かって、同じスピードで突き抜けていた。

俺を見上げる葵は、口からはしびれる息を漏らしながら、目と眉間には、力がこもってきている。
俺も、きっと鏡に映したように同じ顔をしているに違いない。
飛び出したがっている欲情を、体の中に、無理矢理に抑え込んでいる。

初めて…。
初めて、葵の顔を見て一緒に上り詰めることができる…。
その喜びが胸をくすぐった瞬間、葵が目を逸らそうとした。

「葵、ダメ…。目…逸らしちゃ」
少し強い口調になってしまった気がして、「最後まで、見ててごらん」と、できるだけ優しく言い直した。

愛おしい葵の目。
普段の優しさと健気さと、そして快楽を極めようとしている濡れた欲と。

初めて会うその目の色を、ずっとずっと眺めたかった。

ふたりの欲情が、このまま、とても高く、でも頂上を極めずに、どこかに迷い込んでくれればいいのに。

その非現実的な願いとは裏腹に、
「ぁぁああんんん。…雄君…、ほんとに、もう…」
「ぅぅああっっ」
と、ふたりの声が揺れた。

俺は、まっすぐに目を合わせながらさらに激しく葵の奥を突き上げた。

「ぁぁぁああははぁぁっっん」
「……っっんんぅぅっっ」
俺は、半分泣きそうな葵の瞳を、じっと見つめながら欲情を放った。
きっとまた鏡のように、俺自身も半分泣きそうになりながら…。

そして、ぐったりと葵の胸にもたれこんだ。

包み包まれる、包容

汗ばんだ肌と、お互いを跳ね返したり吸い込んだりするような胸の呼吸。

初めて見ることのできた葵の上り詰める表情が、脳裏では絶え間なくフラッシュバックされている。

ふと、髪と背中に、葵の指を感じる。
俺を、撫でてくれている。
最後に俺を撫でるなんて、こんなことは今までになかった。

何か言いたげな、しかし興奮の糸は全身に巻き付いたままで気だるく、言葉が出てこない…。
そんな息が、首筋にかかる。

その首筋の汗を、葵の舌がペロリとすくった。

やっぱり、何か言いたいのか…。
俺は、「ん?」と小さく声にして、腕枕へと姿勢を変えた。

「やっぱり、ちゃんと葵の顔と体が見えるって、幸せ。それに、本当にキレイ」
葵の言葉を聞こうとしたのに、言いたいことがあったのは、俺の方だったのか…。

愛おしい、何よりも慈しみたい顔を両手で包むと、ゆっくりと、口づけた。
深く隅々まで。

(俺はこうやって、葵の体も心も、全部包みたいんだ。柔らかく温かく守りたいんだ。 そのためにも、ちゃんとお互いを見たかった。葵のコンプレックスは、きっかけにすぎない…)
口の中の温もりを感じながらそう気づいた瞬間、すべてを包み込んで守りたいと願っている葵に、実は、全部を包まれているのは自分の方だとも思えた。

「ありがとう」
唇が離れると、葵はそう目を合わせた。

「どうして?」と訊く俺に、今度は葵から、長くて柔らかなキスを返してくれた。


END

あらすじ

葵と雄一は、目を合わせたまま同時にオルガズムを迎える。
葵は深い幸福感を覚え、快感も大きかったけれど、何よりも愛おしさが増す。

セックス後の後戯でふたりがお互いにかけた言葉は…

はづき
はづき
肌の細胞すべてに、体の動きすべてに、心が宿る。 心が…
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