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官能小説 未来の花ムコ 1話 (パーティーの告白)


始まりの瞬間

牧田リサは、つかまれた二の腕を見た。

つかむ相手の左手首には、見覚えのある高級メーカーの時計が巻かれている。

「ごめん、いきなり」

リサが振り向くと、香川信也が微笑んでいた。
一瞬時が止まり、音を失くしたように感じたが、程なく周囲は喧騒に包まれた。

人気の彼に…

ここは、リサの勤める会社がプロデュースしたカフェバーだ。

高級感のある内装ながら、フードもドリンクも居酒屋並みにリーズナブルという点が売りの店である。
リサは今日、プロジェクトのメンバー達と、打ち上げを兼ねて、この店のオープン記念パーティーに参加していた。

香川は、プロジェクトのチーフとインテリアデザイナーを兼任している。
仕事ぶりがスマートで会社の稼ぎ頭として大活躍している彼は、やや垂れ目がちの甘いルックスを持つ32歳の独身。
当然、女子社員からの人気は断トツである。
結婚を強く意識し始めた29歳のリサにとっても、気になる存在だ。

そんな香川が、トイレを出てフロアに戻ろうとしたリサの腕をつかんだのである。

「今度、デートしよう」

唐突に言う彼を見て、リサは唾を飲み込む。
すると彼は腕を引っ張り、気付けばリサは香川の胸の中にいた。
耳元に口元を近づけ、キスをするかのように近づき、香川が囁いた。

「リサちゃんのこと、いいなって思ってたんだ。だから……」

続きを言いかけ、急に香川が離れる。
二人の斜め向かいにあった男性用トイレから、後輩の関口新が現れたのだ。
関口は、怪訝そうな顔で小さく礼をして去っていく。

「メールするから、考えといて」

早口でそう言い放ち、香川も去る。

重なる思い

リサは大きく息を吐き、しばらくその場から動けないでいた。

「先輩?」

声の方を向くと、関口が下から覗きこんでいる。

「何?」

咄嗟に立ち去ろうとしたリサの腕を、今度は関口がつかんだ。

リサがにらむと、関口は慌てて手を離す。
リサより二つ年下の彼は、営業を担当していた。
少年っぽい澄んだ瞳で、リサを真っ直ぐにとらえる関口。

「実はさっき、ドア越しに香川さんの声が聞こえて…それで、決心しました。
どうせ振られるなら、告白しとこうって。僕もリサ先輩が好きです!」

舞い上がる気持ち

宴会の席に戻ってからもリサは落ち着かなかった。
二人の様子を盗み見るが、変わった様子はない。

モテ期?

そう考えたら楽しくなり、リサは赤ワインを立て続けにあおった。
少し飲み過ぎたリサは、よろめきながら、トイレに立って告白を受けた場所に立ち戻る。

それにしても、私は、どうすればいい?
問いかける自分の声に答えようと意識を廻らすのだが、その思いと裏腹にふっと遠のいていく。

その瞬間、リサはばさりとその場に倒れた。

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